五大明王変化再び??三蔵の決断!
旅の最中、まさかの孫悟空の暴走!三蔵達は孫悟空の正気を取り戻す事が出来るのだろうか?
はい!沙悟浄です!
突然暴走した孫悟空兄貴は、銀髪、褐色の姿の異形の『者』へと変貌させたのでした。
そして、その『者』からは凄まじい『憎悪』の覇気が伝わって来たのです。
「…ジャマ…ヲ…スルナ…ジャマ…ヲ…スルナ…」
口から発する言葉は怨念のような破壊衝動ばかり。
まともに私達と話を出来る状態ではありませんでした。
孫悟空兄貴であった『者』は、今までの荒れ狂う妖気は消えたものの、
冷たく…何か鳥肌の立つ…そんな近寄りがたい…異色の妖気?を纏っていたのです。
「さ…猿…」
「な…何か…あの兄貴、とても怖いですよ…」
「本当に猿なんらか?」
「ああ…間違いはないだろう。だが…」
すると、孫悟空兄貴は私達を無視するかのように、ゆっくりと歩き出したのです。
「お前達!猿を行かせてはダメだ!」
私達は歩き出した孫悟空兄貴を止めるべく、妖気の壁を作り動きを止めに入る。
しかし、孫悟空兄貴は私達の妖気の壁をもろともせずに歩みを止めなかったのです。
「うぐぅ~!全然ダメですぅ~!」
「力に差がありすぎるらぁ!」
そこに!
孫悟空兄貴の歩む先を三蔵様が道を塞いだのでした。
「これ以上は行かせん!」
孫悟空兄貴と三蔵様が対峙する。
「ドケ…ボクニ…カカワルナ……サモナクバ…キサマ…コロス…」
「そうはいかん!俺はお前を取り戻す」
すると、孫悟空兄貴は黒い妖気を纏った手刀を三蔵様に向けて突き出して来たのでした。
『グシャア!』
鈍い音が聞こえた!?
見ると、孫悟空兄貴の手刀から血が垂れ落ちていたのです。
その手は…確かに腹部を貫いていたのでした。
「グゥ…」
それは、八戒兄貴?
八戒兄貴は孫悟空兄貴が三蔵様に手刀を突き出した瞬間に、三蔵様を庇うように飛び出していたのでした。そして三蔵様の身代わりになって、孫悟空兄貴に腹部を貫かれていたのです!
「八戒!」
「グッハァー!」
八戒兄貴は血まみれになりながらも、孫悟空兄貴の肩を掴みながら叫び説得したのです。
「グゥ…さ…猿!…お前…何をやってるらよ?相手が誰か分かっているらか?三蔵はんらぞ?三蔵はんなんらぞ!お前らしくないらよ…三蔵はんに手をあげるなんて…猿らしくないらよぉ!」
八戒兄貴は涙を流し、痛みに耐えながら孫悟空兄貴に向かって訴えていたのでした。
しかし…
「ウルサイ…キエロ!」
孫悟空兄貴の妖気が更に高まり、突き刺した手刀に妖気が集中しだしたのです。
このままだと、八戒兄貴は木っ端みじんになってしまうじゃないですかぁ!?
「止めてください!孫悟空兄貴!八戒兄貴を殺すつもりですかぁー!!」
そこに!
「させるかぁー!」
三蔵様は咄嗟に八戒兄貴と孫悟空兄貴の間に入り込み、二人を強引に突き離したのでした。
八戒兄貴は後方に転がり倒れ込み、身体は痙攣し、腹部から大量の出血を流していました。
「沙悟浄!急ぎ八戒の治癒をするのだ!」
「はっ!はい!」
三蔵様は私に素早く指示をしたのです。
私は急ぎ八戒兄貴に駆け寄り治癒を始めました。
(ヤバいです…身体が崩壊しかけています…)
もともと再生力の強い八戒兄貴がここまで酷い状態になっているという事は体内に相当の破壊の気を注ぎ込まれたのでしょう。
もし、三蔵様の判断が後少しでも遅れていたら、八戒兄貴は間違いなく…
「孫悟空兄貴…本気で…」
(殺すつもりだったのですか?)
私は信じられない現状に涙が溢れだしました。
「沙悟浄…心配するな!猿は俺がもとに戻してやるからな!」
(えっ?)
三蔵様は私の不安を一瞬で消し去ってくれたのです。
三蔵様の言葉に、三蔵様なら何とかしてくれる!孫悟空兄貴を元に戻してくれる!
と、安心を抱いたたと同時に三蔵様の背中を見て何か別に、とてつもなく恐くなったのです。
何か嫌な事が起きる嫌な予感が?
孫悟空兄貴は三蔵様にも八戒兄貴の状態にも無関心でいたのです。
「猿よ!いい加減にしやがぁれぇ!」
「ボクニ…カカワル…オマエ…ケスゾ?…ドケ…ボクニハ…ムカウバショ…アル!ジャマハ…スルナ…」
「悪いが、お前は俺の所有物だ!勝手な真似はさせん!もしそれでも逆らうと言うなら…」
そう言うと三蔵様の背から炎が噴き出して、
「力付くで従わせるのみ!」
再び『不動明王』が出現したのです。
「猿よ!力ずくでお前を元に戻す!」
孫悟空兄貴はただ無言で、三蔵様に向かい妖気の波動を放ったのです。
三蔵様は杓杖を燃え盛る炎の剣【降魔の剣】に変化させ向かって来た妖気の波動を防ぐ。
「ぐぉおおお!」
孫悟空兄貴の波動が更に膨れ上がっていく中、三蔵様も波動の波に押されまいと、更に力を上げていく。
「ウググ!仕方あるまい!」
三蔵様は降魔の剣を正面に構えながら真言を唱える。
「ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!」
『明王変化唯我独尊・不動変化!』
不動明王が三蔵様の身体と重なり、三蔵様の身体が燃え盛る魔神、
不動明王の化身へと変わったのです。
「さあ…お前の闇も、俺の業火で焼き尽くしてやるぞ!」
抗う三蔵様に孫悟空兄貴は感情が溢れだし、
「ナンダ…オマエ……ナンダ…オマエ…ナンナンダ…オマエハァー!!!
ボクノ…ジャマ…スルナァー!」
同時に身体から黒い気が高まり、三蔵様に向かって襲い掛かって来たのです。
「三蔵様!」
「沙悟浄!お前は治癒に専念しろ!八戒を絶対に死なすなよ?だから猿の事は俺に任せろ!良いな?」
「はっ…はい!」
私は八戒兄貴に治癒に集中しました。
すると八戒兄貴も意識を失いながら涙を流している事に気がついたのです。
八戒兄貴も戦っているのですね?
私は、私の出来る事をしなくては!
孫悟空兄貴と三蔵様が対峙している中、
私に与えられた唯一の仕事は瀕死状態の八戒兄貴を助ける事!
私は私に出来る事を確実にやるだけです!
八戒兄貴は絶対に死なせたりはしませんから!
だから、三蔵様。
孫悟空兄貴をお願い致します。
そして三蔵様も御無事で…
三蔵様は空中に飛び上がると、孫悟空兄貴もまた飛び上がった三蔵様を追うように飛び上がっていく。
同時に空中で二人がぶつかり合い、激闘を繰り広げ始めたのです。
孫悟空兄貴が三蔵様に向ける攻撃には殺意が込められていました。
その攻撃は当たれば間違いなく致命傷!
確実に命を持っていかれるでしょう。
それに引き換え三蔵様は、孫悟空兄貴を止める事のみに専念をしていました。
「はぁ…はぁはぁ…」
次第に息が上がっていく。
しかし、その集中力は更に研ぎ澄まされていたのです!
三蔵様は紙一重で孫悟空兄貴の攻撃を躱しながら、孫悟空兄貴に向かっていく。
「コロス…コロス…コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス」
怨念の言葉を発するかのように殺すを連呼する孫悟空兄貴。
そして、孫悟空兄貴の突き出した手刀が三蔵様の首を掴み上げたのです。
「グハァ!」
孫悟空兄貴の手刀に黒い気が集中し殺意がこもり、三蔵様の首元目掛けて手刀を突き出したのでした!
「オワリダ」
が…その突き出された手刀は、三蔵様により掴み止められたのです。
「ようやく捕まえたぞ!」
ニヤリと笑った三蔵様は再び真言を唱え始めたのです。
しかも五種の真言を!
『オン・ソンバ・ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・パッタ』
『オン・アミリティ・ウン・ハッタ』
『オン・シュチリ・キャラロハ・ウン・ケン・ソワカ』
『オン・バザラ・ヤキシャ・ウン』
『ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!』
神々しい光が三蔵様を包み込み、三蔵様の背後に現れた神の姿は、
降三世明王!
軍茶利明王!
大威徳明王!
金剛夜叉明王!
そして、不動明王の姿だったのです!
五体の明王は三蔵様の身体に取り込まれて行き、
「五大明王合身!唯我独尊!」
三蔵様は以前金蝉子との生死をかけた激闘時に一度使った力…
太白金星仙人様に禁じられし、五体の神との合身を行ったのでした。
三蔵様の御姿は真っ黒なオーラに包まれた孫悟空兄貴とは対称的に、全身金色のオーラに包まれた光り輝く雄姿でした。
三蔵様は自分の首に掴まれた孫悟空兄貴のもう片方の手をも掴み上げる。
「これで面と向かって話せるな?」
「ウギギィ…ガガガ…ハナ…ハナセ…ハナセ!」
「絶対に離さん!お前は俺のもんだぁーー!」
とてつもない神気の渦が、二人を覆い隠したのでした。
次回予告
沙悟浄「三蔵様?あの孫悟空兄貴の変化は一体何なんでしょうか?」
三蔵「それは次の話で分かるはずだ」
沙悟浄「三蔵様?三蔵様も大丈夫なのですか?無茶し過ぎじゃないですか?」
三蔵「それも次の話で分かる!」
沙悟浄「三蔵様?」
三蔵「お前?質問は良いが、八戒の治癒は良いのか?」
沙悟浄「えっ?あぁああああああああ!忘れてました~」
八戒(・・・おい!)




