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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第4章 光と闇を抱く者 
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Act12 怒りの炎

アーンヘルの街に迫る機械兵の群れ・・・


たった一人生き残ったトムを狙って来たのか?

それとも他に目的があったのだろうか?


どちらにしても危険な事には変わりはないが・・・

アーンヘルの街に訪れた怪異。

砂煙の中から姿を見せるのは、機械兵バトロイドと呼ばれる屈強なる機種。


身長3メートルあまりの巨躯に銃火器を搭載した殺戮マシーン。


それが3個小隊、9機もの規模で現れたのだ。




「がうがうがー!」


吠えまくるグラン。


「隠れないと・・・リック君もトム君も!」


端から逃げ腰になるミハルとは別に、グランは闘いを辞してはいない。


「逃げるって何処に?」


逆にトムから訊かれて、機械から逃れる術が無いのを悟らされる。


人体から発する熱や、音を捉えて追って来るだろう。

襲って来る機械達が、人を根絶やしにするのが目的ならば。


「と、兎に角。

 みんなで隠れて様子を見計らいましょう」


闘う事が嫌いなミハルならではの意見ではあったが。


「リックが隠れられる場所なんて、この辺りにはスーパーくらいしかないよ」


近辺の家には3メートルもの巨体を隠れさせておける筈も無い。

どこかの物陰に忍ばせても、探索レーダーで直ぐに知られて誰何されるに決まっていた。


それならば、自家発電が生きているスーパーこそが隠れ場に相応しいと、幼いトムに教えられた。


「そうね、案内して!」


早速採用して移動を始める。

二人と二体のロボットが、煌々と灯りを燈している売り場へと駆け込み、


「リック君は発電機の近くへ。トム君は私達と一緒に・・・」


動力を放つ機械ならば、動力こそが隠れ場だと思って指摘したのだが。


「嫌だ!僕はリックと一緒に居るんだ」


離ればなれになるのを嫌うトムが駄々を捏ねて。


「友達を置き去りに何てしないんだから!」


リックの足にしがみ付こうとする。


「だけどトム君。人間なのはあなただけなんだから・・・」


思わず言い聞かせようとして口が滑ってしまった。


「え?!お姉さんは・・・人じゃないの?」


「え・・・いや、それはその・・・」


人の姿を模した機械なのだとは言い返せず。


「私は人を半ば捨てた者って意味で。

 半分は人間なのって・・・分かる訳がないよね」


説明しようにも自分だって本当は分かり切っていなかったから。


「なんだよ、それって。僕達を騙していたのか?!」


機械兵に自分達が街に残っているのを教えたのかと怒るトム。


「信じて!私達はあなたと同じ魂を持つ者なの」


「そんなの信じられないよ!リックだって魂くらい持っているんだから」


ミハルの言葉より、リックを友だと信じると足から離れようとしなかった。

だけど・・・


「「とむ君ハ、みはるオ姉サント隠レテイナサイ。

  本官ハ、不法侵入スル機械達ヲ排除スルノガ役目ダ」」


しがみ付いているトムを優しく諭し、そっと脇へと除けて。


「「コノ子ヲ。安全ナ場所ヘ」」


ミハルへと託したのだ。


「あ、あの?!」


リックさんは・・・どうするのですか? と、問う前に。


「「本官ハ、警官ナノデスヨ。守ルベキ市民ガ一人デモ居ルノデアレバ」」


破壊されても役目を全うするのだと答えられてしまう。


「駄目ですよ!それなら一緒に逃げましょう?」


犠牲になってでも職に殉じると言われたら、停めるのは当たり前の話。


「「とむ君ヲ宜シク。モウ奴等ガ来テシマイマシタ」」


そして悪夢が訪れるのも・・・


「「隙ヲ観テ・・・逃ゲテ」」


ミハルへとトムを託したリック警官が、敢然と機械兵の前へと躍り出る。


「リーックゥッ!」


その背に向けてトムが呼びかける・・・と。



 ガシンッ!



応じたリックが右手の親指を立てるのが見えた。



機械兵は現れ出た仲間に誰何されて、初めて認識を改める。


「「コレヨリ中ヘハ侵入スルナ。本官ハ職務ヲ果たす所存ダ」」


奥に居る熱源体を守るというロボットに対して。


「「速ヤカニ道ヲ開ケロ。サモナクバ破壊スル」」


銃火器をリックへと向けたのだ。



「いけない!リック君?!」


物陰に潜んで様子を伺っていたミハルにも、これが非常事態なのが分かる。

相手は数の暴力でリックを覆い潰す気なのだと知れて。


「投降して!撃たれてしまうわ」


トムを託されているのも忘れて叫んでしまう。


・・・だが。


「「警告ハ伝エタ・・・退カナイノナラバ・・・失セルガ良イ」」


投降のチャンスさえも与えず、機械兵達は射撃態勢を執る。


「逃げて!リック」


断末魔を告げる叫びがミハルの口から放たれた・・・瞬間。




 ド!ダガガガガガガガガガ!!




リックの前に居た全ての機械兵からの連射音がスーパーの中にまでも響き渡った。




 ド、ガンガンガンガン!



薄い装甲板を貫かれていく破壊音と、



 バン! バン!



僅かながらも応射しているリックの射撃音が重なり合う。


しかしそれも・・・ほんの僅かで消え去った。



 ガンガン・・・ガキン!



連射音が途絶えた時、リックはそのまま立っていられた。


だが・・・1秒と保てずに。



 ドシャン!


仰向けに仰け反って倒れた。



 シュゥウウウゥ~



穴だらけにされた躰を晒して。


「リック?!リックゥ?」


眼を剥くトムの叫び。


「がうるぅう~!」


唸るグランの声も。


惨劇を目にしたミハルは、声も出さずに手を指し伸ばしているだけ。

止められなかった悲劇を。

留められなかった気高い魂を取り戻すかのように。


「「奥ニ居ル人間ヨ、次ハ貴様ノ番ダ」」


リックを無惨にも破壊した機械兵からの殺害予告。

無慈悲にも投降さえも認めないと言って来るのは、心の無い機械マシーン故か。


「「死ニ絶エルガ良イ!」」


だが、その一言で彼女は目覚めてしまうのだ。



 キィイイイィンッ



ミハルの中で、もう一人の記憶たましい)が。


ー 同じ。あの時と全く同じ。

  私とあの子が遭わされた悲劇とそっくりだ・・・


蒼い光が湧きかえる。

闘えと、怒りが炎々と燃え盛る。


ー 倒れたリックが私。泣き叫ぶトムがあの子。

  ならば赦していられないじゃないか?


ミハルの眼を通して観てしまった悲劇に。


ー ならば・・・こいつ等を八つ裂きにしてやるべきだな?


蒼い揺らめきがミハルの中で取って代わろうとした・・・



「がう?ががぅ?!(レィか?いや待て?!)」



気を失えばレィが現れ出ると思うのだが、いつまで経ってもミハルは気絶しない。


なのに・・・


「ががうぅ?!(なぜだ?どうしてなのだ?)」


グランが見上げるミハルだが。


気を失って居ないというのに?!


「許せないよね・・・大切な人を護ろうとしただけなのに」


眼を閉じたミハルが立ち上がる。


「許せないよね・・・大切なモノを奪われてしまうのは」


ゆらりと蒼銀髪が揺れて。


「許さない・・・絆を断ち切る奴等は!」


開かれる瞼。風も無いのに蠢く髪。


「だから・・・あなた達に・・・鉄槌を下す!」




 ぼわああああぁッ!




炎が。蒼き炎が噴き出す。

ミハルの怒りが頂点を極め、身体を変換させるのだ。


蒼き瞳・・・


蒼き髪・・・


そして胸元に現れるのは・・・


人と機械の友情を絶たれた・・・

トムを護ろうと決死の戦いを挑んだリックの心は。


身体に秘めていたもう一つの記憶レィ

ミハルの身体を支配してしまうのか?

それにしては様子が変に思えるのだが・・・


次回 第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 

   第5章 聖なる戦闘人形<ヴァルキュリア> Act1君の名は?!


いよいよ戦闘人形として蘇るのか?

蘇るのはレィなのか?それとも別次元のミハルなのか?

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