獣神変化と孫悟空の如意棒?
孫悟空が潜り込んだ大地にいたのは、孫悟空と因縁のあった銅角であった。
そして紅孩児が潜入した大地には、炎狼のボスであった。
俺様は走っている。
氷に覆われた凍てつく森の中を!
ただ、ひたすらに…
向かうは!あの光り輝く太陽に向かって!
これって、ほら?あれだ!うん。青春なんだなぁ~
「ウガァ!ガガア!アガア!」
すると追ってきた氷狼の群れが飛び掛かって来たのだ。
「おわっと!」
俺様は氷狼妖怪達の牙を躱しながら思った。
悠長に物思いに浸っている場合じゃないな~と…
アハハ…
おぅ!俺様は孫悟空だぜ!
俺様の後方からは目をギラつかせ、殺気に満ちた氷の狼達が迫って来ていたのだ。
しかも、多勢で休まず攻撃を仕掛けてくるもんだから、躱すので精一杯で生きた心地しねぇぜぇ!
俺様はあの先に見える方角に向かっている訳なのだが…
《ガブッ》
コラッ!尻尾を噛むな!ガキの狼が俺様の尻尾に噛み付いてきやがった。俺様は噛み付く狼を蹴飛ばし、再びひたすら真っ直ぐに駆けて行く。
この森を抜けた先へ向かって…
そこに一体何があるかだって?
それはな?
おっと!もう見えてきたぜ!
「抜けたぁー!」
氷の森を抜け出た所で、俺様は空高く飛び上がったのだ。
後ろからは氷狼達が俺様を逃がさんと、同じく飛び上がって来る。
俺様が飛び上がった先に見えるのは?
すると、同じくこちら側に向かって飛び上がって来た者達が見えたのだ!
あれは炎狼妖怪達の大群!
その中心には俺様と同じく炎狼に追われ、逃げて来た紅孩児が飛び上がって来たのだ。
「紅孩児~!」
「孫悟空~!」
飛び上がった俺様達は、交差する直前に腕を絡めながら回転しつつ、そのまま中央に着地したのだ。
そして、同時に追って来た炎と氷の狼の妖怪達の軍勢は、勢い余りお互い衝突して落下していく。
辺り一帯は敵である氷と炎の狼達に驚き、ざわめき立つ。
まさに何処もかしこもパニック状態になっていた。
そこに現れる氷狼妖怪のボス、銅角。
「なぬ?炎の奴らが何故?まさか、あのガキ達は奴らの回し者か?」
それは炎狼妖怪のボスも同じ事を考えていたのだ。
俺様と紅孩児を中心に、炎と氷の狼妖怪達がいがみ合い、今にも混戦状態になっていた。
いや?争いは既に始まっていたのだ!
炎と氷の妖怪達の大乱闘が勃発したのだ。
まさに計算通り。全て…俺様達の悪巧み?
作戦通りだ!
そうなのである。
俺様達の作戦とは炎と氷の狼妖怪達を一度にぶつけさせ、その混乱に生じて消耗戦になった所を、隙をついて両方の大ボスを一度に叩き潰す一石二鳥作戦だったのだ。
流石にこれだけの猛者達相手に、二人だけじゃキツイからな~
俺様達って天才か?
天才だな!
天才と呼んでくれ!
《ガブッ…》ん?あっ…また…
尻尾に噛み付くチビ狼。
俺様は尻尾に噛み付いたチビ狼を蹴飛ばし払いのける。
「さ~てと」
「そんじゃあ?」
『俺様達も暴れますか!』
俺様と紅孩児は混乱の中へと混じって行く。
「クッ…一体全体どうなってやがる?俺の軍勢が混乱で普段の力が出し切れてないじゃないか!」
そこに炎狼妖怪のボスが現れる。
「銅角!まんまと俺達を罠にかけたつもりだろうが、そうはいかんぞ!このまま貴様を血祭りにしてやる!」
「何?どういう事だ?これは貴様の指しがねじゃないのか!?」
「何?」
ボス二人は顔を見合わせながら硬直していた。
(・・・これは、どういう事だ?)
その時、二人のボスの目に写る俺様と紅孩児の姿。
そこでボス二人は気付いたのだ。
今回の騒動が俺様と紅孩児である事に。
「そうか…一体何処のどいつらか知らないが…俺達をコケにした張本人は」
二人の狼妖怪ボスが怒りで妖気が高まっていく。
「この、ガキ共かぁ~!」
二人の狼妖怪ボスが俺様と紅孩児に向かって、妖気の破壊弾を放って来たのである。
その破壊力は仲間の子分達をも巻き添えにして俺様達に直撃した。
「死にさらせぇ~!」
「待て!」
ボス達の視線の先に見える土煙の中から二つの人影が?
土煙は二つの人影の放った妖気の解放で消し飛んだ。
ふふふ人影の正体?
分かっているだろ?
そうさ俺様達だ!
俺様と紅孩児が二人の妖怪ボスを睨みつけて立っていたのだ。
そして、お決まりのあの台詞!
「さぁ!お遊びはここまでだぁ!」
俺様は中指を立て、一気に下げる!
「お前達!俺様の前にひざまずけぇ~!」
ん?すると紅孩児が目を輝かせながら、俺様の袖を引っ張っている?
どしたん?えっ?自分もそれ、やりたいだって?
決め台詞をか?
紅孩児は頭を上下に振り目を輝かせていた。
あっ…そう。仕方ない。
じゃあ、ご一緒に…
俺様は紅孩児と隣合わせになって、右手の中指を立てゆっくり上げる。
紅孩児も同じく合わせ、左手の中指を立てゆっくり上げ二人同時に一気に下げたのだ!
「さぁ!俺様達の前にひざまずけぇ~!」
キマッタぜぇ!
「こしゃくなぁ!お前達!生かして帰さぬぞ!」
「血祭りにしてやる!」
最初は俺様達のやり取りに呆気に取られてボスの二人だったが、我にかえって怒り狂い突っ込んで来る。俺様達も二手に分かれて迎えうったのだ。
俺様は銅角と!
紅孩児は炎狼妖怪ボスと!
炎妖怪の軍勢と氷妖怪の軍勢が入り乱れる中、俺様達の最強バトルの幕が切って落とされたのだった。
「うおらあああ!」
俺様は炎の聖獣ピヨちゃんを召喚し、拳に炎を集め拳をふるう。
「我が息子達の敵討ちだぁ!憤怒!ハァー!」
銅角の周りに氷の盾が出現する。
「こんなもん!」
俺様は銅角が出現させた氷の盾を砕きながら、銅角へと向かって行く。
「ふふふ…ここまで来れるかな?」
銅角の頭上に巨大な氷柱が浮かび上がり、俺様を串刺そうと落下して来たのだ。
「こなくそ!」
俺様の身体から炎が噴き出し、落下して来た氷柱を一気に蒸発させる。
「俺様の炎にお前の氷なんか効かないぜぇ!」
「ならば、これでもどうだぁ?これが俺の本当の力だぁー!」
銅角の身体から凄まじい妖気が噴き出す。
それは俺様の肌を刺すような凍てつく妖気だった。
「何をするつもりだ?」
銅角の身体から氷狼の姿をした闘気が現れ、銅角の身体を覆っていく。
すると体毛が逆立ち氷の刃と化した鎧を纏った銅角が俺様の前に現れたのだ。
『獣神変化唯我独尊!』
「馬鹿な??獣神変化だと!?」
俺様は目を丸くした。
獣神変化とは俺様が使う獣王変化の進化系といったところか?
かつての義兄弟の獅駝王が得意とする変化で、攻撃力を特化させた獣系妖怪の最終奥義である。
ちなみに金角の使っていたのは神獣変化だったのを覚えているか?
あれは獣神変化と双璧の最終奥義で、野獣の力を最大限に引き出したのが神獣変化。
獣神変化は理性を残しつつ、攻撃力は同等の力を持つのだ。
「こりゃ~やはり、ただ者じゃなかった訳だ?」
「泣いて謝っても、もう許さん!俺の牙で串刺しにした後、その首を塔のてっぺんに晒してくれよう!」
「誰が泣くかってぇ~の!俺様をナメるなよ!」
俺様は如意棒を抜き構えたのだった。
すると如意棒を構えた俺様を見て、今度は銅角が目を丸くしていたのだ?
「ん?どうしたよ?」
「お前?それはまさか如意棒ではないか?何故お前がそれを?」
「はっ?如意棒は俺様の武器だぞ?文句あっか!」
「ば…馬鹿な!?お前!それがどんなモノが分かっているのか??」
「はて?」
そして銅角は如意棒について説明し始めたのである。
神具・如意棒
持ち主の意思で伸び縮みし、持ち主の成長と共に進化する攻撃系の神具である。
また、あまり知られてはいないがこの如意棒には特殊な能力があり、相手の属性を無効化・無視して攻撃する事が出来るのだ。
例えば、神にしろ妖怪にしろ属性があり、その属性には五行に伴い炎・水・雷・風・大地が存在する。
炎は水に弱く、水は雷に弱い。雷は大地に弱く、大地は風に弱い。風は再び炎に弱いと、強弱関係があるのだが、この神具・如意棒は属性とは無関係に、相手に効果抜群の攻撃力を発揮するのだ…そうだ。
知らなかった。
ただの頑丈で伸び縮みする不思議な棒としか思っていなかった。
「有り得ん…その如意棒は…かつての大魔王…そうだ!あの残虐非道の妖魔王の使いし武器!それをどうして??お前は一体何者なのだぁ!?」
「あっ?自己紹介していなかったか?」
俺様は紅孩児に聞こえないか意識しつつ…
「俺様の名前は孫悟空!多分、お前の知るそのかつての妖魔王・美猴王とは俺様の転生前の事だぁ~!」
「アガッ!?」
銅角は俺様を見て驚愕していた。
一瞬時が止まり、銅角の頭が整理つくと同時に、
「んな?ばぁかなぁー??」
ふっ…有名人は辛いぜぇ!
あ、でも続きは次話な?
次回予告
孫悟空「いやあ~ようやくバトル展開になってきたぞ?」
紅孩児「面白くなってきて良いじゃないか?それよりも、本当に如意棒の事を知らなかったのか?」
孫悟空「聞いた事があるような?ないような?どうだったかな~?」
紅孩児「だめだな~!それより次の話じゃ、俺様の取って置きの武器を見せたるぜ!なははは!」




