復讐を誓う女!【弐】・・・女帝!
一人、三蔵を看病していた沙悟浄。
そんな彼のもとに謎の女達が?
そして、あの二人の女達も動き出す。
はい!
どーもお久しぶりです。
沙悟浄です。
私と三蔵様は見知らぬ女妖怪の皆様に連れられて、その方達の主の下に連れて来られたのです。
多分、残ったとしても私にはどうする事も出来なかったでしょうし。
これは藁にもすがるつもりで、その『主』の誘いに乗る事にしたのです。
それに今!
動けない三蔵様を守れるのは、私だけですから!
それにしても…
私達が連れて来られた場所は・・・
私達は助けて下さった女妖怪さん達の移動雲に乗り、空高くまで飛んで行きました。
どれくらい飛んだでしょうか?
目の前に広がる巨大な暗雲が立ち込めた乱雲の中に飛び込んで行ったのです。
その雲を抜けた先に、それはそれは見事な天空城が浮かび上がっていたのでした。
はて?この光景は何処かで?
その後、城の中に入り案内されたのですが~
三蔵様を背負いながら私は案内され通路を歩いている間も物珍し気に至る場所をウロチョロしては壁や床にまで触りまくる。
「お客人…」
呆れる女妖怪さん達の白い目を他所に、私は構わず自由行動しながら付いて行ったのでした。
はてはて?
この風景は何処かで見覚えが?
デジャヴュ~て奴ですか?
いや…似ている。
間違いないです!
あれだけ念入りに掃除した場所ですから間違いない!
(ここは…)
私が最後に案内された場所は豪華絢爛な大広間でした。
そこには、贅沢な料理に豪華に彩色された飾り物。
更に美しい着物を着た綺麗な女妖怪さん達が幾人もいらっしゃったのです。
鎧を纏った者…
踊り子のような者…
舞を踊る者…
歌や楽器を奏でる者…
それは、まさに天女のごとき美しき様。
(違う…私の知っている場所とは全然違う…)
あそこは確かに立派な彩色で色飾られてはいたけど…
何か寂しく…そう。
そこにはヒッソリと…
ただ、一人だけで城を守っていた彼女がいただけだった。
やはり此処は私の知っている場所とは違う!
「ん?」
そこに、突然鈴の音がこだましたのです。
優雅に舞っていた娘さん達や歌っていた方々が静かに列をつくり、腰を下ろして礼儀正しく頭を下げ始める。そして、ここの官僚らしきお姉さんの声が広間に響いたのです。
「女帝様のお出ましぃ~!」
広間の奥にある段の高い一番立派な場所に、その『主』は現れたのです。
この城の主にて、女帝と呼ばれる存在。
私は一瞬、その美しさに目を奪われてしまいました。
此処にいる誰よりも贅沢豪華に色飾られた美しい身なりに、離れていても分かるきめ細かい白肌。
更に美しい長い髪…
まるで天界の女神様のようでした。
「よくぞ参ったのぅ?三蔵殿とお共の従者よ…」
女帝と呼ばれる主が私に声をかけてきたのです。
何て気品のある上品さ!
まるで何処かのお姫様?
いや…
見た感じ27~30歳くらいですかね?
人歳の年齢的に…
言い換えれば女王様と言うべきでした!
おっと!
これは失礼でしたかね?
「あの…危ない所を助けていただいて本当にありがとうございました」
私は女帝さんに礼を言い頭を下げたのでした。
「気にする事はない。頭を上げよ従者殿!」
そこで私は…
「あのぉ~つかぬ事をお聞きしますが、どうして私達を助けて下さったのでしょうか?」
すると…
「フフ…妾は昔、美猴王殿に恩があってのぅ。噂で転生したと聞き、何か手助けと思った訳よ…」
美猴王って言えば、確か孫悟空兄貴の転生前の名前でしたよね?
孫悟空兄貴に恩?
「ところで、従者の方よ。三蔵殿はやけに体調が宜しくないようにお見受けしますが?いかがなさったのじゃ?」
私は、三蔵殿を見て答えました。
「それが…ちょっと…身体がすぐれないみたいで…いや!直ぐに良くなりますよ」
私は本当の事を隠す事にしたのです。
「いやはや!きっと長旅の疲れでしょうね~それとも飲み過ぎて二日酔いでしょうか?」
「………」
女帝さんは少し黙った後、
「そうでございますか。では、お疲れでしょう?食事が済みましたら部屋を用意しておるので、どうぞお休みくださいませ」
「えっ?あっ…はい!ありがとうございます!では、少し早いのですが食事は後にして頂き先に休ませていただけないでしょうか?もう、本当に疲れ果ててしまいまして~」
私はそそくさと三蔵様を背負い直し、与えられた部屋に向かう事にしたのです。
(ドキドキ…)
私の中で緊張が走る。
「ところで従者の方よ…」
私がペコペコと頭を下げて部屋を後にしようとすると、再び女帝さんが私を呼び止めるように質問してきたのです。
「ところで貴方以外の従者はいずこにいらっしゃるのですか?美猴王殿はどちらに?」
「………」
(ドキドキ…)
周りの女妖怪さん達にも沈黙がはしる。
私は真面目な顔で答えたのです。
「と…トイレでしょうかねぇ~?」
ズコ~ン!
私以外の皆様が一度にずっこけたのでした。
あちゃ~
「お前、妾を馬鹿にしておるのか!?」
女帝さんが眉間にシワを寄せてキレたのです。
「ヒィ~~~!」
綺麗なお姉さんの怒った顔って…
下手に怖そうなお兄さん達よりも、マジ恐いと思った瞬間でした。
「じぃ!じちゅは!今、ちょっと…別行動をしていまちてぇ~」
私は怯え、つい口を滑らして本当の事を喋ってしまったのです。
あっ…しまった!
言っちゃった…
辺りに緊張が走る。
「つまり、美猴王殿は今近くにはいないのじゃな?」
「あはは…はは。そうなりますかね?やっぱり?」
すると女帝さんの態度が豹変したのです。
「やめじゃ!やめじゃ!茶番はやめじゃ!」
今まで踊り歌っていた配下が女帝さんの合図で静まり返る。
「あの糞生意気な六大妖魔王の首領!聖天大聖美猴王を警戒して、こんな茶番劇を催してみたが、この場にいないのであれば無意味な事じゃ!」
女帝さんは周りに控えている女妖怪達に指示をしたのです。
「その者を殺し、三蔵を手に入れよ!」
やはり罠でしたね?
分かってはいました!
そう、盗賊妖怪に襲われて助けられた時から…
あの時、私はわざと皿を落とし皿を拾う振りをして、私は周りの状況を皿を鏡のように写して確かめてたのです。
皿に写ったのは大木の陰から隠れていた女妖怪さんが、私目掛けて弓を向けている姿だったのです。
もしあの場で私がここに来るのを拒否したら、私は女妖怪さん達に射抜かれていたでしよう。
だから、私も手を打って起きました!
そろそろ…ほら!
突然、何処からか爆音が響き、城全体が揺れ始めたのです。
これには女帝さんだけでなく、その場にいた女妖怪さん達も慌てふためいていました。
「何じゃ?何が起きていると言うのじゃ!」
「分かりませぬ!」
突然の出来事に慌て出す女帝さん達を尻目に、
(ふふふ…)
用意周到!
爆音が響く中、
そうです。私がこの部屋に来る際にいろいろと罠を仕掛けてさせて頂いたのです。
「ナイスタイミング!」
この部屋に案内されている途中、私は周りをキョロキョロしながら、こっそりと時限式爆札を至る場所に貼付けて来たのです。
そして、最後にお約束の~
「はい!」
私は両手を上げてから床にむけて念を放ったのでした!
久々の~
『カッパの~かぁ~わぁ~なぁ~がぁ~れぇ~!』
辺り一面に大量の水が噴き出して、部屋中に洪水を巻き起こさせたのです。
濁流が背負った三歳様と私を部屋の外へと流していく。
私は水の中で三蔵様の身体を支えつつ、濁流の中を泳ぎながらこの部屋から脱出しようと試みました。
「三歳様!少々、ご辛抱を!」
逃げて行く私達を、
「こぉのぉ!下級妖怪の分際で!妾をこけにしくさってぇ~!」
『カァーーー!』
怒り狂う女帝さんの妖気が私の起こした水術の濁流を一瞬で消し去ったのです。
私と三蔵様は床に落下して転げてしまいました。
「えぇえ?私の出した水術が消えちゃいました??取り敢えず逃げなきゃ!」
女帝さんの周りに水玉が浮かび出す。
女帝さんは逃げ去る私の背中目掛けて、水玉で水流弾を作り上げ狙い定める。
「死にな!ふざけた下等妖怪!」
水流弾が私目掛けて放たれたのです。
女帝さんの水流弾は凄まじい威力で、床や壁を貫通していました。
私が涙目で逃げ走る中、女帝さんが逃げる私の背を水流弾を狙い背定めると、
再び城が強烈な爆音とともに揺れ、女帝は狙いを定められずに椅子にしがみついたのです。
「何じゃ?今度は!」
「大変です!城に巨大な何かがぶつかったと言う事です!」
「なんじゃと?城に?ありえぬ!この城は宙に浮いているのだぞ?一体何がぶつかると言うのじゃ!?」
「直ぐに調べます!」
私は、チャンスとばかりに一目散に逃げました。
それにしても今の揺れは何だったのでしょう?
いえいえ!
今は少しでも三蔵様を無事な場所まで連れて逃げないと!
それから暫くした後、揺れは静まり返り女兵士達が城の中を、私と三歳様を探していたのでした。
「まだか?まだ見つからぬのか?奴はまだこの城から出てはおらぬはずじゃ!何故見つからぬのじゃ?探せ!探して連れて参れ!」
女帝さんはヒステリックにキレて、部下の女妖怪さん達が震え上がっていた。
ふふふ…
私は辺りを確認した後、コッソリとある部屋から出て来たのです。
「やはり、ここが薬倉庫でしたね…」
私は三蔵様に必要な薬なんかを懐にしまい込むと、音をたてずに薬倉庫から抜け出す。
この城に来たもう一つの理由は、三蔵様に必要な薬や治癒道具が欲しかったからです。
ほんの少し貰って行きますよ~!
それにしても、この城の間取りが全て分かるのは好都合でしたよ~
そうです。
私は直接外には逃げずに、逃げ隠れしながら、武器倉庫と薬物部屋に忍び込んでいたのです。
私は一度掃除した場所はトイレから屋根裏、地下室から部屋の隅々まで把握しているのです!
それに隠し通路まで!!
私は多分、ここに住んでいる者ですら把握しきれてないと思われる隠し通路に入り込み逃げていたのです。
私は駆けながら考えていました。
外装は微妙に違いますが、あの時の城と全く間取りも構造も同じなんて不思議ですね?
確か、この一方通行を抜けた先に外への逃げ道があるはずなのです。
えっ?
前方の曲がり角の奥から、誰かがこちらに向かってくる足音が聞こえて来る?
やばい?この通路に隠れる場所なんかないし!
戻る訳にもいかないですし!
こうなったら!
私は三蔵様を背中から降ろすと、意を決して武器を手に取り構えたのです。
足音が近付いて来る?
ドキドキ…ドキドキ…
「うりゃあああ!」
私は向かって来た人影に向かって襲い掛かったのでした。
ムギュ~ウギャ~ふにゃあ~
私は蹴飛ばされ、壁に衝突し、その時皿をぶつけたらしく悲鳴を上げそのまま目を回したのでした。
ヤバい…このままでは三歳様まで捕まってしまう~
しかし、その時に私の耳に入って来た声は?
「えっ?嘘?何で?河童ちゃんがいるの?」
えっ?
この聞き覚えのある声は??
しかも、私の事を河童ちゃんと呼ぶのは?
って…
私は頭を摩りながら声の主を見上げたのでした。
あっ…間違いない!
どうして、こんな場所に?
私の目の前には…
鉄扇ちゃんが蹴り飛ばした足を上げた状態で、私を見下ろし驚いていたのでした。
次回予告
沙悟浄「今回は私の智略が冴えたお話でしたね~」
「そして、まさかまさかの鉄扇ちゃんの登場ですか!」
「さて、続話はいつもより長く語りますですよ~」




