熔岩魔王の正体!太古の神の逆襲?
牛角魔王と玉面魔王が倒れた。
そこに熔岩魔王の前に出たのは、蚩尤!?
俺様は美猴王
俺様達は熔岩魔王を相手に戦っていた。
本来なら俺様と鵬魔王との聖獣変化で何とかなると思っていたが、初っ端で鵬魔王が倒されてしまったのだ。そして要の牛角魔王までもが一騎討ちに敗れ、怒る俺様達。
さらに牛角魔王を倒されて怒りに身を任せ禁忌の力を解放させようとした玉面魔王だったが、その命が危うくなった時、彼女を救ったのは蚩尤だった。
「はぁ…はぁ…」
蚩尤は震える身体に鞭を打ち、目の前の熔岩魔王を睨んでいた。
そして熔岩魔王が自らの過去と因縁があると気付いたから。
「て…テメェは何者だ?どうして俺を狙う?教えろ!テメェは俺と以前会った事があるんだろ?殺気が怖いんだよ!」
「………」
「何とか言え!テメェは何者なんだ!」
「今消える者に何も語る事はない」
熔岩魔王がゆっくりと燃え盛る熔剣を振り上げる。
そこに俺様と砂塵魔王が飛び出して助けに入るが、熔岩魔王の振り上げた熔剣は俺様と砂塵魔王に向けて払われたのだ。
俺様と砂塵魔王の足下に熔岩が飛び散ると、地面が割れ熔岩が噴き出し壁となって道を塞がれたのだ。
「ぐわぁ!と…通れねぇ!」
「砂嵐!」
砂塵魔王が噴き出す熔岩を砂嵐で消し去ろうとするが、熔岩の勢いは凄まじく消す事は出来なかった。中に閉じ込められたのは蚩尤と気を失った玉面魔王だった。
「助けは来ないか。こうなれば破れかぶれだ」
蚩尤は剣を構えて熔岩魔王を警戒する。
「お前を制裁する事が出来なかった。それが我が人生唯一の汚点だった」
「!!」
やはり蚩尤と関わりがあったのか?
「テメェが何者か知らねぇが、俺は死なねぇ!そして牛角兄者も必ず甦るはずだ!あの兄者が死ぬもんかぁー!」
蚩尤が剣を握り熔岩魔王に向かって斬りかかるが、その剣は熔岩魔王の熔剣によって弾かれ飛ばされてしまった。
「あっ…あぁ…」
そして、降り下ろされた熔剣が蚩尤の全身を傷付けた。
肉が焼けて血が噴き出す。
だが、意識は残っていた。
熔岩魔王は蚩尤を痛ぶっているのだ。
「はぁ…うっ」
蚩尤は自分の後ろで倒れている玉面魔王を横目で見ると、何を思ったのか熔岩魔王に向かって土下座をしたのである。
「何のつもりだ?」
「俺はどうなっても構わねぇ…だから玉面魔王だけは見逃してくれ。頼む…玉面魔王だけは!」
熔岩魔王は蚩尤を見下ろして言った。
「見苦しい。お前達を生かす理由は無い」
そう言って熔剣を振り上げた時、
「…だろうな」
蚩尤は飛び上がり、油断した熔岩魔王の顔面を掴んだのだ。
そして腕力の力を使い、熔岩魔王の顔面を潰した。
『超握力!』
熔岩魔王の顔面が砕けた。
そして、顔を隠すように後退する熔岩魔王は、その覆う指の隙間から睨み付けていた。
着地した蚩尤は、その時僅かに見えた熔岩魔王の顔に狼狽えた。
「まさかとは思っていたが…やはり…テメェは!」
蚩尤は熔岩魔王の正体に気付き、今度は戦う事を放棄したのだ。
蚩尤こまで俺を…憎んで…地獄から、甦って来たと言うの…か…?」
放心状態の蚩尤に、顔を僅かに晒された熔岩魔王が狂気と化した妖気を立ち込め、蚩尤に迫る。
このままでは、蚩尤が間違いなく殺される。
熔岩魔王は拳に灼熱の妖気を籠められると、
「許さん!この手で完全に息の根を断ってやろう!」
熔岩魔王の灼熱の拳が今度は蚩尤の顔面に迫った。
が、蚩尤は目を見開いたまま動けずに呟いた。
「あ…兄…者?」
寸前で熔岩魔王の拳は、行く手を塞いでいた熔岩の壁に飛び込んで来た牛角魔王によって腕を握られ止められたのだ。
「やっぱり生きていたんだな?兄者!」
「待たせたな?蚩尤!」
「………」
「俺もお前の正体が解ったぞ。俺を殺さずに仮死状態にした挙げ句、我が弟蚩尤に対しての憎しみ…もう正体を現せ!熔岩魔王…否!」
牛角魔王は熔岩魔王の掴んだ腕を振り上げ、闘気を籠めた逆の拳で殴り飛ばしたのだ。
熔岩魔王の身体はその威力で後退した所を、
「その邪魔な岩の鎧を脱ぎ捨て姿を現して貰うぞ!」
牛角魔王の二刀が抜かれた。
『二刀返三角刑!』
その斬激は熔岩魔王を覆っていた熔岩の身体を粉砕した。
すると熔岩魔王を覆う身体が失われて、中から鎧を纏う別の姿が見え隠れする。
あの熔岩魔王の姿は仮の姿だったのか?
真っ赤な灼熱の鎧を纏った者が姿を現した。しかも、その者から発する炎からは妖気だけではなく、それとは違う異質の気が感じられたのだ。
それは…
神の持つ神気!?
蚩尤はその正体に震えていた。
マジに何者なのだ?
俺様と砂塵魔王は、離れた場所から牛角魔王達と熔岩魔王の様子を見ていた。
直ぐに救援に出たいが、牛角魔王が目覚めた時に再び止められたのである。
「何だよ?あれが熔岩魔王の正体なのか??」
「…のようだ?俺もビックリして頭が痛い…容量オーバーだ…」
「しかも奴から感じる気は妖気じゃないぞ?」
「あれは神気?いや?魔神族の気に近いな?まさか??」
「何か心当たりあるのか?」
「うむ。本来この地上は俺達七十二魔王が支配する以前、魔神の一族が地上を支配していたと言う」
「魔神の一族?」
聞いた事があるぞ?
確か牛角魔王と蚩尤は魔神の一族の末裔だったはず。
つまり、熔岩魔王は二人の関係者なのか?
「やはりお前だったか…」
「………」
「かつて我が父、神農に従える将軍であり俺の師!太陽神炎帝・祝融!!」
「………」
ちょっ?ちょっ?
熔岩魔王が牛角魔王の師だって?
しかも、かつて地上界を支配していた太古神だと?
「まさかお前が地上界を支配する魔王になっていたとはな。権力を欲したか?祝融」
そして熔岩魔王、いや?祝融が口を開く。
「お久しぶりです。軒轅様」
軒轅とは牛角魔王の本名らしい…
「軒轅の名はもう捨てた!俺は牛角魔王だ!」
「ならば牛角魔王様、貴方に申し上げる」
「?」
「我と共に再び地上界を支配しよう。この地上界は既に魔王体制が崩壊したと言えよう。ならば、これから先は私と貴方で統べるのです」
「何を言っているか解らんぞ?」
「再び神農様の末裔が地上界を牛耳るのです」
「かつての栄光にすがるか?俺には世界は興味ない」
「まだそんな事を言っておられるのか?魔神族の末裔の誇りはないのですか?」
「誇りか…俺にも誇りはある!俺は天界よりの支配から解き放たれるために戦っている。魔神族末裔として、天界に支配されて何が誇りだ!」
「天界に謀反だと…何を言い出すかと思えば愚かな。それにまだ、そこの異端の者を生かしているとは…」
異端の者とは蚩尤の事であった。
「かつて神農様の命令により私が手にかけ損ねた唯一の心残り…まだ生きていたとはな。だが、この場にて再び私の手で始末してやろう」
祝融が蚩尤に熔剣を向けると、牛角魔王が熔剣を弾く。
「また邪魔をするのですか?その者を生かして置けば、いずれ貴方の身をも滅ぼす災いとなると教えたでしょ!」
「蚩尤は俺の弟だ!手は出させん!それにお前の事は噂で聞いたぞ。お前もまた父、神農が地上界政権を失った後、兵を率いて天界と戦争をし戦死したと聞いていたが」
「ふっ…」
「ならば逆に祝融!俺達と共に再び天界を相手に戦おう!」
すると祝融は間を開けた後に言った。
「何を馬鹿げた事を言っておられるのか。貴方は天界の恐ろしさを何一つ解ってはいない。私はこの身を持って知った…天界には逆らえぬと」
「それで天界に尻尾を振り、地上界の支配とは名ばかりの門番で満足しているのか?」
「どうやら口で言っても解らないようですな?ならば力を持って粛正するのみ!」
「もとよりそのつもりだ!」
牛角魔王と祝融との間で凄まじい覇気がぶつかり合う。
が、その力の差は大きかった。
「牛角魔王を助太刀するぞ!」
俺様も我慢出来ずに飛び出そうとしたが、
「美猴王!身内の問題だ!俺が決着を付けると言ったはずだ!」
牛角魔王の迫力に怯む俺様は、
「解った…今度は負けんじゃねぇぞ?」
「三度目の正直だ!」
牛角魔王は刀を振ると、気合いを籠める。その瞳は闘志に満ちていた。
任せたぜ?牛角!
牛角は突っ込むと祝融に目掛けて連続の斬激を放つが、祝融は全ての斬激を熔剣で弾き返す。
「温い…長らく戦場から身を引いていたツケが回っているな。あの頃の貴方は今の何倍も強い!」
牛角魔王は素早い動きで左右から横移動し刀を振り上げ、振り払う。
そして、首もと目掛けて突き出した。
それも祝融に軽々弾き返され、祝融の人降りから放たれる圧力に堪えるだけで精一杯だった。
「腑抜けの魔王と呼ばれるわけだ。本来なら一桁上位の実力を持ちながら、引き込もっていた時間が腕も刃も錆び付かせたな?」
「ぬかせ!」
牛角魔王は獣神変化し、その力は格段と跳ね上がっているはず。
祝融は牛角魔王の師であった。
牛角魔王の剣技は祝融から学んだのだ。
牛角魔王の剣筋は全て読まれているのだ。
「どれだけの才を持とうとも、錆び付かせれば積み重ねた鍛練には敵わぬ!私は今日まで欠かさず力を磨き、今の地位を掴んでいるのだからな!」
「フンヌゥオオオ!」
「まだ解らぬか?気合いや根性では埋められぬ」
祝融が力を籠めた横一閃の降りに、牛角魔王の受け止めた刀が砕け散った。
「!!」
「己の愚かさに死ぬか?牛角魔王!」
祝融が膝を付いた牛角魔王にトドメの一撃を降り下ろした時、
「!!」
牛角魔王を庇って飛び出した蚩尤が、祝融の熔剣にて斬り裂かれたのだ。
「し…蚩尤?」
蚩尤は血を噴き出させながら牛角魔王に振り向き言った。
「やっ…やっと…兄者をま…守れた…俺は満足だ…だから兄者は…生き…て…」
その言葉を残して蚩尤は崩れ落ちるように倒れ、動かなくなったのだ。
「あっ…あぁ…し…蚩尤?嘘だろ・・・?」
「うわぁああああああああああああ!」
その時、牛角魔王の中で何かが弾けた。
次回予告
牛角魔王の力が覚醒?
その力は破壊的??




