愛音は俺様が守る!紅孩児の戦い!
豹頭妖怪の魔の手から愛音を守るために、紅孩児はついに妖怪である事をあかしたのだった。
俺様、紅孩児。
俺様と愛音の前に現れた豹頭の妖怪達の襲撃によって、
俺様は愛音の前で本来の妖怪の姿を現した。
本当なら隠して起きたかった…
だけど後悔はしない!
例え妖怪だとバレたとしても愛音さえ守れれば…
それで良いんだ!
それに、いつまでも嘘をついているのも、同じくらい胸が苦しいから…
あ~よく分かんねぇよ!
俺様は目の前にいる三匹の黒豹頭の妖怪相手に、妖力を解放させた。
「お前達!後悔させてやんぞ!」
ハッ!違う!
「ふふふ…俺達を相手に…」
「待った!」
俺様は思い出したかのように、黒豹頭の妖怪の台詞を遮った。
「なっ?おい!台詞の途中に割り込むのは邪道だぞ?今から俺達の自己紹介だってのに!」
「うるさい!うるさい!うるさい!やり直しと言ったらやり直しなんだぁー!」
俺様は三匹の黒豹頭の妖怪に中指を立てて、一気に突き落ろしたのだ。
『お前達!俺様の前にひざまずけぇー!』
俺様はポーズをキメて、かっこよく台詞を言ってのけたのだった。
孫悟空の奴に教わった決め台詞してやったりだぜ!
満足げの俺様を見た黒豹頭の妖怪達は頭にきたらしく、
「ふざけるなぁー!紹介を遮る事がどれだけマナー違反か身を持って知れぇーー!」
黒豹頭の妖怪は眼前で腕を交差させると、奴らの五本の爪が伸びる。
『黒砕閃』
※コクサイセン
そして三匹同時に襲い掛かって来たのだ。
速い!
コイツ達ただ者じゃねぇぜ!
この三体の黒豹妖怪は、対金角と銀角に対抗するために呼ばれた妖怪だった。
だが、妖怪の力を取り戻した俺様の相手じゃねぇ!
うっ…!
その時、俺様は激しい頭痛を感じたのだ。
これって…まだ薬の効果が完全に切れてなかったのか?
隙を見せた俺様に対して、三匹の黒豹頭の妖怪達の鋭い爪が迫る。
辛うじて躱しながら避けるも、俺様は全身に斬り傷を負ったのだった。
身体中から血が流れつつも、俺様は警戒を解かなかった。
奴達は目にも止まらぬ速さで移動しながら俺様の周りを囲み、次第に距離を縮めて来る。
くそぉ!
本調子だったら、こんな奴達相手じゃないのに!
痛みで意識が薄れていくようだ…
三匹の黒豹頭の妖怪は、そんな俺様の状態を見過ごさなかった。
同時に爪を立て、飛び掛かって来たのである。
負けられねぇ…
俺様が負けたら愛音の身が危険だ!
「絶対に負けられないんだぁー!」
三匹の爪が俺様に突き刺さろうとした寸前、
「紅孩児ぃー!」
ハッ?
その声は愛音!?
愛音が何故俺様の名前を呼ぶ?
妖怪である俺様の名前を?
俺様は愛音を見た。
「紅孩児!負けるな!あんた強いんだろ?絶対に死んだら許さないよ!」
「!!」
愛音…お前、俺様を応援してくれるのか?
妖怪である…この俺様を?どうして?
はっ…ははは…じゃあ…
負けられねぇよな?
俺様の身体から沸き上がるように力が漲って来るのが分かった。
俺様は迫り来る黒豹頭の妖怪の一匹の爪を寸前で躱して、その手首を掴み取ると、そのまま振り回しながらもう一方から迫る別の黒豹妖怪に向けて投げつけ衝突させた。
「うぎゃあああ!」
俺様はそのまま飛び上がり、衝突させた二匹の黒豹頭の妖怪に向けて大技を繰り出したのだ!
『火手兜大締妖!』
※カテカブトオオシメヨウ
俺様の放った炎の渦が、目を回している二匹の黒豹妖怪を囲みつつ身動きを封じていく。
更に、その頭上から巨大な炎の塊を奴達目掛けて落下させたのだ。
「うぎゃあああああ!」
二匹の黒豹妖怪は全身を炎に包まれ、その炎の渦の中で消滅した。
「まだまだだぁ!」
もう一匹いるはず!
これが本当の…
勝って兜の緒を締めよってやつ?
つまり油断大敵て奴だな?
生き残ったもう一匹の黒豹頭の妖怪は、消滅した二匹の仲間を見ながら怒りに震えていた。
『神獣変化唯我独尊』
すると最後の黒豹頭の妖怪の身体が見る見る巨大化し、見た目も本物の黒豹の姿へと変わっていく?
「ガゥ!俺の名は南山大王!俺の義兄弟である獄狼の敵討ちのつもりが、俺の弟達まで手に掛けやがって!絶対に許さんガゥ!」
巨大な黒豹と化した南山大王は、今まで以上の猛スピードで俺様に迫って来たのだ。
俺様は炎の妖気弾を何発も投げ付けるが、南山大王には難無く躱されてしまう。
「うわぁああ」
突進して来た南山大王の鋭い爪が、俺様の身体を切り裂いたのだ!
俺様は致命傷を免れたが胸部に傷を負い、血が噴き出す。
俺様はたまらずに膝をついた。
うっ…血を流し過ぎたか?
視界がボヤけて意識が朦朧としやがる?
俺様は傷口を抑えながら負けじと炎の玉を動き回る南山大王に投げるが、やはり全て躱された。
「は…速くて捕らえきれねぇ…」
どうしたら良いんだ?
「ふふふ…無理ガゥ!不可能だ!俺を捕らえる事など出来やしなぃガゥ!お前は今ここで死ぬガゥ!」
南山大王が正面から突進し迫って来るが、身体が自由に動かなかったのだ。
ガゥ!ガゥ!うるせぇ!
しかし正面からなら?
これでもくらえ!
「口内炎!」
※コウナイエン
俺様はギリギリまで引き付け、眼前にまで迫って来た南山大王に向けて口から火炎放射を放ったのだ。
南山大王が火炎放射の中に飲み込まれ消えていく!
やったか?
いや!
消えた南山大王は残像だったのだ!
じゃあ本体は?
その時、愛音の声が聞こえた。
「上だよ!紅孩児!」
はっ?
俺様は咄嗟に前方へとジャンプし、転がるようにその場から離れた。
すると今さっきまで俺様がいた場所が南山大王の繰り出した爪の斬撃により削られたのだ!
あぶねぇあぶねぇ~
愛音の声がなければ、今頃俺様は奴の爪によって切り刻まれていたに違いないぜ!
「おのれぇ…あの人間の女めぇ!邪魔をしやがってぇガゥ!」
南山大王の標的が愛音に向いたのだ。
止めろ!
愛音に手を出すな!
俺様は愛音を庇うように前に立ち塞がる。
愛音は俺様が守る!
絶対に手出しはさせない!
「バカァメ!」
俺様は迫り来る南山大王の爪によって、身体を斬り裂かれたのだ。
「うがあああ!」
続けて、南山大王の牙が俺様の喉元に噛み付いて来る。
身体を翻しながら辛うじて避けるも、俺様の身体は立っているのもやっとだった。
だが、南山大王は休む暇を与えずに襲い掛かる。
ダメだ…殺られる!
その時、俺様の視界が何者かによって塞がれたのだ?
あっ!?
そこには、俺様を庇うように愛音が立ち塞がり、振り向き俺様を抱きしめる。
「ばっ…バカヤロー!離れろ!俺様が食い止めている間に逃げるんだよ!」
「馬鹿はあんたよ!もう立っていられない癖に強がるのもいい加減にしな!だから…もう…目の前で死なせたりしない…それが無理なら、今度は一緒に…」
「なっ?愛音?」
俺様は…
「お…俺様は…妖怪なんだぞ…妖怪なんだぞ?」
「だから何?」
「何って?」
「あんたは私が知っている紅孩児でしょ?それ以上でもそれ以下でもないじゃないの!あんたは生意気で我が儘だけど…とても優しい子なんだから…」
「あ…愛…音」
胸が熱くなった…
胸がジーンと…
何だよ?
この気持ち…
それに何故、涙が出てきやがるんだよ?
ハッ!
南山大王!
南山大王が身動き出来ずにいる俺様と愛音に向かって襲い掛かって来ていた。
二人まとめて始末するつもりなのだ。
守らなくちゃ…
俺様は愛音を抱きしめる。
「二人まとめて串刺しにしてやるガゥ!」
南山大王の爪が俺様と愛音に迫っていた。
もう…もうダメか?
俺様と愛音は抱きしめ合いながら覚悟し目を綴じた。
あれ?
襲って来ない?
その時だ!
南山大王の爪が俺様達の眼前に迫る前に止まっていた。
俺様が見上げるとそこには!
「待たせたな?紅孩児!」
そこには何処から現れたのか?孫悟空の奴がいた。
南山大王の襲い掛かる太い腕を片腕で受け止め、俺様達に迫っていた鋭い爪から守ってくれたのだ。
孫悟空は南山大王を指差して睨み付ける。
「お前、俺様のダチに何をしやがった?」
孫悟空の奴は南山大王に対して怒りに奮えていた。
マジにキレてやがるのか?
俺様のために?
「何者だ?そうか!ソイツの片割れか?ガゥ!」
「うるせぇよ!俺様のダチに何をしやがったと聞いてるんだぁよぉー!」
孫悟空は南山大王の掴んでいる腕をそのまま振り回して大地にたたき落とし、そのまま上空に投げたのだった。
「うぎゃああ!」
投げ付けた南山大王を追うように孫悟空が飛び上がり、
「連落裂き身抵打!」
※レンラクサキミテイダ
孫悟空の手刀・蹴り・肘・膝・頭突き・拳が嵐の如く南山大王の身体を連打した。
「うぎゃあああああああ!」
最後はお得意の妖気弾を打ち噛まし、南山大王は消滅したのだった。
そして孫悟空は俺様と愛音に近づく。
「紅孩児!悪い…遅くなったな?」
「気にするな!でも、助かったぜ?」
傷付いた俺様に対してマジに怒り、助けるなんて事あるんだな?
いや?これがダチってやつなんだな?
俺様は愛音と孫悟空を見ながら笑みを見せつつ…
ぶっ倒れたのだった。
なんかぁ~
気持ち良い気分だぁ~
俺様~
へへへ~
でも、疲れた~
悪いけど、少し眠らせてな?
おやふ・・むにゃむにゃ・・・
次回予告
孫悟空「危なく出番がないまま終わらす所だったぜ!」
紅孩児「それよりよ?行くのだろ?」
孫悟空「行くって?」
紅孩児「ボケてるのか?悟空が言ったんだろ?俺様の父上に会いたいってよ?」
孫悟空「!!」
そうだった・・・
次話!いよいよ物語は佳境へ!




