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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
転生記~始まりの伝説編~
43/424

再会!三蔵の過去?未来への誓い!


全ての現況。


それはまさかのフォン君だったのです。


はい!

私、沙悟浄です!

ファンさんの暴走を浄火の炎で止めた三蔵様。

しかし、本当の元凶はファンさんじゃなかったみたいなんです。

しかもその相手が?

えええ?フォン君?

フォン君は三蔵様を睨みつけていました。



「いつから気付いていたんだよ?」


「最初からだ!」


フォン君の雰囲気がいつもと違う事と、いつもと三蔵様との会話の意味が理解できないでいたファンさんは混乱していました。


「フォン?どういう事?」


「…………」


そうですよ!

本当にどういう事なのか誰か説明してくださいよ~


「姉さん…ごめんね…実は…」


「止せぇ!フォン!ファンには俺から話す!」


「偽善者が!誰が話そうと同じだろ?」



すると、フォン君は指を鳴らしたのです。


「きゃあああ!」



その瞬間、ファンさんが悲鳴を上げて蹲ったのです。


一体、何が?

その時、ファンさんの脳裏に忌ま忌ましい記憶が流れ込むように蘇って来たのです。

それは、金角と銀角に追われ寺院から逃げ出した時の記憶。



ファンさんとフォン君は寺院の石段を駆け降りていました。


「兄じゃよ?まだ生き残りがいたようだぜ?」

「ん?あのガキ…さっきは気付かなかったが特種体だ!」

「特種体だって?」


特種体とは人間の異能力者の事であり、妖怪は人間の特種体を摂取…つまり、喰らう事でその能力を奪う事が出来るです。


「絶対に逃がすなよ!あれはレアだぞ?」

「おぅ!任せろ!俺達の狩りからは誰も逃げられねぇぜ?」


すると銀角は妖気を籠めた巨大な冷気の鎌を大地に向かって突き刺したのです。

石階段は揺れ、次々と崩れ落ちていく。


「きゃあああ!」

「うわあああ!」


二人は崩れる石階段から転げ落ちていったのでした。



「馬鹿野郎!やり過ぎだ!いい加減力加減を覚えろ!」

「すまねぇ…つい力が入ってしまったぜ」



フォン君は崩れた石階段の下敷きになりながらも目を覚ましたのです。

身体中が痛い。けど動ける?

なら、早く逃げないと!

フォン君が起き上がろうとすると、自分を守るようにファンさんがのしかかっていたのでした。


「お姉ちゃん?重いよ?お姉…」


しかし、ファンさんからの返事はない。


「お姉ちゃん?どうしたの!」


フォン君は何とか崩れた石階段から抜け出しその身体を起こすと、ファンさんの身体が力なく転がった。


「えっ?」


後頭部から血を流し動かないファンさんを見て、フォン君は理解したのです。

ファンさんは崩れ落ちる石階段からフォン君を守り、身代わりになって頭を強打し命を落としてしまったのだという事を…


「姉さん…姉さん…姉さん死んじゃったの?とうとう死んじゃったんだね…僕を一人にして?」


落ち込む暇もなく


「この辺りから声が聞こえたぜ?」

「確かにこの辺りからガキの臭いがするな…」


既に金角と銀角が近くにまで迫っていたのです。


「はっ!」


するとフォン君は、


(ごめんね…お姉ちゃん…)


ファンさんの胸に手を翳して気を押し込んだのでした。

すると、死んだはずのファンさんの指先が微かに動き出し、そのまま身体を起こして立ち上がったのです?しかし、その目は虚ろで、脱け殻のようでした。

そしてファンさんは一人何事もなかったかのように、その場所から走り去って行ったのでした。

ファンさんに気付いた金角と銀角が、その後を追って行く。

ファンさんを追って金角と銀角がいなくなったのを確認した後、フォン君が姿を現したのでした。



「これで、本当に僕は一人になってしまったんだ」



そしてフォン君はそのまま意識をなくしてしまったのです。

そこに…



「ここに誰か倒れていますよ~!」



私達が倒れたフォン君を見付けたのでした。



その記憶を全て思い出したファンさんは青褪めていました。


「それじゃあ…私は?」


「そうだよ…お姉ちゃんは死んだんだよ!だから僕が甦らせたんだよ…」


「フォン?」


「でも、心配しなくて良いからね?お姉ちゃんはずっと僕と一緒だからね!」


「違うよ…フォン…フォンの気持ちは嬉しいけど…私は思い出してしまった…私は…」



すると、ファンさんは自分達の境遇を語り始めたのです。





ファンさんとフォン君は身寄りのない孤児でした。

幼いファンさんは産まれて間もない赤子のフォン君を抱きしめて荒野を歩いていたのです。

そんな幼い子供達を不憫に思った子供のいない夫婦が引き取って養ってくれたのですが、二人の養父母は子供達の事について話しあっていたのです。


「私はもう我慢出来ないわ…」

「仕方あるまい…」



夜遅く養父母は二人が眠っている寝所に近付く。

その手には光るモノが握られていたのです。



「そうだ…あの子供達は…化け物なんだ…」

「どうして私達はこんな子供を…」



二人の子供

つまり、ファンさんとフォン君の事。

二人には村で奇怪な噂が広がっていたのです。

二人が村に来て間もなく、この村で死んだ者達が夜な夜な歩き出すと言う事件が起こっていたのです。

そして朝になると、二人の子供のいる家の前に転がっているのでした。


これは間違いなく、無意識に能力が発現していたのでしょう。

忌まわしき死霊使いとしての力が!

次第に養父母はそんな子供達を不可解に…

恐怖の目で見る様になったのです。


そして養父母は決意したのでした。


この子供達は自分達の本当の子供じゃない。

化け物の子供なんだ!

生かすも殺すも私達次第なんだ!

いや?むしろ二人をこのまま生かしていたら、この後どのような災いを呼び寄せるか解ったもんじゃないと。今まで育てて生かしてしまっていた自分達の手で責任を取り始末しなければと…


養父はナイフを手に子供達に近付いたのでした。

両親は子供達の顔にシーツを被せると、手に持っていたナイフを突き刺そうと振り上げる。


そして惨劇が起きたのです。

ナイフを振り上げた両親の背後から、動く屍が何処ともなく現れ背後から養父母を襲ったのでした。


「うぎゃあああ!」


死霊を動かしたのはファンさんでした。


「ごめんなさい養父さん…養母さん…だけど…私達は…まだ死にたくないから!死にたくない」



その後、二人の行く所々で次々と事件が起きていく。

二人の邪魔をする者を、その力で殺めていったのです。



養父母は二人を殺そうとした…

だから、殺した!

その後、生活のために働いていた店の店主は酒癖が悪く、幾度とファンとフォンに暴力を奮っていた。

だから、殺した!


二人が生きていく上で邪魔になる者や危害を与える者は容赦なく殺した!


そして…


人を殺す事に何も感じなくなった頃、二人は大僧正様に出会ったのです。

冷え切っていた二人の心が、大僧正様の優しさに触れて溶け始めていく。

そして二人の境遇を憐れみを感じた大僧正様は、二人の忌まわしい記憶に封印を施し、その力をも封印したのでした。


そのはずなのに金角と銀角の来襲…

二人は追い詰められた恐怖の中、封印されていた記憶と力が蘇ったのでした。



「私が養父母を殺した…この忌まわしい力で…そして、沢山の人を…」


「姉さん…僕達は生きていてはいけない存在…だけど!それでも生きていたいなら使えるモノは何でも利用し、邪魔者を全て排除すれば良いんだよ!それが例え『死者』であってもね。そうすれば僕達も生きていけるんだ!この能力は神様が僕達が生きて行くために与えてくれた贈り物だったんだよ」


「そうね…でも私はもう…」


「問題ないよ?だって僕にとってお姉ちゃんはお姉ちゃんだ!例え死者であろうとも何も変わらないよ!」


「フォン」


「姉さん」


二人はお互いの境遇を思い出していました。

そして、自分達の行いは仕方なかった事だと思い込む事で、今まで生きてこれたのだと…


「だから、何だ?」


そんな二人の境遇に対して、三蔵様は同情する事なく軽く言い放ったのでした。



「ふふふ…全ての不幸を背負っている様な口ぶりだな?」


「何だと!お前に何が分かるんだよ!」


「やはり、まだガキだな?忌まわしい能力のために両親に捨てられ、その後は養ってくれた養父母を殺しただと?生きたいなら使えるモノを利用していくだと?ガキが悟った様な事を言うもんだな!全くもってヘドが出るぜ!」


「キサマ!」


三蔵様の言葉にフォン君は完全に頭にきていました。


「自分達が不幸なら何をしても良いと考えるのはガキの発想だ!それで同情でもして貰いたいのか?誰も同情なんかしないぞ?世の中そんなに甘くはないのだからな。それどころか周りの人間達は益々お前達を恐怖し離れていくだけだぞ?それともお得意の死者を操り、寄せ集め慰めて貰いたいのか?」


「馬鹿にするな!僕にはお姉ちゃんがいる!」


「残念だが、お前の姉さんは既にこの世のモノではない!悪いが俺があの世に返させてもらう!」


「そんな事させない!させてたまるか!」


「お前の力は万能じゃない!いずれその姉さんも身体が腐り、精神を崩壊させ、人間とは違う、死肉を貪るだけの化け物になっていくのだぞ?そうなったら、もう誰も救えない。お前の我が儘で姉さんをそんな化け物にして良いのか?」


「うるさい!うるさい!うるさいんだよ!お前に何が分かるんだよ!」


すると三蔵様はフォン君を見つめて答えたのです。


「分かるさ!俺もまた同じ穴のムジナ!俺もまた親殺しの罪を背負い、孤独の世を歩んで来たからな!」


その断罪のように聞こえる言葉にファンさんは驚いたのです。


「えっ?」


「だが、俺にも悟った事がある。決して人は一人では生きてはいけないという事。どんなに強がっていても、人は何処かで温もりを繋がりを求めているという事をな!」


「アハハ!何だよ?結局、あんたも弱い人間だって事じゃないか?」


「弱いか…そうかもな…」



三蔵様は何か辛い記憶を思い出したかのように暗い顔をしていたのです。


そして、三蔵様はおっしゃったのです。


「弱いからこそ俺達は仲間を必要とし支えあうのだよ。辛い事も楽しい事も共有し、自分に足りない物を仲間同士で補いながら人は成長していくのだ。そして人は生きていけるのだ」


「それこそ、世迷い言ダァーッ!誰も僕達を解ってはくれない!誰も頼れない!誰も救ってはくれない!僕と姉さんは世の中から捨てられたんだ!」


「俺が救ってやる!」


「!!」


その言葉は重く強く熱くのしかかった。


「お前なんかに出来るものかぁー!」


しかしフォン君は迷いを振り切り、怒りで力が異常に高まっていく。


「さぁ!再び僕の力になれよ!金角!銀角!」


フォン君の頭上に邪悪な魂が妖気を纏いながら集まっていく。

その妖気は正しくファンさんが一度取り込んだ金角と銀角の魂に違いなかったのです。

先程の三蔵様の力で消滅してなかったのですね?


邪悪な二体の魂がフォン君に吸収されていく。

そして、フォン君からは凶悪な妖気が噴き出して来たのです。

背中から二つの狼の頭が盛り上がり、爪や牙が伸びる。

フォン君の身体が化け物へと変わっていく。



「チカラガ…ミナギル…コロシテヤル!ジャマスルヤツハ…スベテ…クイコロシテ…ヤル…!ボクタチヲ…リカイ…シナイヤツラ…ハ…ミナゴロシダァー!!」



フォン君は三蔵様の制止も聞かずに、金角と銀角の邪魂を己の体内に吸収させたのです。

フォン君の身体から凄まじい妖気が渦巻き始めていく。



「凄い力だ…ふふふ…あはは!この力で、お前達全員屍にしてやるよ!」



フォン君は妖気を掌に集めると、私達に向けて放って来たのです!


「うぐわあああ!」



放たれた妖気は渦を巻いて私達を吹き飛ばしたのです。



「三蔵!仕方ねぇよ!こうなったら俺様が転生変化して黙らせてやる!」

「待て!もう少し俺に任せてくれ!」


「三蔵がそう言うなら…でも三蔵が危なそうだと感じたら、今度こそ俺様が代わるからなぁ!」

「ああ」



三蔵様は私達を待機させて、再び妖気の嵐の中心にいるフォン君の元へ向かって行ったのです。


「フォン!あんまり手をやかせるなよ!」


「うるさい!」


ファンさんはフォン君の後ろで、ただ成り行きを見ていました。

その顔はどうしたら良いのか分からず、苦痛な表情でした。


「私達…どうしたら良いの?本当にこのままで良いの?私はともかく…フォンは…フォンはまだ生きているのに」



その時ファンさんは三蔵様が自分を見ている事に気が付いたのです。

三蔵様の目は「俺に任せろ!俺が二人とも救ってやる!」とファンさんに訴えているようでした。


「さ…三蔵様…」


その時、フォン君の身に異変が起きていたのです。

フォン君は妖気を圧縮させて、妖気の刃を作っていました。


「この妖気の刃で串刺しにしてやる!」


フォン君は振り上げようとした自分の腕が、自由に動かない事に気付いたのです。


「どういう事?身体が自由に動かない…あっ!」



すると、フォン君は身体を震わせて苦しみ出したのでした。


「うぐわああああああ!」


「フォン!どうしたの?フォン!」



フォン君を心配したファンさんが慌てて近寄ろうと駆け寄ると、フォン君はもがきながらファンさんを跳ね退け、そのまま白目を向いて意識を失ってしまったのでした。

ファンさんはどうする事も出来なく、倒れたフォン君を見て顔を両手で覆い、涙を流す事しか出来なかったのです。そこに、


「ファン!心配するな!」


三蔵様がファンさんの肩に手を置いたのです。


「三蔵様!フォンは一体?」


「フォン」



その時、フォン君の精神世界では?



「どうなっているんだよ?僕の言う事を聞けぇ!」


フォン君は怒鳴り散らしていたのです。

その相手とは!?

精神世界に響き渡るように、何者かの声がフォン君に答える。



《フフフ…クククッ…ニンゲン…ノ…ガキガ…イツマデモ…チョウシニ…ノルナヨ…》



「お前!僕のお陰でこの世に引き戻してやったのに!僕に逆らうなぁー!お前は僕の下僕だ!」



すると、精神世界のフォン君の目の前に巨大な狼の顔が現れたのです!


《オマエガ……シ…ノ…セカイ…ヨリ、オレヲ…ヒキモドシ…タ!…ヨミガエ……ラレル…トオモイ…

…イママデ…シタガッテ……イルフリ…ヲシテイタ………》



フォン君の目の前に現れた狼の顔は、間違いなく金角の邪魂だったのです!


「が、それも…これまでだぁーー!!」


「!!」



フォン君の身体はまるで金縛りにあったかの様に動けなくなったのです。

すると目の前に浮かぶ狼の顔は金角の姿へと変わっていく。



「何だよ?これは!僕に何をした?僕を放せ!金角!お前なんか僕がいなければ存在すら出来ないのだぞ!」


「フフフ…人間のガキごときが俺の魂を支配出来ると思ったか?調子に乗るから馬鹿をみるのだ!今からお前の精神を喰らって、お前の身体をも乗っ取ってやろう!俺はお前にとって代わり再び甦るのだぁ!」


「そ…そんな…そんな馬鹿な…そんな事出来るはずない!嫌だ…やめろ!やめろー!」



再び巨大な狼の顔となった金角が、身動き出来ないでいるフォン君を喰らおうと口を広げ吸い込もうとする。フォン君は狼の口の中に吸い込まれまいと、抗い逃げようとする足が動かない…

これは恐怖からでした。

フォン君はなすすべなく泣き叫ぶ。



「嫌だ…死にたくない…死ぬのは…嫌だぁ!僕は死にたくないんだぁー!」



その時です!


「気をしっかり持て!フォンよ!」



フォン君は声の主に腕を掴まれ、力強く引っ張られたのでした。


「えっ!?」


そこに現れたのは金の錫杖を構え立つ三蔵様だったのです。




現実世界では三蔵様が倒れたフォン君の身体を抱き抱え、その手を握りながら目を綴じて念仏を唱えていました。三蔵様は己の精神(魂)を、フォン君の精神(魂)の中へと送り込んでいたのでした。


「何故こんな無茶すんだよ」


孫悟空兄貴は心配していました。

私達はフォン君達に出会う前から、三蔵様に言われていた事があったのです。


それは・・・


「今回、俺は少し無茶をするだろうが、お前達は何も言わずに黙って見ていてくれないか?」と…



三蔵様が私達に頼み事をするなんて珍しい事であり、

私達はその指示に逆らう事なんて出来るはずがなかったのです。







場所は変わり再びフォン君の精神世界。


「何故お前が?」


「言ったはずだぞ?お前を救ってやるとな!」


「馬鹿か!僕はお前を殺そうとしたんだぞ?」


「ん?そんな小さい事気にするな?俺の言う事をきかず、我が儘で、強情っ張りな奴には普段からうんざりするほど悩まされているからな!もうすっかり慣れているのだ!むしろお前の方が可愛いもんだぞ?」




現実世界でクシャミをする孫悟空兄貴。


「?」


すると狼の姿をした金角が、三蔵様とフォン君に迫って来たのです。



「フォンだけでなく憎き三蔵まで現れるとはな!お前逹みたいのを飛んで火に寄るお馬鹿者と言うのだ!」


「それは夏の虫だろ?」


「ですよね?」


「………」



沈黙の後、


「お前達まとめて喰らってやろう!」


逆切れして襲い掛かって来たのです。


「うわあああ!また来たぞ!」


「俺にしっかり掴まっていろ!フォン!」



フォン君は言われるがまま三蔵様に抱き着いたのです。


「!!」


フォン君はその時、三蔵様の力強さ?熱さ?人の温もりみたいのを肌で感じたのでした。




「臨!兵!闘!者!解!陣!烈!在!前!」



三蔵様は素早く九字の印を結ぶと、


「さぁ!フォンの身体より出て行くが良い!亡霊金角よ!」


『破邪退魔法!』


三蔵様の印より凄まじい閃光が放たれると、狼の顔(金角の亡霊)は光に飲み込まれるかのように消えていったのでした。

フォン君はその時、自分の中に何かが流れ込んで来るのを感じたのでした。



「えっ?これは何?何かが僕の頭の中に…いや?魂の中に入り込んで来る??」



それはフォン君と三蔵様の魂が繋がっていたため、三蔵様の魂に刻まれていた記憶がフォン君へと流込んでいたのです。


そこには、知らない世界に住む幼少期の三蔵様と両親らしき夫婦の姿が見えたのです。

夫婦は幼い三蔵様に向かって何かを叫んでいた。



「お前が死のうと関係ない!いや…俺が殺してやる!化け物のガキが!」


金属バッドで何度も幼少の三蔵少年を殴りつける父親らしき人物。


場面が変わり、一人の女が震えながら三蔵少年を見て


「いや…こっちに来ないで!お前なんか知らない!嫌!来るな化け物!近寄るなぁ!お前なんか消えてしまぇ!」


フォン君は意味が分からないまま、意識に入り込んで来た三蔵様の過去を見ていたのです。


更に場面が変わる?



「なぁ…あのガキだぜ?親を殺した悪魔のガキってよ!」


「近寄ると呪われるぞ!くわばらくわばら…」



三蔵少年に陰口を言い一人一人去っていく者逹。

次第に孤立し誰も三蔵様に関心を持たなくなっていく。

やがて三蔵様は闇に心を蝕まれていった。




「うわあああ!俺は…殺したくないんだ!近寄るな!誰も近寄るな!俺に近付けば誰であろうと殺してしまう!呪われている。俺は愛する者の運命まで不幸にしてしまうんだ!!!」



しかし、そのような過去はまだ序の口だったのでした。


雨の中を膝をつき天に向かって泣き叫ぶ若い三蔵様。



「どうして…俺なんかのために…皆…死ななきゃいけないんだよ…俺は…俺は…もう誰も愛せない…」



更に地獄の様な辛い記憶がフォン君の中に流れ込み、

フォン君は初めて他人のために涙を流したのでした。




(…同じだ…いや…この人は…僕なんかよりも…もっと!なのに何故?この人はこんなに強くいられるの?)




すると闇に閉ざされた記憶の中に、流れ込んで来た僅かな暖かい光が見えたのです。

それは孫悟空兄貴や仲間達との旅の記憶…

辛く険しい事もあった。

しかし、共に乗り越え、今ここにいる。


人は一人ではない!

足掻きもがき、それでも信じて伸ばす手は、必ず誰かが掴み返してくれる。

それを三蔵様に教えたのは、三蔵様を支えるかつての友人らしき四人の男逹の手でした。


その中心に…

美しい長い髪の女性が三蔵様に向けて優しく微笑み返していたのです。



そして、もう一人?

幼少期の三蔵様の前に現れる…


老人の姿!?





「あの老人は?まさか…そんな!?そうか…そうだったのか!)



その時、フォン君は何かを悟ったのでした。



「僕は…死ねない…生きなきゃいけないんだ…僕は…僕は…ハッ!」




そこでフォン君は目覚めたのです。

目の前には三蔵様が見つめていたのでした。


「気分はどうだ?」


「悪夢から覚めた感じ…かも」


「フォン!」


目覚めたフォン君にファンさんが泣きながら抱きしめたのです。



「お姉ちゃん…僕」

「フォン!もう良いのよ!良いのよ!」

「うわあああ!!」



二人は抱き合いながら泣き出したのでした。


そこに異様な気配が感じられたのです。



《シナヌ…オレハ…シナヌゾ!》


禍々しい妖気が集まっていき、私達の目の前に現れたのです。


「なっ!?」


驚く事にそこに現れたのは、完全に消滅したかと思われていた金角の怨霊だったのです。

そして辺りに放置されていた屍達を念力で一カ所に集めると、巨大な肉の塊を作り上げたのでした。


「あわわ!」

「しぶといらよ!」


金角の怨霊は肉の塊を宙に浮かばせると、その中に同化していく。

次第に肉塊は狼の顔へと形作っていったのです。

そしてその牙が三蔵様目掛けて向かって来たのでした!


「ガアアアア!」


「しぶとい奴め!」


三蔵様は印結び不動明王を召喚しようとしたのでしたが、


「なっ!?」


三蔵様は自分の眼に激痛を感じたのです。

一体何が?

その痛みは一瞬でした。

三蔵様はすかさず体勢を整えようとしましたが、狼の姿へと変わった金角の牙が、既に三蔵様の前にまで迫って来ていたのです。


(ヤバイ…間に合わん!)


三蔵様は一瞬死を覚悟しようとした時!



「何を諦めてんだよ?三蔵!」



そこには襲い掛かる金角の狼の頭を片手一本で押さえつけ、余裕の表情で笑みを見せてた孫悟空兄貴が立っていたのです。

しかも、その姿は間違いなく…


「猿…お前、その姿は?」


孫悟空兄貴の姿は『転生変化』した少年の姿へと変わっていたのでした。


「お前…自力で転生変化したのか?」


「ん?あっ?」


どうやら孫悟空兄貴は無意識に転生変化していたのです。


「とりあえず…この犬コロを始末しないとな!」

「ウガアアア!離せぇーー!!」



孫悟空兄貴は片手で狼と化した金角を持ち上げ、一気に地面に叩きつけたのでした。


「グゥッハァ!」


大地にめり込む金角に、


「あんまり何度も手間かけさせるんじゃねぇぞ?今度は二度と復活出来ないように百パーセント完璧見事に消滅させてやんよ!」


孫悟空兄貴は金角に向けて中指を立て、



「さぁ!俺様の前にひざまずけ!」



一気に中指を下げたのでした!

孫悟空兄貴は叩きつけた金角を上空に放り投げると、両手に集めた巨大な妖気弾を金角に向けて放つ。


「ハアーーー!!」


妖気弾は金角を飲み込み、


「うぎゃあああ!」


今度こそ完全に消滅させたのでした。




それを見届けた孫悟空兄貴の姿は、再び猿の姿に戻っていたのです。

これで完全に妖怪盗賊金角と銀角をたおせたのですね。





その後、私達は場所を変えてファンさんにお別れをしていたのでした。


「では、良いな?」


「はい」



三蔵様はファンさんに向けて念仏を唱えていました。

ファンさんは一度死んだ身なので、このまま放ってはおけません。


「皆様…迷惑をかけた私達に…何て感謝をすれば…本当にありがとうございます…」



ファンさんは涙を流しながら、三蔵様に感謝をしていました。


「姉さん」


「フォン…私は死んで消えても、いつまでも貴方と一緒にいるわ。私達は離ればなれにはならないから」


「うん…」



フォン君は涙を流してファンさんを見つめていました。



「フォンの事は心配するな!俺達が後の事は必ず責任持とう」


「何から何まで…」

「僕は姉さんの分も強く生きるからね…だから、心配しないで…お姉ちゃん!」


「いくぞ?」



三蔵様は念仏を唱えていくと、ファンさんの身体は光に包まれながら宙に浮かび静かに消えて逝ったのでした。


「サラバだ!」



三蔵様は念仏を唱え終えた後、残されたフォン君を改めて寺院に預けたのでした。

そして私達も再び旅に出たのでした。





フォン君は立ち去る私達を見届けた後、一言何かを呟いたのです。




「三蔵様…遠い未来、次にまた会う時は…

必ずこの恩と償いをさせて貰いますから…それまで・・・」



『再会』   

※サイチェン


次回予告


沙悟浄「金角と銀角の話からフォン君とファンさんの話への展開!更に三蔵様の過去が少しばかり覗けた今回の話は、後々語られるであろう物語への伏線話だったのです。その話まで忘れないでいてくださいね?」


孫悟空「また、読めば良いだろ?」


沙悟浄「身も蓋もないことを~」


八戒「・・・・・・」


沙悟浄「あれ?珍しいですね?八戒兄貴が大人しいなんて?」


八戒「いや、次話はオラにとてつもない不幸が降りかかるみたいなんら・・・」


沙悟浄「自業自得なんじゃ?」



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