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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
転生記~始まりの伝説編~
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復讐を誓う女!【肆】・・・宿敵!

女帝の城にて逃亡中の沙悟浄。

動けぬ三蔵を守るために知恵を絞り逃げる最中、かつての旅で縁のある鉄扇と蝎子精と出くわしたのだ。


鉄扇と蝎子精は襲いかかる女帝の配下を圧倒的な強さで薙ぎ倒していく。


姉さん…

誰よりも強く気高き姉さん!


私が物心ついた時、私は戦場に取り残された孤児だった。

父親も母親の顔も知らないまま、頼る者もいない…


生きるためだけに!

ただ生きるためだけに!

私は存在していた。


何のために生きるのか?

そんな事を考える事すら解らないほど幼く考える暇すらなかった。


生きていたいから…

死にたくないから…


ごく当たり前の願望だけで私は存在していた。

その幼い手には、生きるために必要な小さなナイフを握りしめながら…


私の名前は鉄扇。


私は飢えに苦しみ、もがき、それでも『生きたい』と言う願望だけで戦場渦巻く魔神国で一人、旅を続けた。だけど、ついに私は飢えで立つ事も出来なくなり行き倒れたの。


そんな時あの人は私の前に現れた。


「そこのお前、私と来な!生きたいんだろ?死にたくないんだろ?私といればお前生きていられるよ!」



その者は女妖怪達を集めた軍団を率いた女妖怪のボス。

名前を羅刹女と呼んだ。

幼く無力だった私は、彼女の強さとカリスマ性に魅せられた。

その差し出された手に、私はまるで吸い込まれるかのように手を取った。


それから数年後、私は生きていた。

生きる事だけに精一杯だった無力な幼い自分とは違い、生きる活力に満ちた一人の『個人』として!

その頃の私には生きる目的が出来ていた。


『自分のために生きる』から、『あの人のために生きる』と!



戦場が日常の魔神国。

その日も私達は戦いの中にいた。


「姉さん!北の残党はもう残っていないわ」


「あら?もう?やっぱり男が仕切る軍なんて大した事ないわね…」


「と言うより、姉さんが凄いのよ?敵軍の半数を最初の威圧だけで戦意喪失させてしまったのだから。私達の見せ場ないじゃん!」



すると羅刹女姉さんは笑いながら私の頭を撫でたの。


「お前はよくやってるわ?奴達のボスを一人で倒したんだって?やるじゃない!さすが私の自慢の妹よ!」



私は羅刹女姉さんさんと義兄弟の契りを交わしたの。

姉さんは私を本当の妹のように扱ってくれた。

そんな姉さんの力になりたくて…

少しでも近付きたくて!


私は強くなった!

死に物狂いで鍛練し、己を磨き、姉さんの力になれるくらいに。


「まったく無茶しないでよね~怪我したアンタの治療する私の身にもなってよ?」



そこにエロチックな衣装で着飾った女性が私に軽口を叩く。

彼女の名前は蝎子精…

姉さんの右腕で、力もさる事ながら、妖怪の治療をする医師でもある参謀的存在。


「蝎子精!シィー!それは言わないって…」



姉さんは私の右腕に巻いていた包帯を見て言った。


「怪我したの?」


「ごめん…油断した…」


すると姉さんは私を強く抱きしめて言った。



「無理はしない!お前はまだまだ強くなるからな?慌てなくても大丈夫」



確かに私も焦っていた。

どんなに私が強くなっても、姉さんは手の届かないほど遥か先にいる。

強くなればなる程、姉さんの強さを身に染みて実感せずにはいられなかった。


私の憧れの、姉さん…

そんなある日、姉さんに驚くべき事件が起きる事になる。


姉さんは突然「時が来た!」と言って、

私達のいる世界とは違う光の世界へと進行すると言い出した。


私達は当然付き従い共に進行した。

そこでも姉さんの力は圧倒的だった。

地上界の魔王達をも下し、天上界からの討伐をも軽々あしらう。

このまま世界征服だって夢じゃないわ!


まさに向かうところ敵無しに思えた。


そして事件は起きたの…


それは…

あの姉さんが男をつくるなんてぇーー!



「姉さん!どういうつもりよ?嫌!嫌!嫌!男なんて汚らわしい!キモい!不潔!男なんて蛆にも劣る生き物だわ!」


私は姉さんを正気に戻したかった。


だって…だって…

男なんて絶対にありえないし!

きっと強力な魔術か病気にかかっているんだわ!

そんな躍起になる私に姉さんは笑いながら答えた。



「凄い男嫌いよね?鉄扇は?」


「男なんて生き物は死に価します!」


キッパリと言い切る。


「ふふふ。鉄扇!お前にもいつか分かるわ。いつか必ずお前にも運命の人が現れるから」


「いらないし!必要ないし!いたら殺すし!」


「アハハ!蝎子精なんて男がいなきゃ生きてらんないって言ってるのにね?アハハ!」


「蝎子精は淫乱で脳みそ腐ってるから!でも、姉さんは違うから!」



言った途端に私は頭をこずかれる。

振り向くと、そこには?


「誰が淫乱ですってぇ~?」



蝎子精がムスッとした表情で立っていた。


「いったぁ~い!」


私は蝎子精を睨みつけて、ぶぅたれているしかなかった。

蝎子精は今の私より強く、姉さんが多分一番信頼を寄せていたから。

私の直接的な師であり、姉さんとは別に心許せる唯一の友でもあった。


「そうそう!姉様!その運命の旦那様がやって来たわよ?今、部屋に通してるわ!」


「あら?本当?キャハッ!今行くと伝えて!」



姉さん…


キャハッて…何?


ああぁ…私の気高い姉さんが壊れていく…


嫌ぁああああああああ!!



それから暫くしたある日。

姉さんは私を呼び出して真面目な顔で言った。



「これから女妖怪のボスの座を鉄扇。お前に譲るわ!しっかりまとめるのよ?」


「えっ?えっ?えぇえ??ちょっと姉さん!話が急過ぎる!意味不明よ~」


「私は彼と二人で静かに暮らします。だ・か・ら…ねぇ?」



何それ?何それ?何それ?何それ?何それぇーー!?



「ね?って無理よ!私にはまだ早い!姉さんの後を継ぐなんて…」



すると姉さんは私を抱きしめて言ったの。


「お前は私の分身…きっと立派な女妖怪の頂点になれるから。私はお前を信じてる。だからお前も自分を信じて?」


「あ…う…うん…」



私が姉さんの分身?

嬉しいのと恥ずかしいとで、私はつい頷き承諾してしまった。



その後、姉さんは私に女妖怪のボスの座を明け渡した後、

軍を脱退し、その男と二人静かに暮らしたのだった。

後に、うまく言いくるめられたのだと壁を蹴り飛ばし、足を捻挫したのを思い出す。



でも…姉さんが幸せなら…

姉さんのためなら…



それから更に数年後。

姉さんが何者かに殺されたと聞かされた。


私は放心状態になった。


姉さん…姉さんが?死んだですって?


嘘よ…


あの強い姉さんが死ぬなんて…


あってたまるかぁ!


嘘よぉーーー!!



それから再び私は城に引きこもる。

数多くいた部下の女妖怪達も、一人一人と軍を去って行った。



城に残されたのは…私と姉さんとの思い出だけ…

そんなある日…


「あんた!何やってんのさぁ!」



旅から戻って来た蝎子精が私の胸倉を掴み、揺さぶり私を叱咤した。



「何よ?何やってんのさぁ!今のアンタ!アンタは姉さんから軍を!この城を任されたんでしょう?今のアンタを見たら、姉さんが悲しむわ!」


「…………」



貴女に何が分かるの?


姉さんは私にとって生きる希望だった…


生きる目標だった…


私の生きる全てだった!!


その姉さんはもう…いない…



私はもう生きる屍となった。

すると蝎子精は私に言ったの。



「復讐する気ある?」



…ふ…復讐…?

その言葉を聞いた時、私の中で何かが弾ける感じがした。

私の生きる全てを奪った者への復讐…

姉さんを奪いし者への復讐!

私は立ち上がり、姉さんの遺品である鉄の扇を手に取った。



風が私を覆うと気流が渦巻く。

私は城の外が見える場所に出ると、

乱気流に覆われし城の外を眺め私は扇を開いた!



『一閃!』



放たれた風の刃が城を渦巻く乱気流を切り裂き、そこから太陽の日差しが入って来る。



私は誓った。


「姉さんの仇は妹である私が討つ!」



姉さん…


羅刹女姉さん…









場所は変わり、同じく過去を振り返る女がいた。


ここに女帝を名乗る女が城内の騒ぎを苛立ちながら、

賊の討伐の知らせを今か今かと待ち侘びていた。



妾は待つのは嫌いじゃ…

待つのは…


女帝は思い出していた。

かつてこの女帝は六大妖魔王以前に、この地上界を統べていた七十二魔王の一人であった。

昔この地には七十二の地があり、その各地に魔王が支配していたのだ。

そして、この女帝を名乗る女妖怪もまた七十二魔王の一人であり、その中でも五行四魔王と呼ばれた最強の魔王の一人なのである。


しかも後の第二次天界大戦中も、美猴王や牛角魔王率いる六大魔王の副将軍として天界にまで攻めこみその力を奮っていた。

美猴王亡き後は地上界に戻り、もともと自分の勢力のあった地に戻り再び支配していた。



そこにあの女はやって来た。


羅刹女…

異国の魔人国の地より来た女妖怪であった。



あやつの力は妾の力を遥かに上回り、妾は羅刹女の配下へと落ちぶれてしまったのじゃ。


許せぬ…羅刹女…

妾は羅刹女への怒りが募るばかりであった。

だが、それ以上に怒りを感じたのは!


羅刹女が女妖怪のボスの座を妹の鉄扇に譲り渡し、渡し…


よりにもよってじゃ!

妾が恋い焦がれていた牛角魔王様と夫婦になったというではないか!


妾の嫉妬と憎しみが羅刹女に向けられる。

しかし妾の力ではあの女には勝てない!


味方がいる…

自分の手足になる都合の良い手駒が…

そこで目を付けたのが、牛角魔王の弟である蚩尤じゃった。

その力は牛角魔王に副将軍を任されるほど…

蚩尤は兄である牛角魔王に反感を抱いていたのだ。

そして何より妾に好意を抱いていた。

これ以上都合の良い手駒はない!


そこで妾は蚩尤に言い寄った


「無理だ…俺では兄者には敵わぬ…」


牛角魔王に怖じけづく蚩尤に妾は…


(意気地のない男じゃ…)


蚩尤に知恵を授けたのじゃ。

妾の一族が長年守り続けて来た西の地の不思議な遺跡の存在を伝えた。


妾は蚩尤を連れて西の地を案内した。

西の遺跡は摩訶不思議な遺跡でじゃった…

羅刹女の浮かぶ天空城の複製を作り上げたり、妾達妖怪が見付けるのが困難な人間の特殊体の居場所を見付ける感知装置があったり、摩訶不思議な宝の宝庫。


蚩尤はこの遺跡に大いに驚き興味を抱く。

そして遺跡に隠されていた不思議な水晶を手に入れ、強気になった。


まったく単純な男じゃ…

そして妾は自らの策を蚩尤に伝えた。


妾の条件は憎い羅刹女の抹殺…


そこで蚩尤はまた弱気になる。


「羅刹女は兄者でも敵わぬ…無理だ…」


まったく…本当に手のかかる男じゃ!



「蚩尤よ!女妖怪は身篭り子を産む瞬間、その力は半分…いや、それ以下に下がるのじゃ!そこを狙うが良い!」



妾は蚩尤の顎を上げて耳元に囁いた。


「信じておるぞ…」



蚩尤は頷き、そのまま妾を押し倒した。

妾の女の身体を貪る蚩尤…

良い…あの女を亡きものにするためなら、この程度の屈辱…


ふふふ…憎い…憎い…羅刹女!



その後、蚩尤はうまく羅刹女を亡きものにした。

すべては妾の策通り、手を汚さずにあの女を始末してやった!




妾は待つのが嫌いじゃ…


これで妾こそ正真正銘の女妖怪を統べる真の女帝!



『玉面公主よ!』



「さぁ!妾の前に侵入者を連れて参るのじゃあ~」



女帝・玉面公主が叫んだと同時に突如部屋の壁が激音とともに崩壊した?


「なっ?なんぞぇ~?」


そこに扉をぶち壊し、沙悟浄、鉄扇、蝎子精が広間に入って来たのだ。




巨大なゴキブリに追われながら・・・



次回予告



沙悟浄「な?なんと?なんと?今回の話が今、まさに別の場所で戦いが繰り広げららている孫悟空兄貴と紅孩児くん。それに牛角魔王さんとの因縁と結び付いていたなんて!!


私、本当にビックリですよ~」


沙悟浄「そして次回の話は、因縁の鉄扇ちゃんと女帝・玉面との一騎打ちなんですよ~頑張って!鉄扇ちゃん!私、いっぱいいっぱい応援していますから!」



・・・あれ?私の見せ場は?


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