炎妖怪ボスの名前と紅孩児の火尖槍!
孫悟空の正体が、かつての最強の妖魔王の美猴王だと知った氷狼妖怪の銅角は?
よぉ?俺様は孫悟空だぜぇ!
俺様の正体を知った銅角がパニックを起こしていた。
「有り得ん!有り得ん!有り得んぞ!お前があの六大妖魔王のリーダー格!残虐非道の美猴王だなんて~!」
どうやら、コイツは転生前の俺様の事を知っているらしいな?
「お前、俺様を知っているみたいだな?何者だ?」
「これは何かの間違いだ!俺はかつて六大妖魔王であった牛角魔王と獅駝王との間で将軍をしていた事があるのだ!だから、有り得ん!俺は昔、本物の美猴王を直接見た事があるのだぞ?お前の様な馬鹿面のガキじゃ…」
だが、俺様の顔をまじまじと見ると面影があったのだ。
「そうか?転生して確かに若返ったのは確かだけどな?」
「アッ!アッ!アッ!アッ!アッ!」
「ん?どうやら認める気になったのか?」
「そう言えば、確かにそんな馬鹿面だったぁ~!」
俺様はズコッとコケてしまった。
「そこかよー!」
気を取り直した銅角は再び冷静になっていく。
「お前が仮に美猴王だったとして、それは昔の話だ!お前がいない間に俺も力を付けたのだ。神獣変化を使える程にな!だからお前が何者であろうと負けはせん。始末してくれるわ!」
「バトル再開の様だな?」
銅角が俺様に向かって襲い掛かって来る。
先程と違い、俺様の正体を知って目に焦りがあるようだ。
どうやら警戒しているようだな?
俺様は如意棒で銅角の繰り出す攻撃を受け止める。
パワー、スピード!
どれを取っても格段に上がっているぜ!
「伸びろぉ!如意棒!」
俺様の突き出した如意棒が伸びていき銅角を貫く。
が、貫かれたはずの銅角が砕かれ消えていく?
「分身か!」
見ると、辺りには数体の銅角が出現していたのだ!?
そして、同時に俺様に向かって襲い掛かって来たのである。
「クソォ!」
数十体の分身だけでも厄介なのに、奴のスピードが早くて捕らえきれん。
銅角の爪が、氷の刃となって俺様の身体を切り裂きにかかる。
俺様は辛うじて躱しながら目を綴じた。
こんな場合は確か戦いのセオリー通りにいくと…
目を綴じ、気を集中して、
分身とは違う奴の本体の微妙な気を見つけ出し、そこから本体を捕らえるのだったな?
て、無理ぃ!
俺様は、こういうの無理!
やるだけ無駄!
慣れない事するもんじゃないなぁ~
こう言っためんどくさい、ちまちましたのは俺様には向いてない!
俺様は目を開くと、向かって来る数体の銅角の分身全てに対して、如意棒で殴り掛かったのだ。
俺様には小細工は向いてない!
捕らえられなければ、捕らえられるスピードとパワーを増せば良い!
単純作業が一番効率が良いのだ!
俺様のスピードが次第に上がっていく。
まるで、銅角の力に感化されたかのようだ。
俺様の何かが目覚めていく感じ…そう!強い奴との戦いの中で無意識に抑えこんでいた荒ぶる魔王としての力が少しずつ解放されていくように感じた。
「うぐおおおお!」
咆哮をあげ、自分でも驚くほどの野生の動きで、襲い掛かる銅角の分身を全て如意棒で叩き伏せたのだ。
「ぐぅはぁ!」
消えていった銅角の分身、その中で地面にはいつくばるように頭を抑えて本体の銅角がもがいていた。
俺様は銅角に近付きその頭を踏み付けたのだ。
「グオオオ…有り得ん…この俺が…この銅角様が」
「どうやら決着ついたようだな?」
「お前は…まさか本当に?」
「ああ!言ったろ?俺様が正真正銘の聖天大聖・孫悟空様だぜぇ!」
俺様はそのまま踏み付けた足に力を入れ、銅角の顔面を地面に埋め込ませたのだった。
銅角はそこでノックダウンしたのである。
さてと…こっちは落ち着いたようだな?
後は紅孩児の奴はどうなった?
そうだ妖怪皇帝!
確か牛角魔王を襲った者が炎を操ると言っていたような?
まさか!
炎の狼のボスが妖怪皇帝なのか!?
俺様はいてもたってもいられずに、紅孩児を探したのだ。
辺りでは、まだ炎と氷の妖怪達が抗争している。
俺様は邪魔な狼妖怪達を掻き分け、薙ぎ倒しながら紅孩児を探す。
いた!
そこでは紅孩児が炎狼妖怪のボスに首を掴み上げられていたのである。
「紅孩児!」
が、紅孩児は助けに入ろうとした俺様を目で合図して制止させたのである。
その目は『俺様に来るな!コイツは俺様が一人でケリをつけるから、絶対に手を出すな!』
と言っているようだった。
それにしてもあの炎狼妖怪のボス?
奴も『神獣変化』を?
炎狼妖怪のボスは燃え盛る狼の鎧を纏っていた。
それにしても、この大地には何故にこんな強い輩がいるのだ?
分かるぞ!?
確かにアイツは強い!
紅孩児、本当に大丈夫なのか?
紅孩児は掴まれた手を引き離そうと、掴まれた状態で炎狼妖怪ボスの顔面に蹴りをくらわせたのだ。
が、炎狼妖怪ボスにはまったく効いてはいなかったのである。
「ふふふ…ガキよ!このまま首をへし折ってやるぞ!」
炎狼妖怪ボスがその手に力を入れる。
「うぐぐっ…」
ダメせなのか?
俺様が助けに出ようとしたその時だ!
紅孩児の身体から凄まじい炎が火柱となって噴き出したのである。
「馬鹿め!炎妖怪の俺に炎の攻撃等、無力だ!」
そうだ…
しかも炎妖怪ボスの炎術は相当なもんだ!
そんな奴に炎系の技で攻撃しても効果が薄いのだ!
無茶だ!
いや?相性が悪い!
「ぐぅはぁ!」
だが、次の瞬間紅孩児の燃え盛る炎を纏った蹴りが、炎狼妖怪ボスの顔面を蹴り飛ばしたのだ。
攻撃した足は熔岩のように熱され、高温度の塊のようであった。
たまらず炎狼妖怪ボスは紅孩児の首を掴んでいた手を離してしまったのである。
ふらつきながら、炎狼妖怪ボスが紅孩児を睨みつけると、紅孩児もまた口許に笑みを見せて炎狼妖怪ボスを睨み返しながら立っていた。
「馬鹿な…」
炎狼妖怪ボスの顔が微かに焦げていたのだ!
「有り得ん。一瞬だが、俺の炎力を上回ったと言うのか?こんなガキが?有り得ぬ。有り得んぞぉー!」
ついに怒り狂った炎狼妖怪ボスが大技を仕掛けて来たのだ!
『炎狼遥罵流獄狼散!』
※エンロハルバルゴクロウサン
炎狼妖怪ボスの身体から炎の狼の形をした妖気弾が、紅孩児に目掛けて放たれたのである。
紅孩児は飛んで来る炎狼の妖気弾を躱しながら上空に飛び上がると、紅孩児の右手に炎が渦巻きながら凝縮されていたのである。
「あれは!?」
そして、それは形を成したのだ!
「これが俺様の神具…」
『火尖槍ダァーッ!』
※カセンソウ
飛び上がった紅孩児に向かって、その戦いに乱入して来た炎と氷の妖怪達の残党が襲い掛かる。
紅孩児は出現させた神具・火尖槍に炎気を籠めると、
「燃やし尽くせ!火尖槍!」
火尖槍の尖端から火炎放射が放たれたのだ。
紅孩児は火炎放射を放出させながら回転し、迫り来る炎と氷の狼妖怪達を、
その火炎の業火で消滅させたのだ。
「すげぇ…」
「アハハハ!見たか?悟空!これが俺様の取って置きだぜぇ!」
上空から降りて来た紅孩児が、自慢気に俺様に叫んでいた。
ハイハイ。
すげぇすげぇ…
まったくもって、すげぇよ~
お前って奴は!
だから~
目の前の相手に集中しような?
「このガキィ!調子に乗るなぁー!」
怒り狂う炎狼妖怪ボスが紅孩児に向かって襲い掛かる。
「火尖槍を持った俺様に敵はいねぇぜ!」
火尖槍から放たれた炎が紅孩児に纏わり付き、その炎力が高密度に濃縮していく。
だが構わず向かって来る炎妖怪ボスの振り下ろした拳が紅孩児の顔面を殴りつけたのだ。
「効かねぇよ…」
紅孩児は炎狼妖怪ボスの燃え盛る拳を片手で掴み上げたのだ。
「なっ?」
紅孩児は炎狼妖怪ボスの拳を掴んだまま、地面に叩き付ける。
「ぐはぁ!」
血を吐き、悶絶する炎狼妖怪のボス。
「本当に俺様の前にひざまずいたようだな?」
アハハ。
紅孩児の奴?
目茶苦茶ツェーや!
全然、心配なかったようだな?
ん?待てよ?
そうだよ!
炎狼妖怪ボスの名前だぁ!
本当に奴が妖怪皇帝だったのか?
だったら、案外簡単な仕事だったな…
俺様は炎狼妖怪ボスに近付いて行くと、
「おい!」
炎狼妖怪ボスは苦しみながら俺様を見上げる、
「お前の名前を言ってみろ!」
「グッ…何だと?」
俺様は炎狼妖怪ボスの胸倉を掴み、もう一度質問したのだ。
「もう一度聞くぜ?お前の名前は何だ?」
俺様の威圧的殺気を感じてか、炎狼妖怪ボスは己の名前を答えたのだった。
俺様の威嚇すげぇ~
「俺の名前は…」
お前の名前は?
次回予告
孫悟空「よし!俺様強い!俺様かっこいい!俺様最高!」
紅孩児「何言ってるんだよ?俺様のがカッコ良かったろ?」
孫悟空「何言ってるの?意味分らないし!俺様のが・・・ん?」
紅孩児「そう言えば、次の話・・・」
孫悟空「・・・あっ!」
二人「ハア~~~(溜息)」




