牛角魔王、登場!
燃え盛る山、火炎山。三蔵一行は孫悟空に連れられて地下通路を通ることにしたのだが、突如、牛頭の妖怪に襲われたのだ。しかし、その妖怪は孫悟空を義兄弟と呼び抱きしめあったのだ。
さてさて…
どーも沙悟浄です。
私達が孫悟空兄貴に連れられてやって来た場所は、火炎山と呼ばれる侵入不可能の燃え盛る山。
その火炎山の地下通路を進んでいる途中、突如巨大な黒牛妖怪に襲われたのでした。
しかし…あれあれ?
その黒牛妖怪と孫悟空兄貴はお互いを『義兄弟』と叫び合い、ガッシリと抱きしめ合ったのでした。
では、今回の物語
私達は黒牛妖怪さんに連れられて、地下通路奥にある広間へと招待されたのでした。
「ガッハハハ!いやあ~悪かった客人よ!」
黒牛妖怪さんは大きなコップで酒を飲み干し、大笑いをしていたのです。
「皆悪い!あれは俺様達義兄弟の挨拶みたいなもんなんだ!」
「挨拶って…」
「一歩間違えてりゃ死んでたらよ!」
「猿よ?その者はいったい何者なのだ?」
三蔵様に言われて孫悟空兄貴が黒牛妖怪さんの紹介を始めたのです。
「あ~!挨拶がまだだったな?こいつは…」
「客人よ挨拶しよう。俺の名は牛角魔王!こいつ[孫悟空]とは昔からの悪友であり、義兄弟の契りを交わした仲だ!」
その名を聞いて、私は腰を抜かしそうになったのです。
「牛角…?えっ?牛魔魔王ですって~!?」
「知っているらか?」
私が説明させて頂きます。
「知っているも何も目茶苦茶超有名な大妖怪ですよ!って、妖怪の中で牛角魔王を知らない妖怪なんていませんよ!」
「マジらか!?」
「私とした事が…こんな大妖怪を目の前にして、直ぐに気がつかなかったなんて。牛角魔王と言えば!地上界でも『妖魔王』の称号を持つ数少ない大妖怪なのですよ~!」
ちなみに妖怪にはランクがありまして、そのランクも五段階あるのです。
数の少ない順から上がるに連れて強いランクになっていきます。
[雑魚][平凡][中級][上級]
更にその上に[特上級]の妖怪がいるのです。
因みに、これは神様も共通なんですよ!
それで上級以上から『魔王』『大王』と称号が付き、特上級の妖怪には更に『妖魔王』の称号が与えられているのです。
ちなみに現在知られている妖魔王は七名!
美猴王[びこうおう]
牛角魔王[ぎゅうかくまおう]
獅駝王[しだおう]
鵬魔王[ほうまおう]
蛟魔王[こうまおう]
偶獣王[ぐうじゅうおう]
六耳猴王[ろくじこうおう]
この七人の妖魔王を合わせて、最強の『七大妖魔王』と呼ぶのです。ちなみにこの七人の妖魔王は、かつて地上界を制覇し、更には天界にまで攻め混んだ破壊者なのでもあります。
この妖魔王には流石の天界の神々も手を出せないと言う理由で、ある条件の下この妖魔王には全ての『自由』を与えられているのです。
つまり、決められた領地なら人を襲っても罰しないと言う特例を与えられてるのです。
この条件と引き換えに天界で負えなくなった罪悪。つまり神様に対しての反乱分子や新たに強い妖魔が地上界に現れた際には、妖魔王は神に代わり邪魔な妖怪を討伐する事を任されるのです。
…って、あれ?
誰も私の話を聞いていない??
皆さ~ん
聞いてくださいよ~
「それより美猴王よ?お前は暫く見ない間に変わったな?最初は気付かなかったぞ!」
「アハハ!ちっと訳ありでな?てか、俺様は今は美猴王じゃなくて孫悟空と名乗ってるんだぜ!」
「えっ?美猴王?」
「牛角は…」
私は孫悟空兄貴達の会話を遮り、
「ちょっと!私の話を聞いて下さいよ!」
「何だよ河童?」
「あの?孫悟空兄貴?美猴王ってまさか?」
「ん?話さなかったか?美猴王てのは転生前の俺様の名前だぜ!」
「マジっすかー!?いや…孫悟空兄貴が昔、物凄い妖怪だったのは何度も聞かされてはいましたが…まさかあの有名な六大妖魔王の美猴王だったなんて!アハハ…孫悟空兄貴の強さの理由が分かった気がする…」
「アハハ!敬え!敬え!ウキキ!」
「でも、今はただの猿らよな?」
「うるへぇ!」
「それにしてもお前…チンケになったな?あの天界をも騒がせた美猴王が今じゃこんなチビ猿とはな?昔の面影が全くない。いや?昔からこんなもんだったか?」
「牛角まで!それにしてもお前はいつまでその姿なんだ?」
「ん?そう言えば獣王変化したままだったな…フン!」
「へっ?」
すると、目の前の牛角魔王さんの姿が見る見るうちに黒牛妖怪から人型の姿へと変わっていったのです。
「ふう~」
牛角魔王さんの姿は人間の容姿になっていたのです。因みに人歳で35歳くらいでしょうか?ストレートロングの長い黒髪から覗くその頭上には、牛角の特徴とも言える黒い角が二本突き出ていました。
それに鎧の隙間から見えるそれは、鍛えぬかれた無駄のない筋肉。何より人型でも威厳あるその眼光は、やはり流石は妖魔王と言うべきでしょうか?
あわわ…
私、少しチビッテすみません。
ほんの少しですが、知性と野生味が兼ね備えた感じは三蔵様に少し似ているタイプですかね?
「!?」
ハテ?三蔵様?
「いかがなさいました?」
「いや、何でもない…少々知人に似ていただけだ!」
三蔵様は人型の姿になった牛角魔王さんの顔を見て何か戸惑ったような感じだったのです?
「ところでよ?お前の子分達はどうしたんだ?何か一人も見かけなかったぞ?」
そ…そう言えば!?
牛角魔王さんの軍勢と言えば、角を持つ妖怪を束ねた選りすぐりの軍勢だと聞きますが?
「ん?あいつ達はもういないぞ?俺は今じゃ隠居生活をしているからな。無駄に軍勢を率いていた頃に比べ気楽なもんよ!ガハハハハ!」
「な?本当か?あの六大妖魔王きっての大軍勢の首領がか?」
「まぁな…そう言えば、あの金角と銀角を始末したのはお前達か?」
「そうだが?」
「奴達も俺の配下だったのだが…」
えっ?それって…?
一瞬、私達は硬直しました。
「ふっ…気にするな!奴達はもともと俺の言う事を聞かずに好き勝手にやっていたゴロツキだ!知らぬ間に少しばかり力を得たからと言って、俺から離れていきやがったよ!邪魔になったら俺が始末する予定だったが手間が省けたわ!」
「そっかぁ?」
「ところで孫悟空よ?さっきから気になっていたが、どうして人間が一緒にいるのだ?俺への貢ぎ物か?」
流石に三蔵様も今の言葉に顔付きが変わる。
「ムッ!」
すかさずフォローに入る孫悟空兄貴!
流石です!
「バカヤロー!俺様はだなぁ…今はこの三蔵と、こいつ達二人と一緒に旅をしてるんだぜぇ!」
「ふ~ん…またいつもの気まぐれって奴か?」
「うるへぇ!うるへぇ!」
私達は牛角魔王さんの部屋でどんちゃん騒ぎをした後、一晩泊まらせて貰う事になったのでした。
お酒が回り…
三蔵様や八戒兄貴は眠り込けてしまっている様子。
私はと言いますと、寝る前に…
ちょっと、お手洗いに~
ん?あれ?
明かりが?それに話し声も?
私は皆さんが眠っている部屋に戻ろうとすると、先程どんちゃん騒ぎをしていた別の部屋の隣部屋で孫悟空兄貴と牛角魔王さんが未だに起きて話しをしている事に気付いたのです。
まぁ…久しぶりの再会ですからねぇ~
「なぁ?孫悟空よ!久しぶりの再会だ!今日は朝まで飲みあか明かそうぞ!」
「だな!朝まで飲み明かすぞ~!」
アハハ…
まだ騒ぐのですか?まったくタフな二人ですねぇ~
私は三蔵様と八戒兄貴のいる部屋へ戻ろうとした直後、突然二人の様子が変わった事に気付いたのです。
何かピリッとした空気が張り詰める?
二人は真面目な顔付きになり話しを続ける。
「で、それだけじゃないんだろ?」
「ふっ…分かっているのだろ?貴様!人間の下でこき使われて、魔王としてのプライドはないのか?」
突然怒り心頭の牛角魔王さん!?
一体全体どうなっているのですかぁ~??
「この旅は俺様の勝手だ!俺様がやりたいからやっているんだ!お前に指図される筋合いはない!」
「暫く会わない間に、腑抜けになったようだな?」
「なんとでも言え!年月が俺様を変えたんだ…」
「あの天界を攻め落とす寸前までいき、全世界征服半ばで突然俺達の前から消えたかと思えば、今度は人間の手下か?まったく勝手だな?」
「…………」
「孫悟空!いや…美猴王!何とか言え!」
「わりぃな…」
私は二人のシリアスな会話の展開に、部屋の外で息をのみ隠れて聞いているしかありませんでした。
(あわわ~)
すると牛角魔王さんは立ち上がり孫悟空兄貴を見てこう言ったのです。
「あの人間を殺したら、お前は昔のように戻るのか?」
「!!」
なっ?なっ?何て会話しとるんですかぁ~??
何か目茶苦茶大変で~す!
緊急事態ですよ~!
私、どうしたら良いのでしょうか?
次回に続きます。
次回予告
沙悟浄「マジですか?まさかの飛び飛び展開でバトル突入なんですか?」
孫悟空「そう言うなよ?俺様の見せ場だぜ!最強バトルだぜ!」
八戒「でも、勝てるらか?相手は有名な牛角魔王なんらろ?」
孫悟空「へん!そんなのは気合いと根性で乗り切るぜ!」
沙悟浄「そんな無鉄砲な~」
孫悟空「それに・・・」
沙悟浄「?」




