華やかに美しく?キラッ!煌めけ鳳凰と朱雀!
朱雀の試練を乗り越え、孫悟空は朱雀の力を手に入れた。
戦え!孫悟空!聖獣変化唯我独尊!
よぉ!
俺様は孫悟空だぜぇ!
聖なる獣『朱雀』と合神した俺様は、炎の翼を広げながら自分の何倍もある蚩尤を見下ろし、新たな力で立ち向かおうとしていたのだ。
「うぉおおお!」
俺様は炎を自由自在に操りながら、蚩尤目掛けて炎の玉を放つ。
「こしゃくな猿よ!俺に敵うと思うのかぁ!」
蚩尤は俺様の放った炎の玉を右腕で振り払い、俺様を捕らえようと襲いかかる。
俺様は炎の翼で空中を飛び回りながら翻し蚩尤の攻撃を躱したのだ。
嘘みたいだ…
前回のギャグ話とはえらい違いだ!
違う!違う!
そうじゃなくて…
嘘みたいだ!
炎を意のままに使え、自由自在に空を飛べる。
ハッ!
蚩尤の放り投げた剣が俺様に向かって飛んで来る。
避けきれない!?
俺様は咄嗟に炎の盾でガードすると蚩尤の剣は炎の壁によって消滅した。
間違いない…俺様の力は最強レベルだぜぇ!
「馬鹿な…馬鹿な…ありえん!うぉおおお!」
蚩尤の六本の腕から繰り出される斬激に、
俺様は如意朱雀剣で受け流しつつ応戦していく。
クソ…
このまま持久戦を続けていても拉致があかねぇ!
それに最強無敵に思えた朱雀の聖獣変化にも一つだけ問題があるのだ。
それは、魂の底が変化の限界なのだ……と、朱雀の奴が思い出したかのように俺様に伝えて来た。
確かに体力や傷は癒えるが、それは表面上だけなのだと。
魂の力が尽きれば変化が解けるだけでなく、命も尽きてしまうそうだ。
てか、そんな肝心な事は先に言いなさい!
それに不老不死である奴の方が有利なのには代わりない。
どうする?
打開策を考えろ!
その時、蚩尤は余裕の笑みを見せて言った。
「ふふふ…中々の力だな?正直驚きだ!だが、俺の力はまだまだ上がるぞ?お前を八つ裂きに出来る程にな!」
「お前の減らず口を聞けなくしてやるぜぇ!」
「俺はこれからも、どんどん強くなれる。お前がやり遂げられなかった天界を制覇する事も夢じゃないぞ?どうだ?俺の下で働かないか?」
「馬鹿言うな!どうせ使うだけ使ったら、ポィだろ?それに俺様はお前のようなゲスの下には絶対につかない!」
「そうか…なら、仕方あるまい。今、ここでお前の命を消し去ってやろう」
蚩尤の言葉には続きがあった。
その言葉に俺様は更に怒りを爆発させたのだ。
「その後で、お前の身体から微かに匂う…人間の匂い…ん?…特殊体の匂いか?しかも相当な力を感じるぞ?ふふふ…何処までも俺に都合が良い。その人間を喰らい、俺は更に強くなってやろう!がはははははは!」
人間だと?
特殊体の人間って?
俺様と関わった人間なんて数が知れている。
その中で思い当たる人物は一人しかいなかった。
三蔵かぁ!?
き…キサマ…キサマ!キサマ!
紅孩児だけでなく三蔵にまで手を出すつもりか?
許せねぇ…許せねぇ…
今、あんな衰弱した状態の三蔵に、蚩尤を近付けさせるわけにはいかない。
絶対にだ!
お前を三蔵のもとへは絶対に行かせはしねぇー
そして俺様は覚悟を決めたのである。
一か八か奴の体内から消滅させてやる!
そのための奇策を見せてやる。
俺様は蚩尤に向かって叫んだのだ。
「へん!蚩尤よ?お前程度の力で俺様を倒せると思うなよ?この雑魚が!」
「何だと?この力の差を分からない訳でもあるまい?強がるな!」
「はぁ~?強がりだと思うか?まぁ~お前がもう少しデカくなったら危なかったかもな?」
「何だと?ふん!バカメ!俺はまだまだデカくなれるのだぞ?」
すると蚩尤が更にデカくなっていく。
「どうだぁー!」
「まだまだだな?その程度で自慢されちゃたら同情しか出来ないぜ?俺様同情で涙まで出てきちゃうぞ?ゲラゲラゲラゲラ!」
「馬鹿にするなぁ。まだまだまだまだだぁー!」
既に蚩尤の頭だけでも俺様の30倍近くまで巨大化していたのだ。
へへへ!チャンスだぜ!
「あっ!蚩尤?お前の歯に虫歯があんぞ~??」
「なぁ?なにぃ~?」
蚩尤が口を開けたその時、俺様は蚩尤の口の中目掛けて飛び込む。
よし!何て巧妙かつ天才的な作戦なんだ~
俺様、マジに賢いぜ!
後は蚩尤の体内から朱雀の炎で消滅させるだけだ!
が、しかし…
「あっ!!」
その口の中から何本もの触手が出て来たのだ!?
「なぁ~??ヤバッ!止まれねぇ~!!」
飛び込んで行く俺様を見計らっていたかのように、蚩尤の口から出て来た触手が身体に巻き付き絡まって来て捕らえられてしまった。
「ガッハハハハ!お前の見え見えの罠に騙されたフリをしてやったが、まんまと騙されたぞ。本当にどっちが馬鹿だかな?ゲラゲラゲラゲラ!」
…マ…マジっすか?
くそぉ!手も足も出せやしねぇ~
てか、悔しい!
ムカつく!
俺様の馬鹿ぁー!!
「さぁ!観念しろ!馬鹿の孫悟空がぁー!」
俺様の身体に巻き付いた触手がきつく締め付けくる。
「うがぁあああ!」
そんな俺様と蚩尤の戦いの最中に、この火炎山内でとんでもない不思議な異変が起きていたのだ。
そこは崩壊した火炎城
そこには蚩尤に身体を貫かれて戦死した紅孩児の身体があった。
心臓をぶち抜かれ、串刺しにされて開いた傷が痛々しく、そこは血の海と化していた。
が、その流れた血が次第に光り輝き始めたのである?
すると何処からか声が聞こえてきたのだ?
子供の声のような高い声?
《紅孩児君…ごめんね…本当はね?
紅孩児君は孫悟空さんのアムリタで、直ぐにでも生き返る事が出来たんだよ。
でも、そのアムリタは僕が産まれるために必要だったんだ。
だから、アムリタは僕が使わせてもらったんだ…ごめんね…》
すると今度は紅孩児の身体からオーラが立ち込める?
そのオーラは次第に女性の姿へと?
紛れもなくその姿は紅孩児の母である羅刹女だった。
既にこの世の者でない羅刹女は幽体…
彼女は死ぬ間際に己の残留思念体をオーラに変えて、今まで紅孩児を護っていたのだ。
「紅孩児…」
羅刹女が紅孩児に指を向けると、紅孩児の身体を纏っていたオーラは次第に小さくなっていく。
その輝きは一カ所に集まり凝縮されて、まるで卵の様な球体となって紅孩児の胸の上に浮いていた。
その卵は紅孩児の貫かれた胸の中へと落ちていくと、そこから熔岩の様な熱を帯びて、紅孩児の身体は炎に包まれていく。
「これが私の出来る…最後の……後はお願い…牛角」
全ての力を使い果たし、羅刹女の魂は静かに消えていった。
すると、再び例のかん高い声の主が?
《紅孩児君に問いたい!君はまだ生きたい?》
生き…たい…
《また戦いたいの?》
たた…か…い…たい…
《痛いよ?苦しいよ?それでも良いの?》
あぁ…
《それは何故?何のために?復讐?それとも……》
それは…
炎に包まれ消えていきそうだった紅孩児の身体が、再び強烈な光を増して業火が迸る。
そして、炎の中から人影が動き出す?
そこには死んだはずの紅孩児が立っていたのだ。
しかも貫かれたはずの身体は再生していた。
「俺様はいったい?確か…」
紅孩児は自分の身に起きた事を全て思い出し、不思議そうに自分自身の身体を見回していた。
魏王の事…
父親だと思っていた蚩尤に身体を貫かれた事。
死に際、俺様[孫悟空]に自らを許され、泣きながら看取られた事を。
そして、死してなお自分を護ってくれていた母の魂が、走馬灯の様に頭を廻る。
「は…母上が…俺様を生かしてくれたのか?」
その時だった!
強烈な揺れを感じ、足元が崩れ、そこから蚩尤の邪悪な気と、俺様らしき力を感じ取ったのである。
「そ…孫悟空…お前はまだ戦っているんだな?」
紅孩児は拳を強く握りしめた。
「俺様も!」
その時、紅孩児の意思に同調したかのように突然胸の辺りが光輝いたのだ?
「これは?」
そこには一つの卵が浮いていた。
紅孩児はその卵を手の平の上に乗せると、突然ヒビが入り割れる。
「ぴぃぴぃ!ぴぃ!」
すると卵の中から紅色のヒヨコが現れたのであった。
「何だ?お前?俺様と一緒に戦うってのか?」
「ピィッス!」
「よし、分かった!一緒に戦おう!待っていろ?孫悟空!俺様も直ぐに行くからなぁー!」
紅孩児は炎を纏い飛び上がったのだ。
ここで紅孩児とヒヨコとの契約の解答…
《君は何のために戦うの?》
それは…
《それは?》
「それはダチのために決まってるだろ?俺様はダチの!孫悟空を守るために戦うんだぁー!」
声の主は言った。
《紅孩児君…君をボクの主と認めるよ!》
『キィヒュオオオオオ!』
紅孩児は炎に包まれながら俺様が戦っている火炎山の奥底に向かって飛び降りる。
すると紅孩児の身体が強烈な閃光を放ったのだ。
《君は再び戦える!何故なら鳳凰は死してもなお、灰の中からも蘇られるのだから!》
その時、紅孩児のヒヨコも光り輝き、その姿を変えていったのだ!
その姿は…
前が雌の麒麟で後は鹿、首は蛇、尾は魚、背は亀、顎は燕、クチバシは鶏に似て五色絢爛に輝く!
俺様の朱雀と同じく、燃え盛る炎の鶏…
そいつは炎と再生の象徴であり、聖獣と対をなす『四霊』の一つ!
その名は『鳳凰』
「なあ?お前が俺様を生かしてくれたのか?」
「ピヨン!ピヨピヨ!」
「そうか!ありがとうよ?あっ、そうだよ!大事な事がある。よし!今日からお前はピィーちゃんだ!うん。名前がないと不便だからな?これから宜しくたのむぜ?ピィーちゃん!」
「ピィピッ~ピィ~」
すると紅孩児とピィーちゃんの身体が神気に包まれていく?
「うぉおおおおおおお!」
さらに紅孩児の姿もまた変わっていったのだ!
『四霊変化唯我独尊』
白い神衣に、紅色の鎧
上半身に七色の羽の条帛をかけ、天衣というショールを羽織った姿!
そして俺様と同じく、炎の翼を羽ばたかせたのだ。
「今行くからなぁー!悟空ー!」
その頃、俺様は蚩尤の触手に絡み付かれて、身動き取れないでいた。
まさに万事休すであった。
その時だ!
俺様と蚩尤の他に新たな強力な『力』が上空から降りてきたかと思うと、それは俺様の身体を縛っていた触手を斬り裂き、蚩尤と俺様の間を遮った。
そこに現れたのは!?
「あっ!」
嘘だろ?いや、本当なんだよな?
お前は!
そいつは俺様に背中越しに言った。
「待たせたな?悟空!これから先は俺様も一緒に戦うぞ!」
アハハ…本当かよ?
俺様の前に・・・死んだはずの紅孩児がいる!
「紅孩児、お前!」
俺様は紅孩児に飛び付き、抱き着いたのだ。
「へへぇ!喜ぶのは…」
「そうだな!」
俺様と紅孩児は肩合わせになり、お互い中指を立てて一気に下に向けて突き落ろした。
「蚩尤!俺様達の前にひざまずけ!」
二羽の怪鶏・鳳凰と朱雀が並び立つように舞い降り
最強最悪の敵、蚩尤を相手に対峙していた!
決着をつけるぞ、今度こそな!
次回予告
紅孩児「俺様大復活だぜー!めでたい!お帰り!待ってたよ~俺様!」
孫悟空「てか、本当にお前は自分好きだよな?」
紅孩児「おい!前回の後書き予告と被るだろ!てか、悟空は嬉しくないのかよ?おいったらおい!・・・・・・ん?悟空・・・お前?」
孫悟空「べっ!別に泣いてるわけじゃないんだからね!うわあああああ!」
紅孩児「ありがとうよ?よし!後は俺様に任せておけ!」
孫悟空「いや!ここは俺様が!」
紅孩児「いやいや!俺様が!」
孫悟空「・・・・・・」
紅孩児「・・・・・・」
・・・取り敢えず裏で話そうか?




