突撃金剛魔王の城塞!勝算は鵬魔王の策?
傷ついた仲間、疲弊し、それでも美猴王は?
俺様は美猴王。
俺様達はギガノ率いる妖恐、中央にいる地上界ナンバー3の熔岩魔王、更に俺様達が向かう一桁ナンバー2の金剛魔王との乱戦の中を生き残った。
だが、その場にいた兵士達は皆、脅えたまま。
そして牛角魔王までも熔岩魔王の熔剣に斬られ目覚めないでいる。
「牛角の兄者…起きてくれ…起きてくれええ!」
「うっ…うっ」
泣きじゃくる玉面魔王と蚩尤。
剛力魔王は何も出来ずにいた無力な自分を責めていた。
「姉様…」
「私、無力。不甲斐、ない」
刀剣魔王は三妖石との戦いと、妖恐プテラとの戦いで牛角魔王と同じく戦線離脱する事にした。
「ふぅ…」
俺様は立ち上がると一人、瞑想している。
強い…
金剛魔王を目の当たりにして感じた桁違いの力。
更に妖恐の連中や、牛角魔王を倒し中央の地に戻った熔岩魔王。
全く勝てる気がしねぇ…
だが日が明けて俺様は立ち上がると、如意棒を手にし握り締める。
すると背後から俺様に向けて声がした。
「本当に行くつもりなのか?あの金剛魔王様に本当に勝つつもりなのか?」
それは砂塵魔王だった。
「お前が力の差に気付かないわけないだろ?今なら俺が金剛魔王様に取り持ってやろう?」
「悪いな?気持ちだけ貰っておくぜ。だがよ?今、ここで俺様が退いたら今まで俺様に着いてきた仲間達に…死んでいった仲間達に顔向け出来ないんだよ」
「仲間達のためか…それを聞いたら、私もお前の友人として覚悟を決めないといけないな…」
「力を貸してくれるのか?」
「俺は公平を期すためにどっちにも手を貸さない!そして勝った方に俺を豪華商品として献上するつもりだ!これが俺の友としての覚悟だぁ!」
ゴォチン!
俺様は砂塵魔王の後頭部を殴り黙らせた。
「戦う気が失せるわ!」
だが、頼りの牛角魔王も獅駝王もいない。
蛟魔王も戻らないまま勝算は…ゼロだ。
と、そこに?
「美猴王…」
「ん?鵬魔王?どうした?」
「ちょっと…相談があるんだけど…美猴王?少し時間良いかな?」
そこに砂塵魔王が起き上がり叫んだのだ。
「あいつー!」
「?」
「俺と同じ臭いがする!同じ友達いない奴に間違いな…」
鵬魔王が友達いない臭を感じ取って砂塵魔王が仲間意識持つ。
が、とりあえず殴って黙らせた。
何かと思えば、ボケてるんじゃねぇよ!
「で?鵬魔王。相談って何だ?」
「それはね・・・」
さてさて、そんな訳で俺様は戦いの準備を終えて、戦場に出向く。
あっ…
俺様の目の前に六耳が待機していた。
六耳が俺様に軍の状況を伝える。
「美猴王様!既に金剛魔王の城を中心に十万の兵士が囲んでいますッチ!」
俺様達が砂塵魔王の城から地下通路に向かっている時、総勢十万の軍は先に別のルートから金剛魔王の城に侵攻させていたのだ。
金剛魔王の軍は既に仲間達が制圧して、残すは金剛魔王のみであった。
水廉洞闘賊団には俺様達に寝返った魔王が他にもいる。
砲丸魔王、亜騎馬魔王、豪快魔王だ。
それに三猿達[気火猿、岩猿、水猿]が協力し先導していた。
六耳には[本来なら鵬魔王もだったのだが…]全指揮を任せていたのである。
俺様の目の前には十万近くいる水廉洞闘賊団が揃い、今か今かと戦場に出向く準備をして俺様を待っていた。これから闘う相手は難攻不落の妖魔王・金剛魔王。
その力はかつて地上界を一人で統べる程だ。
だが、俺様の軍は誰一人逃げる事なく集ったのだ。
マジに心強い!
「どいつもこいつも馬鹿ばっかだな」
俺様は全軍に向かって叫んだ。
『水廉洞闘賊団!出陣!』
全軍が金剛魔王の城に向かって突き進んだ。
既に金剛魔王を守る者は残ってはいまい。
金剛魔王の城は全方向からの攻撃に崩れ落ちていく。
だが、その廃墟と化した城の中心に立っている者がいた。
間違いなく金剛魔王だ。
「馬鹿な連中だ…この私の城を崩壊させた罪は死をもって償うが良い」
金剛魔王を中心に大地が揺れ始める。
次第に亀裂が走り、向かって来た水廉洞闘賊団の仲間達が地割れに落下していく。
「空に待避!」
俺様の判断で、空から無数の飛行雲が飛んで来て飛び乗る。
更に飛行雲を持たない仲間達は飛行昆虫に飛び乗った。
「あら?虫が飛び回っているようですね?」
金剛魔王が腕を挙げると、今度は地面から鋭く尖った岩が突出して来て、針千本と空中の仲間達を串刺していく。空中に離脱しても逃げ場がないのか?
「チッ!近付く事も出来ないのかよ?」
すると後方から砲丸が飛んで来て、道を塞いだ岩を砕いていく。
それは遠方より砲丸を投げる砲丸魔王だった。
「ここで目立って出世してやる!」
更に馬の背に虫の羽がある昆虫騎馬隊が戦場を駆ける。
それは亜騎馬魔王率いる騎馬隊の連中だった。
「一番槍は俺達が獲るぞ!」
そして俺達の後方から大笑いしているのが豪快魔王。
「ガハハハハ!進め進め!突き進めぇ~」
えっと…
「あいつは役にたっているのか?六耳」
「煩いだけっち…」
「あっそ…」
とにかく水廉洞闘賊団は勇猛果敢だった。
「少し…煩わしく感じて来ましたね?雑魚はこれに相手させましょう」
金剛魔王が手にしたのは賢者の魔石だった。
それを握り潰し粉にすると、大地にばら蒔いた。
「さぁ…お前達が新たな私の兵士だよ。群がる虫駆除を頼みますね」
ばら蒔いた粉は次第に宝石傀儡となり、その場から消える。
「ざっと千体くらいですか?少し多すぎでしたでしょうか?まぁ、早々にゴミ掃除して貰いましょう」
突然現れた宝石傀儡の兵士達は、先行していた騎馬隊に襲い掛かる。
「何と?まだ配下がいたのか?」
死を恐れない宝石傀儡の兵士達は散らばって、進軍している水廉洞闘賊団を足止めした。
しかも破壊しても再び再生して襲って来る。
「厄介だ…これはゴーレムと同じか?操っている奴を倒さないといかんって奴か?」
間違いない。
操っているのは金剛魔王。
やはり金剛魔王を倒さないと駄目なんだな?
俺達は金斗雲を上昇させると、中央に立つ金剛魔王を見下ろす。
「軍の総大将である俺様が決着を付けてやるぜぇー!」
金斗雲を急降下させ、俺様は金剛魔王目掛けて向かって行く。
そして飛び降りると金剛魔王の前に現れたのだ。
「ほぉ?思っていたより早い到着でしたね」
「早い到着、早い決着!そんな訳でお前をぶっ倒してやるぜ!」
と、そこに遅れて到着して来たのは怪力魔王と剛力魔王。
「待たせたな?」
「仕留める」
更に六耳と、蚩尤が到着した。
このメンバーが金剛魔王討伐隊だ。
その頃、戦線離脱している軍には、
「牛角魔王様…」
玉面魔王は牛角魔王の身体を水玉の中に入れ、治癒を行っていた。玉面魔王の治癒は身体の活性化を促し、瞬間再生をしているはずなのだが熔岩魔王に斬られた傷は重傷で治癒に時間がかかっていたのだ。その様子を見ているのは砂塵魔王だった。
「玉面魔王を戦場に出さずに、牛角魔王を戦場に復帰させる方を選んだか?だが、牛角魔王が復帰する前に全滅したら意味ないぞ。それに牛角魔王が戦場に出ても金剛魔王を倒せるかは…無理だろうな?やはり…」
後ろ向きな考えの砂塵魔王は、思い出していた。
「唯一勝算があるとすれば鵬魔王の帰り待ちか・・・」
鵬魔王は今、戦場には居らず自らが主となった天空城の隠し地下室にいた。
「滅びた鵬魔城に興味はなかったけど…一族の仕来たりは守るよ」
鵬魔王の正面には特殊な魔法陣が描かれていた。
「この儀式で僕は美猴王を守ってあ・げ・る」
あの時、砂塵魔王は美猴王と鵬魔王のやり取りを聞いていた。
「鵬魔王の策があれば金剛魔王様を…本当に倒せるかもしれん…」
砂塵魔王は溜め息をつくと、
「やれやれ…友人の板挟みに苦しむのは人気者の定め…けど、優柔不断は二兎得るどころか一兎も得られない…それは困る。仕方ないな・・・」
『時間稼ぎは、この砂塵魔王が承る!』
と、様々な試みを持って金剛魔王を倒してやるぜ。
次回予告
ついに金剛魔王とのバトルが始まる!
主戦力の欠けた状態で強敵金剛魔王に勝つ事が出来るのだろうか?
そして、鵬魔王の策とは?




