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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
零の慟哭 <少女人形篇> 第1章 不穏な足音
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Act9 リィンの憂鬱

少女人形ドールは、操手ドライバーのシンクロ率で動作が決まる。


戦い済んだリィンと<ゼロ>も、新たな調整に勤しんでいるようだが?

幼い時から普通にロボットと慣れ親しんでいたのは、何もリィンだけの話ではない。


日常的に何らかの形で触れ馴染んでいた。

朝起きる時から就寝するまで、機械に任せておけば何不自由ない生活を過ごせたから。

特に都会での暮らしなら、尚の事だった・・・





自動人形オートマタ製造企業<アークナイト>社。

ニューヨーク市の外れに社屋を構え、研究機関を伴った総合エンジニアリング会社・・・



「ま~たぁ?」


駄目出しを喰らったリィンが声を張り上げる。


「もう一度初めからやり直しですぞ」


白衣を着た、初老の研究者が窘める。


「ええ~?!もう一度ぉ~?ヴァルボア博士」


ピンクのプラグスーツに身を包んだリィンが天を仰いで。


「この調子じゃぁ~、夜まで調整が終わらないよぉ~」


溜息とも落胆ともとれる声を溢す。


「ごほんッ!プロトタイプ<零>を強化させたいと仰られたのはリィンタルト嬢だった筈では?」


銀髪に近い白髪のヴァルボア教授が、咳払いしながら片手で装置を再稼働させる。


「ほれほれ、<零>も早うしろと急かしていますぞ」


電源を入れられた研究室ラボが、再び稼働音に満たされていく。


「あ~~もぅ!やれば良いんでしょ。やれば!」


自分が頼んだのに自棄になるリィン。

体のラインがはっきり分かるピンクのプラグスーツが、装置へと向き合う。


「それでは・・・再調整にかかりますぞ」


ヴァルボア教授は装置に繋がるロボットアームを動かし始める。

リィンの身体と、装置によってシンクロさせられてあるリアルドール<零>に。

外見は人間そのものだが、内部には超硬ジュラルミン製の骨格が備わっていた。

その鋼の骨格を動かす動力は、主に外部からの電力で補われ、筋肉の代わりのバネやストロークロッドを動かしていたのだ。


調整装置に載せられている<零>には、内部に充填される潤滑油オイルホースや各種の電線が着けられて、ヴァルボア教授によりリィンの感度に整合されていく。


「うう~、まぁ~だぁ~?!」


「まだまだですぞ」



挿絵(By みてみん)




何度目かの調整でも、本物の人間に機械を併せるのは難しいのだろう。

専任のヴァルボア教授でさえも、骨の折れる仕事みたいだ。

じっと立っているだけのリィンも・・・だが。





研究室ラボからリィンが解放されたのは、もう夜の帳が降りた後の事だった。



「お疲れ~リィンちゃん」


ヴァルボア教授の手伝いを終えたエイジが労うと。


「お腹減ったよぉ~」


立ち尽くすだけでもお腹は減るモノで。


「ほら、これ」


エイジが白い箱を差し出して来る・・・それはレィが口にしていた白いステック。


「わ!ありがと~」


喜んで手に取り一本を抜き取ると。


「ぱく!んんん~~~甘~~ぃい!」


チューチュー吸って顔を緩ませる。


「ホワイトチョコって、どうしてこうも美味しいの~」


ホワイト・・・チョコだったの?


「麗美姉さんが、多分こうなるだろうからってさ。

 ボクに預けたんだよ、リィンが飢えるだろうからって」


「・・・飢えてなんかいないもん!かなりお腹がへっただけよ失礼ね」


それを飢えるって言うのでは?

エイジが苦笑いを溢していると、研究室に誰かが入って来たのが判った。


「リ~ン!疲れただろうに」


まるで調整が終わるのをずっと待っていたかのように奔り込んで来るのは。


「げ?!お父様ッ?」


アークナイト社を傘下に収める企業家ロナルド・フェアリー氏だ。


「おお~!ワンダフルなスーツを着こなしているねぇ」


リィンの少しはだけたプラグスーツ姿を見るなり・・・


「ぎゃぁ?!お父様ったら!」


思いっきり抱きしめる・・・とは。


「何を恥ずかしがる?リ~ンとは3日も会っていなかったのだぞ」


「たったの3日でしょ!たったの!」


逃れようとロナルド氏を突け放すリィン。


「お~のぉ~。パパはこんなにも愛しておるのに」


「い~加減に娘離れしてよぉ~」


はぁはぁ荒い息を吐きながら、なんとか娘を溺愛する父親から逃れてみれば。


「ロナルド様、リィンお嬢様の仰られる通りですわ」


傍に金髪の理知的な女性が立っているのに気が付いた。


「あ・・・フューリーちゃん」


細面で線の細い感じの女性。

それでいて自分に自信があるのか、他人を見下しているような冷たさを感じる。


「どうも・・・リィンタルトお嬢様」


軽く会釈をしてくるフューリーさん。

その眼はリィンに向けられたまま。


ー 苦手。私はフューリーちゃんの眼が怖い・・・


声を詰まらせてしまうリィンへ。


「いつ見ても妖精のようですわね・・・リィンタルトお嬢様は」


プラグスーツを眺めまわして言うのだ。

まるでロナルドの上手を行くような偏愛者のように。


咄嗟にリィンは視線をはぐらかす様に後ろを向くと。


「ありがとうって言ったら良いの?」


自分に好意を持っているのか、身体にだけ興味があるのかと怖がったのだった。


「そうですわね。誉め文句とでも思って頂けたら」


しかし、フューリーの方は意にも解さず見詰めるだけで。


「今晩はディナーのご用意が整っておりますので。

 ロナルド様と同伴為されますように・・・分かりましたね」


逃げ腰のリィンへとくぎを刺して来るのだった。


「うん・・・今日は逃げないから」


「おお~!リ~ン、それでは直ぐに支度しなさい」


飛び上がるように喜ぶロナルド氏と、あまり喜んでいないリィン。


「だって・・・今日はレィちゃんはお仕事だって言ってたから」


それだからこそ、研究室に来ていた。

麗美レィの傍に居られない事が分っていたから、承諾した訳でもあるのだ。


「宜しいですわ。それでは仕度係達にご用意させましょう」


フューリーは有無を言わさぬ速さで、3Dフォンを取り出してメイドに準備を促し始める。

父であるロナルドも苦手だが、傍に居るフューリーはもっと苦手。

諦めたリィンはまだ研究室に居たエイジに。


「レィちゃんにまたねって・・・伝えてね」


寂しそうに一言だけ伝言を頼むのだった。


「ああ、分かってるよリィンちゃん」


麗美レイミの弟である衛司エイジは、少しでも元気付かせようと笑って。


「どうせタナトス教授と揉めてるんだろうから、逢わない方が良い筈だよ」


今日はロナルド氏に付き合う方が良いと教えるのだった。


「そっか・・・レィちゃんはあの人と会ってるんだ」


リィンは聞き覚えのある名を聞いて納得する。


「人類再生計画とか・・・訳わかんない研究者だよね、あの人って」


タナトス教授のことは、レィからも聴いていたし。


「まるで悪魔の様に怖い顔の人だったよね」


「しぃ~~~!そんなことを言っちゃだめだよリィンちゃん」


エイジに窘められて、リィンはそれ以上言葉にするのを止めると。


「だったら尚の事!レィちゃんに言っておいて欲しいな。

 リィンも頑張ったんだから、レィちゃんも・・・ファイトだよって!」


フューリーに促されながらも、リィンはエイジへ頼んだ。

お互い頑張ろう、お互い我慢だよ・・・って。


手を振って自分を送出してくれる弟君エイジへと・・・




捕まっちゃったようですね。

娘偏愛者であるロナルド氏にW


まぁ、父の相手も偶には良いじゃないの?


リィン「うぅ~ざぁ~いぃからぁ、嫌なの!」


世の父殿に告ぐ、あまりべたべたするもんじゃないぞよ?!


次回 Act10 歪んだ研究

リィンが心配したとおり、レィは相手を怒らせる?遺憾ネェチミ

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