いざ!妖怪皇帝の居城へ!
襲いかかる南山大王の魔の手!紅孩児と愛音のピンチに現れたのは、姿を消していた孫悟空であった。
おぅ!俺様、孫悟空様だぜぇ!
俺様と紅孩児は一緒に旅をしている。
向かう先は紅孩児の父親が待っていると言う城。
ん?
紅孩児の奴が俺様の後ろで何やら食っているようだぞ?
あれは確か、クッキーとか呼ばれるお菓子らしい。
俺様達が旅に出る際に愛音が持たせてくれた土産なのだ。
そう…俺様と紅孩児は、愛音に自分達が妖怪だと正体をばらしたのだ。
愛音はそんな俺様達に対して嫌な顔をする事もなく、今まで通りに優しく振る舞ってくれた。
「妖怪?関係ないよ!私が嫌いなのは悪い妖怪!それに人間にだって悪い奴はいるんだよ?偏見なんてしてるようじゃ、器が小さいってもんよ!あんた達は悪い奴じゃないのは見てれば分かる。あんた達の瞳は綺麗な瞳してるもんね?それとも悪さするのかな?アハハ!」
そう言って、旅に出る俺様達に土産を持たせてくれたのだ。
何かじ~んと来た。
愛音!サンキューな?
それにしても…
このクッキー…美味し!
甘くて、食感がポリッて、頬っぺた落ちるぜ~
そう言えば紅孩児と愛音は、やけに仲が良かったなぁ~
愛音の旦那が二人を見て、まるで息子が帰って来たみたいだと泣いてたのを思い出した。
う~ん…
何か軽い嫉妬を覚えたぞ!
そうそう!
俺様と紅孩児が旅に出る前日、俺様は紅孩児に呼び出されたんだっけか?
辺りは夕暮れ、空一面がオレンジ色になっていたのを覚えてる。
俺様と紅孩児は見晴らしの良い絶壁の岩場のてっぺんで、背中を合わせて座っていた。
俺様は無言で太陽が沈むのを眺めていると、紅孩児が俺様に話し掛けて来たのだ。
「なぁ、悟空…」
「なんだ?」
紅孩児の奴は真面目な顔つきで俺様を見つめて言った。
「俺様は強くなるぞ!そんで、お前が!悟空に何かあった時は、必ず俺様が守ってやるぞ!」
「紅孩児?」
「だから俺様達は永遠に友達だからな!」
紅孩児、お前…
「ああ!友達だ!」
俺様は紅孩児に手を差し出す。
紅孩児も手を差し出し、俺様達はお互いの手を強く握りあった。
「でもよ?俺様は紅孩児に助けられるほど弱くはないぜ?だから紅孩児の事は俺様が守ってやるからな!」
「ヘヘヘ…やったらやり返すだな?」
「遠からず近からずだな…」
けれど複雑な気持ちが離れなかった。
俺様と紅孩児は旅をしている。
目指すは紅孩児の父親と名乗る『妖怪皇帝』の待つ城へ!
俺様は空を飛ぶ雲【金斗雲】に乗って、飛んでいた。
紅孩児は口から炎を吹き出したかと思うと、その炎が次第に濃縮されていき、それは金斗雲に似た宙に浮く炎の乗り物になったのである。紅孩児はそれを炎斗雲と呼んだ。
俺様達は自分達の雲に乗ると、空を自由自在に飛び回りながら競争して遊んだのである。
空高くまで急上昇してから一気に落下して、地面スレスレで急ブレーキ!
猛スピードで飛びながらお互いの雲捌きを競いあったのだ。
「やるな!悟空!」
「紅孩児こそ!」
そんなかんなやっているうちに、俺様達は目的地付近にまで辿り着いたのだ。
そこで俺様は自分の目を疑ったのである。
ここは、まさか!!
似ている?
いや…ありえない!しかし、ここは!
そこは炎が山全体を覆い隠し、噴き出す炎が空高くの雲を突き抜けていた。
これはマジに牛角魔王が住んでいた火炎山にそっくりじゃないか!?
似せたとかそういう問題じゃない!
見た目だけでなく何もかもそっくりだなんて有り得るのか?
因みに牛角魔王の住む火炎山にあった城は、この前俺様が破壊してしまったんだったな~
アハハ…
しかし本当に似ているぞ?
何故?
こんな奇っ怪な山が二つも三つもあるなんて摩訶不思議過ぎるだろ?
その時、紅孩児は俺様に自慢気に言った。
「どうだ?凄いだろ!この火炎山は噴き出す炎が天にまで届かんばかりに燃え盛っているんだぜぇ!」
「あぁ…凄いな…」
「氷と炎の大地も凄かったが、この火炎山のが凄いだろ?こんなの見るの始めてじゃないか?」
「あぁ…」
「なんだよ?ノリが悪いぞ?」
「そんな事ないぞ!スゲー!スゲー!スゲー!山スゲー!燃えてスゲー!なんかスゲー!めちゃくちゃスゲーぜ!」
俺様はやけくそになって一人はしゃいで見せたのだ。
「ヘヘヘ!スゲー!スゲー!この俺様の住んでる山スゲー!スゲー!」
紅孩児は俺様に混ざるようにはしゃいで来た。
誰かに見られていたなら、確実に馬鹿二人だな…うん。
小一時間はしゃいだ後に…
ん?
何故に一時間もだと? 馬鹿とか言うなよ?
なんか、途中からやけっぱちから本気で楽しくなって来たんだから仕方あるまい?
さてと!
俺様は気を取り直すと、紅孩児の案内で火炎山の中へと入って行った。
俺様と紅孩児は空中高くにまで飛び上がると、燃え盛る火炎山山頂の中心に見える城に向かって飛び降りたのだ。
しかし、凄い熱気だ…
この火炎城には炎属の妖怪が住まう地。俺様は頭にぴよちゃんを乗せていた。さもなくば入った途端に身体が火炎山の熱で燃え消滅してしまうのだ。
俺様と紅孩児は城門の前に降りると、紅孩児の奴がキョロキョロと周りを見渡し始める。
「どうしたん?」
「ん…どうしたんだろう…何か変だな?」
「何がだ?」
「いや…兵士達の姿が一人もいない。何処かに出ているのかな~?」
「はっ!」
その時!俺様は気付いたのである。
何処からか自分達に向けられている視線を!
いや?これは殺気か!
「誰だ!」
「悟空!大丈夫だ。きっと将軍達だろうぜ」
「将軍?」
紅孩児は視線の方向に向かって叫んだのだ。
「お前達!俺様は紅孩児だ!今、帰ったぞ!」
すると、城の扉から真っ赤な鎧を纏った三人の武人が現れる。
凄い妖気を感じる。
恐らく、上級以上の妖怪だろう。
俺様は警戒していた。
「アハハ!紹介してやるよ!この者達は父上様直属の将軍達だぞ!」
直属の将軍だと?
「お前達!コイツは孫悟空と言って、俺様の友達だ!挨拶をしてやれ!」
すると三人の武人の姿をした妖怪は立ち止まり、俺様に向かって丁寧に挨拶をする。
一人目の将軍…
「私の名前は蜀王です」
丁寧な感じだが鋭い目付きが特徴の将軍が前に出て名乗った。
次に二人目の将軍が挨拶をする。
「俺は、呉王だ!」
身体付きの大きい、乱暴な口調の男が俺様を見下ろしながら名乗る。
最後に三人目の将軍…
「最後に私が、この城の護衛隊長を任されている魏王です」
最後の奴は威厳のある武神という感じか?
他の二人よりも桁違いの力を感じる。
しかもコイツ達、間違いない!
あの時の三人だ!
あの時の三人とは、俺様が炎の塔で還付なきに敗北した謎の侵入者の事だ。
そう!俺様はコイツ達に襲われ、ブザマにも気絶させられてしまったのだ。
コイツら?
俺様に気付いてないのか?
なら、好都合だが…
「そうですか!紅孩児様の御友人でしたか?では、おもてなしを致しましょう!」
「おぅ!ありがとうよ!魏王!」
「なぁ…紅孩児よ?」
「ん?なんだよ?」
「俺様を早く会わしてくれないか?」
「あっ…そうだったな!」
紅孩児は魏王に命じる。
「魏王!父上の様子はどうだ?もし具合が良いようであれば、悟空を紹介したいのだが?」
「妖怪皇帝様でございますか?」
魏王は少し間をとってから紅孩児に答えたのだ。
「分かりました。では妖怪皇帝様に面会出来る様に私が取り計らいましょう」
「うむ」
「ありがとうな!」
何か話がうまくいきすぎてるな…
しかし油断は出来ない。
この突き刺さる様な殺気は、間違いなく俺様に向けられたままなのだから。
俺様はその後、紅孩児の部屋に招かれた。
紅孩児の部屋はベットが一つの他は何もなく、殺風景で生活感がまるでなかった。
紅孩児曰く、旅をして長く部屋にはいなかったからだそうだ。
それにしたって仮にも皇帝の一人息子の扱いじゃないぞ?
当の本人(紅孩児)が気にしていないのが不思議と言うか、この性格だから考えた事もないのだろうな~
しばらくすると魏王が呼びに来た。
俺様は紅孩児と一緒に、魏王に連れられて妖怪皇帝のいる部屋に向かうのだった。
俺様は今、紅孩児の父親。
そして、もしかしたら牛角魔王が仇とする者かもしれなく、更にナタクから討伐の依頼を受けている妖怪皇帝と対面しようとしている。
俺様が連れて来られた場所は火炎城の最上階にある広間だった。
そこで妖怪皇帝が現れるのを待っていた。
様々な感情が入り乱れる中、妖怪皇帝は現れた。
「!!」
俺様はソイツを知っていた。
いや?初対面のはず?いや、しかし??
その姿は!?その顔は!!
見間違うはずもない!
牛角魔王じゃないか!!
次回予告
紅孩児「なんか自分の家に友達を呼ぶのって、なんかドキドキするよな?」
孫悟空「そうか?俺様は考えてみたら自分の家ってもんないからな~」
紅孩児「あっ!でも、入る前に少し外で待っていてくれよな?」
孫悟空「なぜ?」
紅孩児「そりゃあ~部屋を掃除したり、ベッドの下の・・・」
孫悟空「て、おい!ベッドの下に何が隠しているんだよ!?」
紅孩児「ん?・・・隠しお菓子だが?まさか狙っているのか!」
孫悟空「いや・・・すまん!取り越し苦労だった」




