第十二話 専称寺 浄心
一月一話です!!!( ー`дー´)キリッ
俺たちはまたしても居城に戻ってきた。
いや今は”元”居城か。
俺は後ろについてきている家臣たちにばれないように少し自虐的な笑みを浮かべた。
俺だって少しくらい笑うくらい…いいよな。
今の俺はこの戦国の世に転生してきてまだ三日しかたってないんだからな…
我ながら三日でこれだけ濃い時間を経験したのは生まれて初めてかもしれない。というか生きていること自体がすごいと思うぞ。まじで。
…転生してるから、この体で生まれてからだと三日間か…?
そんなことを考えながら街道を走っているとちらほらと家々が見えてきた。
どの家も窓や戸が壊れていたり、矢が突き刺さっていたりする。
そして、左側にはかがり火で照れされ輝いている多久城がある。がやがやと城内で騒ぎ楽しんでいる様子が遠くにいる俺たちにでも声で伝わってくる。
「………」
俺はすぐに顔を下へ下げ多久城下の寺へと足を進めた。
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「ここがその寺か…」
俺らは多久城下の寺…資元の示したもう一つの金塊のありかの場所へとやってきた。
「ギィィィィ」と鈍い音を上げ寺の門が開いた。
まるで俺たちを待っていたかのようなタイミングだった。
「ようやっとたどり着きましたか松法師丸様」
そういって中から一人の爺さんがやってきた。
「あ、あなた様は!」
と小姓が驚いた表情をして半ば叫ぶように言った。
驚くのも無理はない。何せその爺さんの顔は
「案内人のおじいさん…?」
そうなのである。顔は日中に出会ったおじいさんにそっくりであった。
ただしあの時とは違い腰はピンと伸びており、肌のしわもほとんどなくなっていた。
「ほっほっほ。まぁ驚くのも無理はありますまい。松法師丸様。この姿で会うのは初めてですな。私この専称寺で住職をさせてもらっています、浄心と申します」
「やはりあの使者は浄心殿でございましたか!お久しゅうございます」
と、いうや否や家兼は頭を下げた。
「家兼様、お久しゅうございます。…では早速ですが、金塊の場所に行く前に、少し案内したいところがありますので、まずはそちらから…」
とおじいさん…もとい浄心は言った。
「いえ浄心殿、私共は急いでおりまして、すぐにでも行きたいのですが…」
「ええ、すぐにも金塊を取りたいのはわかりました。ですがこの寺に少弐の嫡子である松法師丸様がいらっしゃるのですから、あの出来事についてお話ししないわけにはいかないでしょう」
と家兼の方を見た。
かなりの威圧だ。家兼と同じくらいの威圧力だ。
「…わかりましたでは私どもはすぐにでも金塊を運び出せるように準備しておきます。では松法師丸様をお願いします」
と言い俺を浄心の方へと行かせた。
「…わかった。では案内をよろしく頼む、浄心殿」
俺は少し戸惑いながら寺の奥へと案内させられるのだった。
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「はあああああああ???!!!来ていない?!ふざけるな!こっちに来ているのはわかっているんだぞ!」
男は言った。
「ですから何度も申しているように、こちらに少弐の一行は来ておりません!我らは大内傘下ではござりませんが、そちらとことを構えたくはないのです。そんなことをして我らに何の得がございましょうや」
「ぐぐぐぐぐぐ」
と男は苦虫をつぶした顔をしていた。
「やはり東へ逃げていたのでしょうか…」
と横の男が言う。
「何がやはりじゃ!!ふざけるのも大概せよ!くっそがぁ…!!」
ドン!と大きな音を立てて男は立ち上がる。
「これより全軍多久城へ戻るぞ!!何としてでもあの少弐の嫡子を討ち取るのだぁ!」
空を見上げると、満月に雲がかかっていた…
専称寺は実際に多久城下にあるお寺ですね。
現在は少弐政資・少弐資元親子の位牌と供養塔があるようです。
機会があれば一度多久城へ足を運んでみたいですなぁ…
浄心は架空の住職です。(まぁ同名の方ならいるようですが…)
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