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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第6章 宿命の絆
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ACT 7 死神の嘲り

死神人形ファーストと聖戦闘人形レィ

宿命の一戦が幕を開いた。


双方の戦闘力は互角と言えた・・・だが。

一撃を弾き返されたファーストは決着を図る為、最終奥義を発動させる。


一体如何なる手段を執ると云うのか?

防衛システムにリンクした監視モニターへ向けて、死神人形が起動を命じた。


「破壊剣へ能力値を超える充填を!

 最大にして最強の一撃を放つ為に。

 レーザー銃が壊れようが、剣が破壊されても構わない!」


携えた破壊剣を犠牲にしても、ヴァルキュリアを倒す為には必要なのだと。


「「制御解放ジェネレーターオフ・・・

  ・・・エネルギー充填完了まで2ツーミニッツ」」


即座に防衛システムが応答する。

敵の排除を一任された死神人形の求めへ即応したのだ。



 カシュンッ



フロアの柱に取り付けられてあった高粒子放射装置が稼働態勢になる。


塔の最上部にある珠の反動を吸収する目的で設えられてあった中空階に、粒子を充満させる為に配置されていた柱と粒子放射装置だったのだが。



 バチ・・・バチ・・・バチュンッ



粒子は空間へと放たれると電撃のようにスパークを放ち始める。

それはまるで紅い光点が揺蕩う様に、フロアに漂うのだった。




「・・・よし。時間潰しに勤しむか」


ちらりと柱から放出され始めたスパークを顧みて。


「レィの戦闘能力の程を確かめてやろう」


防がれたレーザービームを封印し、剣戟で応じる構えを見せる。


「高出力ヒート剣、オン!」


破壊剣の刀身部分を赤熱化させるボタンを親指で押し込む。



 ブゥンッ!


超高熱を発する刀身部分が赤く光ると、



 ビキンッ・・・ビキビキビキ



鋼をも易々と断ち切れる高出力電磁刃が形を変えた。

刀身部分が幾重にも湾曲し、長さ自体も伸びて行く。


「さぁ!遊びましょうか」


敢えて勝負を計るとは言わずに。


「ラストダンスまで!」


最終奥義の発動までの時間稼ぎに興じるのだと。



右手に携えた剣を仇敵へ指し伸ばして、死神人形は飛び掛かって行く。


「うりゃぁあああああーッ!」


吼えたて。


「くたばれぇ!」


憎しみを紅き瞳に湛えて。

時間稼ぎを悟られないように。





初めの一撃を弾いた後。


「何かを企んだみたい」


初めの一手を撃った死神人形からの第2撃は襲っては来なかった。

ビームを弾き返した破壊剣を観て、何事かを感じ取ったのは間違いないだろう。


「光線では倒せないと読んだだけなのか。

 それとも、レィならば剣戟で倒す方が良いと思ったのだろうか」


連射をかけて来ず、剣を構える姿勢を執った相手へ。


「剣で切り刻もうと思ったの?

 ひと昔前のレィとは違うのだと言ったのに・・・」


変わった身体を観ても?

変わった意識を伝えたというのに?


「いいや、違うな。

 死神人形は様子見を計っている訳じゃあなさそう」


狙いが何処に在るのかは分からないが、単に剣戟で倒せるとは考えていないのだけは理解した。


「一体何を企んでいるんだ、フューリー?」


友であった頃の名を呼び、彼女ならば何かを秘めての行動だと思い。


「こちらに考える時間を与えようとしないのは、昔から変わらないな」


記憶に残る人間フューリーを死神人形に重ねて。


「是非も無し・・・か。戦闘人形01ファーストよ?!」


突きかかって来る死神人形へと剣を向けるレィ。


2体の戦闘人形の間合いが狭まる。

悪魔に身を堕とした人形と、絆を信じる人形との闘いが繰り広げられる。


・・・そう。それは宿命の剣戟。



「くたばれぇッ!」


飛び掛かった死神人形の破壊剣が正眼に振り落とされる。

見切った聖戦闘人形ヴァルキュリアが寸での処で避ける。


「あまいわッ!」


戦闘力を最大限に引き上げていた死神人形が、避けるレィへと剣を横っ柱に薙ぎ払う。

高出力を放つ剣先がレィを捉えたかに見えたが。



 ガギンッ!



紅い火花が双方の剣から弾き出される。


「ぬぅッ?!」


捉えたとばかリ思われた死神人形の剣先を、レィが防いでいた。


「くッ?!糞ぅッ!」


交わった剣を観て、瞬時に飛び退く死神人形。



 ブゥンッ!



音をたてる剣。

いつの間にか、レィの手にした剣も紅く光を放っていたのだ。


「やはり・・・同等の威力を誇るか」


普通の剣だったのならば、死神人形の電磁剣の一撃に耐えられる筈も無かったのだが。

同じ性能を誇る破壊剣は、携えた剣と同じく赤熱化していた。


「レィの剣も・・・鋼鉄をも切り裂ける・・・この躰だろうとも」


戦闘人形は骨格を鋼で設えられている。

だが、骨格を為す超ジュラルミンであろうと、剣に斬られれば容易く切り裂かれてしまうと云う事だ。


「お遊びと言え、油断すれば奥義を発動する前に殺られてしまう・・・か」


時間稼ぎの剣戟とは言えども、生半可な応酬ではなくなった。

どちらかが手傷を負うだけでは済みそうもない。

下手をすれば、剣戟で全てが終わってしまうかもしれない。


飛び退いた死神人形は、お遊びとは思えぬ真剣な顔で相手を睨んだ。



「身体を使った戦闘では、ミスを犯した方が倒される」


互いの性能差が互角なれば。


「これだけ近寄れば、反射能力がモノをいう。

 それに対応できる正確な判断能力と・・・経験値が勝負を分かつ」


蒼い瞳で死神人形のスピードを計り、相手の動きを読むレィだが。


「次の手を読むのには慣れているけど。

 戦いにおける経験は、死神人形の方が優っている」


戦闘人形に宿ってからの場数は、死神人形が多いと感じている。


女神ミハルに任せっきりでは無かったけど。

 数少ない戦いの殆どが頼りっきりだったからな」


身体を明け渡していた訳でもないが、ピンチになれば女神が手助けしてくれた。

それに、傍らに寄り添ってくれていたグランドも今は居ない。


「階下で追手を防いでくれているから・・・いいや違う。

 女神ミハルがそうするように仕向けたんだろう。

 私と死神人形の一騎打ちになるように」


他の誰かに因って邪魔されないように。

この闘いが全てを決着させるものだとの認識に因って。


「死神人形を斃すのが、私の宿命だと言われるのだから」


飛び退いた死神人形は、こちらからの攻撃に応じるかのように身構えたままだ。

攻め手が逆転したのを察したのか、攻撃して来る構えはない。


「どうする?こちらから打って出るか?」


手を拱いていれば、死神人形にチャンスを与えるかも知れない。


「気になるのは、彼女が何かを企んでいる素振りだったこと」


フロアを管理している機械に、先程何かを告げたように感じているから。


「こちらから攻めてみないと分からないか。

 接近戦を計るべきか、魔砲で撃ちかけてみるべきか?」


手にする破壊剣は、死神人形が持っているモノと同じ。

剣の中心部から伸びる銃口からは、レィが弾き飛ばしたのと同じレーザー光線を撃てるのだ。


「でも、高出力のレーザー砲を撃てば、剣の動力も減ってしまう。

 もしも闘いが長期化する虞があるのなら、電磁刃に絞っておかなければいけない」


銃口を向けて思案する。

巧く死神人形を斃せた後でも、破壊剣の威力が必要だと考えたから。

動力を使い果たしてしまえば、剣は只の剣に落ちてしまう。

赤熱化した電磁刃を使えなければ、イザと言う時に意味を為さなくなると考えたからだ。


「しょうがない。肉弾戦に終始するよりないな」


出来る事なら剣戟は控えておきたかった。

魔砲の一撃で勝負を図りたいと願ったのだが。


「もし、立場が逆なら。

 死神人形だったらどうするかな?」


攻守を換えて考えてみる。

もしも自分が死神人形だとしたら、どうするのかを。


「防がれた魔砲で。

 最大級のパワーを籠めて・・・相手を超える威力を見せつけて。

 最期にして最大の勝利を捥ぎ取ろうとする・・・筈」


勝負は最初に受けた衝撃を相手に返してこそ、真の勝利となるという。

ならば剣戟ではなく、レーザー銃で図られると読んだ。


「どのタイミングで?

 銃を放つ気なら、接近戦など試みない筈なのに」


そこで違和感を感じていた理由が分かった。

フロアを仕切るのは機械達の方。つまりは死神人形のテリトリーで闘っているのだ。

その死神人形が何かを企んでいるという事は・・・


「このフロア自体に何かがある。

 この空間に、仕掛けがあるんだ?!」


咄嗟に五感を総動員して気配を探った。


そして・・・目にした。


紅く光る・・・放電を。



 バチ  バチ バチュンッ



柱から放出され続ける電磁波が、徐々に渦を巻き始めている。

それと共に、死神人形がじりじりと後退し始めているのにも気付いた。


「何を?どうしようと言うんだ?」


知った瞬間にレィが考える。

紅い光点が揺蕩う中へ、死神人形が後退る様を睨みつつ。


「あの光の中心へ?」


紅い放電の中心に向う死神人形の顔を覗き込んだレィは、


「放電・・・中心核・・・スパークは高出力の電力の証?

 それを集中させて・・・集約させ得るのは・・・」


その時、死神人形の口元が歪になった・・・嗤ったのだ。


「ま・・・さか?」


その哂い顔を観た途端、レィの頭脳が導き出したのは。


「極大魔砲?!レーザー銃の能力を超越させるエネルギーを集約したのか?!」


剣戟を求めて来た死神人形の真の狙いは時間稼ぎにあった。

高出力のレーザービームを放つ為に、電力の充填を待っていたのだ。


「しまった?!」


やっと気が付いたレィが走り始めた時。


挿絵(By みてみん)


 ギュイイイィンッ!



スロープ上に飛び退いた死神人形が破壊剣を構え、エネルギーの充填に入っていた。


 キュイイィン・・・


集約された電磁波動が、破壊剣の動力源に充足されて。

制御を超える電力が銃口から溢れんばかりに光を放つ。


 ギュゴゴゴ・・・


制御を失いかけた破壊剣が、死神人形の手さえも震えさせた。


「お終いだ・・・」


哂う死神人形が溢した。


「これで・・・お前との因果も。

 私の最終目標も・・・何もかもが。

 終わるんだよッ!」


制御を超えた破壊剣が、死神人形の手の中で暴走を始める。


「そう!終演フィナーレだぁッ!」


紅い奔流が破壊剣を壊した。


「くたばりやがれぇッ!」


二度目の発射にして・・・最終発動。



 チッ!



死神人形がトリガーを引き絞る。



 ドカッ!



真紅の破壊波動がフロアを染める。


死神人形をして、最終奥義と呼ばしめた極大レーザー光線が今。



 ドドドドッ!



渦を巻きつつ聖戦闘人形ヴァルキュリアへ向けて発射されたのだ。

剣戟が終る時。

死神の嘲りがフロアに響く。

死を振りまく破壊剣の一撃が、遂に発動するのだ!


どうやって防ぐ?

敵の最終奥義から逃れる手があるのか?


次回 ACT 8 真実は女神と共に

窮地になれば現れる。諦めてしまいそうになればやって来る。

3千年の時を越え、理を司る女神が真実を告げに来る・・・


そう。

蒼い髪を靡かせる理の女神が!

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