第十三話 祖父と父
遅れましたああああああああああああああああ
すいませんでした……
俺は専称寺の和尚である浄心和尚に連れられ寺の奥へと案内された。
先ほどいたところから、少し歩くとそこには、少し古い墓石と土が掘り起こされた跡が残っていた。
これはいったい…?
そんな疑問に答えるように浄心和尚は言う。
「この墓は、そなたの祖父である少弐家第15代当主政資様の墓でございます。そして、横にはそなたの父上の遺体を弔わさせてもらっております」
「父上のッ?!」
俺は驚きのあまり声を荒げてしまった。
多久の城が落城してから、父の首は取られたにしても、遺体の方はどうなっているのかと思っていたが
…まさかここにあるとは思わなんだ。しかも父上だけではなく祖父の墓だと…?
ということは…
ここはもしかして少弐家の菩提寺…というやつなのか…?
「………」
少しの沈黙が訪れる。
そして、俺は疑問に感じたことを浄心殿に投げかけた
「…浄心殿、祖父は…祖父は、どのようにして亡くなったのだ…?」
その質問をすると、浄心和尚は俯き顔を暗くした。
そして、そのまま俯きながら答えた。
「…自害なされました…この寺で」
「そなたの祖父 政資様も此度の御父上様の件もその両方に大内氏が関わっているとは…まさに大内家は少弐家の宿敵とでもいえるべき存在ですな…」
そうか…祖父も、父上もあの大内のやつらに殺されたのか…
「大内のやつらメェェェ…!」
父上だけでなく、祖父までも…
歯ぎしりをしながらプルプルと震える俺を見て、浄心和尚は言う。
「松法師丸様…お気持ちはわしにも痛いほどわかります。しかしここはこらえてください。必ず、必ずや少弐家を再興する機会がございましょう。今はまだ松法師丸様には城も、土地も、家臣も、いない…そのために御父上様は金塊を残してくれたのではないのですか?」
そうだ…俺は父上と約束をしたんだ…
「少弐の血脈を残せ」と…お家の再興を…
「松法師丸様。荷を積み終わりました。すぐにでも出立できまする。お下知を」
あぁ…家兼か…
家兼が俺のすぐそばに寄ってきて答えた。
「さあ準備は整いました。松法師丸様、あなたの行くべき場所はどこですかな?」
浄心和尚がそう言ってきた。
「…あぁ、浄心殿。ありがとう。お陰で落ち着けたよ」
「いえ、私は何もしておりませんがねぇ…」
浄心は白々しく言う。
俺は浄心殿に深々と頭を下げて、その場を後にした。
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ガチャガチャ……ガチャガチャ……
山の中の山道を全速力で駆ける兵の集団がいた。
「急げ!早くしろぉ!もたもたしていたらおぬしらの命はないと思え!!」
馬に乗っている大将らしき人が兵に向かって怒鳴っている。
「まったく…俺らの大将はあっちへ行けこっち行けって、ひどいもんだよなぁ…はぁ…」
と兵の一人がぼやいた。
「はぁ…はぁ…まったく、そうだな…はぁはぁ」
と隣にいた兵が言う。
そんな兵の会話が聞こえたのか、馬に乗った音がこちらへ来て、
「そこぉ!話しておるならもっと走れぇ!おぬしらの首をたたき切るぞぉぉぉぉ!!!」
と怒鳴り散らしていった。
そんな怒鳴り散らしていた男は馬の上からかがり火で輝いている多久城を見ていた。
ー多久城下まであと半里。




