ガチ激突?妖恐と妖怪!!
六体の妖恐の出現に戸惑い恐れを抱く水廉洞闘賊団!
妖恐と妖怪!
この危機はガチンコ勝負で勝ち抜けるか?
俺様は美猴王!
俺様は仲間達と共に太古より甦った六体の妖恐を相手に戦っていた。
だが、数で有利であるにも歴戦の仲間達は完全におされていたのである。
「こなくそー!伸びろ!如意棒!!」
俺様は振り回す如意棒でギガノを叩き付ける。
その連続の打撃は休む暇なく繰り出された。
にもかかわらず、ギガノは涼しい表情で受けていたのだ。
「こちょばゆい攻撃だな?痒くて仕方ないぞ?」
するとギガノは俺様の如意棒を片手で受け止め掴み、俺様ごと投げ飛ばしたのだ。
「うぐぅおお!」
が、俺様は投げ飛ばされながらも印を結ぶ。
そして十体の分身を出現させて再びギガノに飛びかからせた。
「虫けらが増えたぞ?ならば…」
ギガノの身体から強烈な恐気が放たれ、俺様の分身達が塵と消え去った。
更に仲間達もまた妖恐達を相手に苦戦していた。
剛力魔王と怪力魔王が同時に妖恐アンキロを相手に突進する。
「イク!」
「おぅ、姉者!」
二人はアンキロの身体に強烈な打撃を繰り出す。
二人の物理攻撃力は水廉洞闘賊団の中でもトップクラスだった。
なのに二人の攻撃を食らうアンキロはビクともしないのだ。
「軽い攻撃だな?攻撃はこうやるのだ!」
振り上げた拳が怪力魔王に降り下ろされた。
咄嗟に両腕を交差して受け止めるが足下から大地が陥没する。
「このまま潰してやるぞ。虫けらよ」
「させない」
剛力魔王は飛び上がり、アンキロの顔面を蹴り上げたのだ。
だが、アンキロは何もなかったかのように剛力魔王の足を掴むと、怪力魔王に向けて降り下ろして叩き付ける。二人は口から血を吐いてアンキロの足下に倒れた。
別の場所でも刀剣魔王が無数の剣を自在に操り、宙を猛スピードで飛ぶ妖恐プテナに向けて狙い付けるが、追いつくことすら出来ずにいた。
「クゥ…速すぎる!」
「はははは!遅いぞ?下等種!」
そこにプテナの上空から急降下して来る鵬魔王。
「下等種はお前だぁー!!」
鵬魔王は両掌に炎を凝縮させると、二本の炎の剣を出現させてプテナに斬りつけた。
これは直撃かと思ったが、
「!?」
鵬魔王の剣はプテナに直撃した途端に消え去った。
プテナの身体には恐気が纏わり付いていて、鵬魔王の妖気が籠った炎の剣を通さないだけでなく逆に吸収するように喰らったのだ。
「僕の炎を!汚ならしい化け物が生意気だぁー!」
最初は優勢だった玉面魔王もまた苦戦していた。
玉面魔王が相手している妖恐アンキロもまた恐気を纏い、玉面魔王の水術が通用しなかったのである。
「飽きた!飽きた!飽きた!もう、お前殺すぞ~?嫌ならもう少し頑張れよ」
「この妾を雑魚扱いか?ふふふ…ならば妾も本気を出さなければな。この地を支配する一桁ナンバーの一人である妾が、直にお前に宴を催してやろう」
「楽しませてみろよ?寝起きの頭がスッキリするくらいによ~」
アンキロの恐気が大地を震わせ、玉面魔王の妖気が拮抗するようにアンキロの恐気とぶつかり合う。その衝突は互角で大地が揺れた。
「あれが玉面魔王の本気か?ふふふ…頼もしいくらいに良い女だったようだな。俺も負けてはおられん!」
牛角魔王の相手は妖恐トリケラだった。
トリケラは恐気を纏い、猛突進で襲って来るのだ。
「あのトリケラって奴はどうやら戦う相手を間違ったようだな?突進を得意としているようだが、お前が相手しているのが誰だと思っている」
『トリケラと猛牛!どっちが強いか解らんのかぁ!』
…トリケラじゃね?
牛角魔王は二本の刀を角のように構え、妖気を極限にまで高めて突進した。
牛角魔王とトリケラが衝突した!!
凄まじい衝突と振動が戦場を揺らした…が、見上げると牛角魔王が弾き飛ばされていた。
「…アレ?」
アレ?じゃ、ねぇーよ!
そして、今、一番危機的状態だったのは、六耳と蚩尤だった。
相手は妖恐ティラノ…
狂暴かつ血を好む妖恐だった。
「素早い奴だ?早く掴まえて食ってやろう!」
六耳は雷の気を帯び、ティラノの周りを瞬時に移動しながら攻撃していた。だが、六耳の雷の爪はティラノの身体を貫く事も傷付ける事が出来なかった。
そこに蚩尤が隙をつく。
「だったらー!」
蚩尤の腕が膨らむと大地に向けて殴り付ける。
すると地割れが起きてティラノの足下を塞いだのだ。
「やるじゃん?蚩尤」
「当たり前だ!俺は牛角兄者の右腕だぁ!」
この力は椀力魔王の魂を飴玉として食らった事で手に入れた分不相応な力だった。
「まだ腕が痛むが、少しずつ使い方が解って来たようだな…」
だが、埋もれたティラノが抜け出て来たのだ。
ティラノの恐気が六耳と蚩尤を吹き飛ばす。
「ウギャアア」
「マジかよ」
ティラノは倒れる二人を見下ろしていた。
「こんなんでオレをどうこう出来ると思ったか?雑魚雑魚雑魚雑魚!」
どこもかしこも危機的状況で、助けに出る事も出来ない。
目の前の相手に集中していないと、自分が殺されてしまうのだ。
「くっそ…助けに向かいたくても自分の相手で手一杯か」
「物足りないなぁ?虫けらよ。直ぐに終わらせて喰ってやるから大人しくしとれ」
「食い物じゃねぇ!お前こそ丸焼きにして食ってやるからな!」
俺様は神経を集中させ、己の力を極限にまで引き出す。
瞬発力に攻撃力。
どれを取っても絶好調!
なのに歯か立たないなんて…
「面白くなってきたぜ…」
俺様は、この危機的状況を楽しんでいたのだ。
雷我の襲撃の時には手も足も出ずに、見ているしか出来なかった。
目の前のギガノは雷我に匹敵する程の化け物だ。
だが、今の俺様はこうやって戦えてる!
戦う魂は折れちゃいねぇ!
もう過去の俺様じゃねぇ!
なら、後は勝つだけだよな?
「やってやるぜぇー!」
そして、他の仲間達も戦意を失っていなかった。
誰もが戦闘馬鹿なのだ。
俺様は新たな印を結び気を全身に集中させる。
それは同じく戦っていた牛角魔王、鵬魔王、剛力魔王、怪力魔王、それに蚩尤までもが同じ印を結んでいた。そして同時に唱えたのだ。
『獣王変化唯我独尊!』
それは獣妖怪の秘奥技!
全身に獣の血に妖気を籠めて活性化させ、爆発的な力を解放させる技なのだ。
だが、同時に獣の意識に精神を奪われ、自我を失うデメリットがある。
以前にも俺様が自我を失う事があったが…
俺様は金色の大猿、剛力魔王と怪力魔王は大ゴリラ、牛角魔王と蚩尤は半人半大牛、鵬魔王は燃え盛る怪鳥へと変化したのだ。
まさか全員で自我を失い暴走する自滅作戦か?
そんなはずないじゃん!
俺様達は獣の本能を完全に制御しマスターしたのだ。
完全に獣王変化を極めたのだ。
「ホォ?」
俺様は飛びかかるとギガノの頭をぶん殴った。
ギガノは衝撃で地面にぶっ倒れた。
「う~ん…」
ギガノは頭を振りながら立ち上がると、
「少しはマシになったか?だが、まだまだ!」
ギガノもまた俺様とガチな殴りあいをして来た。
「負けねぇ!」
剛力魔王と怪力魔王の変化した大ゴリラもアンキロに飛び掛かり、掴んで殴る。
「畳み、掛ける」
「おぅ!姉様!」
「グゥオオ!」
この攻撃は効いていた。
牛角魔王は大牛と化していた。
後ろ足で地面を蹴り上げ、突進した。
「力勝負だ!」
牛角魔王とトリケラが衝突し、ぶつかり合う。
だが、今度は互角!互角!互角!幾度と衝突し、互いに譲らぬぶつかり合いを繰り返す。
空中でもプテラの前に現れた鵬魔王の獣王変化した姿は、炎を纏った怪鳥であった。
その姿は他の獣王変化とは少し異なる変化。
「空の支配者は鵬魔の一族こそ相応しい…」
上空の戦いを見ていた刀剣魔王は目を丸くしていた。
「あやつ…名の通り四聖獣の一族か…」
四聖獣とは龍神族に匹敵する獣神の中でも高貴な一族。
燃え盛る怪鳥の姿はまさに伝説の鳳凰の姿だった。
鳳凰とプテラの空中戦が繰り広げられる。
「お前…良いぜ。お前から伝わって来る…ウケケ!」
「下卑た笑いはいつまでも続かないからな!」
最後に、
「ぐぅう…調子に乗って俺も獣王変化しちまって意識がぶっ飛ぶかと思ったが…何でもないようだぞ?」
すると蚩尤の魂の中に寄生している魂喰魔王が答える。
《前にも言ったがお前の魂は複雑で特種な魂でな。部屋が幾つもあるんだよ!本来獣王変化で獣の意識が自我を奪うが、その獣の意識すらも魂の牢獄に閉じ込め、お前自身の意識に辿り着けないんだ。俺がお前の肉体から出られないのもそのためだよ》
「全く意味が解らんが、とにかく問題ないなら恐れる事もないんだな?それだけ解れば良いぜ?」
《……………》
蚩尤は牛角魔王とは異なる白い大牛となり、二本足歩行をしていた。
「うぉおお!」
蚩尤がティラノに殴りかかると、ティラノは平然とした顔で睨み付ける。
「えっ?」
獣王変化は本来持つ獣の力を最大限に引き出すのであって、他の魔王に劣る蚩尤の獣王化はティラノには及ばなかったのだ。
「マジかよ?」
ティラノの蹴りが蚩尤に直撃すると、蚩尤は血を吐き蹲る。
そこに六耳が助っ人に入る。
「俺ッチは獣王変化出来ないけど…仕事はするッチー!!」
六耳はティラノの頭にしがみつき、後ろからティラノの目を隠す。
「おっ?おっ?おっ?」
突然視界を奪われたティラノに、
「今ッチ!!」
「おっ…オゥ!」
蚩尤は両腕に妖気を籠めて、
『腕頑刑殺!!』
両掌から繰り出す衝撃波をティラノの腹に放った。
「グゥオオ!」
流石に、この攻撃にはティラノも膝を付くが、直ぐにしがみつく六耳を掴みながら振り回し蚩尤に投げ付けたのだ。
「ぐぅわあああ!」
「あぎゃああ!」
二人は縺れるように倒れている所に、ティラノが迫って来ていた。
「絶対絶命!?」
ティラノが襲い掛かるその時だった。
ティラノの前に壁が現れて、その行く手を邪魔したのだ。
更に、足元が渦を巻きながらティラノを地面の中に引きずりこむ。
「おっ?おっ?今度は何だ?」
その様子を見ていた六耳と蚩尤は意味も解らずに命拾いしたと喜ぶ。
一体、誰が?
ティラノが地面に引きずりこまれるのに気付いたのは俺様と戦っていたギガノだった。
「何だ?ティラノの奴、どうした?他に誰かいたのか?」
その救援の存在に気付いたのは俺様だった。
「ようやく俺様達に力を貸してくれる気になったようだな?」
俺様は気付いていた。
そいつは、ずっと離れた場所から隠れてストーカーしていたのだ。
「砂塵魔王!!」
そいつは一桁ナンバーにて、俺様と友達になった砂塵魔王だった。
「こんな事がバレたら金剛魔王様に嫌われてしまう…」
俺様達の大反撃だぜ!
次回予告
砂塵魔王が加わり、さらなるバトルが白熱する。
だが、力の差は歴然、
その時、絶対危機の美猴王達の前に現れたのは??




