鵬魔炎情編!・・・襲撃!?北の大地の鵬魔王!
三蔵の身体を戻すため、北の大地を支配している妖魔王である鵬魔王が持つ万能薬アムリタを求め北の大地を目指す三蔵一行だったが・・・
そこは、荒れ果てた大地。
辺り一体焼き焦げた跡が残っている。
「うぐおおおおお!」
孫悟空兄貴の悲痛なる叫び声が北の大地に響き渡る?
「三蔵…サンゾ…サンゾォオーーー!!」
孫悟空兄貴は全身血まみれの状態で上空に向かって叫び、そのまま白目を向いて倒れた。
その近くには八戒兄貴と私も、血まみれになって倒れていたのでした。
何故?私達は此処に来てしまったのだろう?
何故…私達は・・・
『鵬魔炎情編』
それは私達が万能薬であるアムリタを求め北の大地を目指し、ようやく北の地にまで辿り着いた時でした。奴達は待ち構えていたかのように、突如上空より現れ私達に襲い掛かって来たのです。
太陽が隠れる?雲?
違う!?
上空が前触れもなく暗くなったかと思えば、空を覆う程の何かが降りて来たのです。
奴達とは鳥の妖怪達!
上空を覆う程の鳥妖怪の集団が舞い降りて来る?
「なんらなんら!?」
「お前ら!三蔵を守れ!奴達は俺様に任せろ!」
「はっ!はい!」
孫悟空兄貴は如意棒を抜くと、金斗雲に乗り降りて来た鳥妖怪を迎え撃ちました。
「うりゃああ!」
私達は、いつもの連携で襲い掛かる鳥妖怪達を薙ぎ倒していったのです。
「しかし、コイツ達は何なんら?突然襲い掛かって来るなんて…」
「そんなの、いつもと同じだろ?」
「しかし…何か様子が変ですよ!」
不思議な事に私達に襲い掛かって来る鳥妖怪達は死に物狂いだったのです。
まるで何かに恐怖し、脅えて追い詰められているかのような?
そんな鳥妖怪達の猛攻は数にものを言わせ、どんどん私達を追い詰め始めたのでした。
「くそぉ!」
「どうするら?」
その時、私は上空の異変に気が付いたのです。
「皆さん!上空を見てください!」
私達が上空を見上げたと同時に、
「ぐぅ!」
「ヌォ!」
「ヒャア~!」
強烈な妖気により押し潰されそうになったのです。
同時に上空の鳥妖怪達が円を描くように列を作り、舞い降りて来たのでした。
まるで、鳥籠のように私達を囲んでいく…
「またらか!」
「たまりませんよ!」
「気を抜くな!何か出鱈目な妖気が降りて来るぞ!」
鳥妖怪達の描く円の陣形の中心から、一匹の巨大な妖気を纏った翼の有る妖怪がまるで天使の如く優雅に華麗に美しく、そして妖しく舞い降りて来たのです。
そう!
この押し潰すような妖気の持ち主は、この妖怪のものだったのです。
「アハハハ!本当に使えない役立つだよ…たかだか人間一人を連れて来る事も出来ないなんてさ?使えない雑魚ばかりだ!本当に!結局、私が直々出向かなければいけないじゃないか」
すると、自分の片腕をゆっくりと空に翳し指を鳴らしたのです。
その瞬間!
私達に襲い掛かって来ていた最初の鳥妖怪達が一瞬にして炎に包まれ、一匹一匹と落下して来たのです。
「あっ!?何がおきたらか??」
「あれ?あの人は私達の事を助けてくれたのですか?」
そんな私達に三蔵様がテレパシーで私達に注意を促したのです。
『馬鹿を言うな!気をつけろ!奴の殺気は我々に向けられているのが気付かないのか!』
三蔵様もただならぬ妖気に意識を取り戻していたのでした。
「じゃあ、あの野郎!仲間を殺しやがったらか?」
八戒兄貴の言葉に反応して巨大な妖気の主が口を開く。
「仲間だと?アハハハ!笑わせないでおくれよ?私に仲間なんていないさ!私が必要とするのは、ただ一人」
強大な妖気の持ち主は孫悟空兄貴を指差して言ったのです。
「美猴王!貴方だけだ!」
「えっ?」
「猿!知り合いらか?」
「あぁ…昔のな…」
私達は、孫悟空兄貴の張り詰めた気を感じたのです。
それが、この妖怪がただ者でない事を伝えていたのでした。
そして孫悟空兄貴が妖気の主の名前を叫んだのです!
「久しぶりだな?鵬魔王!」
ほ…鵬魔王??
「鵬魔王?じゃあ、あの方が六大妖魔王の?」
「猿や牛角魔王の旦那と同じって事らか?」
「あぁ!そうだよ!」
私達が探し求めていた本人が自ら姿を現したのです。
つまり、この方が持っているのでしょうか?
『万能薬・アムリタ』を?
「美猴王兄貴」
鵬魔王は私達の目の前に降り立つと、そのまま…
「!!」
孫悟空兄貴に抱き着いて来たのです。
「うふふ…やっと私の元に帰って来たんだね?私はね、ずっと待っていたんだよ!貴方を!美猴王兄貴が封印されてから、ずっとずっと待っていた。美猴王は私にとって、誰よりも冷酷で!残忍で!狡猾!それでいて、何者をも畏れさせるその強さ!まさに最高の破壊者なんだ!あ~昔を思い出すよ~!美猴王兄貴や他の馬鹿な魔王達と一緒に、天界を血の海にしていた事を!」
「………」
「だから、これからも昔みたいに好き放題やろうよ?そうだ!また天界でも攻めようか?軍勢なら任せて?直ぐに集めてみせるからさ!いつする?今する?明日する?楽しみだなぁ~!とにかく立ち話は何だから私の城においでよ?おもてなしするよ!」
それはとてつもない悪魔の誘惑でした。
しかし孫悟空兄貴は冷静に首を振ったのです。
「俺様は…俺様はお前とは一緒には行かない。それより、お前に頼みたい事があるんだよ!」
「はい?何を言ってるの?」
「俺様はこいつ達と旅をしているんだ!だからお前とは行けないと言ったんだ。それに俺様は昔の俺様とは違うのだからな!」
「意味わかんないよ?こんなカス達と一緒にいて何が楽しいんだよ?こんなカス達…」
「仲間を悪く言うのはやめろ!コイツ達を貶して良いのは俺様だけだ!」
孫悟空兄貴?今、さり気なく何を?
「今、何か失礼な事言わなかったらか?」
「ですね…」
そして孫悟空兄貴は本題に入ったのです。
「それより鵬魔王?お前…アムリタって言う万能薬を持っていないか?」
「アムリタ?持ってるよ…」
「マジか!本当か?嘘じゃないよな?お願いだ!それを俺様に譲ってくれよ!」
「譲る?お願い?昔と違う?らしくないね。欲しいモノは力付くで奪う!それが美猴王兄貴だったろ?」
すると鵬魔王の殺気が私達に向けられたのです。
それに気付いた孫悟空兄貴が私達を庇うように立つ。
「孫悟空の兄貴!」
「チィ…誰がお前の兄貴だって?ウゼェナ!」
「!!」
その刹那!鵬魔王の目から高熱の閃光が放たれ、孫悟空兄貴の後ろの私の身体を貫いたのでした。
「えっ?…ガハッ!」
私は血を吐きながら、そのまま仰向けに倒れていく。
「河童!」
八戒兄貴が私を抱きかかえ傷口を見る。
「大丈夫ら!急所は外れてるら!」
本当に一瞬の出来事でした。
同時に仲間を傷付けられた孫悟空兄貴の頭に血がのぼる。
「貴様ぁ!何を!」
「ほら!弱っちい…こんなカスと一緒にいるから変な事言い出すようになったんだよ?昔から、影響されやすかったからなぁ~美猴王兄貴は!それに私以外に美猴王兄貴に『兄貴』なんて呼ぶのはムカつくんだよ!」
「いい加減にしろよ!」
キレた孫悟空兄貴が、鵬魔王の胸倉を掴み上げたのです。
「あらら?怒っちゃ嫌だよ~!ゴミカスを始末しようとしただけなのに?」
怒り狂う孫悟空兄貴を止めるように、
「あ…私は大丈夫です…それより、アムリタを…」
鵬魔王を怒らせたらアムリタを譲って貰えなくなるかもしれない。
私は孫悟空兄貴の怒りを止めたのです。
「ん?あいつ生きてたか?運の良い奴だ…じゃあ、今一度…」
再び私に向けて狙いを定める鵬魔王に対して、孫悟空兄貴が手を離し如意棒を抜くと、
鵬魔王の眼前に向けて止めたのです。
「止めろと言ってるんだ!鵬魔王!ぶん殴るぞ!」
「やってごらんよ?」
孫悟空兄貴は鵬魔王に如意棒を振り払ったのです!
しかし、孫悟空兄貴の如意棒は鵬魔王には当たらなかった。
鵬魔王は踊り舞うように孫悟空兄貴の追撃を躱していました。
まるで遊んでいるかのように。
「どうしたのさ?本気出しても良いよ?ほら!ほら!」
「くそぉ!」
「そうそう!アムリタだったよね?もし、僕にかすり傷一つでも付ける事が出来たら、あげても良いかな?」
(本当だな!)
すると孫悟空兄貴の頭にヒヨコのピヨちゃんが現れたのです。
「また力を貸してくれよ?ピヨちゃん!」
孫悟空兄貴は何をしようとしているのでしょうか?
孫悟空兄貴が神気をピヨちゃんに籠めていくと、孫悟空兄貴の身体から神々しい神気が漲っていく。
『聖獣変化唯我独尊・朱雀!』
そこには朱雀の神衣を纏い、炎の翼を広げた孫悟空兄貴が鵬魔王に向かって飛んで行ったのです。
「あれは一体何ら?猿の奴の新しい力らか?凄いらよ…凄すぎるら!」
《猿…あいつ…》
あれが孫悟空兄貴が連れ去られた後に、妖怪皇帝蚩尤とのバトルの最中に手に入れたという力なのでしょうか?孫悟空兄貴から話には聞いていましたが、見るのは初めてでした。
鵬魔王もまた飛び上がり空中での戦いが繰り広げられたのでした。
孫悟空兄貴が炎の火炎弾を鵬魔王に向け投げ付ける。
『朱雀炎・双合神炎!』
※ソウゴウコウエン
しかし、まったく攻撃は当たらない!
かすりもしない!
歯が立たない!
しかも孫悟空兄貴が放ったはずの炎が、鵬魔王の身体から燃え盛る炎の中へと吸収されていく。
「それは朱雀の力だね?」
「それが何だと言うんだ!」
「弱いよ…全然弱い…どうしたのさ?昔の美猴王はもっと強かったよ?」
「うるせぇー!!」
「そうか…やはり、あいつが悪いんだね?あの人間が!あの人間が貴方を弱くしているんだ…」
鵬魔王の視線が今度は三蔵様に向けられたのです。
「三蔵に手を出すなぁーーー!」
孫悟空兄貴の背中に朱雀のオーラが高まっていく。
『朱雀炎・火鳥封月!』
※カチョウフウゲツ!
「そうだ…良い事を教えてあげるよ!」
孫悟空兄貴から放たれた朱雀の炎が、先程と同じく鵬魔王の炎へと吸収されたのです。
「朱雀はこの私の!鵬魔一族と同じ眷属なんだよ!同じ眷属の炎は…」
『格上が手中に出来るんだ!』
鵬魔王は吸収した炎を、そのまま孫悟空兄貴に向けて放ち返したのです。
「うぎゃあああ!」
孫悟空兄貴は直撃を受け火だるまになり、地面に落下したのです。
《猿!》
三蔵様は自由に動けぬ身体で身を起こそうとする。
「三蔵はん!危ないらぁ!」
《!!》
三蔵様の目の前に鵬魔王がゆっくりと近寄って来ていたのです。
《くそったれ!ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!》
三蔵様は不動明王の真言を唱えたのでした。
三蔵様の手に炎がほとばしり…消えていく!?
《クッ…俺はもう…戦う力すら残ってはいないと言うのか?》
戦う事はもちろん、立ち上がる事も困難なはずなのに。
そんな状態の三蔵様に向けて鵬魔王は覇気を放ったのです。
《ぐぅわああああ!》
三蔵様は鵬魔王の覇気を全身に受けて、気を失ってしまいました。
「こんな弱々しい人間なんかのために…」
すると手下の鳥妖怪達が三蔵様に集まって来て担ぎ始めたのです。
「さて…ん?」
その時、鵬魔王は後ろで身動き出来ないでいた八戒兄貴に気付いたのです。
「君は何もしないのかな?まぁ、賢明だけど…」
「ウググ…」
(無理ら…勝てる訳ないらよ…今まで同じような窮地に陥った事は何度もあったらが、コイツは今までの奴達と比べものにならないらよ…金角児や銀角児の比じゃないら!一歩でも動いたら…確実に殺されるら…
怖い…怖い…怖い…逃げ出したくて仕方ないらよぉ…)
その時です!
「んな?うがああああ!」
突如、八戒兄貴の全身が炎に包まれたのです。
「フン!私は臆病者は嫌いだ!こんなカスが美猴王兄貴の傍にいるのも虫唾虫唾が走る!」
鵬魔王は傷付いた私達を残し、空高くへと飛び去ったのです。
手下の鳥妖怪が気を失っている三蔵様を捕え後を追う。
そして、最後にこの台詞を残したのです。
「美猴王兄貴!この人間は連れて行くよ!取り戻したければ三日後の夕刻までに私の城まで来るんだね?ただし必ず昔の兄貴に戻ってだよ!もし間に合わなかったら…分かってるよね?それまで、この人間の命は残しといてあげるよ!アハハハハ!」
立ち上がる事さえ出来ない孫悟空兄貴は、三蔵様が連れて行かれる姿を見て…
地べたを這いながら追いかけようとする。
「ま…待て!三蔵を…三蔵を返…返せ…」
そのまま孫悟空兄貴は身体中に走る激痛で、白目を向き気を失ってしまったのでした。
飛び去る鵬魔王と数万の鳥妖怪の軍!
私達三蔵一行は敗北したのでした。
次回予告
それは、過去の夢?
三蔵を奪われ、瀕死状態の三匹が選び、取る行動は?




