第七話 蓮池城下の評定
翌日。十分に睡眠を取った俺は、日の出と共に起きた。
顔を洗おうとして、井戸の方まで行こうとすると、そこには家兼さんが上半身裸で、木刀を持って素振りをしていた。
「おはよう」
「!おはようございます。松法師丸様、お早いお目覚めですね」
そう言って手に持っていた木刀を振るのを辞めた。
「そういう家兼さんは、何をしていたの?」
「鍛錬をしておりました。この戦乱の世ではいつ何が起きるとも限りませぬゆえ」
あぁ、なるほど。この鍛錬をしているから筋肉がモリモリなのか.....
そんなことを思っていると、
「.....それと、つかぬ事をお伺い致したいのですが......その......家兼さんと言うのをやめてくださりませんか?」
「....?」
「その.......主が家臣に対してさん付けで呼ぶのは、さすがに如何なものかと.....」
.......言われてみれば確かにそうだ。家臣に対してさん付けで読んでいたら家のトップとしての面目が立たない。
「.........家兼、すまなかった。そこまで頭が回っていなかった」
「いえ。わしは大丈夫ですぞ」
「それじゃあ、家兼。俺は今から顔とかを洗ってくるから、一刻後に家臣を全員大広間に集めておいてくれ。昨晩のことを含めて、皆に伝えてこれからの少弐家について決めておきたい」
「!承知致しました松法師丸様。それではわしはこれにて」
そう言って、家兼はまた鍛錬を再開した。
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一刻後。俺は家臣を集めて、大広間にいた。
皆が静まり返り、俺が何を話すのかを待っていた。
「皆、集まってくれてありがとう。改めて、俺が親父....少弐資元より家督を継いだ、松法師丸だ。今日皆に集まってもらったのは他でもない。これからの少弐家についての評定をするためだ。」
ザワザワ......と皆が騒ぎ出す。まあ、無理もないか.......
まだ中学生にも満たないような子供がいきなりお家のために評定を開くんだからな。誰だって驚く。
「驚くのも無理はない.......だが、聞いて欲しい。俺はなんとしてでも親父が残した少弐家を、領地を、奪還したい!」
俺は大きな声でさらに話を続けた。
「
だが、俺には力がない.......しかし、俺には親父が残してくれたこれがある!」
そう言って、親父が残してくれた手紙を皆に見せた。
「この手紙には亡き資元様が松法師丸様のために、少弐家のために残してくれた、金の隠し場所が書かれている」
「なんと......!」と1人の家臣が言葉を漏らしていた。
「この金を使って俺は少弐家を再興したいと思う!だが、それだけではお家の再興はなせない。どうかみなの力を貸してくれ!」
少しの静寂が評定を取り巻いた。
「......松法師丸様。わしら全員、あなた様に付き従う所存でございます。どうかわしらの力をお使いください」
そう家臣を代表して家兼が言った。
「.....!!皆の衆!よくぞ言ってくれた、ならば思う存分みなの力を使わせて欲しい!」
「は!!!!」
と家臣がみな頭を下げて、言った。
待っていろよ......大内家.......必ず、必ず親父の仇をうちに行ってやるからよ......!!!
俺は心にそう刻み込んだ。