ACT 8 魔女の終焉
理不尽が舞来る!
魔女にとっての理不尽が。
その経緯をご覧ください?
赤黒き空間に光が舞う。
紅い閃光が空気をも焼き貫くかに思えた。
もしその紅い輝に貫かれでもすれば・・・
「レーザービームね」
女神は避けつつ光の正体を見切っていた。
ビームを避けれる程、女神は高機動を執っているのか?
ビュシュッ!
紅い光線が女神の衣装に突き当たる。
女神とは言えど、ビーム兵器の直撃を受けたのなら・・・
ガッ!
紅い輝が命中した・・・
キュィンッ!
命中したのだが。
弾け飛んでしまう?!
「伊達に3千年女神と、名乗っちゃいないんだってば!」
理の女神の衣装は、レーザーをも意に介さない程の強力さを誇るのか?
否、命中したかに思えたレーザーだったのだが。
「こちらには<妖精>があるって事よ」
腰にぶら下げられている短冊状の布らしき物が、コの字に折れ曲がっていた。
女神の腰には6枚の<妖精>がぶら下げられている。
それがレーザーから女神を護ったとでも言うのだろうか。
「いきなりの攻撃だって。
妖精さん達から観れば、おままごとにしか映らないわよ」
紅い閃光を発した魔女の攻撃。
光線の正体を見切っている女神にも驚かされるが、それを防いだ妖精には驚愕を覚える。
「ぬかしたな女神。
なれば、これを受けてみろ」
魔女の意識が増大し、
「防御など不可能だと思い知れ!」
巨大なる円環から、全方位に向けてレーザーを放つ。
「不可能なんて・・・ある訳がない!」
しかし、女神は正面から受けて立つ。
「妖精解放!フォトンメーザー砲発射!」
女神の声で、腰に下げられていた布が解き放たれた。
碧い布がコの字に折れ、邪操界を舞った。
それ自体に意識があるかのように、各々が連携しながらも敵に向けて対峙したのだ。
そして、コの字に降り曲がった内側に蒼きスパークが・・・
「シュゥートォッ!」
女神の命令一過。
グワアアァンッ!
各々のファンネルから、強力な光の奔流が噴き出した!
飛び来る筈だった紅い閃光を飲み込み、逆に蒼く邪操界を染め上げて。
ド! ドドドドッ!
レーザーを無効化し、蒼い光の渦が魔女を打ちのめした。
「ぐわぁっ?!」
蒼い波動が魔女である円環をズタズタに切り裂く。
「こんな・・・馬鹿な?!
邪操界で女神が・・・こんな異能を出せるとは?」
切り裂かれた円環を修復しながら、魔女が驚愕する。
「言ったでしょ。
私は光も闇をも手に出来た者だって・・・ね」
攻撃の手を休めて女神が応える。
「邪なる者には容赦はしないって・・・ね」
「そんなことは聴いてはいない!」
容赦も何も。女神の攻撃力が圧倒的にも思えてしまう。
自らのテリトリィーに誘い込んだというのに、敵である女神の方が喜んだ。
その訳を漸くにして理解した魔女。
「わ、我が滅びても代わりは居るのだ・・・」
自身が女神に敗れたとしても、悪意の者は他にも居るからと。
「この女神と刺違えて・・・滅び去るのみ」
圧倒的な火力差を認識し、もはや勝負にもならないと悟ったか。
「多寡が辺境の女神如きに・・・我等の目的を阻まれてなるものか」
宇宙規模の悪意の塊である魔女にとって、地球の一女神に過ぎない者に負けてしまうのは不本意だと?
「かくなる上は・・・我を以って女神と刺違えるだけだ」
目的の為には手段を択ばない。
魔女は・・・
「うははははッ!これを受けてたとしても無事でいられるか、女神よ!」
巨大なる円環を模る自身を以って、女神を打ち倒す。
自らの邪操界自体を、攻撃力へと変換しようとし始めるのだった。
「馬鹿は魔女の方。
この期に及んで悪足掻きなどするとは・・・」
相手の出方を事前に見切っている女神。
しかし、如何に女神とは言えども自爆を目論む魔女を駆逐するには攻撃力が足りなさそうに思えるが。
「こっちが得物を持っていないなんて、思っちゃいないでしょうね?」
女神の両手には何も見当たらないが?
見えるのは右手に填めた蒼いブレスレッドだけだが?
「私に魔砲があるのを知らないとでも言うんじゃないでしょうね!」
魔砲?!
それは魔法の類?
「魔?魔法だと?」
魔女もどんな威力を誇る物なのか分からない。
「フ・・・残念。どんな物かは受けたら分かるわよ」
女神は随分と余裕があるみたいだけど。
「私には3千年女神としての鉾があるんだから!」
右手を突き出して魔女に晒す。
開かれた手の中に、金色の光が現れて・・・
「出でよ!理を表す鉾。
私の魔砲・・・蒼い波動の・・・超強力殲滅砲!」
女神の求めに金色の光が集う。
その手に容が現れ、邪操界へと光を与える。
シュゥウウウウウウ~ッ
光が消えた後。
女神の手に在るのは・・・
「なんだと?!それはまさか?」
魔女が恐れ戦く。
「銀河連邦の・・・女神級にしか託されない?」
宇宙の悪意であるイシュタルは見知っていた。
理の女神が呼び出した武器を。
「そう・・・超空間破壊兵器。
邪操界ごとあなたを吹き飛ばす事だって可能よ・・・ね」
女神が知らせた。
それを放てるのなら、魔女も一巻の終わりだと。
「馬鹿な?どうして辺境の女神如きが?」
魔女が驚くのも無理はない。
この世界では銀河連邦などが関与していない筈だったのだから。
それにそもそもが、銀河連邦の存在自体を辺境の惑星にいる者が知る筈が無い。
・・・魔女がそう思うのは無理もないことだった。
「持ってるのかって?
この世界では存在しない筈だからって、多寡を括ってるでしょ?」
蒼い髪を靡かせ始めた女神が応える。
「言ってるでしょう。
私は<3千年女神>だって。
この世界ではない一つの未来から現れ出たのよ。
並行世界でなら無理でも、私の居た世界では持てる事になっただけ」
「へ、並行世界・・・だと?」
女神の手にしている戦術兵器に灯が燈る。
キュィイイイィンッ!
向けられた砲口に光が現れ、それが次第に中央部分へと集まり始めた。
「そ。此処とは違う世界。
時空を越えた、もう一つの地球。
辺境である地球へ来訪した銀河の保安官から預けられたのよ。
悪意の塊達から、この星を。この星の数多の命を守る為に・・・ね」
「銀河連邦・・・の?保安官が来たのか?!」
魔女は更なる驚愕で混乱状態となる。
「こんな辺境に・・・保安官などが来る筈が?」
「来たのよね。<黄金の女神T’s>が・・・」
審判の女神も言っていた。
ティスと呼ぶ、来訪者が居たのを。
「知らされたのよ、あなた達が暗躍し続けているのを。
彼女の姪っ子に、神託として与えられたから。
・・・この魔砲の存在も、魔女を滅ぼさねばならない事も」
「ティス・・・だと?
もしや、その女神とは・・・」
魔女も名前だけは噂で知っているのか。
「一万年女神とも呼ばれ、永久を手にした女神。
人として産まれ、女神と成った。
その名は全銀河で<双璧の女神>と呼ばしめた?」
双璧・・・並ぶべき者もない最強を意味する。
そのような女神が、この地に来ていたとは?
「信じられるか!
もしも来ていたのなら異能を検知している筈だ」
魔女は女神が口からでまかせを言っていると思ったのだが。
「案外、魔女も身の程知らずなようね。
永遠の女神が、身バレなんてすると思うの?」
「なッ?!まさか・・・本当なのか?」
クラスを遥かに超越した女神ティスならば、ステルス性能も卓越している。
格下の魔女には検知する事こそ無理だと言われて。
「双璧の女神が・・・託したと言うのか?」
存在自体が在り得ないとは思うが、こうもはっきりと言われてしまえば。
「その波動砲は本物なのか?」
「言ったでしょ。受けてみれば分かるって」
キュゥイイイイイイィンッ!
既に発射態勢になっていた女神の魔砲。
「ま、待て!そんな理不尽な?」
理不尽を撒き散らして来た魔女が懼れるが。
「待つ訳がないでしょッ!」
女神に一刀両断で言い切られた。
「素粒子充填完了!魔女殲滅ッ!」
で。
カチッ!
トリガーを・・・カチッと、な。
ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ~
爆流が邪操界諸共に魔女を押し包む。
蒼い光の渦が、闇を吹き飛ばした。
「ぎゃぁあああああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・」
最期の叫びさえも呑み込んで。
魔女の跡形も無く、闇は滅び去る。
あまりと言えばあまりにも、理不尽だった。
悪の総意である魔女が、不憫にも思える程の一撃。
邪操界ごと魔女は潰え去り、塔には邪なる気が消えた。
・・・そう。
完全に。
悪は滅びたかに思えた。
「自爆なんてさせやしないんだから!」
刺違える気だったのを見越して。
「理を司る女神には、隠したって無駄よ」
魔女がどう考えているのかを見破っていた?
「こう見えても、伊達に3千年闘い続けて来たんじゃないんだからね」
経験則から見切っていたようです。
悪者が最期に打つ手を。
こうして、理の女神に因り地上の魔女は潰え去りました。
ですが、本当の決着とはいかないみたい。
「聞こえてるリーン?奴等の在処が掴めたよ」
魔砲を片手に、審判の女神と通信を執る。
「奴等の隠れ家は・・・」
そこまで話して。
「あらら。御主人様ってば、聞いちゃいないみたい」
一方的な通信状況を悟って苦笑いを溢す。
「オリジナルに神託を与えてるのかな?」
魔女の殲滅を成し遂げた理の女神が、沖天を仰いだ。
圧倒する女神の異能。
3千年女神の真の強さは何処から?!
理を司る女神は闇を祓い邪なる魔女を滅ぼした。
そして・・・やってくるのは?
人類再生計画が始まる・・・
次回 ACT 9 楽園喪失
人類に新たな幕が開く。それは喪失と呼べるのか?始まりなのか?




