孫悟空討伐!?闘神ナタク登場!!
孫悟空の暴走から命がけで救った三蔵だったのだが、その代償は計り知れなかったのである。
私、沙悟浄です。
前回までのお話は…
暴走した孫悟空兄貴を救うべく、三蔵様が身を挺して孫悟空兄貴を元へと戻してくださったのでした。
しかし、その代償として三蔵様の身体は衰弱し、髪は白髪となり、視力を失い、その生命力が消えかけていたのでした。
それから再び私達は旅を続けていたのでした。
私は視力を失った三蔵様の身体を支えながら歩いていると、
「アッ!」
石に躓いて三蔵様が転びそうになったのです。
「危ねぇ!」
すかさず孫悟空兄貴が三蔵様を支えたのでした。
孫悟空兄貴は例の件以来、その姿は転生変化した少年の姿のままだったのです。
三蔵様曰く魂が安定したとの事で、逆にもう猿の姿に戻る事もないとの事です。
「オイ!河童!ちゃんと支えろや!何やってんだ?馬鹿野郎!」
「す…すみません」
孫悟空兄貴が私に怒鳴りつけました。
そこに、
「ボソッ…まったく誰のせいらろうな?」
孫悟空兄貴に聞こえるように嫌味を言う八戒兄貴。
「何だ?豚!文句があるなら、正面で話せやぁ!」
「ぁあ?逆ギレらか?フザケルなや!三蔵はんがこうなったのは誰のせいらって言ってるんらよ!」
二人は睨み合っていました。
二人はあの件以来、ずっとこんな感じでいがみ合っていたのです。
「止めてくださいよ~!」
そんな私も、やはり孫悟空兄貴に対して不安が消えなかったのです。
あの孫悟空兄貴の暴走に関しては、結局詳しい理由は孫悟空兄貴にも三蔵様からも何も語られなかったからです。
あの日を境に私達の関係に何か亀裂みたいのが入り、ピリピリとした空気が漂っていたのでした。
《止めろ!》
その時、三蔵様のテレパシーの一声で私達は黙り込んだのいがみ合です。
三蔵様はなるべく体力の消費を避けるために、テレパシーで会話をするようになったのです。
「らってよ…」
《八戒、そう猿を責めるな?これは俺に力が足りなかったから起きたのだ!》
私達は、あの一件の後、三蔵様が視力の他にも聴力や味覚をも失っている事を知ったのです。
《確かにいろいろと不自由だが、お前達の言葉は聞こえず見えなくとも、何を話しているのかくらいは分るのだぞ?》
三蔵様は長年の修行で、空気の振動だけで言葉を理解出来るのだそうです。
《それに、沙悟浄の奴が俺の目の代わりになっているしな》
私は旅の間、目の見えない三蔵様の手に指で文字を書きつつ、事細かに状況を説明していたのです。
《確かに旅には少々窮屈ではあるがな?ははは!》
いつもと変わらぬ三蔵様に、逆に私達が力付けて戴いたのでした。
一番辛いのは三蔵様なのに…
と、そんな時です!
私達三蔵一行の前にその者達は何の前触れもなく現れたのです。
それは閃光の如く、突如雷が私達の目の前に落ちて来たのでした!
落下した雷の衝撃の爆風で、私達は視界を奪われる。
「うわぁ何だ!?」
「見るらぁ!誰かいるらよ!」
雷鳴が轟き、砂埃の中から現れたのは?
二人の武神!?
一人は大柄な如何にも武神と呼ぶに相応しい甲冑を纏った武神でした。
もう一人は、逆に武神と呼ぶには似つかわしく、美しい金髪に細身の体つきの少年神?しかし、その少年(人歳16)からは隠し切れないほどのプレッシャーが伝わってきたのです。
「三蔵一行だな?私の名前は巨霊神!この方はナタク様!我々は天界の武神である」
「武神だと?神か?その武神が俺様達に何の用だ?」
孫悟空兄貴は突然現れた巨霊神さんに警戒しながら理由を問い質す。
「その前に、倦廉大将よ!」
「はっ?私ですか?」
「お主、何故に任務である天界への三蔵一行の報告を怠っておるのか?」
えっ?あっ…忘れてた。
実は私、天界から降りた時に、そんな事を天界の上官神様方から命じられていたのです。
確かに最初は日記みたいに天界報告していたのですが、毎日毎日の慌ただしい旅続きに…
つい疎かにして忘れてしまったのです。
「そ…それは…」
返答に困る私の代わりに孫悟空兄貴と八戒兄貴が答えたのです。
「へん!そういう事かよ!」
「いや…これは…」
「分かっているらよ!」
えっ?
「コイツは俺様達の仲間だ!例え皿が枯れても、俺様達を裏切ったりしないのさ!」
えっ?えっ?
「そうか…ならば、その事は天界へと伝えておこう!」
「勝手にしやがれ!」
あの~??
ああ…私、後に引けなくなってたりして…
でも…
「そうですとも!私は仲間を裏切らない河童なのです!」
これって、もしかして?天界への謀反とか?反逆者系みたいな?
私…これで、お尋ね者でしょうか?
「そうか。では話を戻そう。我々は妖怪を討伐するために組織された討伐専門の武神である!その目的は妖怪達の力の均衡を保つ使命を遣わさっておる…」
「力の均衡だと?」
「均衡とはつまり、妖怪達が天界に背くための力をつけないように管理しておるのだ!」
「管理だと?」
「天界に謀反を起こさぬように、上級妖怪の中でも危険分子たる凶悪な妖怪を討伐するのが我々の役目なのである。近年、何故か力の強い妖怪が増え続けていてな。上級妖怪程度なら放置していても問題ないが、今後それ以上の力を持たれると我々の住む天界でも厄介なのである!」
「余計な事まで言うな!」
「はっ!これはナタク様!私の失態!大変申し訳ございません!」
巨霊神さんはナタクと呼ばれる少年神に頭を下げたのでした。
どうやら巨霊神さんは、このナタクと呼ばれる少年神には頭が上がらないみたいですね?
そして、そのナタクさんが話を進めたのです。
「我々の目的は、そこにいる聖天大聖!貴様を討伐する事だ!」
「なぁにぃ??」
ナタクさんは孫悟空兄貴を指差したのでした。
ちょっと待ってくださいよ?
孫悟空兄貴を討伐って何故?
しかもこんな状況に?
《勝手な真似はさせん!》
三蔵様が私を押し退け立ち上がろうとする。
「三蔵様!無理はいけません!」
それでも三蔵様は立ち上がりナタクさんを睨む。
そんな三蔵様にナタクさんは、
「貴様…人間風情が俺に指図をするな!」
《ぐぅ!》
ナタクさんの発した覇気の重圧に三蔵様が膝を吹き飛ばしたのです。
「三蔵様!」
「三蔵はん!」
三蔵様に攻撃を与えられて私達も目の色がかわる。
「さっきから聞いていれば、お前達が用があるのは俺様だろ!三蔵に手を出すんじゃねぇー!」
私達が倒れた三蔵様に駆け寄ろうとした時、目の前に巨霊神さんが立ち塞がったのです。
「んな!」
「あっ!」
「クッ!」
すると巨霊神は持っていた巨大な斧を私達目掛けて振り払って来たのでした。
「邪魔をするなぁー!そこを退けぇー!」
私達は三蔵様に攻撃を与えられ、ブチキレていました。
巨霊神の斧の攻撃を紙一重で躱したのです。
それも先の牛角魔王さんとの戦いで、この手の攻撃に慣れていたからかもしれません。
「ん?なんと!馬鹿な?孫悟空だけならまだしも、他の二匹まで私の斧を躱したと?」
「オラ達を舐めるならぁー!」
「私達だって三蔵様の弟子なんですよ!」
わたしと八戒兄貴の妖力が高まる。
(ほんの僅かだが、こいつ達もレベルが上がっているようだ。やはり、あの噂は本当なのか?)
私達の力の上昇にナタクさんは私達の前から消えたかと思うと、倒れている三蔵様の胸倉を掴み持ち上げたのです。そのままナタクさん…
いえ!事もあろうにナタクは動けない三蔵様に向かって、胸元に気弾を放とうと掌を翳したのでした。
「ヤァメェローー!」
私達はナタク目掛けて突っ込んだのでした。
そこに、再び巨霊神が道を塞いだのです。
「ここから先はいかせ…」
私達は巨霊神が台詞を言い終わるより先に攻撃を仕掛けたのです。
八戒兄貴が巨霊神の顔面を蹴り上げ、同時に私が足元からスライディングで入り込み、後ろから足腿を蹴り揺らいだ所を孫悟空兄貴が巨霊神の懐向けて気功を放ったのでした!
「ぬぅおおお!」
私達の連携攻撃に吹き飛ばされる巨霊神。
そのまま孫悟空兄貴は閃光の如きスピードでナタクの腕を払い、すかさず三蔵様を救出したのです。
私達も三蔵様を守るように周りを囲みました。
「…………」
再び立ち上がろうとする巨霊神は、
「こやつ達!ナタク様にご無礼な!許さぬ!」
「アハハ!巨霊神よ!油断したな?アハハ!」
「申し訳ありませぬ!しかし、今度は…」
「いや!これから先は俺が出る!」
「そんな!ナタク様が出るまでもありませぬ!」
ナタクは孫悟空兄貴に払われた手を見つめ、
「二度は言わない…俺に任せろ!」
巨霊神はナタク様の冷たい気迫に逆らえずに、ナタクの後ろに控えたのでした。
こちらを見ているナタクに対して、こちらも孫悟空兄貴が前に出る。
「てめぇは死なす!豚!河童!お前達はしっかり三蔵を守ってろ!」
「分かったらよ!」
「孫悟空兄貴!負けないで下さいね!」
孫悟空兄貴はナタクを睨みつけて中指を立てた後、そのまま指差したのです。
「さぁ…俺様の前にひざまずけーー!」
対してナタクは、持っていた刀を鞘からゆっくりと抜き、
「ふっ…」
ナタクは改めて名乗ったのです。
『我が名は中壇元帥ナタク!聖天大聖・孫悟空。お前を討伐する!』
突如襲来した天界の武神ナタクと巨霊神。
今、私の目の前で孫悟空兄貴と闘神ナタクが対決する!
次回予告
孫悟空「ナタクだか堕落だか知らねえが、俺様がぶん殴るぜ!」
ナタク「ふん!身の程知らずが、貴様と俺の力の差を見せつけてやろう!」
「ちょちょちょ!ちょっと待て!次話は俺様が登場するんだぜ!」
沙悟浄「えっ?今のは誰ですかね?」




