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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
転生記~始まりの伝説編~
51/424

銀髪の少年の闇!三蔵の力の代償!?

暴走した孫悟空を元に戻すため、三蔵は禁じられていた明王変化を行った。


私…沙悟浄です。

どうしたら…


私が見上げる頭上では三蔵様と暴走した孫悟空兄貴との衝突時に出来た黒と金色の混ざった気が渦を巻きながら出来た球体が浮かんでいるのです。

その球体から凄まじい気の放電が大地を削り、荒ぶるオーラの渦が一帯を破壊していく。

恐らく、あの中に三蔵様と孫悟空兄貴がいるはずなんです。


私はと言うと、傷付いた八戒兄貴を抱えて、その場から離れていたのです。



確かに三蔵様は球体の中にいたのです。

しかも二人の魂がぶつかり合った影響なのか?

三蔵様は孫悟空兄貴の精神[魂]の中にいたのです。


「ここは…猿の精神[魂]の中か?」


中は外界とは違い、まるで靄の中の一本道を歩いているような感覚の中で、三蔵様は孫悟空兄貴の意識の本体を探して進んでいたのです。


「猿!猿!何処だぁ?サルー!」



すると、三蔵様の声に反応してか?突如視界を遮る程の黒いオーラが立ち込め、行く手を妨げるかのように衝撃波が三蔵様を襲ったのです。


「かくれんぼのつもりか?だったら引きずり出してやるまでだぁ!」


三蔵様は印を結びながら、ゆっくりと前に進む。

すると衝撃波は三蔵様の目の前で真っ二つに裂かれたのです。

三蔵様は自分へと向けられた濁流の如き荒ぶる覇気を外へ逃がすように流していく。


「奥から猿の魂を感じるな」


三蔵様は更に奥へと進んで行くと、そこには黒いオーラの塊が浮かんでいたのです。

すると奥から三蔵様目掛けて、無数の黒い矢が飛んで来たのです!


「せぇい!」


三蔵様は右手より出現させた降魔の剣の一振りで、飛んで来た黒い矢を全て弾き落としたのです。

球体に力付くに連れその矢の攻撃力が更に威力も速さも激しくなりましたが、三蔵様は足を止めずに全ての矢を常人離れした動きで捌いていたのです。

そんな状況でも一歩一歩と黒い球体に向かって足を進めたのでした。


「後、少し…後少しだ…待ってろよ!そ…孫悟空」



黒い矢が三蔵様の衣を切り裂いていく。

致命傷は免れてはいますが、切り刻まれた箇所から垂れ落ちる血。

三蔵様の身体は次第に傷だらけになっていたのです。


「!!」


すると三蔵様の目の前に孫悟空兄貴が?

一人、また一人と三蔵様を囲むように何体もの孫悟空兄貴が現れ、三蔵様に向かって襲い掛かって来たのです。三蔵様は瞳を綴じて覇気を纏うと、その身体が金色に輝いて明王化したのです。


『火ァアアアアア!』


向かって来た無数の孫悟空兄貴達に向かって、金色の炎を放ったのです。

飲み込まれるように消えていく孫悟空兄貴の分身達。



「いい加減にしろぉー!俺が直々に来てやったんだ!そろそろ顔を出しやがれぇー!」



三蔵様は襲い掛かって来る孫悟空兄貴達を薙ぎ倒しながら叫ぶ!

そして全ての孫悟空兄貴を倒した後、三蔵様の金色の光が消えて元の姿に戻っていく。

同時に何処からか声が響き渡って聞こえて来たのです。

それは?


「ヤメロ…サンゾ…クルナ!」

「キタラコロス…コロス…チカヨルナ」

「サンゾ…テヲダスナ…アブネェ」

「ジャマ…スルモノハ…ケス!」

「ヤメロ!…サセナイ!」



「これは?孫悟空の声なのか?それに…もう一人??」


それは孫悟空兄貴が誰かと言い合いをしているようにも聞こえたそうです。



「サンゾ…ニゲロ…オレサマ…トメテル…アイダニ」



「猿!猿なのかぁ!?何処だ?何処にいるのだぁー!」



三蔵様は再び前方へと目をやりました。

そこには、どす黒いオーラに覆われた球体の塊が浮いていたのです。


「やはり、あそこか?セィリャア!」



三蔵様は黒い塊にまで飛び上がると、その球体に手を翳す。すると塊から三蔵様を撥ね退けようと、噴き出すように放たれる凄まじい力が暴発したのです。暴れ狂う力を抑えつけるように三蔵様は念を送り続けると先程まで攻撃的だった塊から放たれていた力が大人しくなっていく。


(ふぅーーーー!)



三蔵様は黒い塊に手を翳したまま、意識を黒い塊に集中させる。

すると、塊の中から再び声が聞こえて来たのです。



「ヤツヲ…コロセ…」

「ヤツ…トハ?」

「ワカラナイ…ワカラナイ…オモイダセナイ…ヤツハ…ナニモカモ…ウバッタ……ナニモカモ…ウシナッタ…タイセツナ…タイセツナ…ニクイ…ニクイ…ユルサナイ…コロス…コロス…コノテ…デ……フクシュウ…スル…」



その声は確かに孫悟空兄貴でした。

しかしもう片方の相手は誰なのでしょう?


「この声…猿だけのものでないな?この声の主は何者なのだ?」



すると再び声が?


「フクシュウ…オレサマ……チカラニナルカラ…オレサマ……オレサマ…シンジロ!…オマエ…オレサマ…シンジロ……ダカラ、サンゾニテヲダスナ!」



「これは猿か?間違いない!お前は誰と話をしているのだ?」



更に三蔵様は塊の中から声がする方向へと、意識を飛ばしたのでした。


「ジャマ…スルナ…」

「シンジロ…オレサマヲ」



すると、その二人を覆う闇が次第に温かい光に照らされ始めたのです。



「コレハ?」

「コノヒカリ…サンゾ?」


温かい光の中から三蔵様が現れたのです。

すると三蔵様は声の主に向かって語りかけたのでした。



「そうか…やはりお前だったのか?」


「オマエハ?」


「俺の名は三蔵…お前は?」


「ワカラナイ…ジブン…ダレナノカ?タダ、ワカルコトガヒトツダケアル…ジブンガ…フクシュウシャダト!」


「復讐者だと?」


「ソウダ!ダカラ、ジャマスルナ!」


「お前の存在には薄々気付いてはいた。だが、今まで何もしてやれなかった…すまなかったな?」


「キヅイテ…イタダト?」






遡る事、それはかつて孫悟空兄貴の魂が地獄に引き込まれた時に、三蔵様が地獄の底まで救い出しに行った時の話です。

そこでも孫悟空兄貴は暴走し、三蔵様は荒ぶる孫悟空兄貴の魂を命懸けで鎮めたのでした。


「もう、良い!しっかりしろ!孫悟空!もう、良いんだぁ!お前の闇は俺が受け止めてやる!」


暴走した孫悟空兄貴の魂から強烈な光りが放たれ、次第に人の姿へと変わっていく…


「こ…コイツが…猿?この姿が…本来の孫悟空の姿なのか?」


それは、三蔵様が知る子猿の孫悟空兄貴の姿ではなく金色の髪の人間の少年の姿だったのです。。

さらにそこには!?


「ん?これは一体どういう事だ?」


そこにはもう一人?孫悟空兄貴と一緒に銀髪の褐色の少年の姿があったのです。


「孫悟空が二人だと??」


二人の孫悟空兄貴の魂の存在に、三蔵様は驚きを隠せなかったのでした。


(ウッ!力が…残り少ない…)


そこで三蔵様は力尽き意識を失うと同時に、地獄から抜け出したのでした。







地獄での出来事を鮮明に思い出した三蔵様は、


「そうか…お前はあの時の?やはり夢ではなかったのだな?」



今、三蔵様の目の前には孫悟空兄貴と、

地獄で見た兄貴に似た銀髪で褐色の少年が立っていたのです。


「三蔵!!」


「孫悟空、連れ戻しに来てやったぞ?」


けれど、もう一人の孫悟空兄貴は拒否したのです。


「僕の邪魔をする者は消す!」


「怖い事を言うな?俺がお前を救ってやると言っているのだぞ?」


「救う?僕を?お前が?どうやって?」


「俺なら出来る!俺がお前の闇を消し去ってやる!」


「お前が…僕の闇を消すだと?」


「そうだ!お前の望みは何だ?」


「僕の望みは…ノゾミ…?」



すると銀髪の少年が頭を抑え苦しみ出し、もがき、その身体が隣にいた孫悟空兄貴をも巻き込みながら吸収し、再びどす黒い気に包まれて闇に染まっていく。

復讐?憎悪?凄まじい怨念を纏った闇に染まっていく。


「ウガアーー!」


銀髪の孫悟空兄貴はその黒い気に覆われると、

その瞳は真っ赤に充血し、殺気混じりに血走っていたのです。


「キエロ…キエロ…キエロォーーー!」


すると、銀髪の孫悟空兄貴の身体から炎がほとばしる!

しかも、その炎の色は黒い炎?

深い闇に覆われた地獄の炎だったのです。



三蔵様は再び印を結ぶと、その姿が不動明王の化身へと変わる。

そして業火を放ったのです。


「!?」


しかし、三蔵様の放った不動明王の業火は、銀髪の孫悟空兄貴の黒い炎に飲み込まれていったのです?


「ここに来て地獄の炎とはな…」


「地獄の炎はお前の炎ごと、この世の全てを蝕むように消し去る!一歩でも近付けばお前も……!?」


しかし三蔵様は地獄の炎に怯む事なく、再び新たな真言を唱え始めたのです。

その真言とは!?



『ナウマク・サマンダ・ボダナン・エンマヤ・ソワカ!』



真言を唱えると三蔵様の姿が不動明王の化身から、更なる別の神の姿へと変わっていく。

緑色の肌に漆黒の鎧を纏い、血のような真っ赤な衣がまとわりついていたのです。

そして黒い炎の中を三蔵様は怯む事なく、銀髪の孫悟空兄貴に向かって歩いて行く。



「馬鹿な!?どうしてお前は地獄の炎の中を平気でいられるんだ!身体だけじゃない…その炎は魂すら蝕む地獄の炎なのに!」


「魂を蝕む炎か…俺の魂はもう蝕まれているのさ…地獄にな!俺もまたお前同様、地獄から舞い戻って来たからかもな?」


「!!」



三蔵様の異様な存在感に、微動だに出来ないでいる銀髪の孫悟空兄貴の正面に迫る。

三蔵様はゆっくりと拳を振り上げると、咄嗟に瞳を綴じて怯む銀髪の孫悟空兄貴の頭に掌を置き、



『鎮まれ!荒ぶる魂よ!オン・カカカ・ビサンマエイ・ソワカ!』



新たな真言を唱えたのです。

そして三蔵様の姿が再び変わっていったのです。


その姿はまるで菩薩様の様な優しい光に包まれた神…いえ?

仏神様の姿に変わっていたのでした。


『地蔵菩薩』の化身へと?



「鎮めよ…鎮めよ…お前の荒ぶる魂!」



すると銀髪の孫悟空兄貴の身体から燃え盛っていた黒い炎がは弱まり、そこには…

銀髪の少年が三蔵様に抱きしめられていたのです。


「離せ…離せ…はな…」



銀髪の少年の目には涙が零れていました。


「僕は…どうしたら?僕には出来ない…この怒りを…悲しみを…憎しみを抑える事なんて…この荒ぶる魂を抑える事なんか僕には出来ない!僕は復讐を果たさなければならないんだぁー!」


涙を流し三蔵様の胸の中で喚く銀髪の少年に対して、



「なら!俺が抑えてやる!お前の闇も全て俺が受け止めてやる!」


「無理だ…無理に決まっている…無理に…」


「勝手に無理と決め付けるな!それに、やる前に諦める奴が復讐だと?矛盾だぞ?やれるかどうかは、これからお前の進む道しだいだ!」


「でも僕には無理だ…僕にはどうする事も出来ない…僕の闇は…破壊を求めている!復讐だけが僕の存在意義なんだ!」


「憎しみも悲しみも、怒りも復讐心も捨て去る事はない!」


「えっ?」


「その力をもお前の力とするのだ!だが、忘れるなよ?」


「何を?」


「その力はお前の復讐心を刃とすると同時に、お前の愛する者、守らねばならぬ者達をも焼き尽くす諸刃の剣だと言う事をな!」


「!?」


「お前のその力は何のためにあるかを考えるのだ!その答えはお前になら分かるはずだぞ?」


「分からない…僕は全て失った…何もない…僕には守る者も愛する者も何もない。唯一僕は復讐者である事…」


「そう諦めるな?直にお前の前に現れるさ…」


「えっ?何を言って?」


「予言しよう!その者は近いうちにお前の前に現れる。これは間違いない!そう遠くない未来にな?」


「お前に何が分かると…」



その時、三蔵様は銀髪の孫悟空兄貴の耳元で何かを囁いたのでした。


「!!」



三蔵様は軽く頷くと、


「それは本当なのですか?それが本当なら…僕は…」


「よし!決めたぞ!お前も俺達と共に来い!俺がお前の魂を救ってやる!」


「僕を救う?」


「あぁ!俺を信じろ!(多分)」



すると銀髪の少年は軽く微笑んだ後、


「ふふふ…貴方は不思議な人だ…不思議と何かを期待してしまうよ…でも、僕は少し…疲れた……また、少し…眠る…よ…」



次第に銀髪の少年の姿がボヤけだす。


「うむ。お前が再び目覚めた時、共に旅をしよう」


「旅か」


見ると三蔵様の目の前には銀髪の少年の姿が消えて、孫悟空兄貴が一人立っていたのでした。


「三蔵…迷惑かけたようだな…あ…ありがとうよ…」


「ふん!お前が礼を言うとは珍しいな?」


「思い出したんだ…あいつは…俺様にとって…大切な…」




涙ぐむ孫悟空兄貴の頭を撫でて抱き寄せる三蔵様。

同時に沈黙が辺り一面を覆い、三蔵様の姿も孫悟空兄貴の姿も消えていく…


どのくらい時が経ったのでしょうか?

先程まで荒れ狂う台風のようだった私達のいた場所は、静まり返っていました。


「う…うんん…」



孫悟空兄貴は無事に目が覚めたのです。

私と運良く瀕死状態から生還出来た八戒兄貴は、孫悟空兄貴に抱き着いたのでした。



「へへへ…何かお前達にも、迷惑をかけたようだな…」


「かけすぎですよ~!」


「まったくらよ!」



そして…


「猿よ…どうやら無事のようだな?」


三蔵様も身体を起こしてこちらを見ていたのでした。


「え…?」




えっ?三蔵様?

私達はその時気がついたのです!




目覚めた三蔵様の変わり果てた変貌に。

長年にも鍛えぬいてきたはずの三蔵様の身体が変わり果てたように衰え、三蔵様の黒かった長髪が、真っ白になっていたのです。さらにその目の光が消え…視力を失っていたのでした。


「あ…あ…三蔵…!」



孫悟空兄貴は三蔵様に駆け寄りました。


「そうか…どうやら俺は視力を失ったようだな…」


「アッ!アッ!アッ!アッ!…サァンゾー!」



孫悟空兄貴は天にも届くような、悲痛の叫びをあげたのでした。

自分のせいで三蔵様の視力が?

身体が?

これは孫悟空兄貴を助けるために明王との『合身』をおこなった事への代償…



「俺様のせいで…俺様のせいで!」


泣きじゃくる孫悟空兄貴に、三蔵様は兄貴の頭に手を置く。


「お前を取り戻した代償が、これだけなら安いもんだろ?気にするな猿よ!俺は…お前を…」




そこで、三蔵様は気を失いました。




(俺は、お前を取り戻せただけで満足なのだぞ?

俺は・・・二度も友を失わずにすんだのだからな)






私達の旅は…


ここで終わるのでしょうか?



転生記【中前】完


次回予告


沙悟浄「えっ?もしかして最終話だったのですか?」


孫悟空「馬鹿を言うな!三蔵をこのままにしていられるかよ!」


沙悟浄「そうですね!それに・・・」


孫悟空「何か知ってるのか?」


沙悟浄「実は・・・」


孫悟空「実は?」


沙悟浄「この話までが第二部で、次話から第三部なのですよ~。しかも物語は牛角魔王さんに絡むらしいですよ」


孫悟空「ちょっと待て!俺様は三蔵の事をだな・・・」


沙悟浄「しかも!これから私達を巻き込む状況は、今までになく過酷にて波乱な事になっていくのです!」


孫悟空「いや・・・だから~俺様の話を聞いてる?」


沙悟浄「それに例の天界からの刺客に、先ほども話した牛角魔王さんの因縁の過去と、新たな最強最悪のとてつもない敵の存在!もう見どころ満載で目が離せませ~~~~~~(ボコ!)」


孫悟空「無視すると殴るぞ!コラ~!!(もう、殴ったけど)」




孫悟空「とにかく!三蔵を元に戻すために、俺様ギリギリ全開飛び越えて更にスケールアップして、どんな強敵が向かって来ようともぶん殴り戦い抜くから応援してくれよな!」

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