四竦みの戦い勃発??謎の熔岩魔王!
妖恐アンキロ、プテナ、トリケラ。
それにスピノ、ティラノ、ギガノを相手に苦戦していた時、
突如、現れたのは?
俺様は美猴王…
もう何が起きても驚かないぞっと思っていたのに…
これは絶体絶命なのか?
俺様達が戦っていた妖恐の強さは半端なく、それだけでも絶体絶命だった。
だが、その危機的状況に現れたのが、地上界を統べる第三魔王・熔岩魔王だった。
更に気配なく背後に現れたのは、俺様達が攻め混んでいた地の魔王。
第二魔王の金剛魔王なのだ。
俺様達と妖恐六体、熔岩魔王、金剛魔王の四すくみ。
生存率皆無?
強烈な覇気に押し潰されそうだ。
立っている事がこんなにキツイなんて・・・
俺様は仲間達を見る。
仲間達もまた、この状況下で冷や汗を流して身動きが取れないでいた。
次元が違う?そこに、牛角魔王が俺様に判断を求める。
「ここまでとはな。この状況どうする?」
「ズバリ無策だ!」
「だろうな?なら、俺が今から暴れてやる!その間にお前は他の連中を連れて一端体制を整えろ」
「!!」
牛角魔王の瞳には意思の強さがあった。
つまりそれは自分が囮になって俺様達を逃がす決意だった。
「バカヤロー!そんな事が出来るかぁ!」
「お前に仲間を託す。ここは俺が!」
俺様は牛角魔王の胸ぐらを掴み、怒鳴る。
「ふふふ…仲間割れですか?」
それは金剛魔王だった。
「私の地を荒らした挙げ句に、恐怖に気が狂い目の前で喧嘩ですか?だが、それより…」
金剛魔王は熔岩魔王を見ると、
「それよりも水廉洞闘賊団を裏で操っていたのが熔岩魔王だったとはねぇ?今までの快進撃の理由も頷けられると言うものです」
ちっ…違っ!!
「そして、遠路はるばる中央の地を離れて私の討伐に現れたのですね?ふふふ…手の込んだやり方ですね?」
熔岩魔王は黙ったまま何も答えなかった。
てか、何か反論しろよ!
このままだと俺様が、お前の手下みたいじゃんか!
「で?早速、以前の続きを始めますか?」
そう。金剛魔王はかつて地上界の魔王を統べるナンバー1の妖魔王だった。
だが、かつてのナンバー2であった熔岩魔王が金剛魔王を倒し、別の魔王をナンバー1に祭り上げたのだ。理由は解らないが、ナンバー1の座から引きずり落とされた金剛魔王は別の地へと追い出されたのである。
「あの時は不覚を取りましたが、今度は…」
金剛魔王の妖気が更に膨れ上がり、その妖気に溺れそうになる。
息を吸うのさえ苦しい。酸欠になりそうだ。
そんな会話を遮るのが、忘れてはならない妖恐達だった。
「ハ…ハハ!突然変な連中が現れたと思えばオレ達を無視か?」
ギガノの左右にはティラノとスピノが笑みを見せていた。
目の前の熔岩魔王と金剛魔王を前にしても、不敵にこの状況を楽しんでいた。
「雑魚を相手に暇を弄んでいた。どうやらお前達はオレ達を遊ばせてくれそうだな?」
ギガノの恐気が威圧的に熔岩魔王と金剛魔王に放たれる。
「少し前から私の地を荒らす異様な気の正体はお前達ですか?」
俺様達を無視し、三者から発する強烈な覇気がぶつかり合う。
ぐぅぅ…押し潰されそうだ!
先に動いたのは妖恐達だった。
ギガノが顎で合図すると、トリケラとアンキロが同時に動いた。
トリケラが熔岩魔王に!アンキロが金剛魔王に突進し襲い掛かる。
これは漁夫の利のチャンスか?
奴らがバトり合ってくれれば俺様達にもチャンス到来か?
が……!?
「妖恐アンキロ」
あの剛力魔王と怪力魔王が力を合わせてすら手も足も出なかった。
奴の身体は鉄壁の鎧。
恐気に覆われた身体はまさに動く重戦車と思えた。
そのアンキロに、金剛魔王は慌てる事なく動いた。
その拳に輝く無数の粒がくっつき、金剛石[ダイヤモンド]のグローブと化した。
『金剛打撃!』
金剛魔王の拳は襲い掛かるアンキロの額を殴ると、その突進力が止まり額が割れて出血する。そして、二撃目が炸裂するとアンキロの身体を纏う恐気事、身体を貫通したのだ。
轟音と共にアンキロの巨体が金剛魔王の前に崩れた。
更に、熔岩魔王に襲い掛かる妖恐トリケラは、うちの牛角魔王の突進すらはね退けるパワーを持つ。その突進が熔岩魔王に衝突する寸前、熔岩魔王の岩腕の裂け目から熔岩が流れて地面に達すると、固まっていく。
熔岩魔王は固まりし燃え盛る岩を持ち上げると、それは熔岩を垂れ流す剣と化したのだ。
「熔誅威分剣」
※ヨウチュウイブンケン
熔岩魔王が振り上げた熔剣をトリケラに降り下ろすと、トリケラの顔面から胴体にかけて熔けるように燃え出す。
「ウギャアアア」
金剛魔王と熔岩魔王は同時にあの妖恐の二体を難なく倒したのだ。
その様子を見ていた他の妖恐達とギガノとスピノにティラノは、仲間がやられたにもかかわらず面白そうに見ていた。
「おぉお?やるじゃないか。あの下等種」
「トリケラとアンキロはザマないぜ!」
「面白い…どうやら奴達が現在の地上を支配する種のようだな?」
ギガノ、ティラノ、スピノは熔岩魔王と金剛魔王を敵と認めたのだ。同時に三体の身体から今まで以上の?否?これが本気なのか?金剛魔王と熔岩魔王に匹敵する恐気を発っす。
桁が…違い過ぎる!
妖恐三体は熔岩魔王と金剛魔王に向かって同時に駆け出す。
その時、上空にいたプテナが暴れながら落下して来たのだ??
プテナはギガノ達三体の前に落下すると、
「ま…前が見えネェエエ??」
と、叫び出す?
「何が起きた?邪魔だ!」
「待て?様子がおかしいぞ?」
するとプテナの落下した足下を真っ黒な闇が覆う。
いや?その闇は広がって行って、ギガノ達や、倒れているトリケラとアンキロの足下をも闇で覆っていったのだ。
「何だ?これは?」
ギガノ達の足下の闇がギガノ達妖恐達を蟻地獄のように引きずり込んでいく。
意味も解らずに暴れるギガノ達は、
『必ず戻って来てやるからなぁ!それまで震え脅えて待っているが良い!』
と、闇の中へと沈みながら消えて行ったのだ。
「何の真似だ?余計な手伝いは無用だぞ」
「まさかお前まで出て来るとはな?今日は何て日だ!」
熔岩魔王が口を開いたかと思うと、金剛魔王もまた背後に現れた第三の存在を睨む。
そこに再び影が現れ、黒いマントを被った者が姿を現す。
奴は何者だ?
「手伝ったわけではない。熔岩魔王!私はお前を連れ帰るように命じられ、邪魔だった奴らを別の地へ飛ばしたまでの事だ」
「搭多留天の指示か?闇影魔王」
搭多留天?闇影魔王?
そいつらは何者だ?
熔岩魔王を連れ戻すとか言っていたようだが?
すると金剛魔王から隠れるように砂塵魔王が俺様に小さな声で教えてくれた。
「闇影魔王とは熔岩魔王と同じく中央を守る一桁ナンバーの魔王。主に裏切った魔王を影で始末する役目を持つ。同じ一桁の自分でも奴を直接見たのは初めてだ…」
そして玉面魔王が牛角魔王に付け足す。
「一桁ナンバーの五本柱である妾も闇影魔王は初めて見たわ。興味もなかったしの。そして搭多留天が、現在地上界を統べるナンバー1の称号を持つ妖魔王さ…」
ナンバー1の搭多留天?
何か、新情報が突然入ったせいで、どうリアクションして良いか解らねぇ~!
搭多留天?
つまり、俺様達が最終的に倒さないといけない奴って事が解った!
と、それ所じゃなかった。
熔岩魔王は降り下ろした熔剣を再び振り上げる。
「止めるなよ?闇影魔王よ!俺はかつてやり残した決着を付けに来ただけだ」
「…再び私の前に現れ、あの日の決着を付けに来たのですね?返り討ちにしてあげましょう」
構える金剛魔王に向かって熔岩魔王が駆け出す。
「!!」
が、熔岩魔王の突進した刃の標的は金剛魔王ではなく、俺様達の仲間の蚩尤だった。
「えっ??」
(なぁ…何故!?)
蚩尤は慌てて剣で受け止めようと構えるが、その妖圧に身体は畏縮し剣を落としてしまった。
(ヤバッ…殺られ、あっ!!)
その時、蚩尤は熔岩石の鎧に覆われている熔岩魔王の顔面の奥から見える殺意の目を見た時、全身の身体から突然力が抜けて死を覚悟したのだ。
それは恐怖で間違いないのだが、これはかつて感じた事のある恐怖だった。
しかし熔岩魔王の熔剣は蚩尤の顔前で止められた。
蚩尤は膝から崩れ落ち、その理由を知った。
「あ…兄者…?」
熔岩魔王の燃え盛る熔剣は牛角魔王の交差させた二本の剣によって受け止められたのだ。
「蚩尤!大丈夫か?」
「あっ…あぁ…」
牛角魔王を見下ろす熔岩魔王は、
「よく受け止めたな?」
「貴様!どういうつもりだ?」
「私は身分不相応な雑魚を始末しようとしただけに過ぎん」
「嘘をつくな!貴様は蚩尤を完全に標的にしていたぞ!ぬぅおお!」
牛角魔王は剣を弾かせ熔岩魔王の熔剣を返す。
「ならばお前も死ぬか?」
「ヤれるもんならやってみよ!!」
牛角魔王の覇気が熔岩魔王に向けて放たれるが、熔岩魔王は意にもせずに再び熔剣を振り上げる。その時、牛角魔王もまた蚩尤と同じ違和感を感じたのだ。
それは…
が、気付く間もなく降り下ろされた熔剣が牛角魔王の剣を砕き、牛角魔王を斬り裂いた!!
「グゥオオオ!」
牛角魔王の叫び声が響き、肉と血が焼き焦げる匂いがした。
ぎ…牛角が…殺られた?
「ゆ…許さねぇーー!!」
俺様が熔岩魔王に向かって飛び出すが、その俺様の前にいた金剛魔王が俺様の頭を掴む。
「は…離せ!てぇ…てめぇー!!」
全く動けないだと?
何て馬鹿力だ!?
まるで山に下敷きになっているようだ…
早く牛角を…
が、俺様は金剛魔王によって地面に叩きつけられた。
「がはぁ!」
そして瀕死状態の牛角魔王を見下ろす熔岩魔王の前には、
「邪魔立てするか?」
「当たり前じゃ!この男はいずれ妾の夫になる身。お前に殺させはさせん!」
玉面魔王が身を挺して庇っていた。
「身の程を知れ?一桁ナンバーとて力の差は歴然。それとも…その身に施された忌まわしき封印を解くか?」
「!!」
玉面魔王の身体が震えだす。
何を言われたのだ?
その身に施された忌まわしき封印とは?
玉面魔王は唇を噛みしめると、
「それで牛角様が助かるのなら…」
「本気か?」
玉面魔王が自らの胸に掌を翳すと、異様な妖気が噴き出して来たのだ。
「クッ…馬鹿め!命を削るか」
「それだけの価値ある男なんだよ!」
が、突如?玉面魔王が背後から衝撃を受けたのだ。
「なぁ…?」
そのまま倒れ気絶する玉面魔王の背後には、血だらけの牛角魔王が立っていた。
「理由は知らんがな…お前が命を削る必要は…ない…ソイツは俺が…ヤらねばならない…のだ…」
「アッパレ!まだ戦うその勇姿。変わってはいない…」
「?」
再び熔岩魔王が熔剣を振り上げると、熔岩魔王の動きが止まる。
「どういうつもりだ?闇影魔王」
熔岩魔王の足下が闇に覆われていた。
そして妖恐達と同じく闇の中へと沈んでいく。
「お遊びはここまでです。私は貴方を連れ戻しに来たのですから。このまま大人しくしていてください」
熔岩魔王は熔剣を納めると熔岩魔王は闇に消えていく。
そして闇影魔王も消えていた。
「…何が?」
だが、牛角魔王もまたその場に倒れた。
俺様は金剛魔王に押さえ込まれていたが、力任せに起き上がると、
「まだ戦うつもりですか?お猿さん?」
「俺様はお猿さんでも、お猿さんの王様、美猴王様だぁー!」
俺様は気合いで立ち上がって金剛魔王の腕を払い、その場から離れて構える。
だが、戦う力がもう残ってはいなかった。
「さて、来客が全員お帰りになりましたが、続行しますか?」
「当たり前だ!」
「ふぅ~しかし私の方が興が削がれましたねぇ…」
えっ?
「私は城に戻る。お前達がまだ私と戦うつもりならいつでも来なさい。その時は…」
『息の根を止めてやろう』
すると金剛魔王の身体が粉々になって、気配が消えたのだ。
俺様達は助かったのか?
だが、俺様が見回すと仲間達は既に戦う力も残らず疲弊していた。
そして俺様も…
その場に倒れたのだった。
次回予告
何とか生き残った美猴王達、
だが戦いは終わってはいない。
金剛魔王との総力戦が始まる!




