新たな脅威！それは三蔵？？
妖怪盗賊金角と銀角を倒した三蔵一行
しかし三蔵の意味深な言葉から、まだ問題は終わってはいなかったのだ。
私はファンです。
三蔵様一行はあの凶悪な妖怪盗賊の金角・銀角を退治した後、八戒さんが三蔵様方を連れて私を残して来た場所にまで迎えに来てくださったのです。
「あそこらよ～！」
「いました！いました！」
そこで、沙悟浄さんが金角と銀角との戦いのいきさつの全てを私に話してくれたのです。
「皆様！本当にありがとうございます！ありがとうございます！これで大僧正様も浮かばれます」
私は何度も何度もお礼を言ったのでした。
「朱音殿［大僧正］には昔、大変世話になったのだ。惜しい男を亡くした…」
「三蔵様…」
私は何も言えませんでした。
すると、
「…………」
えっ？
三蔵様の視線が私を見ている？
「いかがなされましたか？三蔵様？」
「ファンよ！これから少し俺達の用事に付き合ってもらうが良いか？」
「えっ？ええ…でも…」
私は弟のフォンの安否が気掛かりだったのです。
「あっ！フォン君の事なら心配しないでくださいね？今、孫悟空兄貴が迎えに行っていますから！」
「そうでしたか！分かりました。あの、私は何をすれば宜しいのですか？」
「そうだな…先ずは俺の知り合いがいる寺院に行くつもりだ」
私は自分の暮らしていた村の方角を見ると、
「お前の住んでいた村は残念だが」
「はい。分かっています」
私が住んでいた村は金角と銀角によって凍らされ、滅ぼされてしまったのです。
生存者は多分私とフォンだけ
でも、不思議と悲しいとか寂しさを感じなかったのです。
暫くすると金色の雲に乗った猿様と、弟のフォンがやって来たのでした。
「お姉ちゃ～ん！」
「フォン！」
良かった本当に無事だったのね！
私達は力強く抱きしめあったのでした。
そして私とフォンは三蔵様一行に連れられて、近くの村の宿屋に泊まる事になったのです。
「うわぁ！僕こんな料理見るのも食べるの初めてだよ！」
私達の目の前には贅沢な料理が並べられていたのです。
「あの…良いのでしょうか？こんな贅沢な料理を私達なんかのために？」
「気にするな。それより酌をしてくれないか？」
「あっ、はい！」
その後はどんちゃん騒ぎになりました。
「おい！豚！それは俺様の豚肉だぞ？よこせ！」
「ふざけるなや！オラの仲間はオラの腹の中で弔うのが礼儀らよ！」
「共食いかよ！」
食べ物争いをする猿様と豚様。
「ファンちゃんもどんどん食べてくださいね？」
「あ…ありがとうございます！」
「お姉ちゃん！このスープ美味しいよ！」
「えっ？あっ…本当ね！」
私達は面白い皆様と一緒に、今まで食べた事のないような美味しい料理をご馳走して頂いたのでした。
食事の後はフォンの我が儘で、再び猿様の金斗雲に乗せてもらったのです。
「ファンちゃんはオラの黒斗雲に乗るらよ！」
「えっ？私もですか？」
「空中デートらよ！」
私は豚様の雲に乗り、猿様とフォンと一緒に空中飛行を楽しんだのでした。
その姿を見る三蔵様と河童様。
その視線の先は？
「…………」
「なんか…辛いですよね」
「そうだな…」
三蔵様は思い出していたのです。
それは三蔵様一行が私とフォンが逃げて来た寺院へ向かっていた時の話。
三蔵様達は来て早々、その惨劇を目の当たりにしたのです。
まだ血の匂いが漂う無惨な僧侶達の亡きがら。
寺院に何か良からぬ事が起きているのは火を見るより明らかでした。
その時！
「皆さん！来てください！」
寺院の崩れ落ちた階段の先で、河童様の呼び声に集まって来た三蔵様達が見たものは？
・・・・・・・・・。
空中遊泳を楽しんだ後、私達は三蔵様に連れられて大きな寺へとやって来たのでした。
「あの…この寺は？」
「ああ…お前達の村は、あの妖怪達に滅ぼされて住める場所もないであろう？残念だがお前の家族も」
「それは気にしないでください。私達姉弟は身寄りもなく、フォンと二人暮らしでしたので。唯一私達の身寄りと言えば、寺院にいらっしゃった大僧正様だけでしたから」
「そうか…なら話が早い。この寺院に俺の知り合いの僧正がいる。その者にお前達の身柄を預けようと思うのだが？」
「三蔵様…何から何まで…」
涙目の私に三蔵様は頭を撫でてくださったのでした。
するとそこに寺院には気の良さそうな（ゴッツイ）僧正様が現れて出迎えてくださったのです。
「おおおお！三蔵殿！お久しぶりでございます！」
「久しいな。世話になる」
「話にあったのは、その子供達ですかな？」
「ふむ。頼めるか？」
「三蔵様の頼みを断れるはずなかろう。私にお任せください！がっはは！」
「そうか、悪いな。大安僧正」
そして私とフォンは大安僧正様に自己紹介したのです。
「私、ファンと言います。こっちは弟のフォンです」
「ふむ。宜しくのう。今日は疲れたであろう？ゆっくり休むと良い！がははは！」
「ありがとうございます！」
私が礼を告げると三蔵様が深刻な顔で呼び止める。
「大安僧正、では話の続きだが」
「そうですな。では、案内致します」
三蔵様と大安僧正様が出て行かれた後、私とフォンはこれからお世話になる寺院の中にある一室の部屋を用意していただいたのです。
「お姉ちゃん。良かったね」
「うん。何から何まで。全て三蔵様のお陰ね？これから私達姉弟ずっと力を合わせて生きて行こうね」
「う…うん。お姉ちゃん…大好きだよ…」
「？」
フォンは甘えたように私に抱き着いてきたのです。
私はフォンの様子に何か違和感を感じる。
「何？突然どうしたのよ？」
「ううん！何でもないよ。お姉ちゃん！」
その後、私達は疲れて眠りについてしまったのでした。
その夜、私は夢を見たのです。
金角、銀角に追われて逃げる夢を…
私は銀角に腕を掴まれ、目の前でフォンが金角に・・・
えっ？
私は飛び起きるように目を覚ましました。
「ハァハァハァ」
私の真横にはフォンが眠っていました。
良かった…夢だったんだ。
けど、今の夢は何だったのかしら？
私は震えるように全身を抱きしめました。
「何か、こわい・・・」
私は風に当たりたくなり、フォンを残して一人外に出たのでした。
「私達は生きていた…これからは姉弟二人で強く生きていくのよ！」
夢の事は忘れて、これからは強く生きようと思いました。
その時、何処からか話し声が聞こえて来たのです？
「で、どうするんだ？」
「オラ…泣けてくるらよ」
私は声の聞こえる方向に向かって行く。
この声は？
その声の主は間違いなく三蔵様方でした。
「やはり、あの二人を一緒にさせて置く訳にはいかないだろう…」
えっ？
「そうですね。酷だとは思いますが、このままにはしておけません。早急に手を打たねばならないですな」
何を話しているの？
私とフォンを離れさせるってどういう事？
私はいけないと思いながらも、その話をこっそり部屋の外から聞いていたのでした。
「何とかならねぇのかよ？チクショー！」
「気持ちは皆、同じらよ！でもよ、仕方ないらよ！」
「はい…あの子はもう…」
何？あの子はもうって？
私は話をもっとよく聞こうと前のめりになった時、音を立ててしまいました。
「誰だ！！」
隠れて聞いていた私は、驚きのあまり急ぎ眠っていたフォンを起こして、この寺院から慌てて逃げ出したのでした。
「お姉ちゃんどうしたの？どうして寺院から逃げるの？」
「黙って走って！」
「三蔵様に言わなくて良いの？」
「・・・・・・」
私は信じていたのに…三蔵様…
三蔵様達は私とフォンを離れ離れにすると言っていた。
嫌！絶対に嫌！！
あいつ達は敵だ！！
私達の敵だ！
私達姉弟を引き離そうとする者達は皆敵だ！
はっ！
「待ぁてぇ～～！」
すると上空から雲に乗った猿様と豚様が、私達を追って来たのです。
逃げなきゃ！
でも、何処に逃げればよいの？
せっかく、私達二人生き残れたと言うのに…
絶対にさせない…
私達は二度と離れ離れにはならない！
「あっ！？」
すると、私達の目の前に人影が現れたのです！
「もう、逃げるのはよせ！俺の話を聞くのだ！ファンよ！」
私達の目の前に現れたのは、先回りしていた三蔵様でした。
嫌…
私とフォンを引き離す者は誰であろうと…
絶対に許さない！
「お姉ちゃん？」
その時、私の中で何かが弾けた感じがしました。
そして私の中から見えない何かが表に抜け出てくるような感覚を襲う。
あの頃と同じ・・・
今まで忘れていた感覚を！
「あぁあああ！」
私の中の悪魔がめざめる・・・。
次回予告
八戒「いったい何が起きたのらよ？ファンちゃんの身に？？」
沙悟浄「とんでもない事ですよ～」
孫悟空「だから！何が起きたのだって言ってるんだよ！」
沙悟浄「それは・・・」
三蔵「お前達は黙って見ていれば良い。今件は俺が全て決着をつける！」
