破壊を呼ぶ者【伍】・・・後悔
一人、金角児と銀角児に挑んだ八戒。
しかし、その力の差は歴然としていた。
奇抜な策も全て尽き、八戒は金角児と銀角児の魔の手にかかろうとしていた。
オラは八戒ら…
三蔵はんに襲撃して来た金角児と銀角児に対し、オラは単独で奇襲を行った。
らが、圧倒的なる力の差…
健闘虚しくオラの打つ手が万策尽きたのらった。
「あわわ」
オラの額から冷や汗が流れ落ちる。
オラは銀角児にみぞおちを殴られ、そのまま意識が吹っ飛んだのら。
うっ…ううう…
オラは目を覚ました。
すると、目の前には金角児と銀角児がこてんぱんに伸びているではないらか?
一体何が起きたらか?
「よぉ!待たせたな?お前にしては良くやったんじゃねぇか?」
「そうですよ!たった一人で立ち向かうなんて、八戒兄貴は勇気がありますよ~!」
んな?
見ると、オラの目の前には孫悟空と沙悟浄がいた。
コイツ達が奴達をやっつけたらか?
オラは助かったらか?
ハハハ…
オラは二人に起こされ、軽口を叩いたのら。
「まったく余計な真似を…オラ一人でも何とかなったらよ…まったく…ぶつぶつ…」
ついつい強がってしまうオラに対して、三蔵の旦那がオラに近づいて来る。
あれ?三蔵の旦那?
身体の調子は良いらか?
すると三蔵の旦那は、オラの頭を撫でて言ったのら。
「助かったぞ?八戒…お前は俺の大事な友だ」
友か…
何かこちょばよいらな~
オラ…怖かったけど…
やっぱり…良かったら…
良かっ…
鈍い音が響いた??
「あぎゃあああああ!」
それはオラの右腕がへし折られた音らった。
続けて逆腕を反対方向にへし折られる。
オラの両方の腕が、ぶら下がったように揺れる。
目の前から三蔵はん達の姿が消えて、金角児と銀角児がニヤニヤしながらオラを見ていたのら。
そうら…オラは…
何時間もこんな拷問を続けられていたのらな…
オラはコイツ達に捕まった後に気絶させられ、氷の柱に足を埋め込まれ身動き取れなくされたのら。
その後、鈍い音とオラの悲鳴がこだます。
殴られ蹴られ、折られた腕の指の爪を剥がされた後、一本一本曲げ折られていく。
こいつ達、拷問を楽しんでやがるら!
両足だけでなくボロボロになった折れた両腕をも氷の柱の中に埋め込められ、完全に身動きが出来なくされたのら。
身体中から血が噴き出し流れ落ちる血は地面に吸い込まれ変色していた。
「馬鹿だね君は?」
「レベルを考えなよ?勝てる訳ないよね僕達に?まぁ、馬鹿には分からないかな?」
金角児と銀角児の挑発にオラは静かに呟いていた。
「ぶつぶつ…」
「何を言ってるの?」
金角児はオラの腫れ上がった顔を強引に自分に向けると、
「黙るら…仲間見捨てたら…終わりら…本当に大切な仲間なら…命かけられるのが…仲間ら。男ってもんら……まぁ、小僧には分からないらか?ふっ…」
オラの言葉に頭に来た金角児が、オラの腹を突き、そのままアバラを掴みへし折った!
「アギャアアアア!」
「調子にのるなよ?黒豚!お前なんかいつでも殺せるんだよ!ば~か!仲間?いつまでもそんな綺麗事言ってるなよな!」
再び殴りつける金角児。
「それにしても、頑丈だよね?そいつ。普通ならとっくに死んでるよね?」
「ああ…再生力が低級妖怪のレベルを遥かに越えているね。そのおかげで今まで生きてこれたんだと思うよ?」
「本当…まるで、アムリタを飲んだような再生力だよね?」
アムリタ?
オラは意識が遠退く中で二人の会話を聞いていた。
「アムリタは如何なる病も怪我も直す万能薬だからね?」
「万能薬アムリタは天界でもなかなか手に入らないもんね。地上界じゃ、あの『鳥の王』が持っているだけみたいだよ?」
鳥の王?
万能薬アムリタ?
それがあれば、もしかしたら三蔵はんも元気になるのらか?
それさえあれば…
猿達に教えてやったら、喜ぶかもらな…
オラに…その余力があればらがな…
逃げなきゃ…
逃げて教えて…
三蔵はんを元気にさせて、また猿と河童と一緒に旅をするんら!
だから、死ね…なぁぃら…
すると、今度は銀角児がオラの前に立つ。
「今度は僕に殴らせてよ!良いよね金角児?僕もストレス発散したいよ!」
「ダメだよ!」
「えっ?」
金角児は銀角児を止め、銀角児の拳を包むように握ると冷気を籠めたのら?
すると銀角児の拳に氷のグローブが出来上がる。
「拳を傷めないようにね?」
「うわっ!優しいよ!優しすぎるよ!金角児!僕は金角児が大好きだ!」
「僕も銀角児が大好きだよ!」
二人はハグッていた。
何らよ?この漫才は?
その後、
再びオラが殴られる音が響き渡る。
まるで、サンドバックらな…
もう…らめら…
痛みも感じないら…
痛みを通り越すと、ただ苦しくて…
いっそのこと早く楽に…なりたぃら・・・
オラの脳裏に前に三蔵はんに言われた言葉が過ぎった。
「八戒よ!お前の再生力は特上妖怪並だ!しかし油断するな?その再生力はお前に生きようと思う強い意思がある時だけ発動するようだ。お前が戦う事を!生きる事を諦めたなら、お前は死ぬ!」と…
オラが死ぬか…
そんな事、今まで考えた事もなかったら…
今度は仲間達との思い出が走馬灯のように過ぎる。
楽しかったらな…ふふふ
「なんだよ!コイツ笑ってるよ!気持ち悪い!もう飽きたよ~早く殺しちゃおうよ~」
オラは良くやったらか?
三蔵はんよ?
そういえば約束叶えて貰ってねぇらな?
オラの記憶取り戻してくれるって…
それも…もう…どうでも良いら・・・
「待ちなよ銀角児!良い物があるよ?」
金角児は懐から何やら取り出したのら。
それは何か薬が入った瓶のようであった。
「あっ!なるほど!それは面白いよ金角児!」
金角児が取り出した瓶は、
『宝具・浄瓶』
金角児は意識朦朧のオラに説明し始めたのら。
「この瓶の中にある飴玉を飲んだ者は、その身体を瓢箪へと!魔法の瓢箪へと姿を変えられてしまうだよ!お前は今から浄瓶構成の実験台になるんだ!」
「でも、妖怪に飲ませても大丈夫なの?」
「確かにね?でも大丈夫じゃない?こいつの再生力は魅力的だよ。コイツが魔法の瓢箪になればさ?」
「アムリタみたいな再生力のある神酒が出来るかもしれないよね!でも、ここに来るまで結構人間達で試したから中身少なくなってない?」
「実験は子供の好奇心を満たす一番のオヤツだよ!それに、三蔵の分は残してあるから大丈夫!あいつなら間違いないよ!」
コイツ達、三蔵はんにそんなもんを飲ませる気だったらか…?
そんな事は許せないら・・・
「さぁ?飲みな!そうそう!最後に言い残す事はないかな?」
オラは力なく言った…
「糞にまみれるらぁ」
有りったけの減らず口の後、オラは口を強引にこじ開けられ、
「やめるら…うっ!ゴクン……グハッ!」
飴玉を飲まされた後、金角児と銀角児はオラから離れた。
「うがあああああああ!」
既に麻痺で痛みを感じないはずの身体に、強烈な激痛が走った。
肉体と魂が引き離される説明のしようがない痛みらった。
声にならない声が響く。
苦しみもがく中…
「うごぉおおおららら!」
オラは最後の力を振り絞り、ボロボロになった自らの両腕と両足を力任せに引き千切ると油断していた金角児に体当たりしたのら。
「何だこいつ!まだ動けるのか?しつこい奴だ!」
「あっ!金角児!浄瓶が!」
オラは体当たりした時に金角児の持っていた浄瓶を口にくわえて浄瓶ごと最後の飴玉を飲み込んだ。
オラは今の今まで三蔵はんに何も返してなかった。
らからオラが出来る最後の力で出来る恩返しは、このくらいらけらよ。
三蔵はんのこれ以上苦しむ姿もう見たくないら…
オラは血眼の目で睨み付けて軽口を吐いた。
「へへへ…オラは悪食なんらよ!」
「こいつ!」
オラに向かって妖気弾を放とうとする銀角児を金角児が止める。
「もう無理だよ!コイツの身体で瓢箪が成功する事を願うしかないよ!」
全身に更に強烈な激痛が走る。
もう叫んでも、喉が張り裂けて声が出ない…
苦しい…熱い…辛い…
死ぬなら早く死なせて欲しいら・・・
限りなく続くような激痛の中で思考が後悔の渦に飲み込まれていく。
何故…オラ…こんな苦しい思いしているらか?
あのまま逃げてれば…
オラの目から涙が溢れる。
「アハハ!馬鹿な奴だ!泣いたってもう終わりだよ!」
「あれ?何も起きないよ?おかしいな?もしかして死にかけ過ぎてたからかな?」
「いや、これからだよ!」
オラの身体に異変が起きる。
のたうちながら全身の骨が砕けていくのが分かる。
身体中の血が沸騰していくように失っていく。
変な方向に身体が曲がる?
オラ…死ぬらか?
後悔…するら…
何故…オラは此処に来たらか?
後悔するら…
何も出来なかったオラの無力さに後悔するら…
そしてついにオラの心臓の鼓動が完全に途絶えたのら。
-----場面転換-----
ここは天界?
若者は天界にある書物庫にて調べ物をしていた。
若者の名前は玄徳
武神見習いの若者である。
彼は天鋒元帥を父に持つ若者で、夢はその後を継ぐ事であった。
以前三蔵一行とも一悶着起こした事があったのだ。
「おかしい…何故だ?何故ないのだ?」
玄徳は探し物をしていた。
「今まで気にはなってはいたが、改めて探してみて資料がまったくないなんて…有り得ない…」
玄徳が探しているのは、天鋒元帥の歴史書?
「我が父、七代目までの歴史は記されてはいるが、やはり八代目の事を記した書物が一つもないなんて?この天界の書物庫には全ての神や仏の生涯の歴史を記されている資料があると聞いて来たのだが?確かに就任一年と言う短い期間で戦死したとはいえ、その者の情報が一つも残ってないものだろうか?まるで、何者かによって…その歴史の全てを残さぬように隠蔽されたかのようだ…」
「何をしている?」
書物庫の灯りに気付いた者が玄徳に呼びかける。
「あっ!これは先生!」
そこに現れたのは玄得の育ての親でもある改拍であった。
玄徳は改拍に説明した。
「玄徳よ…何故お前が今になって八代目殿の事を調べておるのだ?」
「ええ…少し気になりまして…」
以前、八戒に会った時から何か無性に気にかかってはいたのだ。
「あの…先生は八代目の天鋒元帥殿にお会いした事がおられるのでしょうか?」
「八代目か…玄徳よ。これは内部の者しか知らぬ事だが、お前にだけは話してやろう。
だが、決して他言無用だぞ?」
「あっ!はい!我が命に代えても!」
「あの方は…天により、天界への反逆の罪で歴史から消されたのだ」
(あの方?天界への反逆?しかし何故だ?
先生の八代目を語る表情は?まるで何かを押し殺しているように見える。
反逆の罪を犯した者に『あの方』?まるで敬意を示しているかのような?)
師である改伯の意味深の言葉に玄徳は余計に気になっていた。
(一体、八代目とは?)
歴史から消された天鋒元帥とは?
そして、八戒は本当に死んでしまったのか?
次回予告
八戒「皆様、短い間らったらが、応援してくれてありがとうら・・・」
八戒「はああ・・・後悔するら・・・まだ彼女も結婚もしていないらに・・・マジに後悔らよ・・・もっと美味いもんも食いたかったらよ~」
八戒「そんな訳で、皆様~さよならら~」




