破壊を呼ぶ者【漆】・・・破壊者【黒歴史】
八戒の死?だが、八戒の屍より新たな者が現れた。
それは、異国の魔神国の少年?
少年は言った。
『オラは破壊神シヴァの子…』
『この地での名を…』
『八代目天鋒元帥・遮那らぁーーー!』
この者は一体?
私は天界にて一部始終を見ていた監視神。
突如現れた褐色の少年は不可思議な黒い神気を纏い、底知れない存在感を出していた。
そして少年が語った自らの名に、私は勿論金角児・銀角児すらも凍りついたのでした。
それもそのはず…
「この気!まるで魔黒闘気じゃないか?それに奴の褐色の身体!間違いない。奴は…」
金角児はこの世界に存在する別種の神の事を口にしたのだ。
「異国の魔神族だ」
魔神族とは褐色の肌と漆黒の髪に赤い瞳を特徴とする一族である。
またこの一族は戦闘に関して類い稀なる才能を持った者が多く、破壊と戦闘を好む事から戦闘神族又は魔神と呼ばれ危険視されていた。
また、その身体から発する漆黒のオーラは魔黒闘気と呼ばれる。
魔黒闘気とは紛れもなくアッチの世界の神が纏う神気に他ならなかったのです。
…アッチとは?
実は…この世界は、天界を境に二つの世界が存在するのです。
そして、こちら側の世界を最高神であられる帝釈天様が統べており、あちら側の世界は魔神の王が統治している。その魔神達の王の名を破壊神シヴァと言うのです。
では、やはりこの遮那と名乗る魔神族の少年は本当にシヴァ神の血族なのでしょうか?
この二つの世界は今、帝釈天様とシヴァ神との間で協定関係が結ばれ、互いに干渉しない事で争いを避けている状態なのです。
だが、稀にアチラ側の者がコチラの世界に入りこみ災いを招く事件も数々あり、私達の世界の神々もその対抗策として戦闘専門の集団を結成されたと言われているのです。
それが武神なのです!
いや、今一番問題視する点は彼が破壊神シヴァの血族であると言う事でしょう!
シヴァ神の血族に手を出すとは、下手をしたら魔神族側との全面戦争を招く事態に陥る可能性もあるのです。いやいや?考えてみれば?
今、その血族と戦っているのは我々神族ではない…
もし、あの双子が倒したとしたら?
いや、或は…
我々神族に敵対する意味でも、奴等が勝手に同士討ちする事も有り得るし願っても良いのでは?
ゴクリ…
私は唾を飲み込み、魔神族の少年遮那と金角児・銀角児の双子から目が離せないでいた。
「意味分かんないな~どうして魔神族の奴がいるんだよ?しかも今まで豚に成り済ませたりしてさ?」
「とりあえずムカつくね?さっきから僕達に関心すら持ってないなんてさ?これってシカト?マジにムカつく!」
二人の間を中心に凄まじい光りの光弾が膨れ上がり、闇を照らす光弾が出来上がった。
さっきの光弾とは比較にならない濃密なる神気が籠められ宙にゆっくりと浮かすと、
「消えちゃえー!」
遮那に向けて放たれたのだ!
「あん?なんら?」
が、遮那は向かって来た光弾を、片手を差し出して受け止めたのです。
「さっきからピぃピぃウルサイ奴達らな…何なんら?お前ら!」
そして、自分の真上に弾き飛ばしたのだ。
「僕達はお前を、」「壊す者さ!」
双子の台詞に、
「ヘッ?えっと~なんら?もしかして、もしかてらけろよ?お前ら?」
「何だよ?」
「オラに喧嘩売ってたんらか?このオラに?」
不思議そうな顔で双子を見る遮那に対して、見下ろされたと腹立たせる。
「何を今さら!めちゃくちゃ腹が立ったぞ!絶対に殺してやる!」
「ふ~ん?らったらお前ら強いらか?」
「とびっきりに、」「強いよ!」
遮那は双子をマジマジ見た後、ウンウンと頷きながら感心していました。
「オラに喧嘩売るなんて恐れ知らずらな?いや?世間知らずのお子様らったらか?この地に来て初めてらぞ?そうらな~その勇気に免じて少し遊んでやるらよ!」
遮那は双子に対して両手の指をクィクィと自分に向けて、かかって来いとおちょくったのです。
「魔神族がどんだけって話だよ!」
「僕、魔神族の肉って食べた事なかったから楽しみだよ!」
「調子乗りすぎのアイツの喉元から血しぶき散らして、ゴクゴク乾杯しよっか!」
双子の瞳が妖しく光り、獲物を狙う獣の目になっていた。
そして遮那に向かって近付いて行く。
双子は両掌に冷気が籠ると、その両掌に氷の剣が出現させる。
そして銀角児が氷の剣を地面に向けて降り下ろすと、遮那目掛けて大地が斬り裂かれていく。
「!!」
裂かれた大地が凍り付きながら氷の氷柱が突き出し遮那に襲いかかったのです。
「うらぁー!」
遮那は眼前に迫る氷柱を生身の裏拳で砕く。
「次は直接お前を狙うからね?さぁ~て!斬り刻むよー!」
「僕らの牙は狙った獲物は逃がさないからねー!」
左右前後上下から二人の氷の剣が遮那に襲い掛かる。その鋭利な刃は鋼の剣をも一刀両断にするほどなのです。にもかかわらず遮那は二人の剣を容易く紙一重で躱していました。
「バカな…」
「金角児!あれ行くよ?」
「あれ?うん!」
二人は照らし合わせていたかのように左右に飛び退くと剣を大地に突き刺したのです。
すると地表が見る見るうちに凍り付き、辺り一帯が氷河に覆われていく。
「おわっと!」
遮那は滑る地面に尻餅をついたのだ。
そして遮那の前で双子が!?
いつの間にか足裏に氷の刃の付いた靴を履き、滑る地表の上でスイスイと滑りながら移動していたのです。
しかも!!
踊るように身体を捻らせ、ターン!
更には片足を上げて回転し、二人同時に飛び上がりながら六回転半を決めたのだ。
その優雅なテクニックに私は立ち上がり、つい拍手をしてしまったほどでした。
……さて、
身動きが困難な遮那の方は、よろよろと立ち上がり足裏を氷の地面に突き刺したのです。
「これで立てたらよ!」
「馬鹿な奴!それじゃあ身動き出来ないだろ?」
「どうせなら!」
すると、遮那の足下から氷が上がって来て、腰の辺りまで凍っていく。
「あ…動けないら!!巧妙な罠にかかったら!」
……だよな~普通。
更に双子は氷の剣に冷気と神気を融合させ巨大化させていく。
そして双子はコマのように回転しながら、遮那を中心に囲むように回転し始めたのだ!
「神妖技・霊凍弧!」
※レイトウコ
金角児と銀角児は遮那の距離を狭めながら近付いて来る。
この技は金角児が右回転、銀角児が左回転し、二人の持つ刃が近接する事で、その中心にいる者[シャナ]を胴体から真っ二つにする恐るべき技のようです。
「絶対絶命…」
「さぁ!真っ二つだよー!」
「チョッキンだぁー!」
双子の剣が高速回転して遮那に迫る!
終わった!
そう思えたその瞬間…起きたのだ!?
左右から高速回転して来たはずの剣が遮那に直撃したと同時にピタリと止まったのです!
「ばか…な?どうやって?」
だが、二人の剣の威力もまだ消えてはいなかった。
その振り払われた威力は振り抜くように遮那を中心に直撃し、そのまま粉々に砕けたのです!
「馬鹿な!僕達の剣が砕けただと?あっ?あれは!」
遮那の甲には黒いオーラが凝縮された状態で、それが手甲の役目を果たして双子の剣を受け止めていたのです!
「固気黒甲!」
※コケコッコウ
だが、まだ攻撃は終わってはいなかった?
砕けた剣の合間をぬって、遮那目掛けて銀角児が飛び出して来たのです。
それでも遮那の下半身はまだ氷の中に埋まって身動き出来ないまま。
「面倒だ!だったら直接この手で、お前の顔を潰してやる!」
銀角児の手は氷が凝縮し、鋭い五本指の爪と化していたのです!
その爪がシャナの顔面を捉えたその時、
「!!」
その爪の先に見えていた遮那の姿が消えていたのです!
いや?遮那は寸前で上体を下げて躱し、カウンターのように銀角児の顔面を掴み、その勢いのまま自分の真下へと叩き付けたのでした。
その衝撃は遮那の下半身を覆っていた氷を粉砕する。
「銀角児!!」
自由になった遮那は銀角児の顔面を掴んだまま持ち上げ、吊るし上げる。
銀角児は顔面から大量の血を流していました。
その血を浴びシャナは笑みを見せていました。
まさに邪悪な魔神!
あの凶悪な銀角児が哀れに見えるくらいに。
「銀角児を離せぇーー!!」
金角児は銀角児と同じく両手を氷の爪で覆い、遮那に向かって襲い掛かる。
「あはは!これ欲しかったらか?」
遮那は金角児が迫った瞬間、銀角児を盾にする。
慌てて金角児が攻撃の手を止めたのを狙い、銀角児を金角児に向けて投げ付けたのでした。
「ぐはぁっ!」
「あがっぅわ!」
二人は縺れるように地面に転がったのでした。
それを不敵に笑う遮那!
圧倒的な力の差?
これが魔神族の力なのでしょうか?
が、まだ終わってはいなかった。
金角児と銀角児がゆっくりと立ち上がって来たのです。その眼は血走って、
怒りの形相でシャナを睨み付けていました。
「殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!ぶち殺す!」
「もう遊びはない!全力で葬ってやる!」
二人の闘気[凍気]が異常なまで高まっていく?
あれは!?
『獣神変化唯我独尊!』
二人は狼の鎧と衣を纏い、その力は今までの数倍にも膨れ上がっていく。
金角児と銀角児の獣神変化は膨大な神気を立ち込め、その冷気は辺りを氷点下まで下げていった。
遊び?今の今までが?
ついに本気を見せた双子の力は、今私がいる天界の監視塔にある妖気測定水晶をも揺らせていた。
妖気測定水晶とはその名の通り、地上界の妖怪の力を測定する水晶。
青は安全。黄色は注意。赤は危険!
最高神レベルが出向く程の大重要最高討伐対象信号なのです。
そして水晶はまさに赤色を示していたのでした。
これは予想以上にとんでもない事態だ!
私は立ち上がり、もう見ている場合じゃない。
直ぐにでもこの事態を報告しに天界上層界へ向かわねば!
私が急ぎ向かおうとしたその時、他の測定水晶が反応を示したのです?
しかも四つの水晶が赤く?
それは西の地にて、凄まじい妖力を持った何者かが、今正に戦っているようでした。
しかも突然、前触れもなく?一体、何が?
その時、西の地では蚩尤相手に孫悟空、紅孩児、牛角魔王が死闘を繰り広げていた真っ最中だったのです。蚩尤の持つ不思議な水晶が砕かれ、西の地の結解が消えて妖気が天界にまで曝されたのでした。
私はただ立ちすくんでいました。
何故?
何故私が一人の時に次から次からと問題が起きるのだぁ----!!
だが、まだ終わってはいなかったのです。
遮那と双子の戦っている地から少し離れた上空にて、更に別の強大な力を測定したのです???
私は匙を投げ、座り込みました。
もう無理!!
地上界はどうなってしまったのだ??
私はゆっくりと立ち上がり、仕事を投げ出して再び遮那と双子の戦いを見る事にしたのです。
その時状況は?
獣神変化した金角児と銀角児双子を前にして、遮那が何か言葉をかけた所でした。
「ようやくマジになったらな?らけろよ?その程度らか?」
「はぁ~?」
「らからよ?その程度で終わりかと言ってるんらよ?」
それは挑発?それとも他に何か意図が?
金角児と銀角児の獣神変化は冗談が言えない力の上昇を見せているのに?
「何強がってるんだよ?もう遊びはしないよ?お前はもう終わりだ!」
「分かってないようらな?らったら冥土の土産に教えてやるらよ!」
すると、どす黒いオーラが遮那を覆い隠すように膨張したのです。
「本当の恐怖を与える圧倒的な力って奴を!」
力の解放と同時に覇気が天高くまで飛び出していく!
「ウラァアアアア!」
大地は奮え…
空が割れる!
その時、私の前に置かれた測定水晶が赤から黒く変色し、私の目の前で粉砕したのです。
「馬鹿な…測定水晶の限界値をも上回る力なんて?」
最高神レベル?
いや?正に破壊神なのか?
その有り余る黒いオーラの量は金角児と銀角児の力を完全に上回っていったのです。
「う…嘘だろ?」
「有り得ない…こんな事有り得ない…」
遮那の身体から発する攻撃的な魔黒闘気は大地を揺らし、地表の氷全てを粉砕していく。
二人は理解した。
目の前の相手[遮那]は触れてはいけない化け物であったのだと…
だが、それも手遅れ?
遮那の背後から黒いオーラが枝分かれして八つに分かれながら上空に飛び出す。
『八叉の打黒鞭!』
遮那の背後から現れた黒いオーラが鞭のようにしなり、金角児と銀角児に襲いかかったのだ!
二人は直撃寸前に氷の壁を作って防御する。
『絶対氷壁』
※ゼッタイヒョウヘキ
絶対零度で固められた壁が出現する。
だが、遮那の放った黒いオーラの鞭は双子の氷の壁をいとも簡単に砕き、
「うわああ!」
「ぐあああ!」
双子は弾き飛ばされながら大地に衝突したのでした。
直ぐに立ち上がった二人は体勢を立て直し氷の剣を構成する。
「ナメるな!僕達はお前なんかに負けるかぁ!」
金角児の氷の剣が大地に突き刺さると、地面が凍り付き遮那の身体を再び凍り付かせるが、遮那の発する黒いオーラがスクリューのように身体中の氷を砕き消し去ったのだ!
「馬鹿な…」
「あぁぁあ…」
余りの力の差に動けないでいた二人は…
「こんな化け物に勝てる訳…」
「何故?…何故?そもそも、どうして豚があんな化け物になったんだよ?」
金角児は取り乱す銀角児の手を取ると、
「ここは逃げるよ!」
「う…うん!」
二人は飛び上がり、その場から逃げ出していた。
逃げ去る二人を遮那は笑みを見せて眺めていたのだ。
そして叫ぶ。
「アハハハハ!なんぴたりともオラを止める事は出来ねぇらよ!」
八つの黒いオーラの鞭が金角児と銀角児に向かって伸びて行き襲いかかる。
「うわわ!…躱すだけで精一杯だ…」
「何としても逃げ…あっ!」
だが、逃げた先に遮那が先回りしていたのです。
「弱いらな?お前達?」
「僕達をナメるなぁー!」
プライドを傷つけられて逆上する銀角児だったが、逆にその髪を遮那に掴みあげられ、そのまま顎を上げられ殴り飛ばされる。
「銀角児!」
心配する金角児には既に遮那が迫っていた。
「心配するなよ?お前も直ぐに始末してやるら!」
が、その直後!
「うっ!?うっ…うっ…」
「えっ?」
金角児を攻撃しようとした遮那だったが、突然頭を抱えながら苦しみ始めたのです??
「頭が割れるようら…何ら?いてぇら…」
「こいつ…一体?」
先程殴られ、地面に落下させられて意識を失っていた銀角児が再び起き上がる。
「ちゃ…チャンスじゃないか?今なら…」
その唇から血が流れ頬が腫れ上がっていた。
そこに金角児が飛んで来て銀角児の腕を掴み、一目散に連れて逃げ出す。
「き…金角児…何故…逃げ…るの?」
「黙って!」
そのまま気を失う銀角児に金角児は青褪めていた。
「逃げなきゃ殺される!」
金角児は氷の狼に変化して銀角児を背に乗せて走り出したのだ!
(無理だ…格が!!次元が違い過ぎる!!)
金角児は遮那の恐ろしくも脅威的な力を身に染みて感じ、振り向く事さえ出来ずに涙を浮かべていた。
逃げるだけで精一杯?銀角児を連れて一目散にこの場から離れていく!
これが…恐怖?
生まれて初めて感じた恐怖と言う…敗北…
そして遮那は痛む頭を抑えながら、逃げる金角児と銀角児を目で追っていた。
「逃がさねぇら…オラは全てを破壊する」
破壊の力を集中させた黒いオーラの鞭が、二人目掛けて放たれようとしていた。
その時…
「何ら?」
頭の中に再び何者かの声が響いて来たのです。
《まだ…早いです…貴方が封印を解くには、まだ…早過ぎる。この先訪れる、その日まで…》
その時、遮那の目の前に、光り輝く八つの玉が向かって来たのです!
「なんら?なんら?お前は…一体誰ら?さっきからオラの頭の中に響く声は??いや…オラは…お前を知っているら…お前は!」
「けんれん!!」
その名を叫んだ時、八つの光り輝く玉が遮那の胸に吸い込まれていく?
「ウググオオオオオオ!」
遮那の身体は光に包まれていき、その姿が煙りに包まれていく??
煙が消えて暫くすると…
「なんら?」
そこにいたのは黒豚の八戒だったのです。
「オラは一体どうなったらか?」
辺りには金角児と銀角児の気配もなく?
傷付いていたはずの八戒の身体は完全に再生されていた。
どうやら今の一部始終の記憶がないようでした。
全く、意味が分からない八戒だったが、
「そうらか!無意識にオラがアイツ達をやっつけちまったらか?やっつけ仕事がオラが眠っているうちに発動したらか?やはりオラは最強ら!ガハハハ!最強ら!最強ら!ガハハハ!」
が、そこで再び八戒は貧血を起こして大の字に倒れたのです。
(でも…本当、良かったらよ…オラの居場所はやはり…三蔵はん達のいる……あそこだけらな…)
「早く戻りたいら…」
八戒は身体を起こして立ち上がり、三蔵達のいる所に向かって帰って行った。
私は監視神…
私は一部始終を見ていた。
その全てを目にした時、私の身体は震えていた。
それは恐怖?いえ?私はあの破壊者を知っていたのです。
どうして今まで忘れていたのか?
まるで、過去の恐怖体験が、その記憶を強引に押し込め忘れていたかのようだ…
過去に黒い天鋒元帥がいた。
その者、外界より突如現れ、天界の里を幾つも破壊して回た後、
討伐に出た数千の武神を亡き者とした。
黒いオーラを纏い天に逆らいし反逆者!
神々は、その者を恐怖の対象として、
黒き破壊神と呼んだのだ。
私は震える手で、今起きた出来事全てを記録した水晶を手にし、直ぐに天界最上階へと向かう準備をする。直ぐに報告し天界の総力をあげてでも、あの破壊神[遮那?八戒?]を始末しなければならない…
直ぐにでも!
「あっ!」
すると私の視界が薄れていき、床に倒れたのです。
…あれ?私の身に何が??
すると背後から声がした。
『命は奪わんが、その記録水晶と、お前の見た記憶を消させて貰う』
・・・誰??・・・記憶を消す?
そうだった。
かつて、破壊神が襲来した時、その恐怖に戦意を失い、廃人となりかけた武神達は…
その恐怖とともに記憶を消した。
この私も…含め…
そして、その破壊神襲来の記録とともに、記憶を抹消されたその空白の歴史は、
『黒歴史』として、今や一部の上級神しか知らぬのでした。
私の記憶が再び、消えていく。
ここは監視塔から離れた天界の武神訓練塔。
「まさか…そんな過去が?いや…私もまた記憶を抹消されていたのでしょうか?天界に!」
「そうだ…天界は望んだ天界神のみならず、全ての天界神から破壊神の記憶を!黒歴史全てを抹消したのだ!」
「何故?そのような事を?それに改伯様は何故その事を?」
「それは…」
改伯は胸を抑えながら、それ以上は語らなかった。
黒歴史とは?
それは失われた八戒の記憶なのか?
そして破壊神遮那と彼を止めた謎の声の主との関係は?
遮那が消える際に残した「けんれん」とは?
全ての謎は、今はまだ語れない…
しかし、いずれ語られた時、世界は再び動き出すだろう。
破壊を呼ぶ者 完
次回予告
様々な謎を残しつつ、八戒は再び仲間達のもとへ
だが、その頃もう一つの因縁渦巻く戦いが起きていたのだ。
次話より『復讐を誓う女の章』




