氷炎狼の争う大地!孫悟空と氷の大地のボス?
牛角魔王と紅孩児の因縁、更にナタクからの依頼。
孫悟空は一人で抱え込む。
おぅ!孫悟空だぜぇ!
俺様は紅孩児に連れられて険しい崖道をよじ登っている最中だった。
「なぁ!紅孩児よ?何処に行くつもりなんだよ?」
すると、先を登っていた紅孩児が自慢げに言う。
「こんな崖道で、もうへこたれたのか?案外情けないなぁ~ゴクウは?」
「何だとぉ!」
俺様は紅孩児に負けてたまるかと急ぎ足で崖道をよじ登って行く。
そして山頂まで着くと、紅孩児は俺様に見ろと指差した。
「俺様達がこれから向かうのはあそこだぜぇ!」
「ん?」
紅孩児が指差した方向を見るとそこには!
左右に隔たれた境界線?
左は氷で凍りついた大地!右は炎で燃え盛る大地。
炎と氷で隔たれたその大地は、まさに不可思議な光景であった。
しかも、左右の大地が対称になるかのような巨大な塔が存在していたのである。
「この大地は?」
「驚いたか?ここは炎と氷の妖怪が争う大地!氷炎妖怪の巣窟だぜぇ!」
「氷炎妖怪だと?」
この大地には二匹の強力な妖怪のボスが存在し、お互いの大地の覇権をかけて両方の地に存在する塔を奪い合う抗争を長年続けていると言うのだ。
「なぁ?紅孩児よ~で、俺様達はここで何をするんだ?」
すると、紅孩児は自慢げに説明したのだ。
「あそこにいる妖怪のボスに喧嘩を売り、ぶちのめすのだ!」
はっ?何のために?
訳わかんないぞ??
ん?待てよ?妖怪のボスって?
俺様はナタクの言葉を思い出していた。
ナタクからの依頼は二つ。
一つは、この地にある三つの結解を壊す事。
そして、もう一つ!
天界に仇なす『妖怪皇帝』なる妖怪をぶっ倒す事だった。
もしかしたら…
その妖怪のボスのどちらかが妖怪皇帝なのか?
それに、あの塔も怪しいぞ?
俺様は決めた!
「よし!面白そうだぁ!俺様も一肌脱いでやるぜぇ!」
「そうこなくっちゃだぜぇ!」
その時、俺様達はニャリと笑んだのである。
「そうと決まれば」
「だな?」
俺様達は辺りに気を張った。
「いるんだろ?隠れてないで出て来やがぁれぇ!」
すると俺様達の存在に気付き、気配を消して近寄って来ていた妖怪達が集まって来ていたのだ。
「ゲヘヘ。よそ者だな?この地に来たからには俺達が歓迎しないとな?」
俺様と紅孩児はこの地の妖怪達に囲まれていたのだ。
「歓迎?飯でも奢ってくれるのか?」
「おぉ!それは、ありがてぇぜ!」
盛り上がる俺様達に、馬鹿にされたと感じた妖怪達が激怒する。
「ガァアアー!ふざけるなぁ~!」
襲って来た奴達は燃え盛る狼の毛皮を着た炎狼妖怪達だった!
いや?もう片方から別の妖怪達が現れたぞ!
「何だ?変な妖気と臭いを嗅いで来てみれば、仲間割れか?ちょうど良いぜぇ!お前達全員皆殺しだ!」
そいつ達は氷の毛皮を被った氷狼妖怪達だった。
あらら?挟み打ちか??
唸りをあげて襲い掛かる炎と氷の牙に、
「行くぜぇー!」
俺様と紅孩児は勝ち気に迎えうったのだった。
コイツ達…強いな?確かナタクが言っていたような?
この地の妖怪達は他の地の妖怪よりも腕がたつとかなんとか?
だが俺様達の相手じゃねぇぜ!
数分後…
俺様と紅孩児は襲い掛かって来た炎と氷の狼妖怪共を撃退しぶちのめしたのだった。
で、その後…
「ゴニョゴニョ…」
「ゴニョ?ゴニョゴニョ」
「ゴニョニョ!」
俺様と紅孩児はしゃがみ込みながら悪巧みを?いや!作戦を練っていたのである。
「だな?」
作戦を決めた後に俺様達は、縛り上げていた怯える炎と氷の狼妖怪達を妖しく見つめたのである。
「ククク…」
「ニマァ~」
そして計画を実行に移したのだった。
俺様と紅孩児は氷の狼の毛皮を被り、氷のボスの待つ大地へと向かったのだ。
そこは氷の狼の毛皮を被った妖怪達が、氷の塔近くにある広場らしき場所に集まっていた。
何かの集会?
その中央には一際デカイ妖怪が、偉そうに踏ん反り返っていたのである。
コイツが妖怪皇帝なのか?
とりあえずは様子見だな…
そして氷の狼妖怪のボスはゆっくり起き上がると、集まった妖怪達に向かって叫んだのだ。
「長年に続く忌ま忌ましい炎の狼妖怪達との因縁の戦いも今日で終わりだぁ!今日こそ!今日こそ決着をつけ、奴達を皆殺しにしてやるのだぁ!」
「ウグオオオオオ!」
部下の氷狼妖怪達が賛同し遠吠えをあげる。
妖怪達に紛れ込んだ俺様達はたまらず耳を塞いでいたのである。
「うっ…うるせー」
「シィ!見つかるぜぇ!」
ん?あらら?
気付くと俺様達に向かって熱い視線が集まっていたのだった?
「キサマ達…」
チッ!ばれたか?仕方ねぇ…
「新人か?」
《ズコッ!》
えっと…ばれてない?
「ふふふ…先程から知らぬ臭いが混じっていると思ったら新人だったか?」
「そうだ!いえ、そうです!俺様…いや、俺…私達が新人だ!」
「(コソッ)…なぁ?敬語になってないぜ?」
「(コソッ)…そっ…そうか?上手く出来てると思ったんだけどなぁ~?」
そんな俺様に氷妖怪ボスは怪しむ事なく、
「そうか?なるほど!励めよ!」
「おぅ!いや…違うな…はいです!」
敬語は早いうちに勉強しておかないと、社会に出てから苦労すると実感した俺様だった。
間もなくすると氷狼妖怪ボスは再び演説を続けた。
「今宵、我々のもとに強力な助っ人が到着する予定なのである!」
強力な助っ人?そんな奴が?
「その者達が戻れば、我々に負けはない!戻り次第、我々は炎の奴達を血祭りに出陣しようぞぉー!」
更に氷狼妖怪達のテンションが上がり、最高潮に達していたのだ。
そこで俺様は何を思ったのか?
氷妖怪のボスに質問したのである。
「あの~盛り上がっている所をすみません…ボス?」
「ん?何だ、新人よ?」
「その、助っ人ってどんな妖怪なんですか?」
「ん?興味あるのか?到着を待てば時期に分かるのにか?」
「ケチケチすんなよ!じゃなかった。そこを何とかお願いしますよ…ボス様・様!このままだと、おれ…私、興味津々待ち遠しい死にしてしまいますよ~!」
「興味津々待ち遠しい死にだと?そりゃ大変だ!だったら教えてやろう!」
何と!
コイツ案外良い奴か?
いや、ただの馬鹿だろうな…
「その者達とは、この俺の可愛い残虐非情な二人の息子達なのだ!今宵長い旅から帰る事になっているのだ!」
息子?ん?
氷狼?妖怪?二人?
俺様は更に質問する。
「それは凄いですねぇ。えっと…度々失礼ですが、ボスのお名前は何とおっしゃるのでしょうか?」
「なっ?悟空!」
紅孩児が俺様の会話を止めようとするが、氷妖怪ボスは機嫌良く教えてくれたのだった。
きっと、息子達が帰るのが目茶苦茶嬉しいのであろう。
「ナヌ?俺の名前を知らぬとは…そうか…ならば教えてやろう!」
『俺の名前は、氷狼の長!銅角だぁ!』
なに?銅角だと!
俺様は驚愕したのだ。
「ふふふ…」
自慢げに笑みを見せる氷狼族の銅角。
紅孩児は突然驚愕する俺様に耳打ちをしたのだ。
「(コソッ)なぁ?どうしたよ?知っている奴なのか?」
更に俺様は質問を続けていた。
「ドウカクって…」
「ん?」
「ドウカクって、どう書くの?」
………………。
瞬間、その場にいる全ての妖怪達の時が止まったのだった。
氷妖怪が凍てつくように凍り付くって…何事?
そして…『ズコォォオオオ~!』と、ひっくり返ったのだった。
その様を意味分からずに見ていた紅孩児は、
「スゲー!一瞬で全員ぶっ倒れたぞ!」
何故か一人感動していたのだった。
起き上がる銅角。
「馬鹿か!お前は?イタタタ。俺様の名前は金銀銅の『銅』に『角』と書いて『銅角』と読むのだ!」
あっ~銅ね?つまり…
「そして俺の息子達の名前は…」
「もう良いや~」
「なぬ?」
「金角と銀角だろ?あいつ達は来ないぜ?」
「なっ?どういう事だ?しかも貴様が何故息子の名前を知っているのだ?」
「だって、あいつ達は俺様が退治したからな!アハハ!俺様スゲー!」
この銅角の頼りの息子とは、以前俺様と三蔵が倒した金角と銀角の事なのだ。
「馬鹿な!何を言っているんだ?お前は?」
「本当だぜ?奴達の妖気を探れば分かるだろ?」
「おぃ!悟空、馬鹿!」
俺様は紅孩児に突っ込まれて我に返った。
あっ…しまった…つい…
見ると、銅角が怒りの形相でこちらを見ていたのだ。
やってもうた…
こりゃ、一波乱ありそうだな!
まったく困ったもんだぜぇ!
誰のせいかって?
はい!ごめんなさい。
俺様です。
じゃあ、今回の話はお後が宜しいようで?
また、次話でな!
次回予告
紅孩児「何か面白くなって来たな?」
孫悟空「いやいや!急展開過ぎて、俺様は全然付いて行けてないぜ?」
紅孩児「そっか?俺様は悟空と一緒だから楽しいぜ?」
孫悟空「お前・・・照れるぞ?それは?」
紅孩児「あはは!悟空!お前は俺様の宝者だぜ!」
孫悟空「オイオイ!」
紅孩児「悟空は俺様の恋女房だぜ!」
孫悟空「お~い!意味分かって使っているか?」
紅孩児「悟空は俺様のマイブームだぜ!」
孫悟空(ブ・・・ブームが過ぎたらどうなるの?)




