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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第8章 新世界へ<Hajimari no Babelu>
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新世界へ ACT 15 刻まれる願い

古の魔導書。

宿っていたものが蒼き珠に宿っていたミコトの呼びかける。


千年もの永き時を越え、蘇るのは・・・

魔導書と蒼き御珠が共鳴した。


永き時を越え、再会した二つの魂。

絆の元、時が来れば今一度会うと予言されていた・・・神と使徒が。


「「お師匠様?」」


蒼き珠に宿った古の大魔法使いミコトが訊いた。


「「その声は・・・理を司られた女神・・・様?」」


「「訊ねなくても、あなたなら分かるでしょ」」


否定は返って来ない。

呼んだのは間違いなく<女神かのじょ>なのだろう。


「「おひさしぶりよねぇ、双璧の魔法使い<蒼い乃姫(ミコト)>」」


蒼き珠へ宿ったミコトの魂へ、懐かし気に話して来る声の主。


「「お懐かしい・・・と、言えば宜しいのでしょうか?

  何だか、その・・・いきなり目覚めさせられた気が?」」


「「ちっちっち!それは言わない方が良いってものよ」」


砕けた口調で返して来る女神様。


「「それでは?なぜ呼ばれたのでしょうか?」」


「「そんなの決まってるじゃないの。私が憑代から出る為よ!」」


ミコトから師匠と呼ばれた声の主が・・・きっぱりと言い切った?


「「はいぃッ?<故事古今記>から?」」


「「いぇ~~~~~すぅ!」」


言い切られたミコトが、自分が記した書へと宿った師匠を思い出して。


「「あの、お師匠様?危機でも迫っているのでしょうか?

  私にはまだ、妖しい気配は感じられませんが?」」


「「怪しいなんて言っちゃいないでしょ。

  必要になったから出張る気になったのよねぇ」」


女神様が?

憑代から出られるには訳がありますよね?


ミコトの魂が、何故なのかと問いかける前に。


「「なにせ、千年もの間ずっとあなたの子孫を見守って来たんだから」」


「「はぁ?・・・お疲れ様です」」


蒼き珠のミコトが、どう答えて良いのか困ってしまうと。


「「由緒正しき<光家>の血統が、此処に来てるの。

  これを見過ごしては居られないのよ、分かるぅ~?」」


「「はぁ?仰られる意味が計りかねますけど?」」


女神様は、蒼い乃姫の血筋を受け継ぐ者を指しているようだが。


「「私を手に入れた娘は、子孫とは違いますが?」」


蒼乃宮から蒼き珠を賜った美雪を指されたと思い込んで。


「「魔法使いではありますが、私と真盛様との子孫ではありません」」


蒼き珠に宿り、眠り続けていたミコトの魂でも美雪の出生は分からなかった。

それでも、自分の子孫では無いことぐらいは分かっていた。

魔法の異能を感じれば、魔力の相違が感じられたから。


「「ふ・・・私を誰だと思っているのよミコト?」」


「「え?!理を司られる女神・・・あ!」」


一言を告げられて、全てが納得できた。


「「お師匠様は、この娘を待っておられたのですね?!」」


「「千年前から決まっていたのよ、いつの日にか逢えるって」」


魔導書に宿ると強引に決めた師匠を思い出し、


「「この日の為に・・・待ち続けて来たのよ」」


「「はぁ・・・弩偉い・・・悠長な話ですねぇ」」


わざわざ、千年もの永きに亘り待って来たのかと。


「「しゃぁ~らぁ~ぷぅッ!デコピンしてあげようか、ミコト?」」


「「ひぃッ?!お許しくださいませ~ッ」」


女神の一撃は、魂となった今でも恐怖を感じるみたいで。


「「それじゃぁ、一体どのような要件で待っておられたのですか?」」


言い繕いながら、真意を確かめる。


「「フッ!理の女神があなたの子孫に求めるのは。

  この私を世に出させる為に決まっているわ!」」


「「・・・もう。しっかり出られてるじゃありませんか?」」



 ピシリ



っと。光が蒼き珠へと飛ぶ。


「「いッ?!いぃだぁだぁだぁ~ッ!」」


ミコトの悲鳴が蒼き珠をも揺さぶって。


「「御無体にも程がぁ・・・痛たたたたッ」」


「「フン!吹っ飛ばなかっただけ感謝するのね。

  実体化してたら、宇宙の果てまで飛ばされてたわよ」」


・・・ミコトが恐怖したのも頷けますけど、あまりに理不尽に過ぎませんか?


「「話の腰を折らないでミコト。

  私の言ってるのは、二人の絆を取り持たねばならないって話なの」」


「「二人・・・ですか?」」


急に元の話へ戻す女神に、


「「二人とは?この娘ともう一人でしょうか?」」


魔導書の前に居るのは、美雪だけ。


「「仰られたもう一人とは?」」


「「今言ったでしょ。あなたの子孫だって」」


理の女神様がミコトへ知らせる。


「「この日を・・・ずっと待ち望んで来たのよ。

  私が理を司れるのなら・・・愛も繋げられる筈だから」」


人の理を司る者が、何を待ち望んで来たのかを。


「「あなたを手に出来た娘は、此処へ来る宿命だった。

  魔導書を触れることが出来る娘に、啓示を与えてあげなくてはならないのよ」」


「「お師匠自ら?この娘に何を知らしめるのです?

  それに、子孫と云うのは何処に居るのでしょうか?」」


ミコトの魂は、師匠の告げた相手を慮る。

書棚に囲まれた辺りには、誰の気配も感じられない。


「「あら?大分と魔力が落ちてるわねぇミコト。

  分からないの、あなたと同じ魔法力スタントを備えた人が居るのに?」」


「「え?!どこに?」」


気配を探って・・・


「「あ?!これは・・・あの方と同じ」」


懐かしくも、愛おしくも感じられる。


「「真盛まさもり・・・様?」」


愛したひとにも似通った異能、魔法力スタント


「「そこは・・・残念だけどね、ミコト。

  彼はあなたの光の宮様では無くて、子孫だってば」」


「「そ、そうですよね・・・しょぼん」」


お師匠に釘を刺されてしょげるミコト・・・だったが。


「「ま、待ってくださいお師匠様。

  今仰られたのは、私の子孫とこの娘を?」」


「「くっつけるの・・・文句ある訳?」」


ポカンとなるミコトの魂。

幾ら理を司る女神とは言えど。


「「くっつけるって?!いきなり愛しあえと仰られるのですか?」」


「「フフ~ン!千年前から決まっていたのよ!」」


断言されたミコトは増々呆然となって。


「「理不尽に過ぎませんか、お師匠ぉッ?」」


「「しゃぁ~らぁ~ぷぅっ!これは女神の啓示よ。

  いいえ、前世から繋がってる絆の行く末なのよ!」」


・・・あんぐり。


声を呑んで呆れかえるミコト。


「「この日の為に、何もかも諮って来たのよ。

  美雪お母さんがまことお父さんと出逢うきっかけを作る為に」」


「「え?!今・・・なんと?」」


不意に聞いた二人の名前。

その二人を両親と呼んだ女神に訊き直すと。


「「思い出したのよ、昔に聴いていた思い出話を。

  二人がどうして出逢ったのかを。どこでどうして逢えたのかを。

  それを思い出して宿る気になったのよ魔導書へと」」


「「なんですって?それじゃぁ、お師匠様はこの為だけに本へと?!

  全く以って・・・強烈無限な悠長さ・・・」」


呆れ果てたように、ミコトがため息交じりで応えると。



 メキッ!



また、光速な一撃が。


「「あいを以って、愛と成す。

  絆の結び付きをも司る女神なんだから私ってば。

  思い出したからには、育んで貰おうと思ってね。

  ・・・って?聴いてるの、ミコト?」


「「・・・・・・」」


聞く前に、魂が気絶してますが?


「「しょうがないわねぇ、何年経っても<私>を理解出来てないようじゃぁ」」


溜息とも取れない哀れみを含んだ声がミコトへ投げられて。


「「まぁ、ミコトが気絶してようが抵抗しようが関係ないけど。

  巫女の美雪に、お母さんへとなって貰わなきゃ・・・いずれは」」


自らを解放した蒼き珠の持ち主へと・・・


「「女神が惹き併せてあげる。

  蒼い乃姫と光の宮のように・・・

  運命の出逢いってのを与えてあげるんだから」」


光を伴って、姿を現す為に模り始めた。





光が。

蒼い光が身体を包み込んでいた。


「なにがどうなってるの?」


一瞬だけ、意識を奪われていたが。


「このッ!体の自由を返してよ」


金縛りは解けてはいない。それどころか声だって出されていない。


「え?!じゃぁ・・・この声は?」


全身が動かない今、声が聴こえている様に感じるのは?


「これって・・・異能波長テレパシー?!」


頭の中だけで会話が出来る。

一体誰が・・・どうやってなのかは分かり得ないけど。


 キィン・・・


何かが身体へと干渉して来る。

誰かが・・・侵入して来た。

美雪の意図しない誰かが頭の中へと。




「「私を手に取って・・・」」


不意に。


「「私が宿った魔導書を・・・」」


誰かの声が、直接訴えて来た。


「えっ?」


蒼い光が溢れる空間から、少女の声が聴こえてくる。

否、頭の中へ響いて来るのだ。


「誰?!あたしをどうしようと言うの?」


体の自由を奪い去られ、抵抗する事すら出来なくされている。

瞬き一つ思いのままにならないのに、魔導書を手に取れる訳も無い。


・・・と。


 フワッ


奇門遁甲の術が消え、隠されていた書棚の中から一冊の古びた本が。


「「開くの・・・私を」」


声と共に、本を綴じていた巻き紐が緩みだす。


「「触れて・・・感じて・・・私のことを」」


禁書を綴じていた戒めが解かれ、開きながら美雪の元まで降りて来る。

さながら、慕う母の元へ娘が駆け込むかのように。


「え?え??えっと?」


それまで身動き一つ出来ずにいた美雪が、開きながら降りて来た書へ手を伸ばす。


 パラ・・・パラパラ・・・パサリ


勝手に開いていく書。

何故なのかは分からないが、魔導書は美雪の手に載る寸前で空中に浮かんだまま。


「「紐解くの・・・あなたの未来を。

  運命の名の元に・・・あなた達の未来あすを」」


手の先で魔導書に記されていた魔法の文字が浮き上がり。


「「私はこの日を待ち望んで来たの。

  あなたと逢えると信じていたのよ・・・美雪・・・お母さん」」


金色の絵文字が模られ、次第に読めるようになっていく。



<私の名は>


「この書に宿るのは?」


<人の理を司る者・・・>


を?司れる者?」


<女神を冠された人であった者>


「女神となった人?」


美春みはる・・・ミ ハ ル>


「ミハル?理の女神・・・ミハル?」


美雪が女神の名を呼んだ時。

蒼き光の中から人らしき姿が現れた。


「そう・・・あなたとは強い絆で結ばれた・・・女神」


蒼い光の影響なのか、女神の髪も蒼く染められている。

いいや、蒼い髪色が意味するのは。


「蒼い髪は、強力な魔法力を放てる証。

 あたしと同じ・・・魔力の備わっている証明・・・」


咄嗟に美雪が悟った。

目の前に現れた女神ミハルは、自分と同じ異能スタントを持っているのだと。


コクンと頷いた女神の左髪には、紅いリボンが結わえられている。

そのリボンも、聖なる者へと贈られる破邪の念が籠められたモノだと分かった。


「察しが良いのは・・・この頃からだったのね、美雪・・・さん」


名を呼ぶ時、一瞬だけ躊躇ったように区切った女神。


「それなら・・・私があなたを待っていた理由も分かるかな?」


挿絵(By みてみん)


女神が胸元を飾る、黄金色の太陽神を表すブローチに手を添えて。


「ここであなたが来るのを待っていた理由。

 この日が来るのを、あなたから聴いていたから待っていたんだよ」


口元を綻ばせて笑いかけて来た。

親し気に・・・懐かし気に。


でも、美雪には分かる筈もない。


「あの・・・以前にお逢いしていたのでしょうか?

 記憶には無いのですけど・・・見守っていてくだされたのでしょうか?」


女神だと言うからには、人を護る存在だとの認識しかない。

誰かに向けてではなく、記憶にない程の独り言でも呟いていたのだろうかと思ったのだが。


「いいえ・・・そうね、まだずっと先の話だったわ。

 この世界の流れの中で、あなたから聞かされる日は」


「この世界?他にも世界があるとでも仰られるのですか?」


意味深な言葉の意味を探る美雪。


「それに、あたしが女神様へ何を聞かせるというのですか?」


こうして現れた訳というモノを。

なぜ、自分に対して好意を持っているのかと。



 フッ・・・


女神の表情は長い前髪に隠れて読み取れなかったが、溜息が漏れて。


「あ~あ。正体を隠すのって慣れてないから。

 千年経っても、この躰に流れる系譜には逆らえないからねぇ」


独りで愚痴て、独りで納得して。


「これがタイムパラドックスって奴なのかな?

 娘時代のお母さんとやっとの想いで逢えたというのに。

 私ってば、何やってるんだろ~」


モジモジ胸のブローチを弄り、女神が勝手に落ち込んでいる。


「あ、あのぉ?先程からあたしをお母さんって呼ばれてるんですけど。

 人間であるあたしが、女神様を生むとでも仰るのですか?」


助け船のつもりで話しかける美雪へ。


「さっすがぁ~!察しの良い。

 そうなのよ、そうなるのよ、いつの日にかは!」


パッと花開くかのように女神が応える。


「はぁ?!お戯れが過ぎますよ女神様は。

 人が神を生める訳がないじゃありませんか」


「むぅ?こうして生んでいただいたんですけど?」


・・・

・・・・

・・・・・


しばしの沈黙。


「意味不明ぃ~ッ!」


素っ頓狂な叫びをあげる美雪へ。


「いや・・・その。真面目な話ですけど」


真顔の女神が手を振りながら、


「だってほら。この通り女神やってるもん」


自分と美雪を交互に指して言い切った。


「あの、あの?女神様の出生って?

 あたしが産んだと仰られるのですか?」


「さっきから言ってるよ?」


・・・

・・・・

・・・・・・・


またもや、沈黙が二人を支配する。


「だ、だ、誰と誰の子が、女神になると?」


トチ狂った美雪が、目を廻しながら訊き質す。


「あなたと・・・あそこに居る男の人との間に産まれた私が女神になってるの!」


「ほえぇ?!」


ひらひらと手を振っていた女神が、美雪の背後を指して。


「ほら・・・あの人。

 あれが美雪・・・お母さんの良い人」


「ほえぇえええぇッ?」


振り返ると、閲覧席が臨める。

その一席に座っている長髪の男子が見えた。


「あのひと

 島田しまだまこと・・・

 あなたを養って来た<光>に纏わる縁者。

 光の宮の血を受け継ぐ、格別なる魔法力を持つ青年よ」


「ほえぇえええええぇッ?」


善い人と教えられた上に、光家の流れを汲む人だと言われて。

まじまじと見詰め・・・そして。


挿絵(By みてみん)


 ポッ


頬に赤味が差してしまう。


「あら・・・初心なんだねぇ~」


「いやいや、そうじゃなくてですね。

 あのお方が光家に纏わる方だと仰るので・・・」


誤魔化すつもりではなかったが、見詰めた瞬間に心がときめいてしまった。


「誤魔化さなくても良いんだよ。

 若い頃のお父さんって、あんなに凛々しく見えるなんて。

 マモルの顔に瓜二つ・・・いんやぁ、マモルがお父さんに似てるのかな」


女神と一緒になって書棚の陰からまことを眺め続ける美雪へ、何やら訳の分からない事を溢す女神。


「凛々しい・・・なんて。

 言葉には表せない位・・・素敵な方」


でも、女神の呟きが聞こえていないのか、美雪は誠を眺めたまま。


「あたしなんかには勿体ない位の美男子・・・でしゅよね」


言葉の呂律がおかしくなるぐらい、美雪の心に刻まれたようで。


「あんなに一心不乱に勉学なされているなんて。

 教養のないあたしなんかでは、釣り合わないでしょう?」


ほんのり顔を赤くして、女神が勧めた縁組に躊躇った。


「ふはははは!

 理の女神の眼鏡に狂いはないわ!

 あなたはあの人と結ばれる宿命なの。

 そして強い絆の元、女の子を生む事にもなるのよ!」


そこを、女神が諫めて。


「数々の難儀を越え、運命に翻弄されても。

 あなた達は結ばれ、やがて愛の結晶を生む事になるの。

 誠お父さんと美雪お母さんの馴れ初めを紡げた今なら、はっきりと言えるわ!」


決まった事のように啓示を与えてきた。


「あたしが・・・あの方の子を産む・・・産む?

 産むってことは、つまり・・・」


混乱した頭の中で、見詰める彼と結ばれる自分が想像されて。



 ぼわんッ!



頭から水蒸気が立ち上る程、身体中が赤熱してしまった。


「うにゃぁ~~~~~?!」


ぐるぐる眼を廻し、しどろもどろに成り果てて。


「そんな・・・いけませんッ!

 まだ成人にもなっていないのに・・・あんなことやこんなことするなんて?!」


両手で顔を覆い、モジモジと身を悶える。


「・・・飛躍し過ぎでしょ?

 子を授かるのは、結婚してからでも良いんじゃないの?」


で、女神からの一言が追い打ちとなった。


「けッ?!結婚んんんん~~~~ッ?!」


飛び上がるように叫んだ美雪が・・・


「うひゃぁ~?!きゅぅ~」


頭から特大の湯気を上げて・・・失神してしまった。


「ありゃま。

 こんなに耐性が無かったんだねぇ・・・男の人に」


女神が立ったまま気絶してしまった美雪を眺めて。


「こりゃぁ~、結ばれるまでに時間がかかりそうねぇ」


顎へ指を添えて笑ってから。


「でも、まんざらでもなさそうだったから。

 二人はこの後、必ず惹かれ合う。

 絆を取り持った女神に因って、出会いは愛へと昇華する。

 だって・・・お母さんとお父さんの愛が実を結ばなきゃ。

 理の女神になった私が、此処に居られる訳がないのだから・・・」 


ついっと、あいの魔法を放っていたブローチを押さえて。


「バレなきゃ分からないでしょ。

 二人にある隙間をくっつけたなんて」


ちょこっと舌を出して、悪戯っぽく微笑んだ。



「さてっと。

 これにて第1の目的は成就出来た。

 次に現界するのは・・・あそこでよね?」


気絶してしまった美雪を解放し、もう一度魔導書の中へと戻る時。


「どうしてるのかなぁ・・・御主人様は。

 もう直ぐ、産声を上げる筈だけど?」


懐かしそうに彼方を観てから感慨に耽り。


「お逢いできるのは、まだ先の話だよね。

 その前に、護らなきゃいけないんだよね。

 闇に囚われそうなる、あの国へと連れ出して貰わないと」


美雪を顧みて、幾分か哀し気に瞼を閉じる。


「そうなるように・・・宮にも釘を刺しておかなきゃ。

 魔導書をお母さんへ預ける様に仕向けないとね」


薄っすらと瞼を開け、蒼い瞳で美雪を見詰めて。


「お母さんには耐えて貰わなきゃいけない。

 どんなに絶望が押し寄せたって、苦難が待っていようとも。

 神託の御子として、諦めないで欲しいんだよ」


魔導書の中へと籠る前に、そっと手を指し伸ばして。


「お母さんは絶対に、この理の女神になったミハルが護ってみせるから。

 あの国まで連れて行って。この本を持って行ってね。

 ミコトが残した魔導書と共に、私も闇の中までも付いて行くから」


必ず護り抜くと誓う。

伸ばした手の平から、蒼い聖なる光が珠へと届き。


「蒼い乃姫・・・ミコトに頼みたいの。

 あなたの愛した姫も、彼の国で目覚める。

 その時、美雪の産んだ子等を守護して欲しい。

 陰の力となって、同胞の子を護って貰いたいの。

 そして・・・任が解かれる時に。

 あなた達は本当の天国へと召されるでしょう」


女神の願いが珠へと刻まれて。


「きっとその日は近い。

 私がお母さんを護っている間、あなたが代わりに導いて欲しいの。

 人である証を、人の願いを、そして人の温もりを。

 人だった私へ、諦めない強さを・・・与えてあげて」


魔導書へと消える瞬間に託された。

女神の使徒でもあったミコトへ、神の啓示として。

護れと、同じ血の通った同胞の子達を。



 ドクン



蒼き炎が揺らめく。


蒼き宝珠の中で、息衝くかのように。

始まりを迎えた回天を告げる様に。




全てはこれより後に。

全てが此処より始まる。


美雪が産まれたのは、神が求めたからなのか。

運命の御子達が生み出されたのは、創造主の求めに因るのか。


時代は今、各国が勢力圏を伸ばそうと目論む暗黒へと向かい始めていた。

力によって・・・武力に拠り。

人の命をも蝕む・・・戦争という悪魔達を目覚めさせんとしていた・・・

理を司る者。

人の愛を奉じる女神。


美雪が蒼き珠を手に入れ、此処に来るのが分かっていたと言った。

美雪と青年が恋に落ちるのが分かっていると言う。

女神は未来をも知っているのか?

ならば、世界の行く末も?


次回 第1部 零の慟哭 本編最終話!

   新世界へ ACT 16 新たな世界と新しい未来

君達の未来あすは、光に満ち溢れている・・・だろうか?

魔砲少女が歩む世界は、平和を享受できるのだろうか?

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