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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
転生記~始まりの伝説編~
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破壊を呼ぶ者【壱】・・・邪神再来!

孫悟空と紅孩児、牛角魔王の因縁

不老不死の妖怪皇帝蚩尤との激戦!

そして、孫悟空が不在の今・・・

新たな脅威が三蔵一行に迫ろうとしていた。


覚えているだろうか?


ここは以前、凶悪な妖怪が三蔵一行と戦いし戦場。

簡単に人が踏み込めないこの地には、武闘寺院と呼ばれる特殊な鍛練を積む人間達の集いし寺院がある。武闘寺院とは人間達が妖怪の脅威に対抗するべく作られた寺院なのだ。


この寺院の更に奥にある結解が幾重にも張りめぐらされた洞窟の中に、その二つの石は置かれていた。

二つの石からは濃度の濃い瘴気が随時噴き出し、何者をも近付けさせないでいたのだ。


その石とは?

元はある妖怪達の骸であった。

二つの妖怪の骸は黒焦げになり、元の姿は分からない状態であった。

それは次第に塊となり、二つの石の様になったのだ。


黒焦げた岩石?

いや見ようによっては卵のようにも見えた。



異変は少しずつ進行していた。

その死骸で出来た岩石に異変が生じたのだ?

突然ヒビが入り凄まじい妖気が洞窟を充満させたのだ!


既に気付いた方もいるだろうか?

この二つの石こそは、以前に孫悟空達三蔵一行との激戦で敗れ去った、金角と銀角の躯なのだ。

だが死してもなお、その死骸に残留する邪気は怨霊のたまり場として残ってしまった。

そこで三蔵は旅に出る際にこの死骸に特別な術を施し、岩石に変え、この洞窟の中に祠を立てて封印したのだった。しかし、それが?


岩石のヒビが大きくなるにつれて揺れは激しくなっていく。

だが、その異常な妖気に反応して、結解がその力を発動させたのだ。

強力な呪縛が岩石の妖気を浄化させて動きを止めたのである。




場面は変わり、寺院本殿では新しく大僧正を務める大柄の男の前に一人の少年が座していた。


「がははは!確か三蔵殿が旅立ってから、まだ半年だったな?」


「はい。三蔵様の紹介で私を預かり、育ててくださる大僧正様には感謝しかありません」


「がははは!がははは!いやいやお前は本当に優秀な逸材だぞ?まさか自分からこの特殊な寺院で修行をして、退魔師になりたいと申し出て来るとはのう?もとい素質は最初から見抜いてはいたが、儂の予想を上回る上達の早さじゃぞ?」


「いえ、私なんかまだまだでございます」


「うむむ~惜しいのう?」


「何がでございますか?大僧正様?」


「出来る事なら行く末は、お前に儂の後を継いで貰いたいのじゃが、やはり気持ちは揺るがんか?」


「はい…申し訳ありません。私はやはり、この寺院で力を得た後は三蔵様を追い、旅のお手伝いをしたく願っております」


「がははは!そんな申し訳ない顔をするでない!無理強いじゃないぞ?うむ。三蔵殿もお前の成長には驚かされるであろう!がははは!若者は己が信念を通してこそ、更に成長するものだからのう。益々お前の成長が楽しみじゃ!フォン!」


「ありがとうございます!大僧正様」



フォンと呼ばれた少年は、かつて凶悪な妖怪に襲われた際に三蔵一行に命を救われ、その生い立ちと特別な体質から、この寺院に預けられた経緯があるのだ。


その時だった。

何処ともなく凶悪な妖気が寺院全体を覆ったのである。



「こ…これは!」


「儂も気付いた!これは結解の洞窟からじゃ!何事か分からぬが向かうぞ!」


「はい!大僧正様」



大僧正は寺院の外で既に武装を終えて集まっていた僧侶達と結解の洞窟へと向かった。


「ここはやはり!」


「大僧正様!もしや金角と銀角が蘇ったと言うのでしょうか?」


「いや、それは考えられぬ…しかし、まさか…」



確かにその洞窟にはあの金角と銀角の魂が眠っている。

大僧正は三蔵が旅に出る際に言い残した言葉を思い出していた。



「大僧正よ?この金角と銀角の魂は本人の意思とは関係なく、何らかの他の力により縛られ、浄化されずにいるようだ。残念だが今直ぐに魂を有るべき場所に返す事は不可能」


「では、いかに致しましょう?」


「手段がない訳ではない。これから数十、いや?数百年になるかもしれんが、この地に強力な結解を張って封印をする。さすれば呪縛は解けて、この二体の魂は浄化されよう」


「分かりました。では責任を持ち、この二体は我々寺院で見守る事に致しましょう」


「まぁ、安心しろ?金角と銀角が再び甦る事はあるまい。奴等の魂には念のために不動明王の呪印を施している。俺が死なぬか俺以上の力の持った者でない限り解く事は出来んよ?」


「それを聞いて安心した!がははは!」




そんな経緯があったのを思い出し、大僧正は三蔵の身に何かがあったのかと案じていた。



「万が一、三蔵殿の身に何かあれば…金角と銀角が再び甦るかもしれんか…」


「そんな…」



有り得ないとフォンは己自身に思い込ませていた。



(そんな筈はない…私はいずれ三蔵様と必ず出会う運命なのだから…)



その時、洞窟内部に先に潜入した僧侶達の悲鳴が響いたのだ。


一体、何が?

金角と銀角だった者の死骸で出来た岩石が突然ひび割れ、その中からか細い腕が出てきたのだ。

そして、何者かがゆっくりと這い出して来たのである。

そこから現れたのは、まだ幼さの残る銀髪の少年。

すると、後ろから少年を呼ぶ声が?


「おはよう!」


銀髪の少年が振り向いた先には瓜二つの少年。

いや?髪の色が金髪の少年がこちらを見て微笑んでいたのである。

美しく綺麗な二人の容貌は、まるで天使のようであった。


「ようやく出られたよ…」


「そうだね、この忌ま忌ましい妖怪のせいで…」



銀髪の少年は、金角と銀角の死骸を踏み付けて砕いて言った。


この少年達の正体は?

そこに現場を見ていた僧侶が震えながら口に出したのだ。



「金角と銀角が蘇った?いや?転生したのか!?」



瞬間、その僧侶は足元から凍てつき、全身が氷に覆われ砕けて消えた。

その最期を不満そうに見ている二人の少年。



「僕達が金角と銀角の転生した姿だって?」


「あんな下等な妖怪と一緒にするなんて…何か心外だよ!殺しちゃうよ?もう殺したけどね?」




この少年達の正体は遥か昔、天界より堕ちてきた所を妖怪であった金角、銀角に喰われてしまった二人の神の子供達なのだ。

妖怪が神を喰らうと、その異なる気の質から肉体が崩壊する恐れがある。

だが金角と銀角は生まれながらに特殊な体質で、己の体内に魂を封じる能力を持っていた。

その力が天界から落ちて来た二人の神の子供を喰らったことで、金角と銀角に並外れた力を与えたのだ。

その時に飲み込まれた神の子が今、金角と銀角が死んだ事により体内から抜け出して来たのだ。


しかし、この少年達から立ち込める気は?

天界の神気とは違う?

神気と妖気の混ざりあった異色の気を漂わせていた。


そして、その姿も人狼?

いや?神狼の姿。

しかも額の上に一本の角があったのだ!



「ねぇ、これからどうする?兄さん?」


「そうだね…せっかく外に出られたのだから楽しまなくちゃね?」


「何を、するのかな?」


「うん…先ずは…五つの宝具を取り戻そうかな?」


「五つの宝具か!」



五つの宝具とは?

かつて妖怪盗賊であった金角と銀角が、難攻不落の天界の宝物庫より盗み出したという宝具である。

しかし天界から宝具を盗む等、並大抵の妖怪に出来るはずがない。

それもこれも、この神の子供達の仕業であった。


二人の神の子は、金角と銀角の中で着々と計画を立てていた。

いつか自分達を喰らいしこの妖怪達(金角、銀角)の身体から抜け出した後、十分な力を得るために…

そこで神の子達は、金角と銀角に気付かれないように操りながら働きかけ計画に移る。

実際、金角と銀角は気付いてはいなかっただろう…

神の子達は金角と銀角の無意識下に働きかけたのだ。

そうとも知らずに金角と銀角は、天界に忍び込み五つの宝具を手に入れた。

それも、神の子が安全なルートを知らせていたから。

正直いくら金角と銀角が強いと言っても、天界に忍び込むなど並大抵の妖怪が成し遂げられるはずもなかったのだ。



「でも五つの宝具の中で、魔法の瓢箪は壊され、もう一つは牛角魔王の妻である羅刹女に奪われた芭蕉扇なんだけど?羅刹女亡き後は行方が分からなくなっているみたいだよ?」


「芭蕉扇は持ち主を選ぶからなぁ~いらないよ!確か他の二つの宝具はアジトに隠してあるよね?」


「あの二つも金角達に使わせるには、あまりにも力が強すぎる宝具だったからね~!それより、今はこれこれ!」



金髪の少年は金角の死骸の中に手を突っ込むと、

中から何やら小さな瓶を手にする。



「それかぁ~なるほどね~!それがあれば、僕らが力を取り戻すのに手っ取り早いや!」



すると、金髪の少年は怪しい笑みを見せ、


「そのために、それを使うんだね?」



「そう…このもう一つの宝具・浄瓶でね!これは…」




その時、



「何事だ?」



洞窟の外から異変を感じた大僧正他僧侶達が入って来たのだ。



「馬鹿な!金角と銀角の祠が壊されているぞ!」

「なんだ?あの子供達は?」

「気をつけよ!あの妖気…人間ではない!見た目に騙されるなよ!」



その中の二人の僧侶が、金と銀色の少年達に錫杖を突きつけると、

僧侶達の身体は凍てつく氷の柩の中に閉じ込められた。


「なっ?お前達気をつけろ!」



大僧正が辺りを見渡すと仲間の僧侶達もまた、凍てつく氷の柩に閉じ込められていた。

残されているのは大僧正とフォン、それに寺院の中でも大僧正に次ぐ実力者の師範代が一人!


「馬鹿な…」


師範代は直ぐに体制を整え念を籠める。


「大僧正様!私にお任せを!」


『呪縛縄!』


師範代の放った念が辺りの壁に貼られていた術札の力を借りて、霊気の縄が二人の妖怪の少年の身体を縛り上げる。


「この霊気の縄は妖怪であるお前達には決して破る事は出来ん!三蔵様が旅立つ際に残してくれたのだ!」


「何、これ?」

「もぅ~うっとおしいなぁ~!」


しかし霊気の縄は意図も簡単に少年達により軽々切り裂かれたのだ。



「馬鹿な…ありえん…!貴様達は一体…ハッ!」



その時大僧正達は気付いたのだ。

その妖怪の少年から放たれている気が『妖気』だけではなく『神気』が濃く混ざっている事に?

妖気を打ち消す呪縛縄も神気に対しては無力だったのだ。



「お前は力があるみたいだったから、少し実験につきあって?」



言葉を言い終えると同時に、師範代の視線から金髪の少年が消え、気付いた時には眼前にまで迫って来ていた。そして師範代の足に氷の刃を突き付けたのだ。

助けに入ろうとする大僧正とフォンは銀髪の少年に足場を凍らせて行く手を阻まれる。



「くそ…殺すなら殺せ!なぶり殺されるくらいなら、いっそう自害して…アガッ」



金髪の少年は、自害しようとした師範代の口を開かせ、

その中に何かを放り込み飲み込ませる。


「何を飲ま…飲ませた?」


「あっ…アガッ…ガガガ!!」



その後、恐るべき惨状が起きた。

みるみる師範代の身体が締め付けられ、圧縮されていくように凝縮し、そのまま肉の塊へと変わっていったのだ!


「さてと上手くいくかな?」

「ワクワクだね!」



師範代だった肉の塊は次第にある形へと変貌していく?

それはまさに瓢箪の形へと!?

そう。

金色の少年が僧侶に飲ませたのは、


宝具・浄瓶!


この瓶の中にある飴玉を飲まされた者は、その身体を瓢箪へと…

あの魔法の瓢箪へと変えられてしまうのだ!

魔法の瓢箪とは名前を呼び返事をした者を吸い込み神酒に変える。

それを飲む事で力を奪う事が出来る宝具である。

金色の少年は出来上がったばかりの魔法の瓢箪を、手に取る。



「どうやら、上手くいったようだね…」


その時…


「兄さん!」


金色の少年の手から、魔法の瓢箪は砕けて壊れたのだ。


「………」


「兄さん」


「やはり…無理か…器の力が弱すぎる。もっと力のある器を探さないと魔法の瓢箪は作れないみたいだ!」



すると今度は大僧正とフォンに視線を移したのだ。


「今度はアレで試すかな?」



大僧正とフォンは構えて警戒する。

しかし力の差は歴然としていた。



「儂が隙を作る!フォン!お前は逃げよ?」


「大僧正様!」



だが、大僧正の隣からフォンは離れようとはしなかった。

かつて恩人であった先代の大僧正に命を救われ、見殺しにした無念が脳裏をかすめたから。



「もう二度と失いたくない。だから一人逃げる訳にはいきません!」


「ふ…フォン!?」



だが、金髪の少年の放った神圧に二人は押し潰されたのだ。


「うがぁあああああ!」



成す術を失い、フォンの取った行動は?


「お主、まさか三蔵殿に禁じられた力を?」


「お許しください!うぉおおおお!」



すると、フォンの身体から妖気が噴き出し、数百もの怨霊が出現したのだ!

そして怨霊達が金と銀髪の少年に襲い掛かる。



「特殊体の人間?あ~思い出した!金角達が追い掛けていたフォンって奴だよ?アイツ!」


「それにしてもウザッ!怨霊なんかで僕達が怯むとでも?あっ!」



気付いたのだ。

フォンの目的は時間稼ぎ!

傷付いた大僧正を連れて洞窟から脱出しようとしていたのだ。



「だめだめ!逃げられないよ?」



直後、金髪の少年から凄まじい神圧が放たれ、怨霊達を全て消し去り、逃げるフォンと大僧正を吹き飛ばしたのだ。倒れ蹲る二人には既に身動き出来ないでいた?

凍てつく冷気で身体が動かなかった。

今にも意識が消えかける。



「絶体絶命だ…無念である」


「ここで…」



死ぬの?

まだ三蔵様に恩返ししていないのに?

そんなの…


「嫌だぁーー!」


「!!」


それは驚くべき変化だった。

フォンの髪が緑色に変色し、何か不思議な力が二人を覆い、その場から一瞬にして消し去ったのだ。


一体、何が??



「何が起きたの?此処は何処?近くに匂いも気配すらない?」


「わお!まさか瞬間移動で僕達飛ばされたの?」


「逃がしちゃったよ~勿体無い!」


「面白い実験体だったのになぁ~まあ、仕方ない・・・他に力のある器って…」


「力のある器か…あっ!いるよ!」


「うん!僕も今思い付いた所だよ!確かアイツの名前は…」



三蔵!!



「アイツを素材に使えば…間違いなく」


「魔法の瓢箪の復活だ!」


「アイツならきっと良い器になると思うよ!それにムカつくお供の妖怪達も殺しちゃお?何か弱い癖に調子乗ってるみたいだからね!」


「そうと決まったら早速、器を探さなきゃ!」


「大丈夫!僕達は…」



二人の姿が狼の姿へと変わっていく。

少年達の魂は長く妖怪の魂と混じりあっていたがために、半神半妖へとなっていた。

その姿は金角と銀角と同じく狼の姿へと…



『奴達の匂いは覚えている!』


二人はその場から消えて立ち去った。





場所は崩壊寸前の寺院。

そこにフォンと大僧正は倒れていたのだ。



「孫悟空さん…八戒さん…沙悟浄さん…お願いします…どうか、三蔵様をお守りください…」




フォンの謎の不思議な力は何だったのか?

だが、今はそれよりも、

孫悟空不在の三蔵一行に新たな脅威が迫ろうとしていたのだ。


次回予告



孫悟空「まさか俺様が出番がないなんて・・・ちなみに、この時俺様は紅孩児と一緒に旅をしていたのだぞ!確か~銅角と獄狼とバトっていた時だぞ!」



孫悟空「しかし、俺様いなくて大丈夫なのか?」

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