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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第4章 光と闇を抱く者 
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Act 9 敵部隊見ユ!

初戦を勝利で飾った解放軍だったが。

それで大人しくしている機械兵軍団ではない。


次なる戦では、リィンを捕らえようと目論む敵が現れようとしていた・・・

第1次会戦が勝利に終わった後。

解放軍は次第に勢力を増し、目的地であるニューヨークを目指して北上を続けていた。


当初は寄せ集めの集団に過ぎなかった部隊も、次第に統率が行き渡り軍隊として機能し始めていた。

第1次会戦では3000名に過ぎなかった隊員の数も、僅か1週間足らずで1万名を超す勢いで増え続けている。

それは部隊を率いる少女が、世界を救う鍵の御子だとの噂が広まっていたからでもあった。




純白の衣装を纏い、腰まである茶髪を風に靡かせる。


「敵機械兵の一団が、北東から接近中」


情報士官が参謀の元へ、敵状を申告する。


「規模は?」


サングラス越しに詳細を求め、


「指揮を執るのは人形か?」


敵の将たる者に注目していたのだ。

問われた士官は、メモパッドに目を落とすと。


「敵は大型機械兵を前面に起たせ、数段に別れた陣形を採っている模様。

 それの指揮を執るのは<黒曜のむくろ>と呼ばれるナンバー03。

 司令官はナンバー付きの戦闘人形のようです」


指揮を任されているのは方面軍司令官級タスクホースコマンダー戦闘人形バトルドールだと報じて。


「漆黒の戦闘着を纏う・・・悪魔の戦闘人形らしいです」


敵機械兵部隊は、解放軍との決戦を希求しているのだと知れた。

ナンバー付きの指揮官を擁しているのだから、それ相応の部隊だと分かる。

いいや、解放軍との雌雄を決せんと送り込まれて来た大兵力と思われた。


「ふむ・・・敵は真っ直ぐこちらへ向かって来るか・・・それとも」


サングラスを外したマック参謀が、後ろに控えている少女に振り向くと。


「大軍を分派して、包囲殲滅を計るか・・・でしょうな」


解放軍は膨れ上がったと言っても1万名に過ぎない。

人数は増えたのだが、装備の方が伴なっていなかった。


しかも強力な武器であるミサイル等は、電波が敵に抑えられた状況では使い物にならず、近距離での有線誘導に頼らざるを得なかった。

遠距離戦を執られれば、人間の部隊には手の打ちようも無かったのだが。


「こちらが迂闊に敵の手に乗ってしまえば、各個撃破の憂き目に遭う事でしょう」


接近戦を求めて突撃をかけようものなら、機械兵達はその都度包囲するのだと忠告して。


「逆に遠退けば、飛び道具の的にされてしまいかねません」


遠近どちらに偏ってもいけないのだと。


「まぁ・・・普通ならばこう判断するでしょうな」


意味有り気に眉を跳ね上げて、将である少女へ促す。


「そうねマック。

 奴等に少し舐められている気がして来たわ」


右手の指輪を眺めるリィンが、マックの言葉に反応して。


「アタシ達がいつまでも気付かないと思っているのかしら?」


翠の指輪リングを摘まんで・・・


「場所を特定され続けるのを、黙っているとでも思ってるのかしらね」


奪い取られた本物の代わりに填められた偽物。


「電波を垂れ流し、アタシが何処に居るかを教える指輪。

 逆に言えば、同じ周波数の電波を使えば・・・ねぇマック」


複数のリィンが存在するにも等しいこととなる訳だ。

そして逆転の発想において、鍵の御子が何処に居るのかが分からなくなるということだ。


機械のレーダーには、リィンが何処に居るのかが分からなくなるだろう。

複数の電波発信地点が存在すれば、そのどれが本物なのかが分からなくなる。

それはつまり、何処に鍵の御子が居るのかが断定できなくなるのを意味しているのだ。


「敵が鍵の御子を捕えようと焦れば焦る程、こちらの思う壺。

 本物が何処に居るのかを知られる前に、決着を計れば良いのです」


マックが謀る作戦は、


「敵の目的がお嬢に在るのならば。

 短期決戦を挑むのが良策となりましょう」


リィンの所在がバレるまでの間が、潮目なのだと教えるのだ。


「早期決着、短期決戦・・・この度の会戦はリィンお嬢にも出馬して頂かなければなりませんな」


「良いわ!後方で眺めているだけなのは、つまんなかったし」


将たる者は、戦の方法次第で臨機応変に動かなければとリィンも納得して。


「黒曜の骸って奴に、目に物見せてやるんだから!」


敵将<黒曜の骸>に、一泡吹かせてやるのだと意気込んだ。



リィンが将を務める解放軍と、本部本営から派遣されて来た戦闘人形ナンバー03指揮下の機械兵軍が干戈を交えんと接近中だった。

後数日もすれば、大会戦の幕が開く。

人類解放軍との天王山とも呼べる決戦に赴いて来た機械兵の総数は・・・


重装甲の機械兵HTタイプ96型が780体。軽快なLTタイプが600体。

一般的なMTタイプは・・・各種併せると20000体にも及んだ。


だが、ナンバー03が指揮する軍司令部にはHTタイプを遥かに凌駕した巨体が。

機械兵部隊のとっておき、人型の機械兵中で最大の巨体を誇るMHTタイプ97。

全高が15メートルに及ぶ巨体ロボット・・・

主武装の75ミリ砲を携えた姿は、まるで神話に出て来るゴーレムの如き。

その巨体が15機も揃えられていたのだ。


群れて南下して来る機械兵軍団。

その姿は古に記された神話の如く・・・

地を覆う砂塵は、まるで嵐の到来のように・・・


荒野に再び、地獄の窯が蓋を開けようとしていたのだ・・・






 ・・・ジョージア州、中西部 アーンヘルの街近郊・・・




北へと向かう途中には、何か所かの街や村が点在していた。

だが、そのどれもが無人となり廃墟と化していたのだ。


いや、正確に言えば無人にされたと言った方が良いだろう。

家々には人の姿があったにはあったのだが、そのどれもが亡骸と化してしまっていた。


傍若無人に機械達が暴れ回り、街や村から人々を追いやったのだと知れた。

何人もの人を殺めて・・・


殺伐とした光景に、ミハルは悲し気に俯く。

マリーやミルア達のように仲良くは出来なかったのだろうかと朽ちる者達へ問いかけるのだった。



「がぅう~」


グランがスカートを噛んで引っ張り、


「がうがうがー!」


早く違う街へ行こうぜと促した。

誰もいない町に、居続けるのは馬鹿らしいと。


「そうだね・・・グラン」


廃墟と化した街で動くもの言えば、ネズミかカラス位なモノだろう。

死骸を貪り喰う、忌み嫌われる存在だけが残っているだけだろうか。



 がさ・・・ガサガサ・・・



何かが這い回る様な音が?



 ガシン・・・ガシン・・・



今度は重い足音が?



「がぅッ?!」



咄嗟にグランが聞き耳を立て、警戒し始める。


「何かいるの?」


廃墟から聞こえた音に、ミハル自身も身構えて応じる。


がさがさと軽い音はそれほどでは無くても、重い足音が意味しているのは。



「がぅぅ~ッ!」


犬型ロボットの聴覚が聞き分けたのは。


「がう!がぅッ!」


瓦礫の積もった方に向けて吠えたてる。

廃墟の影から何かが近寄ってくるのが、ミハルの眼にも映った。



 ガシン・・・ガラガラガラ・・・・


鋼の足が見え、機械に因って動く体が現れ。



 ガラガラ・・・ガシーン!



3メートルはあろうかという大型の人型機械ロイドマシーンが姿を見せた。


ミハルとグランの直ぐ前に・・・


「ひぅッ?!」


あまりの突然に、ミハルは固まったかのように強張る。


「がうがぅううッ!」


襲い掛かるかもしれないロボットへ、威嚇を込めて吠えまくるグラン。



 ギギギギィ~!


吠えたてられる人型機械だが、意にも解しないのか手をミハルへ向けて伸ばして来た。



 ギシ・・・ギシ・・・



掴みかかろうとする手の指先が軋み音をたて、ミハルへと迫って来る。

もし無造作に掴まれば、その指により圧死させられかねない。


ミハルが普通の人であるのなら。



「がうううぅ~ッ!」


迫るロボットの手に、ミハルが捉えられてしまうかと思ったグランが吠えながら間に分け入ろうと駆け出す瞬間。


「待って、リック!そのお姉さんは敵じゃないよ」


ロボットの陰から少年の声が停めに入ったのだ。


「僕等の街を襲った機械達では無いのだから!」


飛び出して来た茶髪の少年が、リックと呼んだロボットの手を掴んだのだ・・・

人類解放軍に迫る機械軍団。

敵の意図を読み、逆手に取ろうとするリィン達だったが?


一方その頃、ミハルはグランを連れてアーンヘルの待ちに辿り着いたのだが。

迫る巨体、掴みかかる豪腕。

窮地にミハルは?


次回 Act10 ルシフォルの秘所

そう言えば、彼の姿が見えませんけど?どちらへ行かれたのですか?

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