黒い天蓬元帥?一騎打ち八戒と玄徳!?
三蔵一行の前に現れた見習い武神の玄徳。
彼は八戒に遺恨があり、天蓬元帥の称号を賭けて一騎打ちをする事になったのだ。
ハイ!沙悟浄です~
私達の前に現れた見習い武神の玄徳さんは、天蓬元帥の名を語る八戒兄貴に恨みがあったのでした。
「私はいずれ父の後を継ぎ、九代目の天蓬元帥になるつもりだ!だからキサマのような輩が、天蓬元帥の名前を汚す事だけは絶対に許せんのだ!」
九代目?あれ?
今、何か違和感感じたのですが?
「ちょっと待ってください?」
「何ですか?捲簾大将殿?」
「あの…先程から話を聞いていますと、八代目の方はいらっしゃらないのですか?玄徳さんのお父様が七代目で、玄徳さんは九代目になられたいのですよね?」
「はぁ…実は八代目もいらっしゃいましたのですが、八代目の方は元帥の称号を継いで数年僅かで戦死したという話です。それほど天蓬元帥と言う称号は死と隣り合わせなのです」
「おお?じゃあ~オラはその八代目で良いらよ!実は生きていたという設定で!」
玄徳さんの何かが再び切れる音が聞こえた感じがしました。
玄徳さんから怒りのオーラが高まっていく。
「きぃ…き…キサマと言う奴は!何が設定だぁ?何処までも…何処までも!貴様は天蓬元帥の称号を汚すつもりなのだぁー!!」
「いや!オラはらな!あっ…そんな怖い顔しないで欲しいらぁ~!」
怒り心頭の玄徳さんに怯える八戒兄貴は涙目で腰を抜かしていました。
「良いかよく聞け!天蓬元帥の称号とは、どの武神よりも先陣に立ち!決して退かず!決して負ける事を許されぬ!勇ましい者にのみ与えられる称号なのだぞ!」
私と孫悟空兄貴は顔を見合わせる。
「決して退かず…」
「決して負けない…」
私達は危なくなると誰よりも先に逃げ隠れする八戒兄貴しか知りませんが?
「何を言うらよ!こうみえても、今までオラより強い妖怪を知らないらよ!」
「鉄扇さんは?」
「オラは妖怪であろうと、女子には手を出さねぇらよ!ん?まぁ、違う意味では手を出すかもしれないらがな~ムフッ」
すると今度は孫悟空兄貴が質問する。
「金角、銀角は?」
「ありゃ~猿と三蔵はんに華をもたせたらけらよ?もし二人が瓢箪から出て来なかったら、オラが大活躍していたらよ!」
「じゃあ!じゃあ!孫悟空の兄貴には?」
「あっ?まだ勝負ついてねぇらが、今戦ったらオラの方が強いに決まってるらよ!ブヒィ!」
「何だとぉ!この黒豚!やる気か!?俺様はいつでも相手になるぜ!この糞豚野郎!」
「うわっ!喧嘩しないで下さいよ~孫悟空の兄貴まで暴れたら話が余計にこんがらかりますよ~!」
ちなみに三蔵様はタバコを吸いながら、我関せずと雲を眺めていました。
三蔵さまぁ~!
面倒臭いのですね…
仕方なく私は八戒兄貴に飛び掛かろうとする孫悟空兄貴を宥めたのでした。
「まったく!」
孫悟空兄貴と私は呆れ果て、怒るのも馬鹿馬鹿しくなり、
「玄徳…好きにして…」
と、話を放り投げたのでした。
「ありがとうございます!お二人とも!」
私達は玄徳さんの味方になったのでした。
「裏切り者~!」
「なぁ~豚よ?いい加減さぁ~天蓬元帥なんて称号なんかにこだわらないで良いんじゃないか?別に称号なんて何でも良いだろ?何なら俺様が新しいの作ってやろうか?」
えっ?その時です!
八戒兄貴が孫悟空兄貴の襟元を掴み上げ、突然怒鳴りあげたのです!
「捨てられる称号なんかじゃないらぁー!お前はこの称号の重さが分かるらかぁ?この称号は…この称号はらなぁー!」
突然の八戒兄貴の豹変ぶりに、胸ぐらを掴まれた孫悟空兄貴も困惑する。
「おお?悪い!何か変な事言ったか?そんなにマジになるなよ?悪かったよ!」
すると我に返る八戒兄貴は、
「はて?そういえばオラは何故に天蓬元帥と名乗っているらか?
てか、何故にこんなにこだわっているらか?」
自分自身が一番分かっていなかったのです。
そのやり取りの一部始終を見ていた三蔵様は一言、
「やれやれだ」
そんな訳で、玄徳さんと八戒兄貴は私達の立会いのもと、天蓬元帥の称号を賭けて勝負をする事になったのです。
「う…嘘らろ?」
突然の状況にアタフタする八戒兄貴。
「成敗する!」
玄徳さんが立派な刀を構えると、神気が刀に籠められていく。
この刀は父親より引き継ぎし名刀『青龍刀』と呼ばれ、過去の大戦にて玄徳さんの父上である大玄様が竜神と戦いし時に手に入れた戦利品と言われている名刀だそうです。
「では、始めぇ!」
玄徳さんは孫悟空兄貴の合図で、八戒兄貴に向かって行きました。
「うおおお!」
「慌てるなぁ~!うおっと!」
八戒兄貴は青龍刀を躱しながら逃げ回っていく。
「逃げるな!真面目に戦え!卑怯者」
「馬鹿言うなや!逃げるが勝ちと言うらよ!」
「こんな輩が天蓬元帥の名前を汚していたと思うと」
怒りで玄徳さんの神気が高まっていき、大技をくり出したのです。
「青龍水流弾!」
青龍刀から水気弾が八戒兄貴に向けて放たれたのです。
水気弾が八戒兄貴の真横を反れていく?
「危なかったらぁ~」
「今のはわざと外した。次は仕留めるぞ?降参するなら今のうちだ!」
水弾が直撃した場所は大地が削られ、まるで龍が足跡を残したかのような削り跡を残していました。
「おったまげたら~!誰が降参するらよ?こうなったらオラも本気を出すらよ!」
「本気だと?やってみるが良い!」
八戒兄貴は妖気を込めると、
「秘技・糞火弾!」
玄徳さんに向けて、燃えたぎる糞の塊を投げつけたのです。
「このこの!何処までも汚い技を!まさにお前そのものだ!」
玄徳さんは、たまらず投げつけられた糞を躱しながら見て見ると、
八戒兄貴の姿が目の前から消えていたのです!
「何処に消えたぁ!?」
「ここらぁー!」
八戒兄貴は空中に飛び上がり、巨大なウンコを作り上げ、玄徳さん目掛け放り投げたのでした。
「秘技・糞殺牙死」
玄徳さんは水の刃を放つと、巨大ウンチは真っ二つに斬り裂かれ、辺り一帯にウンコが飛び散る。
「こぉの!」
当然、私達は巻き添えにならないように逃げました。
てか、八戒兄貴の戦いはいつもこうですよ~
マジマジ汚いです!
「本当に何と汚い真似を…」
「勝てば良いのら!」
「キサマは間違っているぞ!意味のある勝ち方が出来てこそ誇れるのだ!」
「埃っぽいのは嫌いらよ!」
「馬鹿者が!良かろう。キサマには何を言っても通じないと理解した。ならば私が最も天蓬元帥に相応しいと言う事を教えてやるぞ!」
玄徳さんの神気が青龍刀を通して更に高まっていく?
「今こそ我が奥義を食らうが良い!ハアーー!」
玄徳さんが青龍刀を眼前に構えて神気を籠める。
「教えてやろう!天蓬元帥には必ず習得せねばならないと言う唯一の奥義がある事を!それが…」
「天蓬大幻水ダァーッ!」
玄徳さんの青龍刀から放たれた水の渦が、巻きながら天に昇り龍の形を成し、凄まじい勢いで八戒兄貴に向かって降りて来たのです。まさに逃げ場なき奥義でした。
「天蓬大幻水らと?そんなもんオラにだって!」
「何だと!?」
「行くらぁ!これがオラの天蓬大幻水らぁーー!」
八戒兄貴は自分の鼻を片方押さえ、
一気に!!
《じゅるじゅるじゅるぅ~!》
大量のネバネバした鼻水を噴き出したのです。
お互いの天蓬大幻水?が激突し、
いとも簡単にに玄徳さんの放った濁流の渦が八戒兄貴に直撃したのでした!
そりゃそうですね~
「うぐわあああ!」
八戒兄貴は濁流に飲み込まれてズタボロになり地面に落下しました。
「八戒の兄貴!」
「おい!ありゃやり過ぎだろ?なぁ三蔵!」
「………」
「くそ!こうなったら俺様が出しゃばるしかないか!」
「待て!」
そこには瀕死状態でボロボロになった八戒兄貴が、辛うじて立ち上がっていたのでした。
「おぃ!豚!大丈夫か!?」
孫悟空兄貴が叫ぶけれど八戒兄貴は立ったまま動きませんでした。
「ふん!三蔵殿の手前手加減したとはいえ、今のをくらって立っている事は褒めてやろう。だが、もう分かっただろ?殺しはしないからキサマはこの場から即刻立ち去るが良い。もう勝負はついた!これで終わりだ!」
そんな中、八戒兄貴は何かを口走っていたのです?
「ボソッボソッ…」
「先から何を言ってる?」
その時、八戒兄貴が叫んだのです!
「一度戦うと決めたら決して退かぬ!決して負けぬ!それが天蓬元帥たるオラの道だぁーー!」
意識が朦朧としていたはずの八戒兄貴から覇気が放たれ、その眼光が一瞬玄徳さんを怯ませたのです!
「ぐっ…うっ…!!」
(何だ今のは?一瞬だが、あの豚がでかく見えたぞ?)
その直後、一部始終を見ていた三蔵様が、そこで勝負を止めたのでした。
「そこまでだ!」
「えっ?それでは!」
三蔵様は玄徳さんに近付いて行く。
「ありがとうござ…」
と、言いかける玄徳さんを流し、三蔵様はその横を通り過ぎて行ったのです。
そして、八戒兄貴の肩を叩いたのでした。
「八戒!お前の勝ちだ!」
「えっ?待ってください?どういう事ですか?」
納得の出来ない玄徳さんに、三蔵様はおっしゃったのです。
「確かにお前はこの豚より数段に優れているだろう!」
「それでは何故?」
「俺は天蓬元帥と旅をする事になっているらしい。玄徳!お前は一瞬でも、コイツの覇気に怯んだだろう?」
「そ、それは!」
「確かにこの豚に比べお前は強い。だが、まだお前は精神が弱い!これからの俺達との旅にはまだまだ未熟だ!この豚はだらしなく何の取り柄もないが、俺はコイツの根性を買っているんだよ!だから俺はコイツを使う。分かったか?」
「くっ!!」
玄徳さんは納得出来ない感じでしたが、
「また…また来ます…」
そう言って翻り、私達の前から立ち去って行ったのでした。
(取り敢えずそれらしい理由を付けてみたが、あんまり真面目な奴が一緒だと肩が凝るからな…)
三蔵様?それが本音ですね?
でも、これで一見落着ですか?
元サヤですか?
「おっ?三蔵!この豚立ったまま白目むいてるぜ!」
「あわわ!酷い怪我ですよ~」
直ぐさま私は治癒を行ったのでした…アハハ
これにて八戒兄貴の散々な一日が終わったのでした。
場所が変わる。
ここは地上界から離れた天界~
「くそっ!」
玄徳さんは酷く機嫌が悪くなっていました。
まぁ、仕方ないでしょう。
そこに一人の武神が入って来たのです。
「どうしたのだ?お前らしくないな?」
「これは先生!実は…」
玄徳さんの前に現れたの主は玄徳さんの師匠であり、見習い武神達の教官神でありました。そして玄徳さんは先程起きた地上でのいきさつを話したのです。
「そうか…それは、やられたな?アハハ!」
「笑い事ではありません!私は悔しいのですよ!」
「悪かった悪かった!しかしお前がそんなに感情をむき出しにするなんて珍しい事もあるもんだな?」
「ハッ!考えてみたら!確かに一度は怯んだとは言え、奴は逃げ隠れしてばかりじゃないか?やはり納得出来ん!ああ…それにしても腹がたつ!あの黒豚!」
「!!」
一瞬、その先生は玄徳さんの台詞に青ざめて凍りついたのでした。
「いかがなさったのですか?」
「いや…今…黒と?」
「えぇ?奴は黒い。黒豚の妖怪ですよ?それが何か?」
「黒豚の妖怪か…そうか、妖怪か…そうかぁ…何でもない…ただ少し気になってな…まさかな…」
「?」
「いや…きっと思い過ごしだ…忘れてくれ…」
すると、その先生は目の前にあったお茶を飲んだ後、玄徳さんを残して部屋を出て行き真面目な顔付きで呟いたのでした。
『黒い天蓬元帥か…』
何か曰くつきのようですが、この話はまだ先の話。
次回予告
沙悟浄「えっと・・・最後の終わり方?今回の話は何か根が深いみたいですね?」
八戒「そうなんらか?もう、面倒はごめんらよ~」
沙悟浄「玄徳さんはまた登場するみたいですよ?また八戒兄貴狙われてしまいますね?」
八戒「ゾゾゾゾゾゾ!」
沙悟浄「あれ?孫悟空兄貴?どうしたのですか?」
孫悟空「何か・・・熱くなってきたなと思ってよ?」
沙悟浄「夏だからですかね?」
孫悟空「いや・・・あの山のせいだな」
沙悟浄「えっ?あぁあああ!?」