乱入混戦!?死闘!孫悟空と紅孩児!
友情を誓ったはずの紅孩児と孫悟空。
しかし、この二人を引き裂く運命に巻き込まれていく。
俺様は孫悟空だ…
今、俺様は親友である紅孩児に、神具・火尖槍で貫かれようとしていた。
「死ねぇー!裏切り者ぉー!」
だ…ダメか?
俺様は観念した。
やっぱしツエーな…
紅孩児…
でも、俺様は本気だったのか?
紅孩児の突き出した火尖槍が、俺様の顔面に突き刺さろうとした時!
「あっ!」
突如、強烈な閃光が俺様と紅孩児を覆ったのだ!
一体何が?
俺様は正気に戻って咄嗟にその場から飛びのいたのだ。
「キサマ!一体俺様に何をしたのだ!?…うっ!」
えっ?
俺様は何もしてはいないぞ?
突然、痛みが走り紅孩児は頭を抱えていた。
「紅孩児様!」
魏王が助けに入ろうとすると、紅孩児の身体がまばゆく光っていたのである。
《いけない!》
何者かの声が紅孩児の頭に響く?
「だ…誰だ!?」
俺様は起き上がり紅孩児を見たが、状況が掴めなかった。
紅孩児は額を抑えながら膝をつき苦しみもがいていたのである。
その光に包まれて紅孩児は更に苦しみ出していた。
「いかん!」
魏王は素早く苦しみもがく紅孩児を庇うように俺様の前に立ち塞がったのだ。
「大丈夫ですか?」
「うるさい!俺様に構うな!」
紅孩児は額を抑えながらも、立ち上がろうとした。
その時!
「ふふふふふふ」
なに!?
くそ!こんな時に…
笑い声と同時に強烈な妖気が辺り一帯を覆っていき、そこから現れたのだ。
「妖怪皇帝!」
「紅孩児よ!何をしておる?早々にその者を殺すのだ!」
「ち…父上!」
妖怪皇帝の命令にまだ痛む額を抱え、紅孩児は再び火尖槍を手に取る。
「妖怪皇帝様!今、紅孩児様は調子がすぐれない御様子。代わりに私が…!」
「構うな魏王!父上!息子である俺様が今、この賊!孫悟空の首を父上に捧げましょう!」
「うむ!」
そこに蜀王将軍と呉王将軍が起き上がって来たのだ。
「お待ちください!孫悟空の命は我等が!」
「お前達!生きていたのか?」
「妖怪皇帝様!ここまでコケにされて、私達も引き下がれませぬ!」
「どうか孫悟空の始末は私達に!」
しかし妖怪皇帝の返答は、
「黙れ!我が息子の邪魔は許さん!」
妖怪皇帝の威圧的覇気に蜀王と呉王は身動きが取れずに退く。
「も…申し訳ありませぬ…出過ぎた真似を申し訳ありません。ここは、紅孩児様にお任せ致します…」
頭を下げ畏縮する二人の将軍達。
俺様が手こずった二人を畏縮させる威圧感。
それ程までに妖怪皇帝の力は凄まじかったのだ。
「紅孩児様…」
「魏王、分かっている。父上からの信頼に応えねばなるまい…」
再び火尖槍を構える紅孩児に対して、俺様はまだ立ち上がれないでいた。
壁に寄り掛かり紅孩児を見つめる。
「さぁ!紅孩児よ!私の目の前でお前の力を見せてみよ!」
「はい!父上!」
俺様の逃げ場を遮るように四方を囲む三将軍達。
そこに紅孩児が火尖槍を突き出して向かって来たのだ!
そしてその背後に妖怪皇帝がいる。
何処にも逃げ場はない。
万事休す!
今度こそ終わりなのか?
そう諦めた時だった。
《コロッ…》
ん?
上空から落下してきた何かが頭の上に当たったのだ?
小石?何故に小石?
何か崩れたのか?
いやいや!そんな事どうでもよいはずだ!
俺様は今、ピンチなのだから。
なのに異様に気になる小石??
生きるか死ぬかの瀬戸際に、何故こんなに小石が気になるのか?
一種の現実逃避なのだろうか?
違う違う!
今は小石の事なんかどうでも…
あっ!!良くなぁ~い!
見上げると突然天井が崩れ落ち、幾つもの巨大な岩石が俺様達の真上に向かって落下して来たのである。
「うぐわあああ!」
突然の予想だにしない事態に、その場にいた全ての者がその状況に戸惑ったのだ。
一体何が?何が起きたのだ?
その時、更に天井から妖怪皇帝の覇気をも上回るような凄まじい覇気が感じとれたのである。
更に火炎山に響くような声が聞こえて来たのだ。
『ようやく見付けたぞぉーー!』
『我が仇』
『妖怪皇帝なる者よぉーー!』
火炎山の山頂より、爆音と共に黒い物体が俺様達のいる戦場へと落下して来たのだ。
一体、誰だ?
いや?この凄まじい妖気!
間違いない。
あいつは!
そこに現れたのは、黒い鎧を纏った髪の長い大男だった。
「牛角魔王!」
そうだ…
コイツは俺様の義兄弟であり、六大妖魔王最強の男!
さらには紅孩児の正真正銘実の父親…
あの牛角魔王なのだ!
どうしてここに?
「ようやく見付けたぞ!妖怪皇帝!」
牛角魔王は着地するなり妖怪皇帝を睨みつけていた。
それは長きに渡る因縁より抑え込んではいるが、怒りや憎しみ、今にも爆発してしまいそうな感情の揺れが伝わって来た。
だが…
それより…
そんな事よりも!
「早く俺様の上から退きやがぁれぇ~!」
「ん?」
牛角魔王は俺様の声がした足下を見ると、そこには踏み付けられ潰されていた俺様がいた。
「ん?孫悟空ではないか?何故、お前がこんな場所に?(しかも俺の足下に)」
「うるせー!それより早く退けってぇ~の!」
「おぉ!悪い!」
牛角魔王は俺様から降りると、片手で俺様の首もとを掴み上げて身体を起こす。
って、俺様は猫か!
「奴が妖怪皇帝で間違いないのだな?」
「あぁ…間違いない…」
すると、
「そうか…やはりお前だったのか?生きていたのだな?」
「久しぶりだ。牛角魔王!」
なぬ?
やはり、コイツ達は顔見知りだったのか?
《グラッ…グラグラ…》
おっ?
《ガラガラガラガラガラ!》
何じゃ~こりゃあ~!
突然、床が揺れたかと思うと音を立てて崩れ出し底が抜けたのだ。
「うぐわあああ!」
牛角魔王の奴がド派手な登場するから、城の床が耐え切れずに崩れ落ちたのだ。
俺様達はなすすべなく崩れ落ちる床事、火炎城の建っている岩場の更に下層にある火炎山の奥底の熔岩へと落下していったのだ。
俺様は落下しながら体勢を整える。
そこに!
「そんごくーう!」
落下しながら、紅孩児が火尖槍を振り上げて突っ込んで来たのだ。
俺様は如意棒で受け止め紅孩児に叫ぶ。
「紅孩児!本当に俺様達は戦わなきゃいけないのかよ!」
「まだ言うかぁ!ふざけるなぁー!俺様とお前は命を賭けた殺し合いの最中だぞ!」
「俺様は…お前とは戦いたくないんだよぉー!」
「だったら死んでしまぇー!」
「うぐわあああ!」
紅孩児の放つ炎が俺様を覆ったのだ。
炎に包まれ、もがきながら、俺様の脳裏に今もまだ傷付き倒れている三蔵の姿が過ったのだ…
「俺様は…こんな場所で死ぬ訳には…(三蔵が待っているんだ…)…いかないんだぁーーー!」
俺様は妖気を爆発させて炎を消し去り、追い討ちをかけて来た紅孩児に向かって本能的に如意棒を突き出すと紅孩児の頬をかすめた。
「!!」
紅孩児は頬から垂れる血を拭いながら、
「ようやく殺る気になったようだな?おもしれぇー!」
「クッ!」
さ…三蔵が、
三蔵が俺様が戻るのを待っているんだ…
だから、
「こんな所で死ぬ訳にはいかない!」
俺様と紅孩児は落下しながら激突する。
俺様は如意棒を振り回しながら左右上下と連続攻撃を仕掛ける。
紅孩児はその攻撃を受け流し、炎を纏った火尖槍を突きつけてくる。
お互いの覇気がぶつかりあい、その衝撃が身体に伝わってくる。
間違いなく死闘!
一瞬でも気を抜けば、命を持っていかれるのだ!
俺様と紅孩児が火炎山の地層に落下しながら死闘を繰り広げている時、
落下から免れた牛角魔王は、知らぬ間に姿を消していた妖怪皇帝を追っていた。
妖怪皇帝が入り込んだ場所は、何か不思議な部屋になっていた。
床や壁一面に神文字が刻まれた不思議な部屋?
それは炎と氷の大地にあった塔にあった旧神文字と同じであった。
「何だこの部屋は?」
「ふふふ…牛角よ…」
牛角魔王は声のする方角に妖気弾を投げ付けたのである。
投げ付けた妖気弾は、妖怪皇帝に直撃する寸前に妖気の壁によって弾け消えた。
「…………」
「牛角魔王よ!久しぶりだな?」
「貴様!」
そこに新たに三つの影が入って来たのだ。
その者達は魏王将軍、蜀王将軍、呉王将軍の姿であった。
「ぬっ?お前達は!」
「牛角魔王よ!我らを忘れたとは言わせぬぞ」
「お前達は確か天界で俺と戦った武神か?妖怪に堕ちていたのか?」
「お前に敗北した事が原因でな!」
「お前に引導を与えるのは俺達だ!」
「今はお前達の相手をしている暇はない」
「何だと!?」
「俺は今、気が荒ぶっている…退かぬなら遠慮はせん!ぬぉおおおおお!」
牛角魔王から発した凄まじい覇気の重圧で、魏王達は床に押し潰される。
「うぐぉおおお!」
「相手なら後でしてやる!今は消えるが良い!」
だが、
「!!」
牛角魔王の目の前で押し潰されていた三将軍が身体を起こし立ち上がって来たのである。
「牛角魔王!俺達を見くびるなよ!長きに渡るキサマへの憎しみを今、はらしてくれる!」
すると魏王の背後に呉王と蜀王が並び立ち、印を結びながらお互いの気を同調させたのだ。
「俺達の切り札を見せてやろう!」
『三身一体変化唯我独尊!』
「クッ!」
牛角魔王の前には、凄まじい覇気を纏った魏王?否!魏王、呉王、蜀王の身体が同化した全身に炎を纏った角のある三面六腕の化け物が立っていたのだ。
「これが私と呉王と蜀王の新たな姿!魏神暗鬼だ!いざ参る!」
因縁のある牛角魔王と魏王達が変化した魏神暗鬼が衝突する。
再び場面は火炎山から落下しながら死闘を繰り広げている俺様と紅孩児も、
「うおおおお!」
「はああああ!」
俺様と紅孩児の渾身の一撃が交差する中、
ハァ…ハァハァ…
息が切れ体力を失っていく…
俺様は身体中傷だらけであった。
「何故だぁ!?」
紅孩児は俺様を睨み付け叫ぶ。
「どうして本気で戦わない?俺様をまだナメているのか?ふざけるなぁ!孫悟空ぅ!」
怒り叫ぶ紅孩児に対して俺様は息を切らしながら答えた。
「へへ…当たり前だろ?本気で…ダチに刃は向けられねぇよ…なぁ?…紅孩児?」
「ふざけるなぁー!この期に及んで、まだそんな事を言うのかぁ!」
すると紅孩児は火尖槍を構えながら荒ぶる激情を抑え、静かに答える。
「だったら、その口…聞けなくしてやるよ…」
紅孩児は再び火尖槍を振り回しながら俺様に向かって突き出して来た。
「ウグゥゥ…」
躱す力が残っていなかった俺様の肩を貫いたのだ!
「うぐわああああ!」
そのまま俺様は押し込まれて、背後の岩壁に張り付けにされる。
紅孩児がトドメを刺そうと火尖槍を引き抜き、俺様の心臓に狙いをこめる。
(や…殺られる!)
そう思った時、再び紅孩児が頭を抱え込み苦しみ出したのだ。
「うぎゃあああ!」
頭を抱えながら俺様を睨む紅孩児。
紅孩児の身に何が起きていると言うのだ?
「何故だ?孫悟空を殺ろうとすると頭痛が酷くなる…頭が割れそうだ…」
俺様は岩壁に寄り掛かり座り込んで動けないでいた。
肩から出血が止まらない。
「いっつ!くそぉ!さっき現れた黒い鎧の奴の事も気になるし。まさか三将軍がついていて心配はないとは思うが、やはり父上の事も気になる…」
紅孩児は倒れた俺様を、地下の溶岩に向かって蹴り飛ばすと、
俺様は抵抗出来ずに熔岩に向かって落下した。
「うぐぅわああ!」
紅孩児は落下していく俺様を見下ろしながら、
「俺様は城の最上階にいる!もしこのまま死なずに生きていられたのなら来てみろ!そこがお前の墓場にしてやる!」
そう言うと紅孩児は炎斗雲に乗って飛び去って行ったのだ。
こ……う……が…い…じ…
俺様は…
俺様は燃え盛る熔岩に向かって落下しながらそのまま意識を失っていく。
さ…ん…ぞ…
すまねぇ…
次回予告
牛角魔王「長かった・・・」
孫悟空「何がだよ?」
牛角魔王「俺の最初の登場から、回想シーンでしか出番がなかったからな~この物語の主人公として腕が鳴るってもんよ!あははははは!」
孫悟空「誰が主人公だよ!」
牛角魔王「それより、お前も大丈夫なのか?」
孫悟空「何がだよ?」
牛角魔王「お前、落ちてるけど?」
孫悟空「うわあああああ!起きろ~俺様~!!」




