ACT 6 巨大損な女神って?
鍵の御子は女神に教えられる。
諦めれば、全てを失うのだと。
逆に諦めずに抗うのなら?
その答えは・・・・
閃光が迸る少しだけ前。
魔女イシュタルの企みが判った鍵の御子が、最期まで諦めずに抗っていた。
人の世界を繋ぎ止める為に。
地上を悪魔から救う為に。
「覚えておきなさいオリジナル!
これが審判の女神の務めなのよ!」
現出した女神リーンから告げられた。
機械の身体に宿ったリィンの記憶へと、啓示として与えらるのは。
「悪しき者から守るべき時。
その体に宿る光を放つの・・・それが魔を打ち破る方法」
自分が思い描いていた魔法とは違うけど。
「願いを叶えるには、自らも闘わねばならない。
守るべきモノを邪なる者から守る為には放たなければならない、光を!」
求めるのは光であって絶望では無いと教えられる。
尤も、人に過ぎない自分に光を放てるのかは分からない。
「人ならば光を受ければ影が出来る。
人であればこそ、光も影も纏えれる。
生ある者、死せる魂、どちらもが光と闇を抱く者なの」
生まれ変わりの女神リーンに身体を預けた鍵の御子は、最期の瞬間に垣間見る。
女神の異能を。女神の御稜威を。
右手を突き出し、制御室をも乗っ取ろうとしていた防衛システムへと。
「エクセリオ・ブレイカー!」
聞き慣れない声音を叫ぶ。
・・・と。
ガシャッ!ガシャガシャ!!
メインコンピューターから異音が?!
一体何が起きたのかも分からず、唯、女神の声を聞き入るしかなかった。
「これで魔女イシュタルの企みは潰えた。
人類を殲滅することは叶わなくなったわ」
一体どうやって?一体何がどうしたと言うのだろうか。
カシュ!
先程までいくらキィを叩いても、進行出来なかった改変プログラムが。
「「嘘?!発動した!」」
女神リーンがどうやってシステムを稼働させれたのかは分からないけど。
「「これでやっと・・・この躰を捨てれるんだ」」
役目を果たし終えれば、自らを破棄する筈だった。
そうするのがタナトス教授との約束でもあり、人に戻れる唯一の方法だと言われていたから。
自らの記憶を犠牲にしてまでも託してくれたタナトス教授。
刺違えになって悪魔タナトスを滅ぼし、そして人の世界を繋ぎ止めるように願ってくれた。
彼の残した言葉が過る。
<リィンは女神になっておくれ。決して悪意に染まらずに。
人の世界を再び楽園へと戻せるように。
何年懸ろうとも、最期まで諦めずに>
楽園を・・・取り戻す為に。
その言葉が今のあたしに重く伸し掛かっている。
亡くした人々でさえも蘇らせ得るのなら。
理不尽な世界の中で奪われた想いも、手に出来なかった平和も。
何もかもを取り戻せるのなら・・・
「これでオリジナルの描く世界になる筈。
それでも、破滅の危機は去ったとは言えないけども」
審判の女神は<私>に告げた。
「魔女イシュタルの脅威が消せない限りは、破滅の危機は続くと知りなさい」
世界の闇を統べる者・・・魔女の存在が消せなければ。
「オリジナルの描く理想には届かない。
それ故に、審判を下し続けなければならないのよ」
女神リーンは言う。
世界のどこかに邪悪が根付いてしまっていると。
人と世界を滅ぼそうと企む巨悪の存在を。
「この未来永劫へと渡る輪廻を終わらせるには。
魔女から地球を取り戻さねばならないの。
その為には・・・もう一度やり直さなければならない」
魔女を駆逐するまでの間、世界は何度もやり直しをし続けなければいけないのだろうか。
一体その日はいつやって来てくれるのだろう?
「オリジナルは覚えていないかもしれないけどね。
この世界だって変えられているのよ。
レィと死神人形とが最後の決戦を挑んだ時だって。
本当ならレィは此処まで辿り着く時間が無かったのよ。
理の女神が手助けしなかったのなら・・・ね」
そう言えば、デジャヴュのような感覚に囚われた。
前に一度見た様な気がしたからだったけど・・・そうだったんだ。
「それに、そもそも。
ケラウノスなんて殲滅機械を、この世界で造れると思う?
あれは異星人で魔女なイシュタルが齎した惑星改造機械。
未開の惑星に文化を届ける為に造られた洗脳機械でもあるのよ」
異星人に魔女。どちらも人外な存在でしかないけど。
どこかの雑誌に紹介されていた、人類の歴史は何者かに因って構築されたのだとか。
それが異星人なのかは知らないし、分かりようも無い。
「奴等の真の狙いは、この星を破滅させること。
数十億もの人を根絶やしにし、理不尽なる死で広まる闇を吸い込む。
闇の力で地球ごと壊し、その爆発エネルギーで太陽までも破壊する。
闇で真の闇を生む。
太陽系の破壊に拠り、生み出されるのは・・・」
それならば聞いた事がある。
恒星が破滅した後に産まれるのは・・・ブラックホールだと。
「そう・・・分かったようねオリジナルでも。
奴等の狙い・・・それは魔女の主の復活。
混沌を統べる王の誕生を狙っていたのよ」
ブラックホールと言ったら、何もかもを吸い込むというアレ。
物質も光をも吸い込む、無限の闇?
そんな物を生みだそうだなんて・・・
「私達も初めは信じられなかったわ。
彼女に出会うまでは・・・T’sが教えてくれるまでは」
女神でも知り得なかったのを知っていたの?
そのティスとかいう人は。
一体・・・それは何者?
「覚えておきなさいオリジナル。
世界に蔓延る真の闇を潰えさせない限りは、危機は去らないのだと。
この地球の未来は、あなたに懸っているのだと心しておきなさい」
そんな・・・益々重く伸し掛かって来るだけじゃない。
人の世界を取り戻すだけには留まらないと言われちゃった。
「幸いなことに、オリジナルは千年周期に審判を下すと言った。
そのチャンスを生かせるように、手を打つのよ。
奴等から人類を守る為に、改変を続けるの。
例えば、空に防護壁を設けてみるとか・・・」
宇宙からの侵略にでも備えるのですか?
「それも有るけど。
航空攻撃が不可能にしておくだけでも戦争が悲惨にならないわよ」
そうする事で不必要な人的被害が食い止められる・・・そうよね。
「それに。
この後、星が落ちて来るわ。
一見、箒星がぶつかるかに見えるけど、その実は」
魔女の仕業だと言いたいんですね。
「御明察。奴等が焦り始めた証でもあるんだけど」
防ぐ手立てはあるのでしょうか?
「ケラウノスを悪魔化したかに見せかける。
人類の敵としての存在に仕立て上げ、奴等の眼を誤魔化すの」
それがどうして星を防ぐ方法だと?
「ケラウノスに因り、空へ電磁階層を造るの。
言うなれば体の善い防御隔壁のような物よ。
それがあれば体積の小さな隕石ぐらいは防げるわ」
なるほど・・・まるで魔法の壁みたい。
でも・・・それがあると、エイジ達が帰って来れない。
「そうね・・・月の民には待って貰わなければいけないわね」
そうでもしなければ、魔女に攻め込まれるのなら。
仕方が在りません・・・危機が去るまでは。
「納得できないでしょうけど。
それが愛する人の為だと我慢してよね、オリジナル」
・・・はい。
・・・
・・・・
・・・・・・・・
って?!
いつの間に会話してたの?
「前にも言ったけど、高速会話中なのよね」
いいや、そうではなくて!
どうして女神リーンの方が身体を支配し続けてるのかってことですッ!
「あら?あなたの記憶は当に冷凍睡眠中の身体へと戻れる筈だけど?」
へ?
「だって、目的も完遂出来たんだから。
初めからこの体なんて捨てる気だったんでしょ?」
い、いや。そうだけど・・・戻れるの?
「もぅ。やっぱりオリジナルが元祖損な娘だったのね。
生みの親がそうだから、ミハルって子までもが損なのよ」
誰ですかそれは?・・・って?!ミハルぅ?
「ああ、レィのことじゃないわよ。
その元祖で、超一流の損娘。宇宙狭しと言えど、アレに勝る損は居ないわ」
なんですか・・・その巨大損は?
「言ったじゃない。
アレは私のペットでもあり、愛を司る女神。
今現在は、邪操界で魔女を駆逐している筈よ」
邪操界?!魔女を駆逐できる・・・絶対損?!
「・・・絶対損とは言うわねオリジナルも。
アレはそん所そこ等の魔砲を放つ女神より強いんだからね」
いや、あの。
「そう言えば。さっき亜空間通信が届いていたわね」
テレパス・・・まさに魔法使いだわ。
「ふむ・・・そう?じゃぁ奴等は?
なるほどね・・・それじゃぁ分からなかった訳だ」
・・・誰と話してるんだろ?
「うん?ああ、コレね。私のペットなの」
耳に手を添えてる感じが女神を通して分かる。
で、通話先の悲鳴も感じられた。
何だか酷く泣き喚いてるような?
「煩いわねミハルってば。分かったわよ解除してあげるから」
・・・何を解除するの?
「ほら、ペット状態解除。これで良いでしょ?」
何やら通話先から嬉々たる声が聴こえた様な?
「ほら、馬鹿なことをやってるからオリジナルが不審がるじゃないの。
殲滅完了したのなら、さっさと配置に戻ったらどうなのよミハル」
で、今度はアイサーって感じで了解してる。
まぁ・・・女神なんだろうから範疇外だけど。
「フフフ。これで次の作戦の目途が立ったわ。
次こそは魔女を完膚なきまでに叩きのめせる。
やっと地球を救う事が出来そうだわ」
目途がたったの?
「やっとね。
3千年もかけて・・・漸く」
そう言えば、審判の女神も3千年女神なんですよね?
「・・・永遠の二十歳だと呼びなさい」
いや、年寄りだなんて考えてないから。
それに姿も見せて貰ってないし・・・
「観たい?それなら・・・あなたのお母様を意識して。
あなたは私を創る時に理想を描いた。
母の面影を映し、優しさを与えてもくれた。
運命に翻弄される姿も、凛々しい姿も・・・何もかも女神へ与えたの」
そうだった。
改変される世界で、<あたし>はミカエルお母様のような人になりたいと願ったんだ。
そうすることで寂しさを誤魔化し、お母様と一緒に居るのだと言い聞かせる為にも。
あたしの母への想いが容になった女神。
髪の色は、あたしの茶髪よりも金色に近い。
瞳の色だって、アタシなんかよりももっと碧い。
それに・・・あたしなんかよりもずっと大人な姿。
そう・・・きっと。
あたしが審判の女神になるのなら。
・・・その姿は、お母様・・・ミカエル・オーク。
世界へ始まりの閃光が放たれる前。
私は<あたし>へと戻る時間を与えて貰った。
次元を超えて現れた女神に因り。
生まれ変わる筈の女神リーンに促され。
それは、全人類が変わるほんの少し前。
彼等にお別れを告げる・・・前の事だった。
今回。
審判の女神がお知らせしたキャラ名。
<<T’s>>
その名は遥か銀河系にまで轟いております。
ご存知でしょうか?
https://mypage.syosetu.com/793065/
「加純」様の作品を。
https://ncode.syosetu.com/n5837di/
「テスとクリスタ」
その損な主人公<テス>様の恩名をお借りしました。
女の子キャラ主人公=損 同盟 は未だに健在です!
彼女も完全無欠に・・・巨大損・・・です?!
興味がおアリでしたら・・・読んでみてね。
加純様、今後も<T’s>をお借りします(宜しくです)。
鍵の御子と審判の女神が語り合ってる時。
魔女を追いかけた理の女神は?
次回 ACT 7 魔女の名は
女神は悪を赦さず。理を司る女神は・・・悪を斬る!




