後は頼むぜ?魔王対決!孫悟空と牛角魔王!
牛角魔王の住む火炎城にて三蔵一行は厄介になる事になったのだが、皆が寝静まった頃、孫悟空と牛角魔王との間で何やら深刻な状態になっていたのだ。
はい!私は沙悟浄です!
今、私はとんでもない現場にいました。
孫悟空兄貴と牛角魔王さんとの間の空気が悪くなり、睨み合いながらお互い立ち上がったのです。
私は部屋の扉の外から隠れつつ、ただオロオロするしかありませんでした。
すると、牛角魔王さんは三蔵様のいる方向に向かおうとしたのです。
「おい!何をする気だ!?」
「ふっ…知れた事だ…」
「……!」
牛角魔王さんが孫悟空兄貴を見下ろし、孫悟空兄貴が牛角魔王さんを見上げ睨み付けています。
それはまさに一触即発の状態でした。
空間が歪み、二人の妖気がぶつかり合い、押し潰されたかのように置いてあった銀のコップがひしゃげ、弾けたのでした。
もう、何も言う必要はなかったのです。
それが戦いの合図になったのです。
「獣王変化唯我独尊!」
牛角魔王さんの身体は再び黒い牛頭の妖怪の姿へと変化したのです。
そして壁に掛けていた斧を手に取り持ち上げると、孫悟空兄貴に向かって振り下ろしたのでした。
それは物凄い轟音で床を砕き孫悟空兄貴を襲う。
孫悟空兄貴は身軽な動きで斧を躱しながら如意棒を抜き、牛角魔王さんの身体に打撃したのでした。
しかし攻撃は命中したものの、牛角魔王さんの身体にはかすり傷一つ付かなかったのです。
「くそ!転生変化しかないぜ!」
『転生変化唯我独尊!』
孫悟空兄貴は印を結び身体中の気を集中させる。
しかし、孫悟空兄貴の姿は猿の姿のまま何の変化もなかったのです。
「くそ!まだ自由には変化出来ないか?だったら!」
『獣王変化唯我独尊!』
孫悟空兄貴の身体は次第に巨大化し、鎧を纏った金色の大猿へと変化したのです。
『ウグオオオオオオ!』
雄叫びと共に孫悟空兄貴は空を飛ぶ雲[金斗雲]を呼び出して、乗り上がったのでした。
「牛角!付いて来い!」
そう言うと天井をぶち壊し飛んで行き、牛角魔王さんもまた灰色の雲[灰斗雲]を呼び、大猿と化した孫悟空兄貴を追って外に飛んで行ったのでした。
私は取り残され、腰を抜かしながら一人へたりこんでいました。
そこで我に返った私は立ち上がったのです。
「ハッ!三蔵様と八戒兄貴を起こさないと!」
私は眠っている二人を起こしに行き、今あった出来事を全部説明したのでした。
「こうしてはいられないな…」
「ナヌ?まさか、あんな化け物と戦うんじゃないらか?無理らよ!」
「無理か…確かに奴の力は尋常じゃない。だが、猿を放ってはおけまい!」
その頃、燃え盛る火炎山の山頂では雲に乗った二人が空中戦を繰り広げていたのでした。
「うぐおおお!」
「弱いな!孫悟空よ!」
孫悟空兄貴の攻撃は全て牛角魔王さんの斧により弾き返されてしまうのです。
「しゃらくせぇー!」
再び激突する二人…
「本当に腑抜けになったようだな?これがかつて俺達を率いた六大妖魔王のリーダーの成れの果てなのか?不様だな!」
「何だと!」
「ならば、もう少し本気にさせてやろうか?」
「?」
そこに丁度、私達が火炎山の出口から抜け出て来たのでした。
「無事か!猿!」
出て来た私達に気付いた孫悟空兄貴は、
「三蔵?ハッ!まさか!!」
孫悟空兄貴が牛角魔王さんの方向を振り向くと、既に巨大な妖気弾を作り上げていたのです。そして、その巨大な妖気の弾丸を火炎山から出て来たばかりの私達と三蔵様目掛けて放ったのでした。
「うぉりゃあ!」
唸りをあげて妖気弾が私達に迫って来る。
「うわあああ!」
その時、私達の前に人影が庇うように飛び出して来たのです。
それは!
孫悟空兄貴!?
孫悟空兄貴の身体は光り輝きながら、その姿を変えていく。
見る見る孫悟空兄貴の姿は金色の大猿の姿から、金髪の少年の姿へと・・・!?
『転生変化唯我独尊!』
孫悟空兄貴はついに本来の姿へと転生変化したのでした。金色に輝く少年と化した孫悟空兄貴は牛角魔王さんの妖気弾を両手で受け止めると、それを牛角魔王さんに向かって投げ返したのです。
「牛角!本当の戦いはこれからだぜぇ!」
孫悟空兄貴は再び金斗雲に乗り、牛角魔王さんに向かって行ったのでした。
「その姿…紛れも無い!まさしく美猴王!」
「何度も言うが、俺様は孫悟空ダァーッ!」
孫悟空兄貴は振り下ろして来た牛角魔王さんの斧を拳で砕き、牛角魔王さんは使い物にならなくなった斧を投げ捨てる。そして、お互い拳で殴り合う激闘が始まったのでした。
「まだまだだな!昔の半分以下だぞ?孫悟空!」
「本番はこれからだ!いでよ!みぃちゃん!」
孫悟空兄貴の身体から雷を纏った猫が現れたのです。その名を『みぃちゃん』。みぃちゃんは孫悟空兄貴の頭にしがみつくと、孫悟空兄貴の身体から雷が発生し、両腕・両足に雷の気を纏ったのです。
同時に孫悟空兄貴のスピードが加速する。
「スピードを上げてどうするつもりだ?」
「まだまだ!いでよ!ノソッ!ニョロ!ぴょちゃん!」
更に亀、蛇、ヒヨコが孫悟空兄貴の身体から現れたのです。
ここで四聖獣について説明しますね?
最初に雷の聖獣みゃちゃんは猫の聖獣で、孫悟空兄貴の雷の魔力を高め駿足を与えるのです。
次に炎の聖獣ぴよちゃんはヒヨコの聖獣です。
孫悟空兄貴の炎の魔力を高め、一撃の破壊力を上げるのです。
水の聖獣ニョロは蛇の聖獣で、孫悟空兄貴に水の魔力を与えるだけでなく、孫悟空兄貴の武器[如意棒]や鎧の形を変化させたり、攻撃防御の強度を上げたりします。
最後に風の聖獣ノソは亀の聖獣。風を操るだけでなく、孫悟空兄貴の周りに見えない風の盾を作り防御を上げるのです。
この四聖獣全召喚が孫悟空兄貴の持つ最大の形態なのでした。
「牛角!泣いて謝るなら今のうちだぜぇ!」
「今のお前の全力!試させてもらうぞ!」
二人の力がぶつかり合い、孫悟空兄貴の炎が牛角魔王さんに絡みつく。が、牛角魔王さんの妖気の圧で炎を打ち消されたのです。さらに孫悟空兄貴が妖破弾を無数に放つが、牛角魔王さんは避ける事なく孫悟空兄貴に直接突進してきたのです。
孫悟空兄貴は風の防御と雷のスピードで何とか凌いでいるようですが押されている様子。
「やっぱり、ツエーぜ!」
「泣き言か?」
「しゃらくせぇぜ!ウグオーー!」
孫悟空兄貴はありったけの妖気を高めると、水の聖獣が如意棒の形を剣へと変化させたのです。更に炎が剣に纏わり付き振り払うと、火の粉が四方八方に散り炎の剣へと変わっていく。
『必技!業火剣乱!』
※ゴウカケンラン
散らばった炎の剣が孫悟空兄貴を中心に無数に現れ、一斉に牛角魔王さんに向かって襲い掛かったのでした。炎の剣は取り囲むように向かって来る牛角魔王さんにすべて命中したのです。
「どうだ!?」
「生温い技だ!ハァアアアア!」
炎の剣は牛角魔王さんに直撃する手前で消えていく?
それは牛角魔王さんから放たれた覇気でした。
「相変わらず化け物だな!」
「お前が弱くなっただけだ!」
孫悟空兄貴がありったけの技や攻撃を繰り出しても、牛角魔王さんには全く効かない?
しかし、孫悟空兄貴の目は諦めていなかったのです。
既に技という技もなく力任せに如意棒を叩きつけ、振り払い、他になす術がない状態なのに…
「もうダメら!」
「どうしましょ~!」
「ん?あの猿の目!?」
その時、三蔵様は孫悟空兄貴の変化に気付いたのです。
こんな窮地の状態で孫悟空兄貴は何か嬉しそうに笑みを見せていたのを!?
そう…戦いこそが本来孫悟空兄貴の性分であり本質…
自分よりも遥かに強い相手との戦いに、血沸き肉踊る状態が孫悟空兄貴の魂が荒ぶっているのです!
野生の血が目覚める!
本能!?
その目には冷酷な光りさえ見えていたのです。
次第に孫悟空兄貴の攻撃が鋭くなっていく!
「それで良い。絶体絶命の死線のやり取り、窮地の中で、本来の眠っていた野生の・・・いや?魔王としての血が目覚めて来たか!?」
「ヴオオオオオオオ!」
孫悟空兄貴の放った如意棒が牛魔王さんの顔を掠る??
「ふふふ…そのまま昔のお前に戻るのだ!残虐非情な魔王のお前にな!」
「ウッ!ガッ!ウガガガ!」
孫悟空兄貴の顔が邪悪な顔に変貌していく?
孫悟空兄貴の様子がおかしい?まさか?
ぼ…暴走?
もしかして、本当にこのまま昔の残虐非情な魔王に戻ってしまうのですか?
「ダメだ猿!それ以上はーー!」
三蔵様が制止するが、
「ガアーー!!」
孫悟空兄貴の咆哮が響き渡る。
その時、孫悟空兄貴の中で何かが吹っ切れたのです!
「孫悟空…貴様!」
牛角魔王が見たその孫悟空兄貴の顔は、
「へへぇ…やっぱりダメだ!俺様はもう昔の俺様じゃねぇからな!」
冷静な顔付きに戻っていたのでした。
「みすみす昔のお前に戻る機会を逃すか…死ぬぞ?」
「いや!俺様は死なんし、負けもしない!俺様は俺様の我が儘を貫くだけだ!そして勝つ!」
「ここで死ぬか?孫悟空よぉーー!」
その一部始終を見ていた私達は何か、このピンチの状況下で安堵みたいな感情を感じていたのでした。
孫悟空兄貴は孫悟空兄貴なのだと…
「孫悟空…お前」
すると孫悟空兄貴の声が私達の意識に直接聞こえて来たのです。
「豚!河童!三蔵を任せる!後は頼むぜ?」
「ナヌ?どうする気ら!」
「孫悟空の兄貴死ぬつもりですか!」
孫悟空兄貴の身体から業火が噴き出し、火だるまと化していく。
「行くぞ牛角!」
「受けて立つぞ孫悟空!」
孫悟空兄貴は燃え盛る弾丸となって、牛角魔王さんに向かって突進して行ったのです!
「バカめ!ここまで来て破れかぶれの突進か?」
牛角王さんは炎の弾丸と化して突進して来た孫悟空兄貴を振り払おうと…いや?これは分身!
気付くと孫悟空兄貴の本体が牛角魔王さんの懐にしがみついたのです。
「どうするつもりだ!?」
「こうするのさぁ!」
孫悟空兄貴から噴き出した炎が二人を包み込んでいく。牛角魔王さんは懐にしがみついた孫悟空兄貴を振り払おうとするが、孫悟空兄貴は離れない。
『闘中火葬!』
※トウチュウカソウ
孫悟空兄貴は牛角魔王にしがみつき抑えつけた状態で、火だるまとなりながら飛び上がったのです。
「うぐおおお!」
「このまま地面に叩きつけるつもりか?馬鹿か!例え叩きつけられても、この俺には大したダメージは与えられんぞ!?」
「牛角!俺様達が落下する場所をよく見てみろ!あそこが何処に繋がっているのか知らないとは言わせないぜ!」
「なに?」
そこは…
牛角魔王さんが住家にしている火炎山の炎は、雲を貫き天まで届くかの如く燃え盛っているのです。
この土地にはもともと大量の地下ガスが溜まっており、炎を絶やす事なく出し続けているからなのです。
孫悟空兄貴はその中心に向かって、牛角魔王さんと一緒に落下しようとしているのです。
「気でも狂ったか?この馬鹿者が!あそこに落ちれば俺達でも無事にはすまないぞ!?」
「ハハハハ!行くぜぇーー!」
二人は炎の矢の如く轟音とともに火炎山中心へと落下し、地面を貫いていったのでした。
そして…
「地面が揺れてますよ~!」
「くそ猿!何て無茶苦茶な事をするらよ!」
私と八戒兄貴は水術で壁を作り、三蔵様を囲む形で防御結解を張ったのでした。
「河童!気合い入れるら!」
「八戒兄貴こそ!」
三蔵様は陣形の中心で私達二人の力を補助する念を送りつつ…
「猿…死んだら許さんぞ…」
大地が裂け、
裂けた場所から熔岩が噴き出す。
そして轟音を立てて火炎山が噴火したのでした。
どのくらい経ったのでしょうか?
そこには、先程まで燃えていた山も何もかもが消し飛んでいたのでした。
そして、先程まで燃えていた山も大地も何もかもが静まり返っていたのです。
すると瓦礫が崩れ、誰かが瓦礫の中から抜け出して来る?
「イテテ…皆!大丈夫らか?」
同時に気を失っていた三蔵様も目を覚ましたのでした。
「うっ…」
頭を打ったらしく、まだ意識がハッキリとしていない様子。
「大丈夫らか?三蔵はん?」
八戒兄貴が三蔵様に近寄ろうとした時、足元に違和感を感じたのです。
見てみると何か得体の知れない者を踏み潰していたのでした。
「…お…重い…」
そこには八戒兄貴に踏まれた私が寝転がっていたのでした。
「皆ひゃ~ん!無事ですかぁ~?」
「すまないらぁ~!河童も無事だったらか!?」
「は…はい!何とか…」
「どうやら俺達は無事だったようだな?お前達!猿は何処だ!?猿を探すぞ!」
私達は辺りを見回したのですが、そこには建物があったと思われる牛角魔王さんの屋敷の残骸しか残ってはいなかったのです。
私達は焦げた岩石や消し炭の様な物を退かしながら孫悟空兄貴を探す。
「…………」
「そ…孫悟空兄貴は?兄貴はどうなったんでしょうか?」
「あの戦闘じゃ…きっと……あの猿!あいつは馬鹿らよ!オラ達を守るために一人無茶をして…」
「孫悟空の兄貴!」
涙ぐむ私達を見ていた三蔵様は、
「猿…死んだら…俺が許さん…」
「はい?俺様も許さん!」
「あの馬鹿猿!」
「馬鹿って言うな!」
「孫悟空の兄貴…本当に死んじゃたのですかぁ!」
私は涙を流して大泣きしたのです。
「ほら?ハンカチ使うか?」
「ぐしゅぐしゅ…あっ…ありがとうございます…ぐしゅぐしゅ…孫悟空兄貴…」
私は孫悟空兄貴から差し出されたハンカチを受け取り?
・・・・・・受け取り?
ん?あれ?
誰からですって~?
「猿!?」
「おう!」
そこには牛角魔王さんと一緒に消えたはずの孫悟空兄貴が、平然とした顔で私達の前にひょっこりと現れたのでした。つまり孫悟空兄貴は生きていたのです!
でも…どうやって?
「生きていたらか!?」
「当たり前だろ?何故俺様が死ぬんだよ?」
「でも、一体どうやって?」
「どうっやって…と、言われてもだな?」
「猿…とにかく無事で良かったらよ!」
「本当ですよ!」
「猿よ!よく生きて戻って来たな!」
私達は涙目で無事に戻って来てくれた孫悟空兄貴を迎えたのでした。
「それにしても孫悟空の兄貴は凄いですよ!何せ、あの六大妖魔王の一角である牛角魔王さんを倒してしまうのだから!」
「今回ばかりはオラもお前を見直してやるらよ!」
「ん?何の事だ?牛角の奴はピンピンしてるぞ?」
一瞬空気が止まりました。
「えっ?えー?」
どういう事?
そして孫悟空兄貴は語りはじめたのです。
「あの野郎!今の俺様の力に合わせて力をセーブしながら戦ってやがったしな!アハハ!あの牛角が本気になったら、今の俺様じゃ一たまりもないし仕方ないけどよ?何せ牛角の奴は昔の俺様でもマトモに勝てるか分からない奴だったんだぜ?」
……ハッ?
「ちょっと待つら!」
「だって!さっきまで私達のために死に物狂いになって戦ってくれていたじゃないですか?」
すると孫悟空兄貴の口から衝撃的な発言が!?
「あん?何言ってんだよお前達?あれはだな?久しぶりに再会したから組み手みたいな…じゃれあっていただけだぜぇ?それにお前達が今さっきまで寝ていた間も、向こうで牛角の奴とだべっていたんだからよ?」
三蔵様の肩が震えている。
分かります!分かりますとも!つまり、
私達の涙を返せぇ~!
「豚!河童!許す!殺ってしまえ!」
「了解!ボス!」
「えっ?えっ?えぇええええ??」
『うぎゃあああ~!』
私と八戒兄貴は孫悟空兄貴を押し倒し、今回三度目のリンチをしたのでした。
「うわあああ~!何でやぁ~???」
そんなかんなで私達三蔵一行は、無事に旅を続けられそうです。
それにしても全く!孫悟空兄貴にも困ったもんです。
本当に私達の涙返してって話ですよ~!
しかし、私達は遠い天界で、私達の噂がされているなんて知る由もないでした。
天界…
遥か天空にある神の住む世界。
そこでは今、神々の間で会議が行われていたのでした。
その話題がまさか…
私達に関係する事だったなんて!
それも孫悟空兄貴の話題があがっていたなんて、考え及ぶはずなかったのです。
神々が揃い踏みし、ここ最近地上界で起きた問題が一つ一つ細かに報告されていく。
神々の中心には『天』と呼ばれる最高神がその中央にて問題を判断し、その直属の神々に指令を与えるのです。
「今、確かに感じましたな?」
「はい!確かに特上の妖怪のものでした…」
神々はざわめく。
ここ暫く特上の妖怪が動きをみせる事はなかったため、神々も平和を保っていたのです。
「今調べた所、今感じられた妖気の持ち主は牛角魔王のものでございます!」
「牛角魔王だと?あの者が暴れていると言うのか?」
「いえ、暴れていると言うか…何者かと戦っていたとの事です」
「牛角魔王には我々は手を出せぬからなぁ…しかし、あの牛角魔王と戦っている者とは何処の馬鹿者だ?」
「それが…牛角魔王の相手は…多分…あの聖天大聖・美猴王の妖気反応ではないかと…」
更にざわめく神々!
「美猴王が復活したと言うのか?」
「確かに地上の妖怪達の噂で、孫悟空なる者が人間の僧侶と共に旅をしているとか…」
「その孫悟空があの美猴王の転生者だと言うのか?あの者は以前の神戦で魂すら消滅したはずでは?転生出来るはずない!」
「それが…間違いなく転生したらしいのです!」
「馬鹿な!こんなに早く転生などと…」
「聖天大聖が転生した事は神々の一部では知られていた事です。そこで、美猴王の動きを探るためにお目付け役を傍に置いてあったのですが…」
「…で?」
「報告が途中から途絶えました…」
「馬鹿者!それでまた美猴王が暴れだしたらどうするつもりなのだ!」
「それが…転生した美猴王は人間の僧侶と一緒に、人間に悪行を働く妖怪達を退治をしているとの話で、私達もその様子を窺っていたのです」
「妖怪退治?あの美猴王がか?」
神々は信じられぬという顔付きでした。
「その僧侶とは?」
「いや!人間の事より今は美猴王の話の方が大事だ!」
そこで一人の神が『天』に訴える。
「『天』よ!いかがなさいますか?聖天大聖は元は特上の妖怪でしたが、封印後は中級まで力を落としたと聞きます。それが僅か数ヶ月で上級の妖怪を退治し、今では、最も特上に近い力を持っているとの事!この成長はこの先計りしれず!例え今は妖怪退治をしていたとしても、いつ我々に反旗を翻すか分かったものではありません!」
今まで神々の会話を聞きながら中央で黙していた『天』と呼ばれる最高神は、その口を開く。
「再び天を乱す芽となるとな?ふむ。良かろう。では早いうちにその芽を摘むとするか」
最高神は立ち上がり神々に命令する。
「では、あの者をここへ呼ぶが良い!」
「あの者とは…まさか!」
「ふふふ…あの者が討伐にあたれば、例え聖天大聖・美猴王であろうと、一たまりもあるまいな!アハハハハハ!」
天界でも何やら不穏な空気。
私達の旅はまだまだ前途多難でございます。
次回予告
孫悟空「いやあ~今回は本当に疲れたぜ~」
沙悟浄「全く!疲れたとかどころの話じゃないですよ!本気でヒヤヒヤしたのですから!私達は!」
孫悟空「悪い悪い!もうしないから許せよ?」
八戒「嘘こくな!じゃあ、次の話はどう言い訳するつもりら?」
孫悟空「えっ?なんの話だよ?」
八戒「お前のせいで、オラ達は・・・」
沙悟浄「えっ?えっ?私達どうなってしまうのですか?」
八戒「それは次回の話で教えてやるらよ!」
沙悟浄「えっ~気になります~」




