破壊を呼ぶ者【参】・・・逃走心!
邪神金角児と銀角児、二人は立ち寄った人身売買で栄えた国を滅ぼした。
だが、それはただ「そうしたかっただけ」悪意か?故意なのか?無邪気に破壊を楽しむ彼等の本命たる次のターゲットは孫悟空不在の三蔵一行へと迫る。
金角児と銀角児が迫っているなどとはつゆ知らず、オラは一人買い出しに出ていたのら。
オラは中年太りの褐色の人間の男に変化し、村の広場で催していた出店を回っていた。
おっと?オラは八戒ら!
「まったく三蔵の旦那にも呆れたもんらよ…普段ガミガミと煩いくせに、動けないほどダウンしちまうなんてよ~!」
三蔵の旦那は猿[孫悟空]がナタク連れ去られた後、今までの疲労と立て続けの戦闘のダメージで意識を失い目覚めないでいたのら。。
今は沙悟浄が一人看病し動けない二人の代わりに、
オラが近くの人間の村まで来て食料調達に来ていたのら。
「ブーブー!何で、このオラが買い出しに行かされなきゃ行けないらよ~ブーブー!…ん?」
ザワザワと…
何やら村の若い連中が集まって会議をしているみたいらぞ?
何の騒ぎら?
オラは聞き耳立てて会話を盗み聞きしたのら。
「なぁ…聞いたか?西にある小国が凍付けにされて滅ぼされたんだってよ!」
「いったい誰にだ?やはり妖怪の仕業か?」
「それが分からないんだ…生き残った者は勿論、目撃者が一人もいないとか!でも、百中百区妖怪の仕業だろうぜ?そんな事をやるのも出来るのも妖怪か神様くらいだろうぜ?」
「じゃあ、この村にも来るんじゃねーのか?その妖怪?」」
「どうだかな?とにかく怪しい奴がいたら近付かないようにしねぇとな?全く物騒な世の中だよ」
その話に聞き耳を立てていたオラは、
「おっかね~世の中ら…」
妖怪ねぇ…
近くにオラがいるらに、気付かないようじゃ分かる訳ないらよ~
まぁ、妖怪なんて来たら、オラが真っ先に気付くら。
その時…
オラの背中に寒気が走る!
なっ?なんら?
オラは即座に物陰に隠れて辺りを見渡した。
「なんら?この凄まじい妖気は?突然現れたらよ!ん?あいつらか!?」
そこには見るからに目立つ二人の少年が村の様子をモノ珍しそうに見ていたのら。
「ねぇ~?き・ん・か・くぅじ~!もう飽きたよ~!早く三蔵一行の所に行こうよ~!」
「慌てるなよ?銀角児!大丈夫。三蔵一行は逃げたりしないからさ!それに奴達の臭いは記憶している。何処に行って隠れても見付けられるからさ」
物陰に隠れていたオラは息を止め、身動き出来ずに今までにない恐怖を感じていた。
「逃げねば…」
オラはその場から一目散に逃げ去ったのら。
「ヤバすぎる…ヤバヤバら!なんら?あいつ達!何者なんら?金角児とか銀角児って呼び合っていたらぞ?金角・銀角の関係者?それとも子供かなんからか?いやいや…そんな事はどうでも良いら!あいつ達に関わってはダメら!危険ら!オラには分かるら…オラとは次元が違い過ぎるら!あいつ達が探しているのは三蔵はんと悟空の馬鹿ら!それに、三蔵一行と言っても別にオラは好きで一緒にいる訳でもないら……好きで…いる訳じゃ…」
その時、三蔵はんや孫悟空、沙悟浄と喧嘩した事や、楽しかった思い出が頭を過ぎって立ち止まった。
猿と食い物を取り合った事や、河童の皿に饅頭置いてからかったり、三蔵はんに説教されたり、幾度と襲い掛かる妖怪達との戦いのさなかに背中を預けた辛くも充実した記憶。
何だかんだと意気の合う仲間達、
仲間…仲間…仲間…
「ダァーッ!情に流されちゃダメら!オラはシビアな妖怪ら!大切なのはオラ自身ら!一番はオラの命ら!オラはオラの幸せだけ考えていれば良いらよ!それにオラの失った記憶を蘇らせてくれるはずの三蔵はんもあの調子じゃ、オラの旅の目的も叶わないじゃないらかよ!オラの未来は絶望らよ!」
そうらよ…
オラには何も出来やしないのは分かっているら…
オラ一人では…
いつだって絶体絶命の危機には三蔵はんや、猿の奴が何とかしてくれたら…
でも、頼りの三蔵はんは身動き出来ない重体、猿の奴はナタクに拐われていつ戻るか分からない。
そもそも何故猿に頼る?
出会った時は、オラとあんまり力の差はなかったはずらのに?
あいつはどんどん強くなって、正直、今のオラでは太刀打ち出来ない域までいっちまったら~
オラは自分が情けないと感じるよりも先に、諦めがあった。
らから、気にしないでいられた。
そもそもオラは臆病なんらよ!
戦う事なんか嫌いな平和主義の豚なんら!
オラは三蔵はんに持っていくはずの食料を開けると、ムシャクシャと食べ始めた。
「うまうま!美味い饅頭ら!このまま食べて寝て、すべて忘れるら!これが最善の策ら!これがオラの生きる道なのら~!」
オラは黒斗雲を呼ぶと遠くへと飛んで消えて行ったのらった。
再び場所は変わる。
三蔵の旦那が寝ている傍に沙悟浄が看病していた。
その二人を何者かが木の上から覗いていたの。
「いたよ金角児!」
「三蔵一行みっけ!」
間違いなく金角児と銀角児であった。
「でも、おかしいよ?猿と豚がいないよ?」
「きっと、何処かに出てるんじゃないかな?」
「どうしよう?待つ?探す?」
「それより二人が戻って来た時、三蔵と河童が死んでた時の二人の顔見たくない?」
「あ~!見たい見たい!めちゃ見たい!」
「じゃあ…」
二人から冷気が高まると二人の間に氷の剣が二本宙に浮く。
見る見る巨大化していく氷の剣を上空にあげ、三蔵と沙悟浄に狙いを定めていた。
肝心の二人はまったく気付いてない。
「バイバイ!」
金角児と銀角児は巨大化した二本の氷の剣を、三蔵はんと沙悟浄目掛けて投げ落とした。
氷の刃は三蔵と河童に直撃し、二人はグチャグチャになって形をとどめなかった。
残ったのは異様な臭いだけ?
ん?
「どうなってるの?何か変だよ?」
「分からない!」
その時、二人の上空から巨大な影が落下して来たのら。
それは巨大な~うんち??
「ナハハハハハハ!やけっぱち、投げやり、破れかぶれの大放出らぁ~!」
そこにはオラが黒斗雲から落下しながら二人目掛けて、それはそれは巨大なウンチの塊を持って落下して来たのら。
そうなのら。
金角児と銀角児が本人だと思って襲った三蔵はんと沙悟浄は、オラが作った偽者のウンチの模型ら!
そして今頃、本物の三蔵と沙悟浄は川辺を進みながら移動していた。
「まっ~たく!八戒兄貴は何を考えているのでしょ~う!突然慌てて戻って来たと思ったら、頼んでいた買い物も忘れて!そんで私と三蔵様の匂いの付いたもんをよこせ!とか言って、また慌てて出て行くのですから!あの兄貴の考えている事はさっぱりさっぱりですよ~」
沙悟浄はオラから手渡された地図を見ながら移動していた。
「それに何故川沿いに沿って移動しなきゃいけないのでしょうか?えっと~こっちの方角に何かあるのでしょうかね?」
その地図にはオラからの手紙が記されていた。
「オラは少し先に向かうらよ!待ち合わせ場所はここら!そうら!地図通りに川沿いを進むらよ?絶対らよ!さもないと皿割るらよ!」
「それだけ言って飛びさるなんて!きっと上手い食べ物かエッチな女の人見付けて追い掛けてるに違いありません!全く!三蔵様の身体を気遣えってもんですよ~。それに、孫悟空兄貴の事も待たないといけないのに~はぁ~うん!私がしっかりせねば!」
沙悟浄は新たに決意した。
そして、
「・・・・・・」
三蔵はんは今だに眠ったままらった。
その頃、
オラは無謀にも最強最悪の金角児・銀角児に…
一人、戦いを挑むのらった。
次回予告
八戒「久しぶりに登場したと思ったら、大ピンチじゃないらかよ!!」
八戒「で・・・出番少なくとも、オラは痛いのは嫌ら~」
八戒「この展開は完全に脂肪フラグ?いや、死亡フラグじゃないらか?」
八戒「とにかく!オラは・・・最前の道を進むらよ!」




