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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
天上天下・美猴王伝説!
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美猴王と錬体魔王?

変わり果てた世界で取り残された美猴王


そこで、美猴王は錬体魔王を目の前にして・・・


俺様は美猴王!

目の前に現れた錬体魔王に殴りかかる俺様だったが、牛角魔王達によって止められた。

暴れる俺様を数人がかりで取り抑えた後、ようやく冷静になった俺様は説得された。


錬体魔王に敵意はないと?


俺様は黙って聞いた。


錬体魔王は天界に従い、過去の罪を償うために働いている事。

それは、病や怪我の治療薬を作り、場合によっては再生を任されるのだ。

かつて自らの悪意ある実験にて殺した人間達を再生させたのも、その一環だし、蓮華もそれで甦ったと言うのだ。


そして、俺様の前に現れたのも…



「美猴王…私はお前に謝りに来た。私は私に出来る限りの事をしたい…」


「!!」


俺様は冷静になって考えた後、錬体魔王と同行する事に決めたのだ。

別に信じた訳ではなかった。

ようするに、この世界を俺に見せて洗脳しているのは、この錬体魔王に間違いないのだ!

一緒にいれば、必ず化けの皮を出すに違いないのだ。

そして俺様は錬体魔王と一緒に帰る事にした。


錬体魔王は帰る途中で、


「少し寄りたい所があるのだが…」


「何?」


遠回りして向かった場所は人間達が住む村だった。

そこで錬体魔王は人間達を集めると、病や怪我の者達の治療を始めたのである。

力を失った錬体魔王は、様々な薬を使い治療をした。

人間達は大喜びし、何度も何度も感謝していた。

その日は長引き、その村に世話になって泊まる事にしたのだ。


「………」


その夜、錬体魔王は薬草を煎じ薬を作っていた。

そんな姿をただ見ている俺様に、錬体魔王が話し掛ける。



「やはり私が信用出来ないか?仕方あるまい。私は今まで、お前は勿論、数多くの命を弄んでいたのだからな…」


「今は違うと言うのか?」


「違う…いや、変わりたいと思っている。私は今でも悪夢を見るのだよ。かつての私の悪魔のような所業を…」


「そうか…それにしても薬作りが慣れてるようだな?確か仙人が得意としていたが?」


「私はな…昔は霊薬を作る仙人だったんだよ。それが気付いたら不死の霊薬を求め、人体を使った実験にのめり込む妖仙に堕ちていた」



すると錬体魔王の瞳から涙が流れている事に気付いたのだ。


「!?」



錬体魔王は薬を作りながら、俺様に自分の生い立ちを話始めたのだ。

かつて錬体魔王には愛する妻と子がいたと言う。

錬体魔王は人間の医師だったのだ。

それがある日、流行りの病で妻と子が倒れた。


錬体魔王は妻子を救うために薬を作り続けたが、この病は障気が原因のために人間の薬では手の施しようがなかった。唯一の手段は霊薬しかなかったのだ。

霊薬とは人間の薬とは違う、自然の気を混ぜ合わせる特殊な技術が必要で、そんな芸当が出来るのは仙人のみであった。


錬体魔王は妻子を救うために仙山に入った。

仙人に頼み霊薬を頂こうとしたのだ。

だが、仙人は言った。



「貴重な霊薬を人間に与える事は禁じられておる」


「そこを何とか!妻子が私の帰りを待っているのです!」



すると仙人は暫し考えた後に、条件を与えたのだ。



「ならば、お主が仙人となるのなら、儂の霊薬を分けてやらんでもないぞ?今、仙界では仙人不足でな?お主のような人材を必要としておったのだ」


「私が仙人に?そうすれば霊薬を分けてくださるのですね?」



錬体魔王は迷う事なく仙山に入ったのだ。

約束通りに霊薬は与えられ、使いの者の手により妻子に送り届けられて無事に二人は回復した。しかし…仙人になるためには、もう一つ条件があったのだ。


人間界からの隔離と関係者の記憶の消去。

つまり錬体魔王と関わった全ての人間から、記憶が消去しなければならないのだ。



「妻と子供が生きていてくれるなら…」



それから錬体魔王は仙人の修行に励んだ。

そもそも素質があったのか?錬体魔王は霊薬仙人と呼ばれ、様々な霊薬を造り仙人界に貢献した。霊薬は天界へと献上され、条件に仙人界は妖怪の猛威から守られるのである。



「また新たな薬を造ったぞ?これは人間の持つ潜在能力を一時的に飛躍させ、免疫力を高め病を消し去る事が可能だ!それと、これは…」



それは塗り薬であった。


「これを塗ると、その者の記憶が他者から目に見え浮かび上がってくる。これは原因不明の病を、たとえ意識不明の患者であろうと、その記憶を見て、病になった原因を突き止め、発見する事に大いに役立つ」



だが、これはまだ試作段階であった。

使いようによっては、隠し事を暴く嘘発見器にも使えてしまうのだ。

霊薬仙人は新たな霊薬を師匠である大仙人様へと持って行く。



「お主が来てからと言うもの、仙人界はまさに安泰よのう?」


「そんな…私はただ、恩を返しているに過ぎませんから」


「そうか?ならば励み、務めよ?さすればお主にはいずれ儂の後を継ぎ、この仙人界を任せても良いと思っておる」


「勿体無いお言葉です」



が、その時に大仙人は口を滑らせた。



「やはり儂の目に狂いはなかった。お主を人間界より見つけ、仙人にした甲斐があると言うもんじゃよ」


「それは、どういう?」



が、そこで大仙人は気付いたように、話を逸らして霊薬仙人を帰したのだ。

そして霊薬仙人は部屋を出て行く。


その途中、


「異な事を?私が仙人になったのは妻子を病から救うため、仙人になったのは偶然に過ぎないはず?まるで決められていたかのような口振り?」



そこで霊薬仙人は立ち止まり、震えだしたのだ。


(まさか!?)


それは過った疑心だった。

霊薬仙人は引き返すと手にした薬を大仙人の部屋に放り投げる。

今のは睡眠丸と呼ばれる眠り薬だった。

睡眠丸は転がると、甘い匂いを放ち部屋を覆った。

暫くすると大仙人はウトウトと眠ってしまった。


そこに霊薬仙人が入って来たのだ。

その手には新開発の塗り薬を持って。

そして大仙人が目覚めると、そこに霊薬仙人が立っていた。


「お主、帰ったのでは?」



すると自分の身体が動かない事に気付く。

不思議に思い自分の姿を見て、大仙人は顔を青ざめて発狂したのだ。

大仙人は身体を壁に釘で打たれて拘束させられていた。

しかも、床には自分の両腕と両足が転がっており、だらだらと腕の付け根から血が流れていた。



「目覚めましたか?大仙人様?思ったより早いお目覚めですね?」


「お…おま?お前は何をして…儂に何て事を!!」



怒り発狂する大仙人の口を塞ぐように、霊薬仙人が顔面を押さえ込み静かに答えた。



「私の村に障気を撒き散らし、妻子を病にしたのは大仙人様だったのですね?」


「!!」


「確かに妻子は助かりましたが、あの村の他の者達は全員死んだそうです。それもこれも私を仙人にするために大仙人様が行った計画だったのですね?」


「ウゴッ…」


「確かに仙人となった私は好きな研究に没頭し、未知の薬を学び、発見し造り上げる。それは其れなりに有意義だったと思います。けどね?」



霊薬仙人は大仙人の顎を握り潰したのだ。



「妻子を捨てる事とは天秤にかけられなかったわ!私が研究に没頭出来たのも、妻子を病から救うためだった…妻子のように苦しむ者達を救うためだった…妻子のために我慢出来たのだ!たが、その病が私のために仕掛けられたのであれば、話は別だ!妻子は私の記憶を消された。もう二度と取り戻せない…私は一番愛する者を失ったのだ!」



霊薬仙人は冷たい表情になると、



「大仙人様?貴方には今、強力な痛み止めが効いているはずです。それも、もう少ししたら効き目が切れるでしょう」


「あが…が…」



顔を青ざめて懇願し涙する大仙人を無視し、



「今までお世話になりました」



霊薬仙人が部屋を出た行った直後、部屋の中から断末魔が響き渡り、消えた。

仙人界を立ち去った霊薬仙人は地上界に戻り、妻子のもとに向かったが、妻子は薬で回復した間もなく野党に襲われて死んだ事を知った。

怒り悲しむ霊薬仙人の身体からは妖気が纏い、その姿は妖仙へと変貌する。


後に錬体魔王と呼ばれる事になるのだ。




「だが、そんな怒りも悲しみも…全ては過去の話。私は抑えられない感情を押し込むために研究に没頭した。それは回り回って不死の研究だった。無意識に妻子の死に対する懺悔が私にあったのだと思う。だが、その為に私は…罪無き者を研究のために犠牲にし、数多くの命を粗末にしてしまった…」


「お前…」


「もしお前が私を許せないなら、私をお前の手で殺しても構わん。だが、もし私に懺悔させてくれるなら…私に出来る、今生きている者達への救済を許して欲しい…」




俺様は、この変わり果てた錬体魔王の過去と懺悔を聞いて、ただ…


戸惑うしか出来なかった。

次回予告


美猴王はこの戦いのない世界でどう生きる?


本当に、この世界は現実なのか?

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