新世界へ ACT 9 拒絶の代償
帝の妹である蒼乃。
窮地を救った巫女<ミユキ>・・・
二人の邂逅が、運命の歯車を廻し始めていた。
時は紡がれる。
運命という名の<絆>が産まれ。
そして・・・宿命への歯車が動き出す。
地上を監視する紅い眼が空から見下ろしていた。
流れ雲の中で機械の眼を動かしながら・・・
「「地上に配置していた探索機械からの通信が途絶えたようだな」」
モニターを見詰める赤紫の瞳。
「「最期の報告によれば、月よりのシ者らしきモノと接触したみたいだが」」
漆黒に染まる空間で、女神の守護者の声が響く。
東洋の島国上空を、雲間に隠れて一機の飛行機械が飛んでいた。
「「人類に残された時間は幾ばくも無い。
次なる審判の刻限は20年程後に迫ったのだ」」
モニターに映し出されるのは、近代化を急ぐ東洋の小国。
緑多き街並み、蒼く澄んだ海辺・・・一見して平和を享受しているかに見えるのだが。
平穏そうな一面の裏側で、何本もの煙突から吐き出される濁煙。
農業国に似つかわしくない工場地帯から吐き出され続ける煙が、宙を濁している。
近代化を急ぐあまり、周辺の環境を破壊し続けているのだ。
「「フ・・・人類とは限りなく愚かな者。
自らの生存域を侵し、自ら滅びの道を辿る。
何度も繰り返される粛清にも気付かず・・・」」
殲滅兵器の存在は、造り変えられた人類に知らされていなかった。
既に3度も破滅を迎えたのに、同じ轍を踏もうとしている。
審判を司る女神は、必ずや破滅を与えるだろう。
失敗を繰り返すだけの人類を、情け容赦なく断罪するであろうと。
「「だが。気がかりなのは月よりのシ者。
二度目の来訪の意図を探らねばならない。
ケラウノスに干渉するだけなのか?
若しくは、私達その物を排除しようと目論んだのか?」」
前の使者は虜に出来た。
今回のシ者も、無理強いすれば捕らえることは出来よう。
「「いいや。
人類の前に姿を見せるのは早計に過ぎる。
審判に作用してしまう虞もある。・・・それに・・・」」
漆黒の空間で、赤紫の瞳が棺を見詰めた。
「「あの子にも。
月の民達が何を狙っているのかを、知らしめてやらないといけない」」
ニヤリと細く笑み、棺の中に居る子へと呟く。
「「もう、愛は途切れたのだと。
絆などは霧散したのだと・・・分からせなければいけない」
棺で永き眠りに就く女神リィンと、月の裏側に居る<絆の御子>達を引き裂く言葉。
「「この私こそが、女神の絶対守護者だと分からせてやる為に。
月のシ者を逆に利用してやるだけの話よ」」
瞳に狂気の色を滲ませ、
「「次の審判迄は泳がせておいてあげる。
その日が来たのなら、はっきりとするでしょう。
誰にもリィンは手が出せないと、オリジナルな私が来たとしても。
審判の女神リィンタルトは、永久に私だけのモノだってね!
あーっはっはっはっ!」」
永き年月を経た守護者は、己の差誤をも正当化する。
女神の守護者であるべき者は、いつの間にか全てを支配する王へと変わった。
その姿は、嘗ての聖なる者では無く成り果てていた。
闇に溶け込むかのように、薄汚れ果てた。
そう。
人に仇名す者。人を滅ぼす者。
漆黒の座に君臨する・・・魔王のように堕ちていたのだ。
二人の少女が邂逅してより時が経った。
東の島国、日の本皇国。
その中心地である都、京。
梅雨前の良く晴れた晩春。
晴れ間に一塊の黒雲が流れて行った。
晴天なのに不可思議な雲は千切れもせずに塊のまま、観えなくなるまで漂って行った。
「天は人を監視し続けている・・・か」
胸元に蒼い石のネックレスを着けた小皇女が呟く。
「皇家に伝わる戒めの一文だけど・・・」
窓辺に立つ小皇女が、空に流れる雲を見上げていた。
「いつの日にか、本当に訪れてしまう気がするわ。最終戦争の劫火が」
宮廷の一室で古書を閲覧していたのは、あの月夜以来外遊を控えるようになった蒼乃だった。
美雪と名乗った巫女と邂逅し、自分の持つ蒼き珠の御子だと確信した蒼乃。
受け継ぐべき者との認識から、次なる方策を練っていたのだが。
「本来の持ち主へと譲渡するべきなのですよね」
胸の石へと語り掛け、
「ねぇ、御兄上様も。
そうすべきだと思われますよね?」
傍らに伏せる、現皇の兄へと問いかけた。
「蒼乃。朕の身体に蔓延る病魔を覆滅させんとする気なのか?」
「いけませぬか、御兄上様?」
このまま病状が進行すれば、帝の命が危ぶまれた。
専従医師達は、病状を食い止めるだけが精一杯の治療を嘆き。
病魔覆滅の祈祷も無駄に終わった。
「朕は天寿だと思う。改善は無理からぬと心得ている」
「そのように弱気になられては・・・」
兄を想う蒼乃は、既に最期の手段に訴えていた。
皇家の宝である蒼き珠を手放す事となっても、現皇である兄を救おうと。
「私が病魔を覆滅させて御覧に入れます。
必ずや、御兄上様をお救いしてみせます!」
だから、それまで諦めないで・・・と。
蒼乃は消え入りそうな兄の魂を、繋ぎ止めようと必死だった。
「あの娘が来る日まで。
ミユキが召喚に答えてくれるなら、その時こそ」
胸のネックレスを握り締め、兄の命を取り留めると誓う。
「その時こそが、蒼き珠の本当の持ち主が。
私ではなく、誰なのかが分かる時なのです」
蒼乃自身では救えなかった兄を、ミユキなら救えるだろう。
あの魔法力ならば、病魔を覆滅も出来るだろうと思っている。
だから・・・
「光の美雪と名乗った巫女を、探し出しました。
国令召喚に応じて罷り越すでしょうから」
無理でも来て貰う。
嫌でも国の命令には逆らえない筈だから。
招集令状を国令として発行させたのだと教えた。
「蒼乃・・・娘の親に対して何と申し訳する気なのだ?」
兄は妹の暴挙を諫めようとした。だが・・・
「強権の乱用は国策の乱れとなる・・・
御兄上様の一番の禁忌に触れてしまいました。
かくなる上は、蒼乃の身を宮内から放擲してくださいませ。
ですが、御兄上様の全快を観て後にと、願い建てる所存です」
覚悟はとうに出来ていると答え。
そうまでしても、兄の身体を気遣っているのだと言った。
「美雪の親族には、私から詫びを告げに参ります。
ですけど、それは御兄上様が快復された後の話です」
病床の兄へ、涙を顕わにした蒼乃が覆い被さって泣く。
「蒼乃・・・そなたという妹は。
朕には勿体ない位の器量良しだ」
その蒼乃の髪を撫で、現皇は微笑んでいた。
都から遠く離れた山里に、古びた神社があった。
鳥居に掲げられた明札には<光神居>と記されている。
つまり、この神社の名は・・・
「良いかのぅ美雪や。
頑なに拒み続けていては、刑僕に連行されてしまうのじゃぞ」
古びた社の、古ぼけた社務所で。
年嵩の御婆と、巫女姿の娘が向き合っていた。
「いいえ、御婆様。
どのようなことがあろうと、あたしは離れるつもりはありません」
黒髪を紅いリボンで結い上げた幼さの残る娘は、老婆の勧めを断り続けているようだ。
「誰が何と言おうとも。
身寄りのないあたしを、育んで下された津奈御婆様の側からは離れません」
断固として拒む美雪に、老婆もため息を吐くだけだったが。
「招集を拒み続けるのは、この光神社の名を穢す事にもなるんじゃぞ。
私の身体を案じてのことならば、応じてくれねば申し訳の無い話じゃ」
国の命令を無碍にするのは、御上に楯突くのにも等しいのだと諭す。
「いいえ御婆様。
喩え帝の勅命を受けたとしても、あたしは此処を動きません」
言葉を尽して諫める老婆に、頑なに拒む美雪。
「もし、ここを離れたら。
御婆様の身体を誰が診てくれるというのですか。
津名御婆様を同道して良いというのであれば、考えることにしますが」
招集に応じることは、一考もしていないと言い。
「強制連行する気なら、魔砲を以ってしても断ります」
「馬鹿な娘じゃのぅ、美雪は」
棘のある言葉に、老婆も呆れてしまい。
「美雪の想いは良く分かった」
それ以上勧めはしなくなった。
古びた社の光神社に住まう美雪は、あの月夜から年月を重ねて蒼乃との約束を忘れていた。
時より頼まれる病魔撲滅や退魔の依頼を熟しながら、細々と生計をたてて過ごした。
美雪の器量を知る者は挙って誘いを入れるのだが、誰にも靡く事も無く。
心身を錬磨し、邪気を祓うという剣の道を究めんとした。
それと云うのも、彼女の生い立ちに全てが秘められてもいた。
まだ老婆が健康を維持できていた頃の話だ。
身寄りが老婆だけの美雪が訊いた。
どうして自分には父や母が居ないのかと。
何故、母の温もりを思い出せないのかと。
何度かの問いかけに、老婆が重い口を開いた。
「美雪、心して聞きなさい。
そなたの父母はこの世には居らぬ。
死別でもなく、孤児でもないのじゃ。
何故なら、赤子であったそなたが現れしは、神社の中。
この光の宮内に安置された御鏡の前じゃった」
もしも捨て子だと言うのなら、神殿の最奥にある鏡の前に置く訳も無い。
もしかして何かの理由で置き去りにした子ならば、誰かからの口添えの一つでもある筈だった。
誰にも知られず。
なん人にも謂れなき子。
神の前から現れしは、神子しか居ないのだと。
「雪の積もった朝の事じゃった。
眠るそなたを見つけた私が、御神の前で授かったのじゃ。
神子のそなたに与える名を。
魁の春に相応しい、美しき雪の中で」
授かったのは神子の娘。
新しい春の日に、雪が積もる朝日の中で。
故に、娘の名は<美雪>
美しく往くと、麗しき美を兼ね。
与えられたのは真白き正しさ、純白の心を示す雪。
「そなたは神の申し子として生きねばならない。
清く、唯真っ直ぐに。産まれし意味を追求せねばならない」
神主の老婆から聞かされてきたのは、自分は宿命を背負って産まれたのだということ。
人として生を受けた・・・御使いだと。
そう聞かされてきたからこそ、魔法を使えるのだと思っていた。
神子の能力として受け入れて来たのだ。
普通の人間からは異能者扱いを受けようとも。
バケモノを観る様な、蔑む瞳に晒されても堪えられた。
それと云うのも、津奈が居たからこそ。
愛しんでくれる老婆が居ればこそ、耐え抜けた。
だから美雪は、誰が何と言おうが老婆から離れようとしない。
本当の母を慕う様に、傍から離れようとはしないのだ。
召喚の命令書が何通届こうが。
「応じんとは、国賊か?
畏れ多くも御上からの達しなんじゃぞ?」
最初の頃は郵便として配達されて来たが、一向に応じる気配の無い美雪に。
「なんじゃったら、今直ぐに連行しても良いんじゃぞ」
警察から出向いて来た警邏が強制連行を匂わせて来る。
その度に美雪は拒否し続けるだけ。
「孫には良く言い聞かせますので。
今暫くのお待ちを。この老体に免じて」
津奈婆は警邏達へ言って聞かせ、美雪を庇い続けた。
・・・しかし、最早限界に近かった。
初めに召喚状が届いた日から2か月が過ぎた頃。
美雪を想う心労からか、老いた身体に陰りが見え始めていた。
どんどん老婆の容態が悪化の一途を辿り、床から起き上がれなくなったのだが。
「今日は気分も良いからのぅ。
村に降りてこれらのモノを買って来ておくれ美雪」
昨日まで伏せていた津奈婆が、起き上がって頼んで来る。
「うん、本当に良いのね御婆様?」
煩い位に蝉が鳴く、夏の朝の事だった。
普段は着ない白装束を纏った御婆の姿を見て、美雪が訊き直して来る。
「本当に・・・身体の方は大丈夫なんだよね?」
心配そうに訊く美雪に対し、津奈婆はにべにもなく。
「今日は、特別な日じゃろうが。
8月の中日。15の日は年に一度の祖先参りの日じゃろぅ」
神職であろうと、祖先を敬うのは当たり前の話。
年に一度の祖先参りの日だからと美雪へと応えて。
「我が光の神社は、戦国時代に亡くなった光家を祖先に持つ。
光の御方から受け継ぐ流れを汲む、由緒正しき社なのじゃぞ。
年に一度の祖先参りは欠かしてはならないのじゃ」
「はいはい、分かりましたから。
あたしが戻るまで勝手に墓所へは行かないでくださいね」
気丈に美雪へ言ってのける津奈婆へ、
「じゃぁ、昼頃までには戻りますから」
村まで買い出しに行くのを了承するのだった。
2か月もの間、社務所に詰めっきりだった美雪は、早速風呂敷を手にして出かけることにした。
麓の村までだが、津奈婆の勧めに心も軽く歩んで行った。
その後ろ姿を、津奈婆はずっと見詰めていたが。
「御神よ。
どうか美雪を御守りあれ。
神子に幸を賜りますように・・・」
別れともとれる一言を呟くと、美雪が止めたのも聞かず。
「我が祖先の前で・・・」
墓所へと、老いた足取りで向おうとする。
「これを。あの子へ」
白装束に、懐刀を忍ばせ。
「渡しておかねばならん」
昨晩したためておいた書を携え。
ふらふらとした足取りで、最期の場所へと歩んで行った。
村まで来た美雪は、津奈婆が買えと記した物に戸惑っていた。
「どうして旅行なんか行かないのに?
歯ブラシや下着なんかを?」
しかもそれは美雪の物として買い求めよと書かれてある。
「もぅ、御婆様ったら!」
食用品ならいざ知らず、今直ぐに必要とも思えない物まで買えと記されてあるのだ。
「そんなに裕福でもないってのに!」
質素が旨の神職だから、美雪は普通の人とは違う感慨を持っていた。
暮らしていければそれだけで良いと、年頃の娘とはかけ離れた金銭感覚を身につけてもいたようだ。
「今日が先祖参りの日だからって、普段は着もしない装束を着るんだから」
社を後にする時目にした津奈婆の顏。
いつもなら目尻を下げて微笑み、送り出してくれるのだが。
「なんでだろう。
どうして涙ぐんでいたのかな?」
まるで・・・それが最期だと言わんばかりに。
「・・・え?」
言いつけられた品を買いそろえた頃、やっと普通ではない事に気が付いた。
「白装束?!
去年は確か・・・神主の装束だったのに?」
急に悪寒が背を奔った。
津奈婆の身に、何かが起きたのを知らせる様に。
「まさか・・・御婆様?!」
悪い予感が美雪を走らせる。
未知の感覚に翻弄されながら・・・
そして。
辿り着いた社務所に津奈婆の姿は無かった。
社務殿にも・・・奥の宮にも・・・境内にも。
最期に美雪が辿り着いたのは。
「津奈御婆様?」
白い装束が祖先の墓所で・・・
「お、御婆様ッ?」
叫ぶ美雪の声にも、紅く染まった装束は・・・動かなかった。
墓碑の前に居たのは津奈婆だったモノ。
既に魂切れ果てた・・・亡骸だった。
「どうして?!なぜぇッ?」
首を掻き斬って果てた津奈婆に泣き叫ぶ。
「どうして・・・あたしを置いて逝ってしまったの?」
着崩れていない白い装束。
大人達が観たのなら、死に装束だと見抜けたかもしれない。
でも、年端のいかない娘に過ぎない美雪には、見抜ける筈も無かった。
死んだ後も見苦しくない様に足を縛り。
女性らしく死を享受する意味で、薄化粧を施した顔には・・・
「どうして・・・微笑めるの?」
微かに、笑みを浮かべていた。
死に顔を見詰めている内に気が付いた。
津奈婆の前に、自分に宛てた手紙が置かれてあるのに。
「遺書?」
世間知らずな美雪だろうと、死に逝く人が遺書をしたためる位は知っていた。
「あたしに?」
津奈婆の顔を観てから、恐る恐るに手に取って。
もう書かれる事も無い津奈婆の筆体だと認めてから、一気に読み始める。
そこに記されてあったのは・・・
「即刻召喚に応じる事。
御上に楯突くべからず。
一身を以って奉公すべし・・・」
どうしても応じなかった召喚を受けよと記されてある。
「私を案じてくれたことに感謝する。
私が足枷になったのを謝罪する。
美雪には罪科が無いのだと断じておく・・・」
我が身を想う美雪への謝意。
そして死を迎えても尚、美雪を愛しんでの言葉。
「最期を迎えるにあたり、一言残す。
美雪は神子なりしが、我が娘なり。
美雪が宿命に翻弄されない事を望む。
我が娘の幸せを切に望む。
我が娘美雪は、人の為に尽し。
我が神子は、人の理を享受できると信じる。
故に私は。
娘美雪との絆を永遠の物とする為、此処に自刃するに及ぶ」
どこまでも美雪を愛おしみ、いつまでも我が子と呼ぶのだと。
幸せを願い、愛を謳い。
そして、自ら命を絶つのには訳があると記した。
「もし、強制連行されたら。
最期さえも知りようがなかったのかもしれない。
この社で、誰にも看取られず死を迎えられたかも・・・」
もし、美雪が強制連行されたのなら津奈婆は。
居なくなった美雪を焦がれ乍ら死を迎えることとなったかもしれない。
ひっそりと・・・悲しく。
還らぬ娘を待ち続け、自らの不運を嘆きながら。
だが、今死を迎えた津奈婆は。
それを潔しとは想わなかったのだろう。
否、愛するが故に身を挺したのだろう。
それが古来から引き継がれ続けた上意に背けぬ、民の心情だったのかもしれない。
いいや、津奈婆だったからこそ。
美雪を想い続ける<母>だからこその決断だったのだろう。
「津奈御婆様・・・」
美雪は残された遺書を胸に抱しめて・・・泣いた。
泣いて、泣いて・・・泣き疲れて。
一晩を墓所の中で泣き過ごした。
それから何日か後の事。
汽車に乗り、都へと向かう美雪の姿があった。
羽織袴の美雪の姿。
俯き加減の顔には、何かを秘めているように感じる。
手荷物一つで、召喚に応えて旅路に着いたようだが。
「津奈御婆様・・・観ていてね。
あたしは・・・必ず・・・討ってみせるから」
羽織の腰には懐刀が忍ばれていた。
「御婆様が自刃されたこの刃で・・・討ってみせるわ。
帝だろうが宮だろうが・・・あたしと御婆様を引き裂いた者を」
復讐に染まった美雪の顔には、陰りが見えた。
あの澄んでいた瞳には、澱みが宿ってしまっていた・・・
封建時代の因習か。
時代はまだ、人の命を軽んじ続けていたのか。
だが、そこには確かに人の心が通えていた。
慈しみと愛。それが故の自刃だったのだろう。
復讐へ駆り立てられる心。
少女は愛すべき人を奪われた憎しみで・・・堕ちてしまうのか?
復讐のために都へと向かう美雪。だが、彼女の前に現れる者は?!
次回 新世界へ ACT 10 汽車は都へ
君は誤った想いを断ち切ることが出来るか?!




