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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第2部 魔砲少女ミハル エピソード 7 新たなる運命 新しき希望 第1章魔砲少女
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Act11 魔砲少女

魔物を吹っ飛ばした魔法少女。

否、モトイ。

魔拳少女ナックル・ミミ!


そして地の底から這い出してきたのは・・・

地の底から這い出て来た機械マシーン


魔物が滅びた後を追うように現れた忌み嫌われる存在。

魔物に襲われていた少年少女に、再び危機が訪れようとしていた。


それは魔物を倒した魔法少女にとっても、新たな脅威だったのだが。




 ズゴゴゴゴ・・・




地割れを伴って出現した邪操の機械兵。

赤く光るカメラが、独りの少女を捉えていた。


「ふふん!あたぃに喧嘩を売るっちゅーんやな?」


魔物を必殺技で倒したミミは、懼れる振りも見せずに。


「そんなら!もう一度。

 烈風牙を喰らわせてやるだけやで!」


必殺技の大売り出しをお見舞いしてやると言い放つのだが。

魔物を倒せた自信からか、過剰なまでの傲慢さを滲ませる。


「ロボットだろうが、化け物だろうが。

 あたぃにかかればイチコロなんやで!」


さっきの魔物だって滅ぼせた。

だから、今度の邪操機兵だって同じなんだと思っいるようだ。

しかし、戦いに於ける傲慢さが油断でしかないと分かっているのか。


「初めての魔法やけど。

 あたぃは最強の魔力が与えられてるんやから!」


戦う事も、魔法を行使するのも?


「あたぃには魔法少女になって世界を救うっちゅー大役が与えられてるんやし!」


世界を救う?そんなダイソレタ大役を?


「せやから!お前みたいな雑魚なんか、一発で葬り去ったるわ!」


雑魚・・・って。

相手は紛いなりにも鋼の機械兵なんですけど?

いくら魔物を倒せるだけの魔力を与えられているとしたって、現実世界の物質相手に魔法だけでは太刀打ち出来ない様に思えるのですが?


「喰らえやぁ!あたぃの必殺技をッ!」


あ。

考えるより先に身体が動くタイプなんですね、ナックルミミさんは。


ぶんぶん右腕を振り回し、技を仕掛ける魔法少女ミミ。



 ギラン!



可笑しな素振りを見せる少女を監視し続ける邪操機兵。


「「目標を識別。強力なる魔力を持つ者と認識」」


紅いレンズが魔法を放とうとする少女を捉え続けて、


「「防御優先。然る後に無力化を図るべし」」


少女の攻撃に対して防御を優先し、どれだけの魔力なのかを計ろうとする。


 ぶんぶん・・・ぐりん!


ぐるぐる腕を振り回していたナックルミミが、必殺技を繰り出す。


「喰らえッ!烈風牙ナックルトルネード!!」



挿絵(By みてみん)



 ギュルルルーッ!


金色の魔法陣から噴き出す旋風。

魔法少女の一撃は、邪操機兵目掛けて突っ込んで行く。


「「目標は女神級の異能を保持。

  されど、魔法力は伴ってはいない模様」」


レンズに捉えた異能の顕れである魔法陣を即座に分析し、尚且つ少女の魔法力が不相応なのも見抜いたようだ。


「「ならば・・・防御可能」」


勝ち誇るナックルミミに対し、邪操機兵も対抗する。


「「魔法障壁展開」」


機械兵の表面装甲部に、赤黒い蟠りが現れる。

まるで魔法を持ち合わせる魔物のように。



 ガキュイィン!



ミミが放った烈風牙が、赤黒い靄のような蟠りに命中し・・・



 バイィイイイィンッ!



蜷局を巻いていた風が弾き返された。


「なッ?!なんやってぇ~ッ?」


絶大な自信が、派手な音と共に崩れ去る。

一撃で倒せると思い込んでいたミミに、強烈な残響を残して。


「嘘やろぉッ?」


機械だろうと倒せると踏んでいたナックルミミには、あまりにもショックな結果となった。

倒せるどころか、なんの痛痒も与えられていない事に叫ぶより他になかったようだ。


「「検知出来たのは<女神級>の異能。

  されど、目標には使いこなせる程の魔法力は伴われていない。

  況してや、戦闘力も経験値も皆無にも等しいと考えられる」」


必殺技を第一撃で放って来る少女を、機械兵は唯の一撃で見抜いていた。


「「我等の目的。我等が第一優先目標。

  魔法力を持つ者を掻き集め。

  極大魔鋼弾に抽出し、沈んだ島へ撃ち込む。

  然らば、眠る殲滅機械の再稼働を促すこととなろう」」


攻撃して来た少女も・・・だが、


「「その中に居る魔法少女も連れ去ろう」」


初めに襲われていた少年少女の中に、魔法力を備えた子がいるのを見過ごしてはいなかった。



 ズゴゴ・・・



攻撃を弾き返した邪操機兵は、ナックルミミを無視するかのように少年達へと向きを変え始める。


「な?!なんやお前ッ!

 あたぃを無視するんか!」


ショックから立ち直ったミミの叫びも無視して、機械は少年達へと襲い掛かろうとする。


「このッ!あたぃを無視するなんて・・・」


泡を喰ったミミが、立ちはだかるべく回り込もうと駆け出した。



 ガッ!


だが、邪操機兵は無視していた訳でも、攻撃をかけて来ない訳でもなかった。

背部に装着されていた後方防御システムが作動して、鍵爪状のアームが地を薙いだのだ。


「うわッ?!」


寸での処で避けれたが、もしも喰らってしまったのなら。


「危なぁ~!あんな鉄の塊当ったら・・・」


致命的ダメージを喰らったかもしれない。

否、もしかすると死に追いやられたかも・・・


最悪の光景を夢想したナックルミミの耳に、


「きゃあああぁ!」


少年達の悲鳴が流れ込んで来た。


「あ・・・どないしたら・・・ええんや?」


自信を打ち砕かれ、逆に恐怖を味わった今。

魔法少女として、何を為さねばならないかを問いかける。


必殺技でもかすり傷さえも与えられず。

逆に敵は、片手間で自分へ対処できるのだ。

力加減は、圧倒的に邪操機兵の有利。

否、真っ向から闘えば、一撃で打ち倒されるのは自分の方だと分かってしまった。


だから・・・


「あたぃは・・・どうしたらええのんや?」


成り行きを見守るだけ?

幼子達が機械兵に蹂躙されるのを観ているだけ?


「そんなん・・・出来る訳あらへんやろッ!」


最悪の光景を思い描いてしまったナックルミミが、拳を握り締めて。


「悪漢から罪なき少年を守るんが、魔法少女なんやぞ!」


敵わなくとも観て見ぬ振りだけは出来ないと・・・


「こぉのぉおおおおおおーッ!」


襲い掛かろうとしていた邪操機兵目掛けてダッシュをかけようと足場を踏み固めた。






「そこまでよ!邪操の悪魔」



何処からともなく声がする。


「罪を犯すのなら、この魔鋼少女が赦さないからね!」


その声は?!


天知る、地知る。


「魔砲少女ミハル!これに見参ッ!」


空から影が降って来た。


魔鋼少女隊ストライカーズノラぞ!」


陽の光を反射した2機の翔騎が。



 ズシンッ!ズシーンッ!!


黄色い機体の零号機。

ピンクに染められた初号機が、邪操機兵の前に降り立った。


「「何奴?!」」


レーダーをステルスして降り立った二機の戦闘ロボットに、邪操機兵は驚愕する。

直ちに戦闘態勢を整えようと、少年達に伸ばしていた手を引っ込めて。


「「魔法少女の操る戦闘ポットと認める。

  直ちに応戦せよ。直ちに攻撃せよ!」」


火器管制システムを作動させるのだった。




 ピーィン!ピイン!


警告音と管制システムの作動音が流れるコックピット内。

モニターに映し出される邪操機兵。

形式名称である<邪3式改>と、装備された武器各種が表示されている。


「ノーラさん、あたしが奴を牽制している間に」


「了解なノラ!少女達をかっさらって。

 もとい、避難させるノラ!」


剣武翔騎でもある初号機のパイロット、美晴に応える高機動型翔騎零号機のノーラ。


「奴は3式改だノラ。

 遠距離戦では火力に物を言わせる重武装型なノラぞ」


「うん、分かってるよノーラさん」


コックピットの右サイドに、隊内通信用のモニターがある。


「大丈夫だから・・・任せて」


モニターに映し出されるノーラの心配顔を観ず、


「あたしには魔砲があるんだから」


逆にモニターから顔を背けて答える。


「・・・分かったノラ。任せるノラぞ!」


少し押し黙ってから、ノーラがモニターから消える。


「うん・・・任せて。ノーラさん」


背けていた顔を、正面のモニターへと向けた美晴。

その右目は・・・紅く染まりつつあった。


「こいつを倒したのなら。

 あたしは・・・また。

 また、闇に冒されるんだ・・・今晩にも」


赤くなってしまう右目。

闇の異能が表れた証。輝を求める異能が現れた証。


「また・・・伯母ちゃんに取って代わられちゃう前に」


邪操機兵を打ち負かし、自我がある前に終わらせなくてはいけない。

もしもまた邪気を吸収されでもすれば。


「3式改か。

 操る邪気も・・・手強いんだろうな」


機械兵は邪悪なる魂が宿り動かされていると言う。

魔物だった魂か、それとも邪なる人の穢れた魂なのか。


「どちらにしたって・・・夢魔に取り込まれない内に消滅させないと」


もしも邪操機兵に宿っている魂を、右手の紋章が取り込んでしまえば・・・


夜闇の中、眠ってしまえば夢魔に弄ばれる。

夢魔の造った空間で、滅ぼした恨みを晴らすように現れる。

抵抗出来なくされ、闘う事も出来ず、抗えも出来ず。

魔法力を奪われ続け、穢れた闇を注入され続ける・・・朝が来る迄。


「こいつにはどんな闇が宿ってるんだろう」


モニターに映る敵を睨み、美晴は息を呑んだ。



 ガキャッ!



邪操機兵の両腕が初号機へと向けられる。

一番の強敵と見破ったのか、それとも自らの宿敵だと悟ったのか。



 ドドドドドド!



腕に内蔵されていたモーターキャノンが火を噴く。

37ミリの砲弾が初号機の居た場所を薙ぎ払う。


 バガン!バガン!ドガガガガッ!


炸裂する砲弾。

だが、虚しく地面で爆裂するだけ。


「「消えた?!いや、飛んだのか?」」


邪操機兵はレーダーを調べる。

周囲隈なく・・・空までも。


「「ばッ馬鹿なッ?」」


ピンクの機体が爆焔から躍り出て来た。

跳んだのではなく、飛び退いていたらしい。

邪操機兵が弾幕を張ると読んでの機動だと知れる。


 どんっ!


爆焔から飛び出して来た初号機が、今度こそ本当に。


「「跳んだ!」」


真っ向正面から。


翔騎の左腰に備えられた斬波剣を抜き放ち。


「てぇえぇやあぁああああああッ!」


裂帛の気合と共に、剣を袈裟切りに。



 ギィイイイイイインッ!



鋼鉄をも切り裂ける翔騎の刃だったが。


「くぅッ?!」


3式改の剛腕装甲は辛うじて持ち堪える。

装甲の一部は削り取られたが、内部までは損傷が及ばなかった。


「やるね、流石は新式の邪操機兵」


間合いを取る為、再び飛び退いた剣武翔騎のコックピットで美晴が唸る。


「だけど、あたしは勝負を急いでるの!」


数十メートルも飛び退き、機体を邪操機兵へと向き直させて。


「だから・・・これで決めてみせる!」


斬波剣を正眼に構えさせると。


「邪気殲滅・・・祓魔極光ストライクブライト!」


持てる全魔力を魔鋼機械へと送り出す。


翔騎を司る魔鋼の機械が、高出力の魔法力エナジーを与えられ。



 ギュワアアアアアアアンッ!



蒼く光る水晶体が高速回転を始める。


 

 ガコン!


動きを停めた初号機を狙って、邪操機兵が攻撃を再開する。

両腕からの砲撃に加えて、背部に備えられた迫撃砲も同時に発砲したのだ。


 ドドドドド!


見境無しの砲撃。

否、勝負を決そうと試みたのであろう。


「ミハルっち?!」


少年達を危害半径から連れ出していたローラが、危地と踏んで叫ぶ。

いくら翔騎であろうと、この攻撃を無事で済ませられるとは思えず。




  キュウウウウウウウウウゥンッ!


魔鋼の機械は翔騎の武力を高め、その異能ちからを発揮させた。


斬波剣が変わる。

一文字刀が中程から上下二つに割れ、開かれた空間に蒼い火花が散る。


「受けてみなさい!

 これがあたしの全力全開・・・」



 ビキビキビキ・・・・



蒼い火花がスパークに代わり。



 キュゴゴゴゴ!


モニターに飛び来る弾幕が映し出されても。

魔砲の少女は裂帛の気合を込めて叫んだ。


「美晴の・・・究極エクセリオ魔砲ブレイカー!」


魔砲の解放を。邪悪を打ち破る必殺技を・・・




 弩 ドオオオオオオドドドドッ!




蒼き光の矢が、敵の弾幕を喰らい破り。



 ズドオドドドドドドッ!



邪操機兵諸共に飲み込んで。



 ズドオォーーーーーーーーーッ!



蒼い光の渦が、爆発を起こして消し飛ぶ邪操機兵ごと、何もかもを消し去った。



潰え去った邪悪な機械兵。

何も残さずに、跡形も無く。


「やったノラ!ミハルっち」


固唾を呑んで見守っていた零号機のローラが喝采を叫ぶ。


「これで任務完了なノラ!」


襲われた少年少女に被害はなく、現れ出た邪操機兵も倒せたのだから。


「撤収するノラ・・・ぞ、ミハルっち?」


でも、初号機からの報告がないことを訝しんだ。


「どうかしたノラか?」


邪操機兵の爆発によるものか、何故か美晴がモニターに映されない。

通信状況が芳しく無いとは思えないのだが。


「何も・・・ない」


音声は届いていたようで、応答が返されて来た。


「唯・・・もう少しだけ・・・ここに留まるわ」


「なぜニャ?任務は終わったノラぞ?」


どこか、美晴にしては声が重く感じて。


「どこか負傷でもしたのか、ノラ?」


「まだ・・・残されているから。やらねばならない事が」


帰還を伸ばす理由については語っていない。

だが、声のただならぬ重さからローラは意図をはかる術も無くて。


「そうか・・・ノラ。

 ミハルっちがそう言うのなら、先に還るノラ」


こっそり通信傍受のスイッチを押し、録音装置も作動させて。


「お先に還ることにするノラ」


少年少女達が逃げ去ったのも確認して後、帰還の為に翔騎零号機を発進させた。


「ミハルっちに・・・危険な匂いが漂ってるノラぞ」


後方に置き去りにした初号機をモニターで観察し、コックピットに貼られてある写真に教える。


「マリアには分かるノラか?

 マリアなら助けることが出来るノラか?」


写真には零号機初代パイロットの赤毛の少女が映っていた。


「マリア・・・すまんノラ。

 約束を果たす事が出来なくて・・・許すノラぞ」


微笑を浮かべるマリアの写真へ、ノーラが唇を噛んで謝る。


「ミハルっちを・・・護れなくて」


ノーラには分かっているのだろうか。

今、美晴に何が起きてしまっているのかが。



通信が切れた。

周りには誰も居ない。


「くくく・・・馬鹿な娘ね、美晴って。

 夢魔に魔法力を奪われているのに、全力魔砲を撃つなんて」


コックピットでミハルが嗤う。


「光の魔法力を消耗すれば、わたしが現れ易くなるってのに」


わたし


指先がメインコンソールを撫でて。


 ガシュンッ!


コックピットが解放され、黒髪の少女が現れる。


「真昼だって関係ない。

 闇がそこに居るのならば、現れない訳にはいかないじゃない?」


ニヤリと哂い、右手の平を・・・


「ふふふ・・・これはなかなかの闇ね。

 これを宛がえば、美晴だって堪えきれないんじゃなくて?」


邪操機兵に宿っていた邪気の残留思念を、右手の紋章が吸い込んで行く。


「人を憎む者・・・人ならざる魔物。

 巨躯で穢れし姿・・・その名は・・・」


 ザァッ・・・


穢れた残留思念を取り込んだ右手の紋章。

悪意を剥き出しにするかのように、歪な嗤いを浮かべる顏には。


「美晴・・・いつまで生きていられるかしらね」


赤く澱み切った右目が妖しく光っていた・・・




魔拳少女のピンチに魔鋼少女隊が登場!


そして初号機に搭乗していたのは魔砲少女美晴!

ホンモノの魔砲少女の戦いぶりをご覧ください。


次回 Act12 未来という名の<明日>があるのなら

魔砲少女と魔拳少女。二人は互いの主張を取り下げない?

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