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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第2部 魔砲少女ミハル エピソード 7 新たなる運命 新しき希望 第1章魔砲少女
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Act 5 傍迷惑娘

魔法が存在し、魔物が闇から現れる。


普通の人なら信じ難いだろう。

何も知らなければ、御伽噺ではないかと言うかもしれない。


だが、魔法少女が実在し、闇の魔物も存在した。


それは、まだ謎多き世界の一部に過ぎないのだが・・・

時は・・・世界歴21年。


終末戦争を生き延びた人類が新たに造ったこよみに、早くも20年以上が刻まれていた。

邪神との戦争における被害も、この頃になると散見出来なくなる程にも復興が進んだ。


日ノ本国の都である<きょう>も高層ビルが建ち並び、インフラ整備も急ピッチで進められていた。


人々は発展を遂げる都市の中で、明るい未来が続くものだと信じ切って暮らしていた。

若人は未来に希望を描き、将来を見据えた勉学に励んでいたのだ。


最早、二度と悲惨な戦争などが起きる筈が無いと・・・


自分達が戦場へと駆り出されるなんて、在る訳が無いと信じ込んで。





都の市中、中心部から北へ5キロに位置する帝都学園。


夏季休暇を終え、夏の盛りが終わった初秋。

二学期の中間試験を終えた高等部2学年生の教室で・・・



「うにゃ~~」


げっそりした顏で机に突っ伏しているのは。


「なんだよノーラねぇ、また居残り勉強会かよ?」


「うるひゃぃッ、ローラ。<また>は余計だノラ!」


突っ伏すノーラに、ローラが揶揄う。

緑黒りょっこく毛の髪を右テールに結っているノーラと、黒緑こくりょく髪で癖っ毛でショートカットのローラ。

日ノ本人とは思えない名前だが?


「にゃんで同じ姉弟していなのに、男女のローラだけ優等生にゃノラ!」


「姉弟は関係ないだろノーラ姉。

 それに・・・ボクが女の子になったのは姉さんにも原因があるだろ~が」


・・・あ、いや。日の本人なのかが伺いたかったのですけど?

そう言えば、二人共が女生徒の制服を着ていますね?


「ボクが女の子になってしまったのは、ノーラ姉が邪悪に加担してたからじゃないか。

 母さんとノーラ姉を救い出す為に、ボクは・・・この姿のままを選択したんだぞ!」


ふむ・・・過去に何かがあって?


「ひゃっははっ!誰が頼んだって言うノラか?

 ローラが勝手に変移の魔法でこうなったのが正直なところだノラ!」


魔法・・・使っちゃったんですか?


「あー?!そういうこと言う訳?

 だったらもぅ、宿題なんて手伝ってあげないからな!」


「なッ?!そ、そ、そんな汚い手を使う気なノラか?!」


姉弟喧嘩は・・・仲の良い証拠なのか・・・どうでしょう?


ぎゃ~すか、ぷんすか。二人は暫く言い争ってましたが。


「時に、ローラ君。

 アヤツはどこへフけたノラ?」


挿絵(By みてみん)


周りを見回したノーラが、誰かを指して訊く。


「ああ、さっき。廊下に出て行ったよ」


ローラ君が指しているノーラの指先を廊下へと向け直して答えます。


「きっと、クラブへ顔を出しに行ったんでしょ」


「ほほぅ?!このノーラ様が居残りになったのに・・・ノラか?」


額に手を添えたローラ君がポツリと溢します。


「関係ないでしょ、居残るのはノーラ姉の自爆なんだし」


でも、ノーラさんは聞き流して言うのです。


「剣舞着に着替えるのなら、このローラ様が見分しなければニャらんノラぞ!」


「・・・(*´Д`)」


呆れ顔になるローラ君。


「この夏、どれだけ成長したのかを・・・ポヨンが進化したかを~ノラ!」


「・・・(*´Д`)」


いや・・・あのね?


「中学の時はブラの必要も無かった損な娘が!

 高校に入った途端に急成長しよって!

 今ではDカップを超える勢いで育っているノラぞぉおおおおぉッ!」


「・・・・・・( ゜Д゜)ハァ?」


・・・そうなのですか。


「ぽよんニャンて赦せんッ!

 しっかとこの目で見届けなくてはならんノラっ!」


「昨日も見てただろ・・・しっかり」


ポツリと溢すノーラ君。


「・・・だから、ミハルを追いかけるノラ!」


「逃げ出す口実になってないよノーラ姉」


駄目出しを返されたノーラが固まる。


「ノーラ姉は、しっかりと補習授業を受けてね」


「嫌ニャァ~っ、助けるノラ!」


で。


「はい、そういう事で。キチンと席に座っておいてよノーラ姉」


ノーラの襟首を持ったローラ君が席に置く。


「しくしく・・・ノラ」


哀れ、魔法盗賊ノーラさんは補習授業に捕まったようですW


「はぁ、姉弟とは言え・・・疲れる姉貴だなぁ。

 そうだよね、剣舞部のエース・・・ミハルさん」


呆れ果てた様な顔をして、姉を窘めたローラ。

フッと、廊下へと出て行ったクラスメイトへ顔を向けると、


「ねぇ・・・新しいボク達の仲間」


意味深な微笑みを、廊下へと向け続けるのだった。





帝都学園には普通科と魔法科学部とが併設されていた。


全国から選りすぐられた魔法使いの卵達が入学し、

後の世の為、人の為になる魔法についてを学ぶ場所。

一般科目は勿論、特殊な化学をも修め、特別な授業を受ける。


その中でも、高度に秘密を要する技術の開発も、極一部の生徒に課せられていた。

特に強力な魔法力を保持していた者へ、優れた属性を持つ者に与えられていたのは。



「あ、島田先輩!今日も部へ出られますか?」


1年生が走り寄って伺って来る。


「ごめん。今日は先生からの頼まれごとがあって・・・ね」


「そ~なんですかぁ。剣を携えておられるから・・・てっきり」


部には出られないと答えると、後輩が質して来る。


「部に、剣舞部に行かれると思って・・・」


「あはは。

 この赤鞘はアタシの分身だからね。いつも持っていないといけないから」


剣を収めた袋を下げて、苦笑いを浮かべて応えると。


「早めに用事が終わったら、部にも顔を出すから」


足早に下級生の前から立ち去る。

黒髪を左髪だけ紅いリボンで結い上げる、凛とした姿を見送った後輩が。


「待ってますから!島田先輩の剣舞を見せてくださいね」


流れるように靡く黒髪を見詰めて、うっとりとした表情で見送る。

右手を軽く上げて応えた後ろ姿を。


それほど身長は高くはない。160センチには届かないだろう。

長い黒髪は、どこか青味を感じさせる。

凛とした逆卵型の顏には、青味を帯びる瞳。整った眉に愛らしくも思える鼻と唇。白い肌にほんのりと差した朱色の頬。


「島田先輩ってば、モノホンの美少女剣士なんだよねぇ~」


後輩が廊下の角を曲がるまで見とれて呟く。


「あれで彼氏が居ないとか・・・無いわぁ~」


噂では、彼氏のようなひとの存在が広まってもいたが。


「もしかして・・・百合族なのかなぁ?」


聞いた話では、遠くの国に彼女らしい人が居るとかいないとか。


「島田先輩だったら・・・食べられちゃっても良いんだけどなぁ」


部の後輩が良からぬ事を呟いていたが、本当に百合族なのだろうか。


「まぁ、先輩のことだから。相手になんてして貰えないだろうけど」


女生徒に極めて人気が高いみたい。


「だって、島田先輩は・・・勇者の名を継いだ魔鋼マギメタ少女ガールだもんね」


魔鋼?魔鋼の少女?

それは一体?



「はぁ・・・まただよ。

 誰かの憧れになんて成れないって言ってるのに」


剣を携えた黒髪の少女が愚痴ている。


「あたしなんて、伯母ちゃんの足元にさえ及ばないんだから」


少しだけ俯き、ちょっとだけ羨ましく想って。


「理の女神になんて、成れる訳も、成りたくも無いんだから」


叔母の存在が、あまりにも偉大で。あまりにも縁が遠い存在だと思って。


「あたしは生きているのが精一杯なんだから。

 今こうして生きられているのが奇跡なんだから」


そっと蒼き珠を装飾したブレスレットを観て。


「だって・・・一度は死んじゃったんだから・・・あの日に」


そして、右手の平を見詰める。


「そうでしょ・・・美春ミハル伯母さん」


手の平に浮かび上がる崩壊太陽ブレイクゴッドの紋章。

少女の手に浮かび上がっているのは、憑いた者を指す証。


「いつになれば・・・消えるんだろう」


痣を見詰めて、呟いてしまう。

紋章が意味するのは何なのかを。

なぜ痣は現れ、どうすれば消えるのかを。


「はぁ・・・」


考える度に溜息が出る。

想いを巡らせても答えが返って来る訳でもないから。


剣を携えたまま、廊下の突き当たりにある宿直室へ入ろうとした時だった。


「みぃ~つぅ~けぇ~たぁ~でぇ~!」


大声が背後から追っかけて来た。


「やぁ~っとぉ~逢えたんやぁ~!」


 どたどたどた・・・と、廊下を走って来る足音。


「勝負やぁ~!あたぃとぉ~っ、勝負したってぇ~なぁ~!」


そして独特のお国訛りが背後迄迫って。


挿絵(By みてみん)


「このあたぃとッ!

 月神げっしん 御美みみとぉ~勝負してぇ~なぁッ!」


黒緑髪をポニーに結った娘が、いきなり勝負しろと吠えたてて来たのだ。








月神 御美が現れた!


どうする美晴?闘うのか?逃げるのか?

あの晩に出逢った二人が、こうも早く再会するとは?!

と、いいますか。

ミミは美晴を追い求めて現れたのか?

では、なぜ勝負を挑んできたのでしょう?

謎ですね!


次回 Act 6 翳

悲しい過去を背負った娘。運命に弄ばれる子には、誰かの助けが必要です。

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