紅孩児と炎狼のボス!
孫悟空の出向いた土地は氷の大地のボスの銅角の支配する地であった。
しかも銅角はかつて三蔵一行が退治した金角と銀角の父親だったのだ。
「おわぁああ~!」
オッス!俺様、孫悟空だ~
「おわぁあああああ~!」
えっ?何事かって?
いや、まぁ~実は~
俺様は紅孩児と一緒に逃げ走っている最中なのである。後方からは氷狼の大群が追って来ていて、少しでも油断すると攻撃を仕掛けて来るんだぜ?
アハハ…
それにしても…
氷狼妖怪のボス(銅角)の怒りの形相は怖かったなぁ~
そりゃそうだよな…
実の愛息子の金角と銀角を、この俺様に退治されてしまったのだから。
少しは同情もするが…
ちなみに金角と銀角とは、以前俺様と三蔵達が旅の途中で戦った妖怪盗賊の兄弟である。
目茶苦茶強く、しつこい奴達だったのだが、やっぱし俺様の相手じゃなかったのだ。
それに奴達はゲス過ぎた。
始末されて当然だったのだから仕方ないのだ!
「アハハ!こりゃ~たまったもんじゃないな?」
「笑ってる場合か!」
「誰のせいだって話だよ!」
「スマン…」
そんな会話中も氷狼達は襲い掛かる。
俺様と紅孩児は走りながら攻撃を躱して、前方から向かって襲い掛かって来る氷狼を殴り蹴り飛ばす。
こりゃ~キリがないぜ!
そんな時だ!
「うぐわああああ!」
後ろから紅孩児の叫び声が響いたのである。
俺様が振り返ると紅孩児の両手両足に氷狼達が噛み付き、身動きが取れないでいたのだ。
もがき、暴れる紅孩児だったが、噛み付かれた牙が更に食い込んでいく。
「はっ!」
紅孩児の背後から覆うような影が現れて「グシャッ!」っと鈍い音がした。
「紅孩児!」
背後から現れた銅角が、紅孩児の首に噛み付いたのだ。
紅孩児の首から血しぶきが噴き出し痙攣を起こしながらぐったりとする。
「ふふふ…先ずは一匹血祭りだ…」
牙を抜き銅角が指を鳴らすと、紅孩児は氷の棺に閉じ込められてしまったのである。
「ふふふ…このガキを助けたいか?だったら、お前も…ん?あれ?」
既に俺様はいなかった。
俺様は紅孩児を残して一目散に逃げていたのだ。
すたこらさっさのさぁ~
「なっ?なっ?何て奴だぁ~!仲間を見捨てやがったぁ~!何て外道な野郎だぁ~!」
そこで、他の氷狼妖怪達がざわめき始めたのだ。
「銅角様!よく見てください!」
「ぬっ?これは!」
すると、氷の棺に閉じ込められていたはずの紅孩児の姿が消えていたのである。
唯一あったのは、紅孩児の物だと思われる髪の毛が一本?
「ぶ…分身かぁー!いつの間に?クソォ…お前達!絶対にあのガキを逃がすなぁ~!捕まえて八つ裂きにしてくれるわぁ~!」
逃げる俺様。
ふふふ…どうやら計算通りのようだな?
それもこれも、俺様と紅孩児がこの地へ来た時から仕組んでいたのだ。
俺様達は緻密な?計算てか悪企みを考えていた。
先ずは捕まえた氷狼妖怪達の毛皮を奪い、ここの妖怪達に変装して成り済ませたのである。
しかし変化だけだと、臭いで直ぐにバレテしまうからな~
そこで考えたのは、お互いに分身をして、俺様本体と紅孩児の分身が氷妖怪のもとへ!
紅孩児本体と俺様の分身が炎妖怪のもとへ忍び込むと言う手筈だった。
これは、本体が逃げる際に盾として身代わりに使ったり、時間稼ぎにも使える利点があるのだ。
そして、最後の作戦なのだが…
ん?おっと!
今、俺様は感じたのだ。
紅孩児と一緒にいるはずの俺様の分身が消えた事に!
つまり、俺様の分身に何かあったという事だぞ?
紅孩児の奴…大丈夫か?
もしかしたら…
炎狼妖怪のボスが、妖怪皇帝だったのか?
時は遡る事、少し前の話…
紅孩児は俺様の分身と一緒に炎狼妖怪達のアジトに忍び込んでいたのだ。
炎狼妖怪達は何やら作戦を練っていた。
「さて氷妖怪達をどうしてくれようか?」
「良い作戦がある!」
「奴達の中にスパイを潜り込ませ、内側から内乱を仕向けるのだ!」
「それは良い!名案だ!」
「チマチマした作戦だなぁ~」
「何だと?何がチマチマだ?」
「でも、直ぐにバレるだろ?」
「何だと?」
「だってさぁ…」
成り済まし作戦で変装中の炎狼妖怪達は、氷妖怪の衣装を纏っていた。
しかし自身の身体から噴き出す炎で、燃え焦げてしまっているのである。
そんでもって氷狼妖怪に変化しようとしても、身体から炎が消えてな~い!
何より、コイツ達は熱いのだ!
「あのさ…馬鹿なのか?」
「言い過ぎだろ?頑張ってる感は出てるぜ?」
「でもよ~!」
それは紅孩児と俺様の呟きだった。
炎狼妖怪達はお互いの姿を見合わせて、沈黙する。
計画を立て、準備しながら努力している間は夢中になっていて、己の姿が見えなくなっている事ってあるよな?『なら、どうする?』
すると、一際威厳のある炎狼の妖怪がこちらを見ていたのだ。
間違いない…
コイツが炎妖怪のボスだ!!
風格、威厳、威圧感…
それに妖気の量が半端じゃない!
だが、それ以上に驚かされたのは…
「お…お前!」
この炎狼妖怪のボスは氷妖怪の姿をしたペンギンだか何らか分からない可愛らしい着ぐるみを被っていたのである。
ばっ…馬鹿?馬鹿なのか?
いや、目が真面目だ!
素直なのか?
ある意味…色んな意味で可愛い奴だ!
着ぐるみ姿も含めてな…
そこに紅孩児がボスに向かって質問したのである。
「なぁ?それで本当にバレないのですか?」
「う…うむ…」
自信なさ気のボス。
「じゃあさ?どうしてボスの目はそんなにギラついているのですか?」
「それは、威厳と威圧感のなせる賜物だな…」
「友達なくしますよ?」
「…………」
ショックを受けるボス。
「ボスの耳はどうしてそんなに逆立っているのですか?」
「それは、耳が逆立てば…その分身長も伸びて…女子にモテるだろ?」
「それって上げ底みたいなもんですか?」
「なのかな?」
「で、どうしてボスの鼻はそんなに突っ張ってるのですか?」
「それは…研ぎ澄まされた嗅覚で敵を見抜く事が出来るから…」
炎狼妖怪のボスの空気が変わる?
「ん?それにボスの口は、どうしてそんなに大きいのですか?」
「それはだな…」
直後、炎狼妖怪のボスが立ち上がり紅孩児に向かって噛み付いて来たのだ。
「それはキサマの様な侵入者を、食べてしまうためなのだぁー!」
ボスの牙が紅孩児の胴体に噛み付き骨ごと砕ける音が響いた。
「ふふふ…気付かぬと思ったか?侵入者よ!いや、もう生きてはいまいがな?」
ボスの口から悲惨な姿になった死骸が吐き出されたのである。
それは俺様?孫悟空?
そう…紅孩児がボスに噛み付かれる瞬間、俺様の分身が飛び出して身代わりになったのだ。
吐き出された分身も消えてしまい驚くボスは辺りを見渡す。
「なっなっなぁ~?」
怒りが込み上げるボスは、
「許さぬ。俺をコケにしやがって!お前達!絶対に今のガキ達を生かして帰すな!捕らえて八つ裂きにしてやるわ!」
既に紅孩児は一目散に逃げていたのだ。
「ナハハ~ちっと、遊び過ぎたかな?」
そんなこんなで、右も左も大変な事になってしまったのでした。
氷の大地で俺様!孫悟空様が逃げ走り、炎の大地で紅孩児が逃げ走る。
そして、目指す先は?
「紅孩児~!待ってろよ~!」
「ゴク~ウ!待ってろよ!」
さてさて、どうなるの?
続きは次話!
次回予告
孫悟空「なんかシリアスな展開だったはずの物語が、凄い斜め方向に進んでいないか?」
紅孩児「そうか?俺様、よく分からないや~」
孫悟空「まあ、良いか・・・あんまり重い話ばかりだと肩こるしな!」
そんなこんなで、次話も宜しくな!




