天界から来た男!
妖怪盗賊金角・銀角の襲来、特別な力を持った二人の姉弟もファンとフォンの物語に三蔵の過去が絡まった前回までの話から一転?今話は?
はい!沙悟浄です!
皆さん聞いて下さ~い
私達三蔵一行は行く所行く所で、結構な有名人となっていたのですよ~
特に金角と銀角を退治した後からは、知名度がハンパないったらありゃしない!
それだけ凶悪有名な連中だったんですから、当然と言えば当然なのですが…
妖怪達からは三蔵様を倒して知名度を上げようだとか、霊力の強い三蔵様の肉を食べれば不老不死になるとか意味不明な噂が独り歩きし命を狙われ(これは以前からも変わりないのですが)、各村々で人々からは妖怪退治をして旅をしている一行だとか、神様から遣わされた使者だとか噂されていたのです。
三蔵様にいたっては・・・
人の身で天界でも名のある『聖天大聖』『天蓬元帥』『捲簾大将』その称号を持った妖怪三匹を使役するスーパー僧侶三蔵!向かう所敵無し!完全無欠のお師匠様!
と、まぁ~
何処でも超有名人なのでした。
なのですけど・・・
それでも性懲りもなく襲って来る妖怪達相手に、私達は日夜休む事なく命を狙われる毎日なのでした。
よって、今も・・・
いつものごとく野党妖怪達と交戦中だったりします。
私達は村を出て直ぐに囲まれてしまったのです。
「今日はやけにゾロゾロといやがるぜ?」
「オラは休んでて良いらか?」
「何を言ってるんですか!」
「お前達!気を引き締めろ!」
孫悟空兄貴と八戒兄貴、私に三蔵様が気を引き締めさせる。
「お~~!」
野党妖怪達は集団で私達に襲い掛かって来ました。
その数、およそ百くらいですかね?
ん?およよ?
良く見ると私達と野党妖怪達の間に人影が見えますよ?
あれは誰ですか?
そこには、いつの間にやら一人の若者が立っていたのです。
まさか逃げ遅れて、紛れ込んでしまったのでしょうか?
そして私達の方に向かって来ると、一礼をしたのです。
「ん?」
「なんら?」
若者[人歳18]は私達の前に立ちはだかっていました。
その姿は青い甲冑に身を包み、その腰には立派な刀をぶら下げていたのです。見るからにただ者ではない雰囲気の見知らぬ新キャラに戸惑う私達。
若者は腰の刀に手を置くと、何事かと警戒する私達に背を向け、一人野党妖怪達に向かって飛び出して行ったのでした!
「ハアーー!!」
若者は野党妖怪を巧みな剣捌きで薙ぎ倒していったのです。
どうやら敵じゃなさそうですが?
それにしても随分と戦い慣れているようですね?
後ろから野党妖怪の一人が剣を振り下ろして来ても、振り向かず身体を一回転しながら横一線に斬り伏せる。次々と野党妖怪達が倒れていき、とうとう若者はたった一人で妖怪盗賊達を撃退したのでした。
そして若者は一呼吸をした後、その一部始終を見ていた私達のもとに向かって来たのです。
私達は警戒しながら若者を見ていました。
若者は三蔵様の目の前まで来ると、突然腰を下ろして膝をつき、ゆっくりと頭を下げて言ったのです。
「どうか、私を三蔵殿の旅の一行に加えていただきたい!」
えっ?今、何て??
ええええ?な…仲間って??
そんな突然の若者の登場に対して三蔵様は、
「お前は何者なのだ?」
「私の名は玄徳。天界の武神です!」
天界の武神さんだったのですね?
どうりで強いわけです。
「えっ?天界の武神様ですって?」
「どういう事だ?面接は俺様を通して貰おうか」
「土産はないらか?」
突然の申し入れに私達は困惑していました。
「天界の武神が俺達の仲間になりたいだと?全くもって意味が分からんが?」
玄徳と名乗る武神は真っ直ぐな眼差しで三蔵様を見ていました。
この世界には人間や妖怪の他に、仙人様や神様・仏様がいらっしゃるのです。
神様や仏様がいらっしゃるのは『天界』と呼ばれる世界なのです。
見る限り、この玄徳さんは神族の武神さんですね。
少し説明をいたしますと、天界の住人は一重に神様や仏様と言っても、地上界の人間となんら変わらぬ生活をおくっているのです。
最高神様の下には法や秩序を守る『文部神』、それに妖怪等の脅威から平和を守るために組織された『武神』と呼ばれる神様方がいらっしゃるのです。
でも何故、武神でもある玄徳さんが地上にいらっしゃるのでしょうか?
「すみません。武神と言っても私はまだ見習いの身!だから、この地上界で悪行をなす妖怪討伐をしながら修業をしているのです」
「ん?武神見習いなのか?」
「でも本当にお強いと思いますよ!私も天界にいたから分かりますが、十分に現役武神様レベルですよ!」
確かに玄徳さんの実力は天界の武神でもかなり高いと思われます。
「いえいえ私なんかまだまだ!」
笑顔で爽やかに謙遜し礼儀正しく返す玄徳さんに対して、
「でも所詮見習いなんらよな?」
八戒兄貴の言葉には一瞬冷たい視線を送ったのです。
「ビクッ!」
あれ?なんか私達に向ける反応と違うような?
すると玄徳さんは天界での出来事を私達に語り出したのです。
少年時代よりその資質と有望ぶりに定評があった玄徳さん。
文武両道とはよく言ったもので、まさに同世代の武神候補生の中では敵はなく、まさに周りから憧れの的でもあったのです。
また、その性格は謙虚で自分の力を鼻にかける事もなく、何事にも真面目に取り組む姿勢から、上官神達からも強い信頼があったのでした。
そんなある日上官神から呼ばれた玄徳さんは、
「お前の噂は聞いておる。なかなかの武勇ではないか?」
「滅相もございません!私なんかまだまだでございます」
玄徳さんは頭を下げたままひざまずく。
「そう畏まるな?お前を呼んだのは他でもない!今後のお前の正式な称号についてなのだが…」
「私の称号…」
特に優秀な武神には功績と力量に見合った称号が与えられるのです。
ちなみに私こと沙悟浄の称号は『捲簾大将』なのですよ~
「やはり気持ちは変わらぬのか?」
上官神の言葉に玄徳さんは、真っ直ぐな眼差しで決意を変える事なく答えたのです。
「私は!今は亡き父、大玄と同じ称号に他ありませぬ!」
「そうか、仕方あるまいな。ならば今は欠番となりし、その最強の称号をお前に与えよう!」
「本当でございますか?」
「ただし条件があるぞ!その称号の候補には、お前の他に後六人おる!その者達と競いその最強の称号を見事手に入れるが良い!」
と・・・
その最強の称号を得るべく玄徳さんと他の六人の候補生達に与えられた試練とは、この一年でどれだけの栄誉。つまり武神としての功績をあげるかで判断されるとの事だそうです。
そこで玄徳さんはここ数年になって力を付け、人間達の生活を苦しめる妖怪達が多くいるこの地上界へと降りて来たのでした。
「三蔵殿は優れた妖怪を弟子にして、妖怪退治をしながら旅をしているとお聞き致しました。先日も悪名高い金角と銀角を退治したと風の噂に聞き、ならば是非とも私を旅の一行に加えていただけるよう参上したのでございます!」
「何を勘違いしているか分からないが?俺達は別にそんな大層な旅をしている訳ではないぞ?」
「ご謙遜を!そこで三蔵殿!お願いが一つあります!」
「あっ…だから…俺達はだな?」
その一直線な圧力に私達は気付いてしまったのです。
「(ボソッ)こいつ人の話を聞かない性分だな…」
「(ボソッ)真面目と言うか、物事一点に集中すると他が見えなくなるぽいですね?」
「(ボソッ)暑苦しい奴らな」
「(ボソッ)…また…面倒臭い奴が現れたものだ…」
「ちょっと話を聞けよ!」
「何でございますか?兄弟子よ?」
「か…勝手に兄弟子とか抜かしてるし…」
「あの…興味本位で申し訳ございませんが、玄徳さんが求めている最強の称号ってどのような称号なのですか?」
「オッ?それは俺様も興味あるぞ!最強と言えば俺様の専売特許だからな!」
「称号ですか?その称号とは…」
私達は唾を飲み込む。
ゴクリ…
そして語られた最強の称号とは!
「その最強の称号とは、決して如何なる強大な敵であろうとも背中を見せず!どの者よりも先陣に立ち!仲間の武神を先導し、負けず敗れずの誓いの下『元帥』の称号を与えうる者のみに託される最強の称号!」
その称号とは一体??
「その称号の名を『天蓬元帥』と呼ばれるのです!」
「なぁにぃ~???」
私達は目と口を馬鹿みたいに広げ、その状態で固まってしまいました。
「我が父!七代目天蓬元帥・大玄以降、天蓬元帥の称号は欠番扱いになっていました。にもかかわらず、ここ最近になって噂で耳にしたのです。その栄誉ある称号を勝手に名乗っている輩がいるとか…」
「ん?悪い奴もいるもんらな?」
「あの~?」
八戒兄貴は自分には無関係と同情していたので私は袖を引っ張る。
「貴方達の仲間になった暁には、その輩を…是非私に討伐させて頂きたいのです!」
「おっ!何か分からないらが、頑張るらよ!」
「おいっ!」
孫悟空兄貴も嫌そうな顔をしていました。
絶対に面倒臭い事になるのだと。
「………」
「………」
「………………………」
意味のない沈黙が続きました。
「きぃ…きぃ…きっ…」
「あれ?あれ?あれ?」
「キサマの事だぁーー!この糞豚野郎がぁーー!」
何かの糸がキレて、八戒兄貴に対して怒り心頭の玄徳さん。
これは一波乱ありそうですね~
一体どうなるのでしょうか?
それにしても、八戒兄貴…
あんた…毎度、何やってんですか?
次回予告
孫悟空「なんだ?今回も出番が少ないぞ!俺様!」
沙悟浄「ですよね~まさか、ここに来て八戒兄貴の話だなんて!」
八戒「そう、ぼやくなや~やはり転生記の主役はオラって事らな?」
孫悟空「ざけろ!勝手に言ってやがれ!お前のその高飛車な所が次話の不幸を呼ぶのだぜ?まさに自業自得だ!あはははははは!」
沙悟浄「それは孫悟空兄貴も同じじゃ?」
孫悟空「あん?何か言ったか?」
沙悟浄「いえ・・・何も」
八戒「とにかく次話はオラが大活躍らよ!」




