表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第2部 魔砲少女ミハル エピソード 7 新たなる運命 新しき希望 第1章魔砲少女
158/428

Act 3 憑闇鬼

月神の社に夜が訪れる。


昼間、不思議な外国人と出会った少女ミミ。

神職の務めをこなす巫女にはなりたくはないようで・・・

月神つきかみの社・・・夜闇を照らす月を神と崇める神社。


京の都から数十里隔てた山里の社には、祖母と孫娘が住んでいた。

参拝客もまばらな神社で暮らす孫娘の名は・・・



「ミミぃ~!今夜は境内の見回りを頼むぞよ」


「い?いいいぃ?!・・・分かったよ、さわり婆ちゃん」


月神げっしん 御美みみと云う。

対して祖母は沢里さわりと呼ばれる、御年80の御婆おばば様。


御婆から夜警を命じられて、渋々了承したミミ。


「灯りも無い中を、見回るんやぞ。怖いに決まっとるやんか」


なるほど。

夏場だから怪談話が過りますね。


「・・・神社で怪談話って・・・あるんやろか?」


あるかも・・・しれないねぇ。


「やっぱり・・・お化けは怖い」


神社に住み、紛いなりにも巫女を務めるんでしたら、お化けの一つや二つ祓ってみたら?


「あたぃって、居候扱いなんやから。

 おかん(作者注・母親を指す方言)みたいな、立派な破邪の巫女やないんやし・・・」


ふむ・・・居候って意味は?


「おとん(作者注・父を指す方言)も、おかんも。

 難波の本宮に3年間、出仕しに行ってるから・・・

 沢里さわり婆ちゃんのうちで養って貰ってるんやし」


だから、御婆様の言い付けには逆らえないと?


「はぁ・・・こんなことやったら。

 嫌いなおとんと一緒に暮らした方が良かったかなぁ」


出仕奉公に行く御両親と別居を選択したのは、父親に反抗した末?


「おかんも・・・あたぃが御婆に扱使われてるやなんて、思いもしやへんやろぉなぁ」


ふぅッ・・・と、大きなため息を吐くミミ。


でも、今はさわり婆に養われている身だから。


「今暫くは・・・我慢しなあかんなぁ」


そう言ってから、傍らに在る勉強机に載った参考書へ眼を向ける。


「編入試験に合格したら・・・ここから逃げられるんやしな」


綴じられた赤い参考書に記載されてある学校名は・・・


「都に在る<帝都学園>は、寄宿舎も併設してあるっちゅうから」


その名は、日の本でも一二を争う名門校。

学部も、商・工・理・美・・・等々複数あり。

世界でも類をみないような学部も。


「魔法科学部・・・あたぃにはぴったりなんやし。

 ウチ等の家系には、魔法みたいな神力が授けられているみたいなんやから」


母親が闇祓いの巫女を務めていると言ったミミ。

その異能は神に仕える巫女ならではの神力なのだろうか。

娘であるミミにも、その異能ちからが受け継がれている・・・かもしれない。


「ふ・・・今に見てろや、さわり御婆。

 合格したら、とんずらしちゃるさかいにな」


それは、見事に合格した後で言うべきでは?

捕らぬ狸の皮算用にならなければ良いのですがね。

今は、夜警に行くのが先でしょう?


・・・と。


「お~いミミや。早う行かんかい」


「・・・へぇ~いぃ」


ほら、催促されちゃいましたよ。

急いで行かないと・・・また、小遣い減らされちゃいますよ?


「直ぐ着替えて、見回りに行くから~」


嫌々さを、ピクピク頬を引き攣らせて表してから。


衣裳棚にある巫女服へと目を向けて・・・


するっとランニングを脱ぎ、ホットパンツを蹴り脱ぐ。


すらりとした体躯。

張りのある肌、余計な脂肪のない・・・健康的な身体。


ポニーに結った、長い黒髪。

大きな目に光る、黒さの中にみどりが揺蕩う瞳。


巫女服を掴む手は、しなやかで細く。

紅い襦袢で隠される胸は、歳相応の膨らみを湛え。

白い羽織の下に履く紅い袴に収まる足も、しなやかで鹿のように真っ直ぐに延びている。


着替え終えたミミの巫女姿は、可憐な少女そのもの。

気高い気品は感じられないが、凛とした麗しさを見せつけている。


「ほな・・・行こか」


離れの家から出たミミの頭上から、半月がほんのりと灯りを落してくれていた。




境内を一周するだけの夜回り。

神職が必ずやらねばならない夜の務め。


沢里御婆はよわい80にもなる年寄りだったので、夜回りはもっぱらミミの仕事とされていた。

何度も夜警を熟す内に、何処に何があるのかも次第に慣れて。

月の出ない晩以外は、手早く済ませられるようになったのだが。


半月の明かりが、どうした事か今夜だけは心細く感じられた。

雲に隠れた訳でもないというのに・・・だ。


「何やろ・・・霞でも出てるんやろ~か?」


足元へ届く灯りが暗く思える。

半月からの光が、いつもより暗い?


ミミが空を仰いで月を見上げようとした時だった。



 ざわ・・・ざわ・・・ざわざわ



風もないのに、木立のざわめきが?!


「え?!なんや?」


突然の音に、周りを見回す。

だが、気配は感じられな・・・


「「居た・・・見つけた・・・」」


?!


あまりに突然のことだった。

誰も居る筈もない杜の中から、声が聴こえた気がしたのは。



 ざわ・・・ざわ・・・ざわ・・・メリ・・・ざわ



そして、木立の騒めきの中から聞こえて来たのは。


「誰?!誰かが・・・近寄ってくる?」


地面に何か重い物を押し当てる様な足音。



 ざわ・・・ざわ・・・メリ・・・ズシ・・・ざわ


音はどんどん近寄って、


「「逃がさない・・・捕らえて・・・連れ帰る」」


掠れた低い男の呟きが聞こえる?!


「誰なん?あたぃに用があるんか?」


木立の騒めきに紛れて近付いて来る声の主。

陰った月明かりで、周りが見渡せなくなった今。


「こないな晩に・・・誰なんや・・・」


光が失われつつある杜で、ミミの許へと近付くのは?


「「魔法を寄越せ・・・我等にお前の魔力を喰らわせろ」」


声が杜の中から・・・



   ざわッ!



目の前の木立を掻き分け・・・


「?!」


ミミの真正面に現れた。


「「我等・・・憑闇鬼つくやおにに!」」


木立を掻き分け、ミミの前に姿を現したのは?!


「ひッ?!化け物?」


挿絵(By みてみん)


身の丈2メートルを優に超す・・・魁夷かいい


真っ黒な毛に覆われた獣の姿・・・





突然、怪異が襲ってきた。

神社の敷地の中、神域だというのに。


魔物に襲われるミミ。

恐怖に怯える少女の叫びが、彼女を呼ぶ?!

それは・・・奇跡にも思える邂逅だった・・・


次回 Act 4 月下の邂逅

憑闇鬼の前に現れる彼女。彼女の手には紅い剣が握られていたのだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ