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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
転生記~始まりの伝説編~
92/424

復讐を誓う女!【陸】・・・復讐!

宿敵であった玉面公主を倒したのも束の間、本当の復讐する相手が別にいた。


それが、まさかの・・・蝎子精であったとは?


沙悟浄です!

一体全体、何が起きているのでしょうか?

私と鉄扇ちゃんの目の前で、妖しい笑みを見せる蝎子精さん?

それに、玉面公主が死の間際に言った台詞?


裏切り?

どういう事ですか?

蝎子精さん?


「復讐劇はまだ終わらないわ?鉄扇?」


「蝎子精?」



鉄扇ちゃんは蝎子精さんの変貌と言葉の真意が分からずに、混乱していたのです。

そりゃあ、そうですよ~

信じていた親友が裏切り?



「何言ってるのよ?蝎子精?また、いつもの冗談でしょ?やめてよ…シャレになんないわよ?マジに悪趣味なんだから」


「………」


「さぁ~て!復讐も終わったし、帰りましょ?河童ちゃん!肩を貸してくれる?」


「あっ!はい!」



私が鉄扇ちゃんの手を支えながら起き上がらせようと蝎子精さんに背中を向けた瞬間!


「馬鹿な娘…」


「!!」


今度は蝎子精さんがゆっくりと歩き出し、玉面公主の座っていた玉座に腰をおろして足をかけたのです。


「不思議に思わなかった?いくら出産で本調子じゃなかったとは言え、あの羅刹女が玉面や蚩尤なんかに殺されると思う?」


(やめろ…)


鉄扇ちゃんは確かに疑問があったのです。


「少し考えれば解るわよね?本当馬鹿!」


「やめろ」


「羅刹女の死に際の言葉知りたい?」


「やめろって言ってるでしょーーー!」



鉄扇ちゃんが蝎子精さんに振り返り叫んだのです。


「いくらアンタでも、それ以上口を開いたら許さないわよ」


「ふふふ…どう許さないのさ?そんなボロボロの身体でさ?」


「黙れって言ってるでしょー!」



鉄扇ちゃんは懐から術札をまき散らして鉄の板を出現させ、蝎子精さん目掛けて飛ばしたのです。

凄まじい勢いで蝎子精さんに向かって飛んで行った鉄板は、蝎子精さんの座っていた椅子を粉々に粉砕させたのでした。そして蝎子精さんは、そのめり込まれた鉄板の上に立って、私達を見下ろす。



「今のは威嚇のつもり?殺るなら、本気で来ないと死ぬのはアンタの方だよ!鉄扇!」


その瞬間、今度は光る何かが私達に向かって飛んで来たのです。

あれは毒針!?

鉄扇ちゃんは、飛んで来た毒針を扇を振り払って落とし返す。

そして睨み合う両者に私はオロオロするしか出来ませんでした。


すると今度は蝎子精さんが指先に気を集中させている?

あれは?

蝎子精さんの指先に水滴が集まって来て、次第に針へと変わっていったのです。

なるほど。

蝎子精さんはあんな風に水気に神気を融合させ、毒針を造っていたのですね?

ん?

何を私は感心しているのでしょ~!

すみません…


「うっ!」


突然、目の前に立っていた鉄扇ちゃんが膝をついたのです。


「鉄扇ちゃん?」



鉄扇ちゃんは苦しそうに息を切らしていました。

見ると鉄扇ちゃんの右腕に、蝎子精さんが投げた透明の針が刺さっていたのです。


「!?」


目に見える毒針とは別に、透明の針を仕込ませ投げていたのですか!

どんどん紫色に変色していく鉄扇ちゃんの右腕を見て私は困惑する。


(ハァ…ハァ…)


「動かないでください!今、解毒の術をします」


鉄扇ちゃんは右腕を抑えながら息を切らしながら無言でした。


「………」


「どう?羅刹女が死んだ時のと同じ毒針よ。姉妹揃って同じ毒で死ねるなんて本望じゃない?」


「ハァ…ハァ…蝎子精…本気なの?」


「まだ、そんな事言ってるの?呑気なもんね?それも、後少しよ!アンタの命はもう長くないわよ!」



すると鉄扇ちゃんは頷くように一言、


「分かったわ…」


そして身体を奮い起こし気力で立ち上がったのです。


「鉄扇ちゃん?まだ解毒が終わってませ…」


「河童ちゃん…少し退いていて?」



鉄扇ちゃんは治癒を行う私を振り払い、振り向く事なく蝎子精さんに向かって行ったのです。

その目は決意に満ちていました。



「良いわ!ようやく本気の目になったようね?毒より先に、私の手でお前に引導を与えてあげる!」


(蝎子精…私はアンタを…)



二人の身体から凄まじい闘気が高まっていく!

蝎子精さんからは玉面公主以上の闘気が噴き出したのです。

これが蝎子精さんの本気なのですか?

鉄扇ちゃんもまた玉面公主との戦いの後、既に力を使い果たしていたにもかかわらず、その闘気は限りなく高まっていたのです。それは己の魂を極限にまで燃焼させ力に変えているようでした。

しかし芭蕉扇は一扇ぎで持ち主の魂力を吸い出し力とするのです。

今の鉄扇ちゃんにはもう力は残ってはいないはずなのに?



「羅刹女姉さんは言っていた…」



『力の根源は魂!そして、この世界は魂に溢れていると…』


「私は魂を力に変えて戦う!」



直後、鉄扇ちゃんの魂から神々しい光が閃光のように光輝いたのです。

しかし先に動いたのは蝎子精さんでした。

蝎子精さんの身体が赤く染まっていき、その両手には二つの青色の猛毒針を手にしていたのです。

すると蝎子精さんの背後から四本の腕が出現する。



『毒牙苦暗殺流・羅針卍!』

※ドクガクアンサツリュウ・ラシンバン 



六本の蝎子精さんの腕から数千以上もの毒針が、鉄扇ちゃんに向けて放たれたのです!

しかも、全ての針には神気が纏われているのです!?


そして、鉄扇ちゃんも動く!

鉄扇ちゃんは芭蕉扇を手にし神風気を集中させて、最後の力を振り絞り芭蕉扇を扇いだのでした。



『芭蕉扇・戦風気狂風!』

※センプウキキョウフウ




二人とも本気だ…

そして、決着は多分一瞬で決まるでしょう。

私は見守り息を殺しながら二人の決着を見ていたのです。


多分、どちらかが確実に死ぬかもしれないです。

いや、もしかしたら二人とも?

私はなんて無力なのでしょうか?

何のために、この戦場に来たのでしょうか?



二つの力が衝突し、一瞬の静寂が止んだ後…

空中に浮かぶ城を壊滅させる程の爆発が起きたのでした。




う~ん・・・

どれくらい経ったのでしょうか?

二人が戦っていた戦場は静まり返っていまいた。


「うぅ…鉄扇…ちゃん…」


私は気を失っていたみたいで、目覚めて直ぐに辺りを見回したのです。

すると、直ぐそこに鉄扇ちゃんが倒れていたのでした。


「鉄扇ちゃん!」



私は鉄扇ちゃんに駆け寄り抱き抱えました。

鉄扇ちゃんの全身には、蝎子精さんの放った毒針が幾つも突き刺さっていたのです。


身体全体が紫色に変色している?

これって毒が全身に回ってしまっているじゃないですか!


「どうしよう…」



すると鉄扇ちゃんが私に気付き、弱り切った声で答えたのです。


「河童ちゃん…気にしなくて良いわ…私…もう満足なの…姉さんの仇討てたし…本当にもう思い残す事ないよ?」


「何言ってるんですか?思い残す事ないなんてないですよ!」


「河童ちゃん…優しいね…だけど…」


「!!」



見て直観的に分かりました。

この猛毒は私には治せない!

私は涙が溢れていました。


私は無力だ…

私は本当に何も出来ないのでしょうか?

私に出来る事なんて・・・


そうだ!


「絶対に諦めない事です!」



私は己の妖気を高め神気と融合させていく。

そして、倒れている鉄扇ちゃんの身体に注ぎ込んだのでした。


「旅の間、三蔵様に教わった医術なる知識!今こそ使うべきです!」



私の治癒の気がみるみるうちに鉄扇ちゃんの傷を癒していく。

損傷した骨、筋肉、血管、臓器、更に神経の至るところまで…

意識を集中させて、私の出来る全てを出し尽くす。


私が無力ながら此処に来た理由があるとしたら、鉄扇ちゃんの命を救う事!

いや?救わなければならないのです!


が、しかし…

傷が消えても、鉄扇ちゃんの体内に入り込んだ蝎子精さんの毒だけが消えない?

治したはずの身体が再び毒に侵食され蝕んでいく。


手の打ちようが…ない?

私は一心不乱に治癒術を行うが毒の進行を止める事は出来なかったのです。


本当に『どうしょうもない』のでしょうか?


えっ?

その時、私は思い出したのです。


しかし、まさか?


そんな?


私が思い出し取り出したそれは、私の懐にあった小さな袋でした。

それは、蝎子精さんが私に手渡してくれた小袋?

どうしようもない時に開くように言われた物。


その中身は!!

私は小袋を開けると、それは特製の猛毒消しだったのです。



「まさかと思いましたが、やっぱし!」


私は急いで意識が朦朧としている鉄扇ちゃんの口の中に、毒消しを流しこんだのです。


ダメだ…飲み込めてない・

もう飲み込む力すら残ってはいないのですね…


私は…私は…!!



「私じゃ、貴女の生きる目的にはなれないかもしれませんが…せめて貴女がこれから生きていくための支えにはなれないでしょうか?」



私は薬を自分の口に含み、鉄扇ちゃんの唇へと注ぎ込み飲ませたのでした。

次第に鉄扇ちゃんの身体の毒が消えて、皮膚の変色が治まっていく。



「ぷはぁ~」



これで、何とかなるはずです。

私は次に辺りを見回して蝎子精さんを探したのです。


「うっ!」


私は倒れていた蝎子精さんへと近付いて行く。



「蝎子精さん…貴女…どうして?」


「ふふっ…どうやら鉄扇は大丈夫みたいね?」


「最初から、鉄扇ちゃんを殺す気なんてなかったんですね?」



すると…


「ちょっと独り言良い?」


蝎子精さんは私にだけ語り始めたのです。




それは…

まだ、羅刹女さんが生きていた時の話。


蝎子精さんの過去。

蝎子精さんは昔、特殊な暗殺術を身に付けた一族の優秀な暗殺者であったそうです。

そんな蝎子精さんのターゲットは、最強の女妖怪と噂されていた羅刹女さんだった。


蝎子精さんは羅刹女さんの暗殺を試みるも、失敗。

羅刹女さんは、自らを暗殺に来た蝎子精さんを見逃し、言ったそうです。


「お前強いな?私はお前みたいな強い女が好きだ!どうだ?私の所に来ないか?」



しかし、暗殺に失敗すれば蝎子精さんは仲間達から命を狙われるが掟!

『幻影族』の粛清が待っているのです。

蝎子精さんは羅刹女さんのもとで働くと見せかけ、命を狙う機会を見計らっていたのでした。

勝算はありました。

蝎子精さんの懐には、特製の猛毒針が一本仕込まれていたのです。



「この特製の毒針は天界の最高神級の力を持った者をも葬る事が出来るのさ」



しかし身近で羅刹女さんを知れば知る程、蝎子精さんは羅刹女さんの魅力に惹かれていったのです。

その底知れぬ力だけでなく、凛たる姿に!

次第に本来の役目も忘れて羅刹女さんの右腕として、その力を奮っていたのでした。

だが、ついに一族の刺客が蝎子精さんのもとへ向けられたのでした。


裏切者として…


蝎子精さんは覚悟していました。

一人で一族の刺客を相手する事は不可能。

いずれ刺客によって始末されると。

生きた心地がしない眠れない日々が続く。



そんなある日、羅刹女さんが誰にも伝えずに一人出掛けたかと思えば、血だらけになって戻って来て蝎子精さんに言ったのです。


「お前、明日からはぐっすり寝られるよ」と?



それは蝎子精さんにとって信じられない事実でした。

羅刹女さんは一人、幻影族のアジトに殴り込みに行ったのです。

しかも衣に付いた血は全て幻影族の返り血のみ。

傷ひとつなく羅刹女さんは戻って来たのです。


突然与えられた自由に戸惑うも、蝎子精さんは羅刹女さんに付き従い、いつしか義兄弟[姉妹]の契りを結んでいたのです。


そして月日は流れる。


羅刹女さんは、また何も告げずに幾日も出掛けたかと思えば一人の戦災孤児の少女を連れ、戻って来たのでした。そして、羅刹女さんは蝎子精さんにその少女を任せたのです。


少女の名前は鉄扇。


「その娘は私の魂の片割れさ!それでな?お前に育てて貰いたいんだ?宜しくな!」と…



困り果てる蝎子精さんでしたが、羅刹女さんに信頼され任されている以上、手塩にかけて育て上げたのでした。最初は無口で愛想の悪かった鉄扇ちゃんも、次第に蝎子精さんに心を許し笑顔や軽口を叩くようになっていく。戦闘技術も見る見る上げていった。


そして、更に…


「ねぇ?どういう事よ?蝎子精」


「まぁ、羅刹姉さんのいつもの気紛れでしょ?」



羅刹女さんが魔神国を捨てて、隣世界へ進撃すると決めたのでした。

突然の理解不能な行動にも付き従う蝎子精さんと鉄扇ちゃん。


こちらの世界に来訪した羅刹女さん達の軍勢は、難なくと地上界の妖怪達を制圧していった。

そして最強の魔王と呼ばれる牛角魔王さんとの出会い。


更に、天界より討伐に来た天と呼ばれる最高神との激突!

最高神との激闘は、流石の羅刹女さんでも苦戦を虐げられたのです。


そして瀕死ギリギリの中で、牛角魔王さんの協力を得て何とか撃退する事に成功したのでした。

傷付き戻って来た羅刹女さんに、蝎子精さんはあらゆる手段で治癒を行い寝ずの看病をしたのす。


「絶対に死なせはしないわ!」


そのかいあって、羅刹女さんは無事に回復を果たしたのでした。


(もう…二度と姉さんを…こんな目には…)



蝎子精さんは決意を胸に誓いを立てたのでした。




それから後は、もう展開が凄かったそうです。

羅刹女さんが、何を思ったのか?

突然牛角魔王さんと夫婦になり、自分の軍の実権を全て鉄扇ちゃんへ譲ったのでした。

羅刹女さんが幸せな日常を送り、鉄扇ちゃんも軍のボスとして立派に役目を果たしていた。

そんな日常が続くと思われていた。


あの日まで・・・


蝎子精さんは部屋で一人薬の調合をしていると、羅刹女さんの配下になっていた玉面魔王[後の玉面公主]が血相を変えて部屋に入って来たのです。

玉面魔王はこちらの世界に入った後に、軍の新たな参謀の一人として働く魔王の一人。

力は申し分なく羅刹女さんは彼女を、


「時間が癒してくれると良いのだがな…」



羅刹女さんは玉面魔王が自分の夫である牛角魔王さんに好意を抱いている事に感ずいていたのでしょう。



「何の用?」


「羅刹女様が大変よ!!」


「大変ですって?」


「今情報が入ったぞぇ!天界の最高神が再び羅刹女様の討伐に向かったと!」


「まさか!何故に今頃天界が動くの?そんな馬鹿な!」


「情報は伝えたわよ!妾は直ぐに羅刹女様の救援に向かうぞぇ!」


「待て!お前が行っても無駄死にするだけだ!」


「ふふふ…それは覚悟の上」


「お前!?」



すると玉面魔王は蝎子精さんに近寄り、耳元で囁き、提案をしたのです。



「そこでじゃ…軍師である蝎子精殿に頼みがあるのじゃ?」


「?」


「あるのでしょ?最高神をも仕止められる毒針が?」


「お前、何故それを?」


「知っているさ?有名じゃからな!蝎子精の切り札は最高神をも黙らせるってね?妾にその毒針を貸してくれないかしら?さすれば妾が代わりに羅刹女様を救ってやるわ!」


「それは…」


「躊躇する暇はないわ!手遅れになったらどうするのじゃ?羅刹女様を救いに行くには必要なのじゃ!」



蝎子精さんは躊躇しつつも、かつて天界から討伐に来た最高神に何も出来ないまま羅刹女さんが生死の境に陥った過去を思い出して玉面魔王に例の毒針を渡したのでした。


まさか、それが…

羅刹女さんを暗殺するために使われるとも知らずに。


蝎子精さんが蚩尤の部下を問い詰め真実を知った時…

既に毒針は使われた後だったのです。


蝎子精さんは蚩尤と玉面により罠にかかり倒れた羅刹女を目の当たりにした。

毒に倒れる羅刹女さんを抱き抱えました。

毒薬は特別な材料を用いていたため、解毒剤は存在していなかった。

しかも羅刹女さんは蚩尤に身体を槍で貫かれていたのです。



「羅刹女姉さん!ごめんなさい!ごめんなさい!私が愚かだった…私があんな奴達に騙されて…」


「気にしないで。蝎子精…お願い…自分を責めるな?それより貴女に鉄扇を預けて良い?あの娘…まだまだ、手がかかると思うけど…蝎子精?貴女なら彼女を導いてあげられる…」


「鉄扇を?分かった…分かったから、喋ってはダメ!今、私が治療するから!」



すると、羅刹女さんは首を振ったのです。

自分が助からないと分かっていたのでしょう。

そして笑顔を見せて言ったのです。


「最期は彼の腕に抱かれて逝きたいの。だからお前はここを離れなさい?」


そこに牛角魔王さんの声と足音が聞こえ、入って来るなり羅刹女さんに向かって駆け寄ったのです。

蝎子精さんは柱の隅に隠れて、声を出すのをこらえて泣いていました。

恐らく今の牛角魔王さんなら蝎子精さんを許さないと分かっていたからの配慮もあったのでしょう。



(許さない…玉面!!

いえ…アイツは鉄扇に仇を討たせなきゃダメだ…

それが…鉄扇のため…


そして…もう一人…復讐されるべき者がいるわ!


私を殺して…鉄扇?


姉様を殺した…私を殺して?


私は復讐する!


この愚かな私自身を…


それが、償い…それが私の…復讐の形!)



私は蝎子精さんの話を全て聞いた後に、やりきれない気持ちでいっぱいになりました。



「そんな…」



蝎子精さんは鉄扇ちゃんを育てつつ自らを殺させ、復讐を成したと言うのですか?


そんな事って…


鉄扇ちゃんにはこの真実は伝えられない!

振り向くと鉄扇ちゃんは倒れたまま、まだ意識が戻ってないみたいでした。


だけど鉄扇ちゃんは意識を戻していました。

溢れ出す涙をおさえ、泣くのを堪えていたのです。

鉄扇ちゃんの脳裏に蝎子精さんの最初の言葉が蘇る…




『鉄扇!貴女に復讐をさせてあげる』




蝎子精さんは満足な笑みを見せ、息をひきとったのでした。

私はやりきれない気持ちで、落ちていた瓶を拾い上げ怒りに任せ床に投げつけました。


瓶は転がり、城の外に落下していく…



『蝎子精は逝ったのか?』


エッ?

私が振り返った先には、三蔵様が壁に寄り掛かり立っていたのです。



「三蔵様!身体は大丈夫なんでしょうか?」


『あ…ああ…』



声だと思われたのは三蔵様の念波だったのです。

どうやら三蔵様は事の全てを知っていたみたいでした。

その後、三蔵様と私は蝎子精さんの墓を立てて声の出ない声で、

いつまでもお経を唱え弔ってくださったのでした。


私はその後、目覚めた鉄扇ちゃんに言ったのです。


「鉄扇ちゃん…この後どうするのですか?良かったら私達と一緒に旅をしませんか?」


「うん…それも良いかもね…だけど、少しだけ一人にいさせて…」



そう言うと、鉄扇ちゃんは巨大な扇に飛び乗り飛んで行ったのです。

鉄扇ちゃんは唇に手を当てながら…


(ありがとう…)と…



一段落した後…



「それにしても、こんな大変な時に兄貴達はどうしているんでしょうか?」


私は少し苛立っていました。


『そう言うな…アイツ達もまた試練を乗り越えて来たのだからな…』



えっ?試練?



『さて…旅を続けようか?アイツ達も戻って来たようだしな!』



えっ?えっ?


その時です!何処からか聞き慣れた声が聞こえて来たのです。


西の方角から…


「三蔵ぉーーー!」


南の方角から…


「三蔵は~ん!」



孫悟空兄貴と八戒兄貴が雲に乗り、私達に向かって飛んで来たのでした。



「あ…兄貴達…戻って来て…くれたのですね」


私は緊張が解けたのか?

涙が溢れてへたりこんでしまいました。

これで一件落着なのですね。





…追伸…


実は、少し前に新たな脅威が生まれつつあったのです。


それは…



「玉面様は死んだ。これからは私が女帝になり、世界を手に入れてみせる!フフフ…アハハハハ!」



それは、しぶとく生きていたゴキ姉さんだったのです。



「そのためには私の生命力を継いだ子供達が必要!最強の生命力を持った軍団を作り上げてみせるわ!オホホホホホ!」



と、恐るべき計画を立てていたゴキ姉さん…

するとそこに、何かが上空から落下して来て目の前で割れたのでした?


それは、私が天空城から放り投げた殺虫剤の瓶でした。


煙りが覆い…


ゴキ姉さんは、その命を召されたのでした。



はかなくも、一瞬の夢…

そして、私は知らずして世界を救ったのでした。


次回予告


沙悟浄「復讐を誓う女篇も終わりましたね~まさかの展開続きで私はいっぱいいっぱいでした。しかし私の大活躍にて世界を救い、一件落着でしたね?」


鉄扇「・・・・・・」


沙悟浄「はっ!しまった・・・私、もしかして空気よめてない?」



・・・・・・。





沙悟浄「さて、次話ではいよいよ孫悟空兄貴と八戒兄貴と合流して新たな冒険の始まりですよ~!楽しみにしてくださいね?」


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