奇跡!?そして現れし者!
怒りが孫悟空に新たな力を与えた!
それは西の聖獣・白虎の力であった。
今、怒れる孫悟空と最凶・鵬魔王が激突する!
俺様は孫悟空…
白虎の聖獣変化により俺様は新たな力を得た!
力が漲って来るのが分かる。
だが、それよりも…
今はただ…
てめぇに対する怒りが…怒りが込み上げてくるぜぇーー!
「てめぇは!絶対にこの俺様の手でぶっ殺してやるぞぉ!鵬魔王!」
「「ふふふ…そうこなくちゃ面白くないよ!私と一緒に楽しもうよ?美猴王ア・ニ・キ!」
俺様の怒りを前にして、それでも余裕の表情を見せる鵬魔王。
「俺様を美猴王と呼ぶんじゃねぇ!俺様は三蔵の一番弟子!聖天大聖・孫悟空様だぁー!」
俺様の雷のオーラが両手・両足へと集中していく。
全身の気を四肢へと一点に集める事で、身体能力を数倍化させているのだ。
両手に集めたオーラが攻撃力を!両足に集めたオーラがスピードを上げていく!
ただし…この技は全身の防御力を激減させてしまうためのもろ刃の剣なのだ。
加速した俺様は鵬魔王に攻撃を打ち込む。
例え躱されても、軌道を変えて止まない追撃。
次第にそのスピードが鵬魔王に追い付いていく。
「速い!速い!どんどん速くなるね?だけど、まだまだ私には追い付かないよ?美猴王兄貴」
俺様は雷の爪で鵬魔王を引き裂かんと攻撃を仕掛けるが鵬魔王には難無く躱される。幾度と振り払われる雷爪から放たれた雷の掻き爪が、鵬魔王の居城である天空城に爪跡を刻み崩壊させる。
「ふ~ん…大分攻撃力が増したようだね?」
俺様は鵬魔王の言葉に構わず猛攻を続ける。
『猛虎雷雷!』
空から鵬魔王目掛けて数百もの雷が落ちて来たのだ!
鵬魔王はそれすらも軽々躱していく。
つ…強い!!
格が違い過ぎる!?
だが、負けてたまるかぁ!
俺様は飛び回り躱しまくる鵬魔王に向かって飛び掛かり、追い掛ける。
天空城の壁や床を足場に駆けながら仕掛ける俺様の猛攻!
休む暇など与えねぇ!
否!休む暇などいらない!
俺様は呼吸する事も忘れて動いていた。
ただ…鵬魔王への怒りに身を任せ!
『白虎・咆哮音地!』
※ホウコウオンチ
俺様は息を吸い込み鵬魔王に向かって吼えたのだ!
咆哮は雷の波動波と化して放たれた。
「ぅっ…ん!」
鵬魔王は一瞬避けるのが遅れ直撃した。
初めて攻撃が命中したのだ。
「!!」
…かに思われたが、鵬魔王の奴は俺様の咆哮の雷撃を片手で受け止めていた。
代わりに俺様は自分の放った波動の勢いに飛ばされ、天空要塞から落下して行く。
「くぅ…わ!こなくそぉおおお!」
『如意雷爪!』
地面へと落下していく俺様は如意棒を抜き雷気を籠めると、その形が変形していく。それは先端が雷の鎌と鎖になったのである。まさに雷の鎖鎌!俺様は落下しながら鎖鎌を振り回して投げ付けると、鎖鎌は天空城にまで伸びて飛んでいき城の壁に突き刺さり引っ掛かったのだ。そのまま俺様は雷の鎖を縮めさせ、待ち構えていた鵬魔王に向かって再び攻撃を仕掛ける。
「お帰り!美猴王兄貴?」
「その減らず口を今に叩けなくしてやる!」
俺様は雷の鎖鎌を振り回しながら、鵬魔王に四方八方から攻め立てる。
一撃でも当たれば致命傷は免れない攻撃であるはずなのに、鵬魔王には全く当たらない?いや!しかも鵬魔王の野郎!この状況下で遊んでいやがるのか?
「凄い!凄い!凄いよ~!次第に鋭く険しくなっていくようだよ?このままだと当たりそうだ!だけど…残念?まだまだだよ!」
鵬魔王は両手で円を描き掌を合わすと、
『鵬魔炎術・火打流魔!』
※ヒダルマ
鵬魔王の身体から噴き出した炎が伸びて来て、その炎が俺様の身体に燃え移ったのだ。
俺様は炎に包まれる。
「うぎゃああああ!」
俺様は全身火傷を負いながら膝をつくが、その眼光は鵬魔王へと向けられたままであった。
身体中が痛む…
意識が飛びそうだ…
だが、俺様は倒れねぇ!
倒れてなるものかぁー!
「うぉおおおおおおお!」
気合いの覇気で炎を消し去り、俺様は炎の中から抜け出したのだ。
俺様はがむしゃらになって鵬魔王に襲い掛かる。
鎖を伸ばし、左右の手に持った鎌で斬り付け、振り回す。
その速度は雷の如し!
俺様の斬りつけた刃を躱した方向に、更に刃を繰り出す。
「あれ?速くなってはいるけど動きが単調になって来てるよ?動きが見え見え・だって!!」
鵬魔王の蹴りが俺様の腹部を蹴り付け、俺様の動きが一瞬止まった所を裏拳で殴り飛ばしたのだ。
弾き飛ばされた俺様は壁に激突寸前で身体を反転させ足で着地し、そのまま鵬魔王に向かって再び飛び掛かる。
「うぉおおおお!」
俺様の鬼気迫る追撃を鵬魔王は辛うじて躱したが、頬に傷を負ったのだ。
「くっ!」
『羽根吹雪!』
鵬魔王の無数の羽が吹雪のように俺様を囲い、鋭い刃となって俺様に向かって襲い掛かる。
「うぐぅわあああ!」
俺様は攻撃とスピードに全ての力を集中させているため、他の部位には防御力が行き渡っていないのである。むしろ通常よりも防御力がないと言っても過言ではないだろう。
そのダメージは尋常ではないのだ!
俺様は身体中に傷を受けながらも、鵬魔王に向かって一歩一歩足を前へと踏み出す。
既に致命傷になりうるダメージなのだが、怒りが痛みを凌駕しているのだ!
「白虎ぉー!もっと力をよこせぇー!!」
すると俺様の身体から雷が拡散し放たれ、鵬魔王の羽吹雪を全て撃ち落とす。
そのまま俺様は白虎の雷を纏い天空要塞の壁を駆けまわりながら特攻する。
そして飛び出すと俺様の雷の鎌が鵬魔王の喉元へと迫った。
が…その僅かで力尽き、血を吐きながら俺様は落下したのだった。
「グハァ!」
「はぁはぁ…今のは少し驚いた!やっぱり美猴王兄貴だ!でも、昔の貴方はそんなもんじゃなかったよ」
頬から流れる血を指で拭い舐める頬魔王。
その唇が血の口紅で滴っていく。
再び落下中の俺様は、地面に叩きつけられる寸前で身体を翻し体勢を整えたのだ。
「もっと!もっと力を!ガアアアア!」
「凄いよ!僕との戦いの最中にどんどんレベルアップしているみたいだよ!流石、妖魔王の美猴王だ!」
まだまだ余裕の鵬魔王に比べ俺様は気力だけで戦っていた。
「白虎ぉー!!もっと力を!もっと!もっと!もっとだ!」
だが、俺様の身体から血しぶきが噴き出す!
既に肉体が悲鳴をあげ、限界を超えていたのだ。
足に力が入らず、膝をつく俺様…
「ガアアガア!」
「おかしいな…?もしかして…本当にそれが限界なのかな?どうしたのさ!昔の貴方はその程度じゃなかったはず!私の知っている美猴王はもっと強かったよ!」
「う…うるせ…これが今の俺様だ…今の孫悟空だぁーー!」
「そう。あんなカス達と一緒にいるから。あんな人間と一緒にいるから、そんなに弱く貧弱に惨めになるんだよ!」
「黙れ!俺様は俺様だぁ!それに俺様の仲間や三蔵を悪く言うのは止せと言ってるだろ!」
「まだ、そんな事を言って…」
その時、鵬魔王が一瞬悲しそうな顔をしたかと思うと急変し、その顔付きが豹変したのだ。
「そう…もういないのだね?今の弱い貴方なんか見たくない」
「!!」
「弱い美猴王なんかいらない…存在してはいけないんだ!だったら、せめて私の手で殺してあげるよ!」
鵬魔王が両腕を広げると背後に燃え盛る炎の翼が広がり、それは次第に俺様を包み込んでいく?
『鵬魔炎術・火翼葬!』
※かよくそう
「うっ…うぐぐ…うぐわあああああああ!」
炎が身体に纏わり付く?
炎が消えない?
身体が熱い…身体が…燃えていく?
「もしこの技をくらって、今の美猴王兄貴が五体満足でいられたら…少しは見直してあげるからね!」
「こんな炎なんか!俺様の雷で消し去ってやる!」
だが、鵬魔王の炎は俺様の雷をも飲み込み、俺様は全身を焼き焦がされていく。
「うぎゃああああ!あ…諦めてたまるかぁああああ!」
怒りの感情を力に変えろ!
魂を燃やし力にしろ!
力を!力を!力を!
激情に身を預け、既に理性を失いかけた…
その時!
ほんの僅かに残った理性が過去の記憶を甦らせた。
それは三蔵との旅での記憶だった。
三蔵は感情に身を任せ戦う俺様に助言をしたのだ。
「お前は完全に‘動’の性質だな?確かに怒りの感情は力に成りうる。しかしそれは諸刃の剣だと覚えておくが良い」
「はぁ?どういう事だよ?三蔵?」
「教えてやろう!怒りを媒介に魂を力にする事を荒魂と呼ぶのだ」
「あら…あらみたま?」
「そうだ!それは怒りの感情を糧にする力…それも俺達が生きるための!戦うための力の源なのだ!だが、その力とは別の…真逆の力も存在する事も覚えておくと良いぞ?」
「真逆の力?なんだよ?それは?」
「その力とは‘鎮魂’と言う。鎮魂とは鎮める力…浄化の力の事だ!」
「ニギミタマ?」
「荒魂が荒ぶる動の力で敵を殲滅させる力に対して、鎮魂は一切の魔を浄化させる退魔の力!もし、相手が邪悪の根源たる魔を持つ者ならば、この力は限り無く有効な力となり得よう」
鎮魂!!
鎮魂は荒魂とは正反対真逆の力と言った。
その力は浄化…
怒りを根源とする荒魂は動の力に対して、鎮魂の持つ静の力の根源は?
慈愛!
俺様は荒ぶる魂の中でその力を試みた。
無理だよ…
こんな荒ぶる感情のままじゃ…
こんな悲しみと怒りが身を焦がそうとする中で、そんな力…出せねぇよ…
その時、俺様は涙した。
怒りの激情の中で、どんどん闇に心が浸食され飲み込まれていく中で涙したのだ?
そのこぼれ落ちた涙に俺様は…微かな光が見えた!?
走馬灯のように俺様の記憶が駆け巡る。
それは仲間達との旅の記憶だった。
八戒…沙悟浄、三蔵と!
共に旅した記憶!
それは闇に心が蝕まれる中に残った、唯一の光の欠片だった。
俺様は無意識にその欠片に手を伸ばして…
掴んだのだ!
その瞬間、俺様は誰かに抱き締められたような感触がした?
まるで荒ぶる魂が抑えられるかのように抱き締められているかのようだった。
三蔵に…
心が癒され、傷が癒えていくように感じた。
その時、俺様の拳から白い閃光が放たれたのだ!
強烈な閃光は俺様の身を燃やさんとする鵬魔王の炎を消し去った。
「ナッ!?」
驚きを隠せないでいた鵬魔王に向かって俺様は雷を放ったのだ!
『白虎雷撃・白夜光!』
※びゃくやこう
鵬魔王はすかさず炎の壁を造り上げる。
「フッ…まさか本当に私の炎を破るなんてね?さす……ウガァ!」
余裕を見せていた鵬魔王は自らの身体に衝撃を受けたのだ。
身体を貫く閃光に!
左肩、右胸、腹部、左腿に額を掠める雷撃?
傷付いた鵬魔王は「まさか!」という表情で俺様を見たのだ。
そこには俺様が掌に雷を纏い鵬魔王に向けていた。
しかも白き雷を手にしていたのだ。
「白き雷?」
俺様もまた戸惑っていた。
そこに俺様の中の白虎が答えたのだ。
《孫悟空よ…よくぞ引き出せたな?それが本来の私が持つ雷の力!一切の魔を消滅させる白虎の雷・白雷だ!》
何だかよく分からないが?
「鵬魔王の奴に有効のようだな?ならば、ありがてぇぜ!」
鵬魔王は傷付いた身体から流れる血を見て震えが止まらないでいた。
これは恐怖?いや武者震いであった。
「私の身体に傷を負わせた?嬉しいよ…ふふふ…流石は美猴王と言うべきだね?」
が、それは歓喜ではなく怒りであった。
「ケド!気に食わないねぇ!あの美猴王が浄化の力だとー??ふざけるなぁ!こんな力を使う美猴王兄貴なんて許せない!あってたまるかぁー!!」
鵬魔王は全身を自らの炎で焼き止血したかと思うと、傷口が消えて再生する。
鵬魔王の一族は他にも類のない再生力を持つ一族。
(クッ!)
だが、白虎の白き雷は鵬魔王の再生力を後らせたばかりか、体力を大分奪い去ったのだ。
「あの雷は厄介だ。だけど問題はないね!」
鵬魔王は両手を広げて俺様に向かって来た。
そして俺様も白き雷を纏って受けて立ったのだ!
俺様が鵬魔王と壮絶なる戦いを繰り広げている時、
八戒、沙悟浄に鉄扇は鵬魔城から脱出して地上へと降りていたのだ。
しかし、そこであいつ達が目にしたのは三蔵の変わり果てた姿であった。
「早速、治癒術を行います!皆さんも力を貸してください!」
「分かったらぁ!」
沙悟浄は霊気を高めていくと、八戒が慣れた手際で沙悟浄の背中からありったけの妖気を注ぎ込んでいた。沙悟浄は受け取った妖気を自らの体内で霊気に変換させて、三蔵に流し込む治癒術を施しているのである。既に三蔵の身体には治癒の術札が幾重にも貼り付けられていた。
「…………」
立ち惚けて見ている鉄扇に向かって八戒が怒鳴る!
「何をしているらぁ?見てないでお前も力を貸すらよ!」
「あんた達…」
鉄扇は動こうとしなかった。
二人の行動が理解出来なかったから。
「大丈夫ですよ!以前にも同じように三蔵様が瀕死状態になった事がありましてね?その時も何とかなりましたから!ただ、今回は以前よりも気合いいれないとですね!」
「そうらったな!オラも気合いいれるらよ!」
「だから…ちょっ…」
「それ以上何も言うなや!」
鉄扇は八戒の気迫に言葉を止めたのだ。
「オラ達の全ての力を出して三蔵はんを助けるらよ!」
「はい!」
「わかったわ…」
二人の気迫に鉄扇も仕方なく力を貸し始めたのだ。
沙悟浄と八戒は三蔵に治療法術を行う…
その目に涙を浮かべながら…
分かっている。
そんな事は…………
ただ、やらずにはいられないのだ!
黙って立ち止まってはいられないのだ!
何かしないと!
そうすれば…もしかしたら?
ほんの僅かな希望が…
奇跡を!奇跡を起こすかもしれない…と…
そう。奇跡が…一片の僅かな希望に全ての力と願いをこめて!
あいつ達は治癒術を止める事はしなかったのだ。
当然。
俺様もだぁー!
鵬魔王からアムリタを奪い取り、三蔵を!三蔵を!
「三蔵は俺様が絶対に助けてみせる!」
すると鵬魔王が再び笑みを見せて俺様に言った。
「まだ希望があるとでも?本気?アハハハハ!冗談止めよう?」
「笑うなぁー!冗談なんかじゃねぇー!」
「アハハ!だったらその希望の欠片を今消し去ってあげる!」
すると鵬魔王は自分の掌を見るように合図する?
「?」
すると、そこには!?
小さな小瓶が?
「まさか?それはアムリタか?」
「その通りさ!欲しいかい?」
「よこせ!それを俺様に渡せぇー!!」
俺様が手を伸ばしたその時、鵬魔王は妖しい笑みを見せて、俺様の目の前でアムリタの入った瓶を握り割ったのだ。零れ落ちるアムリタを目の当たりにして…
「あぁあああ”!」
「残念!希望が消えたよ?さて、どうする?美猴王ア・ニ・キはさ?」
「許さねぇーぞぉおおおおお!」
俺様は激情で突っ込み白き雷を放ちながら鵬魔王に攻撃を仕掛け、鵬魔王もまた炎の鞭を振り回しながら仕掛けて来た!先程までと違い鵬魔王は距離を取り、俺様の攻撃を躱すのに余裕がなかった。
俺様の白き雷を警戒しているからだろう!
だが、俺様には時間がなかった…
身体に負った傷が俺様の身体を蝕んでいたのだ。
一撃!
一撃で決着を付けてやるぜ!
俺様は鵬魔王の振り払う炎の鞭を腕で受け止め、力任せに引き千切ったのだ。
更に俺様は白き雷を全身に纏うと雷の白虎の化身と化す。
そして鵬魔王に向かって突っ込んだのだ!
白き雷の矢と化して特攻する俺様に向かって、
鵬魔王は炎を全身に纏いながら頭上に巨大な火炎弾を造り上げる。
「鵬魔炎術・火災輪完光炎!」
※カサイリンカンコウエン
巨大な火炎弾が上空から迫って来る。
俺様には既に躱す力は残ってはいなかった…
ならば、ならば貫くのみだぁー!
鵬魔王の放った巨大な火炎弾の中に消えていく俺様!
直後、上空は大爆発を起こしたのだ!
爆発の余波は天に浮かぶ鵬魔の天空要塞をも飲み込み崩壊させ沈めていった。
次第に消えていく炎の渦の中から、俺様が抜け出して来たのだぁ!
しかし、全身焼け焦げる程の重傷であった…
「ウググ…」
俺様は力尽き、次第に白虎の変化が解けていき、元の姿に戻ってしまった。
い…意識が吹っ飛びそうだ!
しかし、ここで倒れてたまるか…
大丈夫だ…俺様は倒れない…
絶対に…
視界が霞んでいく。
すると鵬魔王の目の前で力尽きて転ぶように倒れていた。
「弱すぎるよ…惨め過ぎるよ…そうか…分かった。貴方に憧れ、貴方を追ううちに、私は貴方を遥かに越えてしまったようだね?そうか…だったら美猴王は私が終わらせる。私のこの手で貴方の伝説がこれ以上穢れないように終わらせてあげるよぉー!」
鵬魔王の翼が束になり鋭利な剣になったのだ。
『鵬翼妖炎剣!』
※ほうよくようえんけん
「俺様は絶対に死なない!」
残りの気力を奮い起こし俺様が立ち上がろうとする。
「見苦しいね…さぁ!引導を与えてあげるよ!」
鵬魔王は俺様の顔面を鷲掴みにし、そのまま俺様を宙吊りにして浮かび上がる。
「は…離せ…」
「バイバイ?美猴王兄貴」
身動き出来ない俺様に鵬魔王は鵬翼妖炎剣を振り下ろした。
ダメだ…
もう動けやしねぇ…
俺様はこのまま終わるのか?
終わるのか??
終わって…
その時!!
鵬魔王の剣が俺様の眼前で止まったのだ!
何故?
目を見開く俺様の前に………??
「アッ…アアア…」
俺様だけでなく鵬魔王もまた目を見開き、信じられないという顔付きで止まっていた。
「ば…馬鹿な!?」
俺様はその正体に気付き嬉しさのあまり、身震いしながら笑い出す。
「ヘッ…へへへ…そうだよ…そうだよな…」
俺様の目から涙が溢れてくる。
そうだよな…
お前が…
お前が死ぬ訳ないよな?
「サンゾオオオ!」
三蔵が鵬魔王から俺様を救ったのだ!
俺様の目の前には三蔵が凛たる姿で宙に浮かび、鵬魔王の振り下ろした腕を握りしめ立っていた。
三蔵は降魔の剣を右手に持ち、背中から炎の翼が広がっていた…
まさに…神!
その姿は五体の明王と合身した究極明王の姿であった!
『五大明王合身!』
『フン!』
三蔵は鵬魔王の掴まえた腕を、握力のみで握り潰したのである。
堪らずに俺様の顔面を掴んでいた手を離して、距離を取る鵬魔王。
「馬鹿な…そんな事があってたまるかぁー!」
鵬魔王は三蔵目掛けて鵬翼妖炎剣を突き出したが、三蔵は逆に降魔の剣の一振りでへし折ったのだ。
「馬鹿な!私の鵬魔剣が…人間ごときに?いや、それよりお前は…お前は私が間違いなく!」
この手で殺したはず…
次回予告
鵬魔王の言葉の意味は?
次話!物語史上最高の展開が起こる!




