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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
転生記~始まりの伝説編~
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永遠なる誓い!終幕の時?

孫悟空が鵬魔王の剣にて絶体絶命の窮地の時


その者は現れた!!


今、最後の戦いが始まる。


俺様は孫悟空だ!

満身創痍の俺様に鵬魔王の剣にて突き刺されるその瞬間…


俺様は救われた!?

俺様が涙して見上げるそいつは神格化した三蔵の姿であったのだ!



「三蔵…やっぱり…」


喜ぶ俺様と反対に顔を青ざめて叫ぶ鵬魔王?


「あ!あ!ありえない!」


「!?」



突如、錯乱する鵬魔王?

その狼狽ぶりは俺様から見ても尋常じゃなかった。


「まさか私の鵬魔の剣が人間ごときに折られるなんて?いや!そんな事は問題ではない。お前が…お前が生きているはずはないのだ!」


鵬魔王は三蔵に向かって襲い掛かる。

が、逆に鵬魔王は三蔵の持つ降魔の剣で身体を裂かれたのだ。


「ウギャアアア!」


鵬魔王は傷を押さえその場から距離をとるが、その目はまだ信じられないといった感じだった。


(ありえない…お前は、この私がこの手で間違いなく…)




鵬魔王は思い出していた。

それは、鵬魔王が三蔵を拉致した時の記憶…


『ウッグア!!』



三蔵は鵬魔王に拷問を受けていたのだ。


「キサマの様な人間に!どうして美猴王兄貴が!」


鵬魔王は燃え盛る鞭で、三蔵の身体を叩きつけていた。


『…………』



鞭で打たれた部位の肉が焼き焦げていた。

三蔵の身体から流れる血が床を染めていく。

すると三蔵は鵬魔王を睨み付けた後、無言で口許に笑みを見せたのだ。


「きぃ…キサマ!この私を馬鹿にしているのか?下等な人間の分際で!」



鵬魔王は逆上し、その鋭い爪を三蔵に振り下ろした。


「気にくわないんだよ!お前はぁああ!」



鵬魔王の爪が紅く染まっていた…

その爪が三蔵の胸を貫いたのだ!

しかも、その手には?


その手には…


その手には!!




俺様と鵬魔王が死闘を繰り広げている同時刻…


「ウオオオ!もっと力を注ぎ込むらぁ!」

「ハアアア!」


沙悟浄と八戒は傷ついた三蔵に有りったけの治癒の気を送っていた。


「無理よ!もう諦めなよ!」


「諦めるなや!後、後少しなんらよ!」


「だって…」


鉄扇の手は止まっていた。

それでも八戒と沙悟浄は諦めていなかった。


「鉄扇ちゃん…それ以上言わないで…」



鉄扇はこの無意味な行動の切なさに、涙を流しながら叫ぶ。



「だって!心臓を抜かれて…助かるわけ…ないわ!」


「!!」



鉄扇は沙悟浄達のしている事に見ていられなくて、とうとう膝をついて泣き崩れたのだった。


そうだ…

俺様が到着した時見た三蔵の胸には、貫かれた傷跡があり…

その心の臓を抜かれていた。

泣き崩れる鉄扇に向かって八戒が叱咤する。


「そんなの関係ないら!」


「あんた達馬鹿よ!」


鉄扇は二人を見て気付く。


「!!」



沙悟浄と八戒は休む事なく気を送りながら、


「分かってるらよ…でもよ…でもよ…」



その顔は涙で泣きじゃくりがら…



「何かをしていなきゃ…ああ…あぅ…オラ達の…オラ達の気がすまねぇらよ!うぅう…止めてしまったら…やめて…しまったら…認めなきゃ…認めなきゃいけねぇじゃなぃらか!」


「…豚!」


「私も同じです…三蔵様は…生き返る…生き返るんです!私達が…絶対に…ううう…死なせたりなんか…ううう…」


沙悟浄の胸元からは血が流れていた。

鵬魔王にやられた傷が再び開いていたのだ。

それでも沙悟浄は自分の治癒をもそっちのけで三蔵に治癒を施していたのだ。



「河童ちゃんまで。もう…仕方ないわね!付き合うわよ!」


「そうら…もう二度と…大切な…友を失いたく……友?」



その時、八戒が額に手を置き苦しい顔をする?


(こんな時に…なんら?)


突然起きた頭痛に耐えながら、再び三蔵に気を送る八戒。


「ダメら…集中ら…集中しなきゃ…」



その時だった!

沙悟浄が空中で繰り広げられている俺様と鵬魔王の戦いを見上げて気付いたのだ。


そこで見たものとは?



「あっ!八戒兄貴!孫悟空兄貴の戦っている場所を見て下さい!」


「うるさいら!猿の奴は必ずやってくれるら!だから…心配なんて…あっ…あああ!」



八戒もまた気付いたのである。

三蔵が精悍なる姿にて俺様の危機を救いだした姿を!



「さ…三蔵はん?」


「三蔵様?三蔵様だ!三蔵様がいらっしゃるじゃないですかぁ!?」


「嘘!そんな馬鹿な!だって…」



目の前には確かに三蔵の傷付いた身体がある?


(どうして?)



俺様もまた驚きを隠せないでいた。

しかし俺様の目の前には間違いなく三蔵がいる!

それで充分じゃないか?


「三蔵!生きて…生きていたんだな?アハハ…信じてたぞ!」



すると三蔵は静かに言葉を呟いた。


『猿!いや…聖天大聖・孫悟空よ!』


「何だよぉ?改まって?らしくないぜ?」



三蔵は俺様の目を真っ直ぐに見ていた。

俺様も三蔵から目を逸らせなかった。



『覚えているか?あの日の約束を?』


「何だよ?約束って!」



俺様にあの日の記憶が頭を過ぎる。




「なぁ、猿よ…もし、この俺がいなくなったらどうする?」


「あん?そんなん決まってるだろ?自由だ!自由になって暴れまくる!」


「そうはいかないぞ?」


「あん?」


「お前にはいつか…」



いつか…


忘れていた記憶があの日の約束を思い出す。




「アハハ!何を言ってるんだよ?それよりよ!二人で戦えば鵬魔王なんてイチコロだぜぇ!」



俺様は三蔵の顔を見た。


「!!」



俺様はそこで気付いた。

それは三蔵の流す涙だった。

そして、三蔵は俺様に言ったのだ。




『俺の旅はもう終わりだ…だから…頼む!…あの日の…あの日の約束を…』


「!!」



俺様はただ三蔵の言葉を黙って聞いていた。



『お前達に託して良いか?』



三蔵の目は真っ直ぐと俺様を見ていた。



『“友”であるお前達に!』



その声は八戒と沙悟浄にも聞こえていたのだ。



俺様は顔を下に向け、拳を三蔵に向けて差し出す。

地上にいた八戒と沙悟浄も同じく、拳を三蔵に向けていた。


その目に涙を浮かべながら…


あああ…

涙が止まらない…


涙を見せたくない…

こんな泣きじゃくた顔を三蔵には見せられねぇよ…


だから、正面で顔を合わせられない…

俺様は声を奮い起こし…


たった一言…


三蔵に答えたのだ。


『誓う!』と!!



八戒と沙悟浄もまた同時に同じ言葉を発した。

その言葉を聞いた三蔵は満足そうであった。



『託したぞ…そ…ん』



三蔵が言葉を言い終える前に、


「!!」


鵬魔王の振り下ろした剣にて斬り裂かれたのだ!


「あっ…あぁあああ!!」




三蔵は友である俺様達に全て託し、消えていった…

最後に俺様は見たのだ。


三蔵の笑みを…



「さ…さん…ぞ」



俺様は目の前で起きた三蔵が消えていく最期に身動き出来ないでいた。


「ゼェ…ゼェ…」



そして、息を切らして俺様を見ている鵬魔王に怒りが!怒りが!怒りがぁー!



「ほ…鵬魔王!キ、キサ!キサマ!キィサァマァアア!」



感情が抑え切れない…


感情が!感情が!


感情が爆発する!!



『ウゴォオアアアアアアアア!』



ブチ切れた俺様の身体から、天に届くほどの覇気が迸ったのだ!

そして、その時…

俺様の心に声が聞こえて来たのである?

その主は俺様の高ぶる感情によって呼び覚まされ、俺様の願いに応えたのだ。



《力が欲しい?》


《だったら…僕を…》


《起こして… 》


《そして…君の意識と身体を僕によこして…》




身体を?意識を??



《そしたら力を…君に…“僕の力”を与えられる!》



俺様は迷う事なく答えた。



「力を貸せ!今すぐにぃだぁああああああああああああああああああ!」



《ドクン!》


鼓動が速くなる?

俺様の身体がまるで超振動の如く揺れ始め、俺様の身体に異変が起こったのだ!



「猿の奴!どうしたら!?」


「何か様子が変ですよ!」



八戒と沙悟浄も俺様の変化に気付き始めた。


静けさとともに世界が揺れ動く…

冷気が辺りを凍てつかせていき、その場の時を止める。

空が暗い闇に覆われていく?

黒い闘気…

それは、死を呼ぶ魔神の覇気であった。

そして俺様を中心に全ての『時』が動き出したのである!


『ウググググ…』



俺様の身体が変色する。

黒く!黒く!黒く!

皮膚が褐色化し、俺様の金色の髪が銀髪へと変色し、そして…

俺様であった者は別の誰かへと変わっていった。


その俺様の身に起きた突然の変化に、鵬魔王が身体を震わせていたのだ。



「お…お前?まさか…そんな馬鹿な?お前は確かにあの時消滅したはずだろ?何故、そこにいるのだ!何故お前が美猴王兄貴の中にいるのだ!ありえん…あってたまるかぁあああ!」



鵬魔王は俺様の変化した姿に別の何者かの姿を見ていた。

いや?その正体を知っているようだった。

変化した俺様の身体は漆黒の闘気に覆われ、宙に浮いていた。

その姿を見て、鵬魔王は再び鵬魔の剣を構成すると炎の妖気を籠めていく。

地上にて俺様の変わり果てた姿を見ていた八戒と沙悟浄も、その姿に心当たりがあった。



「八戒兄貴…あの孫悟空兄貴の姿…間違いありません!あの時の!」


「猿…お前…」



二人はその変化した姿を既に見ていたのである。

それは以前、この俺様が暴走した姿だったのだ。



「どうしてお前がいるんだよ?どうして美猴王兄貴の中にお前がいるんだぁーー!!」



鵬魔王は動揺しつつも鬼気迫る表情で銀髪の俺様に向かって叫ぶ!

そこには今まであった余裕が感じられなかった。



「お前はいつもそうだった!突然現れ、美猴王兄貴を惑わし、同じ六大妖魔王であったにもかかわらず、私達を裏切り、破滅と絶望を呼び込んだ元凶!何故今この時!しかも美猴王兄貴の中から現れる!!」



鵬魔王の問いに銀髪の俺様は答えた。



『孫悟空の激しい怒りと悲しみの感情が、中[魂の中]にいた僕を呼び起こし目覚めさせた』



「ぬけぬけと!お前が何をしたか忘れたとは言わせない!私から美猴王兄貴を奪った挙げ句、殺した張本人じゃないか!何とか言え!」


『六大妖魔王・偶獣王!!』



それは銀髪の姿の俺様の名前なのだろうか?


六大妖魔王の偶獣王…


ダメだ…思い出せない?

一体、俺様の過去に何が?


だが、それを考える前に鵬魔王が仕掛けて来たのだ。



「死ぬが良い!黒き亡霊よぉーー!!」



鵬魔王の身体から凄まじい覇気が解放させたのだ!

それは大地を揺らし空を燃え盛る炎で真っ赤に染めていく!

これが本来持つ鵬魔王の本来の力…

妖魔王としての力なのだ。

こんな力をまだ隠していたのか?

いや…今の俺様相手に全力を出すつもりはなかったはず。

しかし状況が大きく変わったのだ!



死んだはずの三蔵の復活に、

俺様から現れた銀髪の偶獣王と呼ばれた少年の出現に!

予想だにしなかった異常事態に、鵬魔王は本能的に危機感を感じた。


鵬魔王は両手に燃え盛る鵬魔の剣を手にし俺様に向かって襲い掛かる。



「良いだろう!所詮お前はあの時死んだ身。そのような亡霊など私が再び地獄に消し去ってくれるわー!」


『………』


が、鵬魔王の剣が変貌した俺様の身体に触れる前に消滅したのだ。



「馬鹿な!馬鹿な!やはりお前は…くそおおお!」



鵬魔王から凄まじい業火が放たれる!


「お前なんか!消えちまええええ!」


『鵬魔炎術・焔化の華魅血』

※エンカノハナミチ



鵬魔王は両手を広げるとその背に燃え盛る翼が出現し、鵬魔王の足下から熔岩の如く熔けながら俺様を飲み込んでいく。飲み込む?否!その炎は俺様の身体から噴き出した別の炎によって逆に飲み込まれたのだ。その炎の色は黒…

白虎の持つ魔の魂を浄化を目的とした白き雷に対して、この黒き炎は魂を喰らい消滅させる恐ろしき炎。漆黒の炎が鵬魔王の放った炎を喰らい飲み込んでいく!


「それは地獄の炎か?うっ…うぐわあああ!」



鵬魔王は黒い炎に飲み込まれる。

が、さすがの鵬魔王…

命からがら黒い炎から這い出して来る。



「はぁ…はぁ…」



鵬魔王を圧倒する俺様はゆっくりと右腕を挙げ、一気に降り下ろす。

すると黒炎の刃が大地を斬り裂き、鵬魔王を襲ったのだ。

咄嗟に鵬魔の剣を新たに出現させて交差し受け止めるが、

その剣は砕け散り鵬魔王は弾き飛ばされる。


「うぐぅわああ!」


のけ反り倒れこむ鵬魔王はゆっくりと向かって来る俺様を見て、



「グハッ!こんな奴に…こんな奴に勝てる訳ないだろ…」



圧倒的な力を前にして鵬魔王は戦意喪失になっていた。


「この場から逃げねば…」



だが、その先には俺様が瞬間的に移動して先回りし待ち構えていた。


「ヒィイイイ!」



鵬魔王が怯えながら逆方向へと逃げ去ろうとするが、背後から頭を鷲掴みにし吊るし上げられると、右拳に闘気を籠めた強力な連打を叩きこまれたのだ!


「うがぁあああ!」


鵬魔王は堪らず絶叫をあげる。

それほど強力な打撃であった。

さらに鵬魔王の顔面を掴んだまま、上空へと放り投げたのだ!

そして空中に飛ばされた鵬魔王に偶獣王は狙いを定める。


「このまま消す!」


掌から凄まじい闘気が籠められると、鵬魔王に向けて放たれる・・・



≪待てぇーー!!≫



その声に偶獣王の意識が止まった。

声の主は勿論、偶獣王の中にいる俺様だった。



「孫悟空?何故邪魔をする?今、終わる所だったのに?」



突然、身動きが止まった偶獣王に気付いた鵬魔王は逃げるのを止め、



「奴は危険だ!必ず再び世界を闇に変えるに違いない!せめて…道連れに始末してやる!私の再生力があれば淡よくば私だけは助かるかもしれないしな。それに天界に恩を作るのも悪くないか…いや!そんな事よりも…あいつを美猴王兄貴の傍にいさせる事が絶対に許せやしないー!!」



鵬魔王は己の持つ全ての妖気を右手に籠めたのだ。



『鵬魔炎術・炎刑奪猛掌』

※エンケイダツモウショウ



鵬魔王の腕が妖気を纏い、まるで熔岩のような高熱を持ち始める。

最終奥義で急降下して来る鵬魔王に気付いていないのか?

鵬魔王の最終奥義が迫る今も偶獣王に意識を預けた俺様は動かなかった。


そして鵬魔王が偶獣王を射程距離に捉えた時だった!

偶獣王の身体がブレて、


「何!?」


偶獣王の身体から金色の俺様[孫悟空]の身体が抜け出し飛び出して来たのだ!



『獣神変化唯我独尊!』


俺様の身体が成長し、金色の髪を振り上げ、猿神の鎧を纏い現れたのだ。



「鵬魔王ぉー!テメェの命は俺様が奪うと言っただろー!」



俺様は手にした如意棒を鵬魔王に向けて投げ付ける!


「クッ!」


鵬魔王は自らの勢いを殺して、俺様の投げた如意棒を躱した。

微かに頬を掠めた如意棒は鵬魔王の後方へと飛んで行った。


「危なかった…まさかカウンター狙いだったとはね!でも、ざんね…」



その時、鵬魔王は向かって来る俺様の姿に昔の美猴王の姿を被らせて見てしまったのだ。

その一瞬の戸惑いが命運を分けた。


「!!」


一瞬の油断。

全ての力を拳に籠めて向かって来る俺様の覇気に圧されて後退しようとした時、鵬魔王は逃げ場を失っていたのだ??


「ナッ?」


鵬魔王の背後にはいつの間にか巨大な円柱の柱?が道を塞ぎ、凄まじい勢いで背中から直撃して押されたのだ。


「コッ?これは如意棒かぁーーーー!?」


そうだ。

俺様は先に投げた如意棒を巨大化させて伸ばしたのだ。

如意棒の伸びる遠心力から逃げられずに身動きが取れずに飛ばされた鵬魔王の視界の先には、俺様が拳を振り上げ突っ込んでいた。


「止め…えっ?」



鵬魔王は俺様の攻撃に備えてガードをしようとしたその時?

その腕が粉々に砕けたのだ??


「な…何故!?」



それは三蔵によって握り潰され、再生させたはずの腕であった。

三蔵によって負わされた傷は鵬魔王の再生させた腕の力を削り、鵬魔王ですら気付かないうちに、じわじわと…しかもこのタイミングで再び崩壊させたのだ!

三蔵は鵬魔王の肉体的腕そのものではなく、腕に宿る魂を砕いていたのだ。

それに気付いた鵬魔王の前には…


「あっ…!」


「サラバだ!鵬魔王ぉー!」



俺様の全身全霊の拳が鵬魔王の胸を貫いていた。

口から血を吐き、自分自身に起きた状況を把握する鵬魔王。


「うっ…うぅう…」



鵬魔王の体内に俺様の神気が巡り崩壊させていく。

鵬魔王は血を吐き、それでも残された力を振り絞り俺様の頭目掛けて腕を伸ばして来た。



「クッ!まだかぁー?ウォオオオオ!」



俺様は最後の最後の力を放ったのだ!

鵬魔王の体内から俺様の気が爆発する!

だが鵬魔王の腕はまだゆっくりと俺様に伸びてきて最後の力で、


「!?」


俺様を抱きしめたのだ?



「やっぱり強いや…美猴王…兄貴…このまま兄貴によって逝けるなら本望さ…」



その時、俺様は見た。

鵬魔王の満足そうな顔を…


(これは!?)


同時に鵬魔王の魂が俺様に流れ込んで来たのだ。



《美猴王兄貴…貴方は昔から仲間を作る事に長けていた


かつて何者をも寄せ付けない最強の魔王であった牛角や獅駝、それに蛟まで仲間に引き連れ…


貴方を讃え、リーダーとし地上界全ての妖怪をまとめた。


その力とカリスマ性で皆を虜にしていった。


地上界、天上界をまたにかけた荒れ狂う乱世の時代、それでも貴方の傍には、仲間達の笑顔があった。


いつも楽しげな貴方や仲間達が傍にいた。


けど、私は知っていたよ?


誰も知らない貴方の秘密をね?


そう…強欲と言いつつ好き勝手にやっていた貴方は!


実はいつも幸せから距離を取っていた事を…


無意識かもしれないけど、貴方は自分自身の幸せを避けていた。


笑顔の中にいつも孤独を背負っていた事を…


本当の孤独を知っていた事を…


せめて、そんな貴方の傍らにいて、一人にさせないようにしたかった。


そうさ…誰よりも私は…


貴方自身よりも!


美猴王!貴方を知っていたのだから!


だけど、再び出会った貴方は…違っていた。


貴方の闇が孤独が、あの三蔵と言う人間によって…


癒されていたんだ!


悔しい…貴方の傍には私が必要ないと知った絶望…


例え、今私が貴方の傍にいても変えられなかった闇を、あの人間は消し去ったのだ!


ショックだった。


そして、嫉妬が私を狂わせた…


謝っても、謝りきれないのは分かっている…


けど、心から最期に言わないと…ご…め………》




そのまま鵬魔王の身体は消滅していった。


「鵬魔王…」



あの…馬鹿野郎…

複雑な思いが俺様を締め付ける。

が、俺様もまた力尽き落下したのだ。

同じく残されていた偶獣王の身体も落下し、俺様の身体と対になって再び一つとなった。


落下していく俺様を、


「危ないらぁー!」

「キャッチでーす!」


地上で一部始終を見ていた八戒と沙悟浄が、咄嗟に飛び出して俺様を受け止めたのだった。



「良くやったら…猿…ありがとうな…」


八戒は気を失った俺様を抱きしめる。


「うっううう…」



そして八戒と沙悟浄の二人は堪えながら涙を流しうずくまった。


その後ろで鉄扇も泣いていた。




俺様達は…この戦いで…


失ったものが大きすぎた。

















その一部始終の出来事を、雲に包まれし神の住む世界にて見ていた者がいた。


そこは天界最上界、


『とうとう目覚めたか…』


威厳ある最高神が一人、俺様達の姿を千里眼で見ながら不敵に笑みを見せると、


『とうとう始まるのだな』



最高神のもとには同じく最高権力を持つ四神がつき従えていた。





『神界・魔界・地上界…ありとあらゆる世界と神々を巻き込み、揺るがす戦いの幕開けが!』


『フフフ…』



最高神は意味深な言葉を残しつつ、マントを翻し去っていった。




転生記  完


次回予告


物語は終わってしまうのか?



続話!必見?

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