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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
天上天下・美猴王伝説!
421/424

蝕の民の生き残り!

牛角魔王が熔岩魔王によって倒された。


怒りに震えるのは、美猴王と・・・


俺様は美猴王…


俺様の目の前で、蚩尤を庇った牛角魔王が熔岩魔王の熔剣に貫かれた。


蚩尤が牛角魔王の身体を揺らして泣き叫んでいた。


ぎ…牛角?


「要らぬ命を庇い再び過ちを犯し、ついには自ら死を選ぶとは…とんだ馬鹿者だ!」


何だと?


熔岩魔王は倒れた牛角魔王を見下ろして呟いた。

俺様の額に青筋が浮き出て来て、怒りと共に覇気が爆発した。


「許さんぞぉお!」


俺様は熔岩魔王に向かって行く。

拳と足を石化させて闘気を纏い熔岩魔王の顔面を殴り付けたが、微動だにしない熔岩魔王は俺様の顔面を掴むと、燃え盛る握力で握り潰そうと力を入れる。


「うぎゃああ!」


俺様は顔面を掴まれる瞬間に顔面を石化させていたために火傷は免れた。

俺様の危機に砂塵魔王が助けに入る。


「砂十刑」

※スナドケイ


砂が舞い散り熔岩魔王の周囲を回り出すと、熔岩魔王を覆い隠す。

そして凝固しながら閉じ込めたのだ。


「その中では妖気を全て吸収され、干からびて死すのみ!」


すると砂玉から美猴王が飛び出して来る。


「何とか助け出せたな?しかし…」


砂玉が真っ赤に熱っせられて、木っ端微塵に粉砕し、中から熔岩魔王が平然と抜け出る。

やはり抜け出して来たか。

俺様は石猿だから砂塵魔王の結解の中でも自由に動けたが、他の者は妖気を奪われて、

その身体が干からびて死んじまう恐ろしい技なのだが。


「はぁ…はぁ…」




しかし…


倒れた牛角魔王には玉面魔王が駆け寄り、治癒を施していたが牛角魔王は動かない。牛角魔王の死を認めたくない玉面魔王は涙を流していた。



「ぎ…牛角…様…あぁあああああ!」


直後、玉面魔王の妖気が今までにない解放を見せたのだ。



「許さぬ…許さぬぞぇ…妾の…牛角様を…妾の牛角様ぉおおお!」


玉面魔王の足下から水が溜まり出す。

熔岩と触れた瞬間に蒸発して水蒸気が覆っていく。



「あっち!近寄れねぇぞ」



堪らず俺様達は避難した。

蚩尤も牛角魔王の身体を背負い、無我夢中に走る。


「玉面魔王よ。死ぬ気か?」


「死ぬ?牛角様を失った妾に…生きる理由が何処にあろうか?妾の命に代えてでもお前を…殺してやるわ!」


「その身の封印を解き放つつもりか?ただし一度解かれた封印はその身の魂すら残さず消し去るのだぞ」


「言ったであろう?この命惜しくないと!」


「やむを得ん。貴重な特別種であったから生かして置いていたが、こうなれば封印が解かれる前に消し去ってやろう!」



『蝕の民の生き残り』



「………」



蝕の民の生き残り?


その言葉に砂塵魔王が反応して興味深く呟いた。


「玉面魔王が蝕の民の生き残り…噂はされていたが、本当であったとは…」


「知っているのか?蝕の民とは何だ?」


「蝕の民とは…」



かつて天界と地上界との間で人間を交えた大戦があった。

人は『仙』の力を持ち、稀に神をも凌駕する者達が現れ脅かす存在になった時、神はそれを許さなかった。天界は人間界の戦争に神々を派遣し、収集の付かない戦争へと拡大していく。

後の仙界大戦であった。


その戦争を終わらせるために最高神は禁断の力に手を出してしまったのだ。


だが、その禁忌の力には特別な体質の者が必要だった。

その時、目を付けられたのが蝕の民と呼ばれる一族であった。

蝕の民は禁忌の力を与えるために育生された民であり、民の中から禁忌の力を与える予定であった。が、それを知った人間達の軍により、蝕の民が住む村が襲われ全滅させられたのだ。


が、生き残りがいたのだ。


それは幼い少女…


玉面であった。



生き残った玉面は神々に幽閉され、人体実験を繰り返された。

唯一の生き残りである玉面を強引に禁忌の力に適合させるため。


それは、まだ少女であった玉面には心を閉ざすには十分で有り、それも自我を失わせ神々の命令のみに動く人形とするためだった。


神々の英雄と祭り上げて戦う傀儡の如く…


だが、人間の中より『仙』を持った者達がその情報を知り、再び襲って来た。


今度は玉面のみを標的として…


玉面は震えるしか出来ない子供だった。

幽閉されている真っ暗な牢獄で、怯えて蹲り、涙を流して恐怖するしか出来ない弱き者。


ついに仙術を持った侵入者が玉面に迫った時、玉面の髪は恐怖で白く変わり果て、発狂した。


その時、玉面に出されていた餌と一緒にあった一杯の水を入れたコップが揺れる。

中身の水が浮き出し、それは水玉弾となって侵入者を貫いたのである。

その後、玉面はゴタゴタに紛れて逃走した。


後に玉面魔王として世に出て来た時も、玉面が蝕の民の生き残りだと知っていたのは金剛魔王と熔岩魔王、それに蛟魔王のみであった。


玉面魔王は魔王と成った後も、他の魔王とも接触を断っていた。




誰とも関わりたくない…


いや?怖いのだ!


一桁クラスの力を持っていようとも、他が恐れる力を持っていようとも、かつてのトラウマが関わる事を拒絶し身を震わせる。


自ら造った昆虫妖怪を配下に城を守らせ、領地という狭い空間でのみ生きる。



「それが、あの日…」



玉面魔王は一度、外に出た事があった。


天界の命令より、地上界にて起きた騒ぎを静めろと言うのだ。

魔王となった玉面は天界に狙われない代わりに、地上界で騒がす危険種の討伐を任されるのだ。

玉面魔王が来た場所は北の大地の、牛角魔王の領地だった。


牛角魔王は当時、腑抜けの魔王と噂されていた。

そこに今、天界より墜ちた神が転生した化け物が暴れているらしいのだ。



「そのような化け物など、その腑抜け魔王に任せれば良いのに…」


その化け物は直ぐに見付かった。

天界の武神が神堕ちし、記憶の混乱から妖怪化した後に無差別に暴れ回っているのだ。


狂気と化した化け物は玉面魔王を苦しめた。

水玉で身体を貫いても再生し、油断した玉面魔王の足を掴み食らおうと牙を向けたのだ。


「!!」


が、化け物は一刀両断にされ、気付いた玉面魔王は何者かによって抱きかかえられていた。



「なぁ?離…離せ?妾に…何て…不埒な」



が、玉面魔王は相手の顔を見て動けなくなった。

鼓動が高まり、頬が熱くなる。


これは?


その者は玉面魔王をその場に残すと、何も言わずに去って行った。


その者は、漆黒の鎧を纏った謎の戦士だった。


後に、女妖怪の座をかけた戦いで蛟魔王と幾度と争った時に知る事になる。

何故か互いの運命に気が合ったせいか蛟魔王と休戦した時に聞いたのだ。

漆黒の鎧を纏った魔王の正体を。


それが腑抜けと噂された牛角魔王なのだと…




「妾の生きる意味を奪ったお前を許せん!この力を使って貴様を殺してやる!」



肝心の禁忌の力は別の者が代わりに触媒となったと言う。

噂名高い妲姫と呼ばれる九尾の妖狐。

が、玉面魔王には禁忌の力こそ手に入れてはいなかったが、それまでに禁忌の力の欠片を僅かながら身に埋め込まれていたのだ。



『その力、天地をひっくり返し、世界を滅ぼす禁忌』



「あの方のためになら、この命!惜しくはない!」



直後、玉面魔王の鼓動が高まり、息が荒くなり、玉面魔王の身体から感じた事のない力を感じる?あれが禁忌の力??



「ハァアアア!」


何かヤバい?

熔岩魔王とは違う別の身震いする力を感じるぞ。


が、


「…アッアア?」



突如、玉面魔王の力が抜けるように弱まっていく。



「ふふふ…長きに渡り封じていた力を、お前の我が儘で自在に操れると思っていたのか?それほどの力を何の鍛練も無しに使いこなせるとでも思ったのか?」


「くぅ…」


「いや?違うな。お前は無意識に己の力の解放を恐れ閉じ込めているのだ!」


「!!」




玉面魔王は膝を付く。

熔岩魔王の言葉は出鱈目ではなかった。

無意識に己の力を拒んだのだ。

己の情けなさと無力さに膝を付く玉面魔王に、熔岩魔王が熔剣を振り上げる。




「貴重な素材として残して置くつもりだったが、もはや無用」


「………」

(素材…妾は今も尚、物だったって事か…)



玉面魔王は涙を流して死を覚悟した。


惨めな死に様…


熔岩魔王の熔剣が降り下ろされ、その剣先が玉面魔王の頭上に下ろされた。



「!!」


しかし熔岩魔王の熔剣は玉面魔王の眼前で止まっていた。


「?」


直前で熔剣が止められていた。

何者かが割って入り剣で受け止めたのだ。

その者は、


「ぎ…牛角様…」



そこで玉面魔王は力の解放の負荷で意識を失った。

だが、熔岩魔王の熔剣を止めたのは、



「ぐぅ…俺が玉面さんを…」



飛び出して玉面を守ったのは、蚩尤だった。



「…恐れずに向かって来たのが、お前とはな?忌まわしき異端の子よ!」


「!!」


蚩尤の身体に寒気が走った。

恐怖に身体が震える?

それは熔岩魔王の威圧感ではなく、熔岩魔王の発した『異端の子』と自分を呼んだ事であった。

蚩尤は、熔岩魔王に向かって叫んでいた。


「俺は…お前を知っている…お前は?まさか?」



熔岩魔王と蚩尤の繋がり?

それは牛角魔王とも繋がる運命の因縁であった。

次回予告


蚩尤は熔岩魔王の正体に気付き始めた。


それは、過去の因縁?


だが、蚩尤に熔岩魔王の熔剣が迫る!

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