第三十二話 将盛まであと一歩
しゃああああああ!!!
俺たちは役人風の男についていく。大きな門のある屋敷のような場所に通され、そのまま客人用の部屋へと通された。通されたメンバーは、俺、家兼、清久、鑑房と数名の供回りである。
清房と資誠の二人は屋敷外にいる他の家臣団をまとめている。椿もその中に紛れているはずだ。
「ここでしばし待たれよ」
そう言うと、役人風の男は部屋を出ていき。俺たち数名だけが室内にいる、という状態になった。
ふむ…と清久が言う。
「松法師丸様、やはりさすがに早急が過ぎましたかもですな。もしかしたら当主本人に会えぬやもしれませぬな」
「…確かに早急が過ぎたかもしれない。だがもし、もしここでよい結果が出せれば、対馬滞在はおろか庇護を約束してくれるやもしれない。そうだよな、家兼」
「そうでございますな。あくまでも今は夢物語でしかございませぬが…わしも全力で松法師丸様に尽力いたしまするぞ」
やはり頼れるのは、おじいちゃん。おじいちゃんis strong。
「松法師丸様は、七つの童であることが交渉には有利ですぞ。童であれば、相手方の警戒心も多少は和らぎましょう」
確かにこの子供の体というのも悪いことじゃないか、そういう面では。大体子供であればどこぞのいかつい893みたいな人よりかは安心もできる。…まぁ、舐められやすいっていう欠点もあるが。
というか俺七歳かよ!初めて知ったわ。
そんな俺にとって結構重要な話を横目に清房が家兼に続けて話をする。
「あの夜のころから松法師丸様は大きく変わられましたな。以前の松法師丸様はもう少しそのあまり態度が芳しくなかったので…まるで別の人格が入っているかのようじゃ、はっはっは!」
ドクリ。心臓の鼓動が早くなる。清房…当たってます。ドンピシャです。呼吸も早くなる。何かうまい具合に回避せねば…!
「はははは、ならば毘沙門天が宿ったと思っておいてくれ」
この一言が余計だったのかもしれない。この部屋の中には「?」みたいな、擬音で例えるなら…そう、ポカーン?な空気になった気がした。
「毘沙門天…?」
え、何この反応。まさか毘沙門天知らない…?現代だと結構有名だけどまさかこの時代だとあんまり有名じゃなくて、よくわからん芸能人の名前出されたときみたいな感じの雰囲気になってる?これ
っていうか、まだ上杉謙信まだ活躍してないのか!あの人のおかげで毘沙門天は結構有名になって気がするからそれなら確かに納得がいく。…やっべぇ。かなりやばい。マジで勘のいい清房くらいならまじで別人格入ってるって気づくぞこれ。
「松法師丸様…?」鑑房が訝しむ。何やら俺が焦って呼吸が早くなったのを感じたのかもしれない。
「ハッハッハ!!」
そんな声が響いた。声は清久であった。
「松法師丸様!やはりあなたは神童ですな!よもや武人で知られる毘沙門天を知られておるとは!ハッハッハ、いやはやこの清房、感服いたしましたぞ!」
っめっちゃ笑ってるやん、清房。というかこれ、ばれてない…?これ察せられたやろ、この感じ。
…もういいや知らん。それで通そう。神童少弐松法師丸。うんこれでいいや。
「そうだな!アッハッハッハ!」
バタン、と部屋の戸が開かれる。誰だ…と思ったらさっきの役人男か。
「…楽しそうな場のところ申し訳ありませぬ。当主、将盛様が会うので連れてまいれと言われましたのでこちらへ」
どうやら談笑はここまでのようだ。ここからが正念場だ、松法師丸。
じゃあ、宗将盛に会いに行くか。
俺は畳特有の感覚を噛み締めた。
今年最後の話だぁ!!
本当に遅れました…
来年もどうぞよろしくお願いします!!!!!!!




