嘘だろ?まさかの敵に全滅寸前??
金剛魔王を倒すべく向かう美猴王達。
だが、その前に美猴王に恨み持つ新たな敵が?
俺様は美猴王。
俺様達は金剛魔王の城を目指して軍を進めていた。
六耳と鵬魔王は一度本陣に戻り、待たせている仲間の部隊へと合流させた。
直に仲間を引き連れて戻って来る手筈だ。
そのためにも俺様達は先を急ぐ。
俺様達先行隊は道を開くのが仕事なのだ。
俺様、牛角、玉面、剛力に怪力、刀剣、蚩尤の七名の少数精鋭だ。
が、金剛魔王の城に向かう間に、拍子抜けるほど特別な戦闘はなかった。
やはり砂塵魔王が金剛魔王を倒す最後の砦だったのか?
だが、そんな油断していた俺様達に、ついに現れたのだ。
新たな敵が!
そいつらは俺様達に向かって気配も無く近付いて来た。
ここにいる猛者が一人も近付いて来た事に気付かなかったのだ。
相手は四人だった。
牛角魔王と怪力魔王が警戒する。
「敵…なのか?」
「妖気を全く感じなかった…」
そう。
そいつ達は全く妖気を持っていなかった。
まるで…
だが、俺様には心当たりがあった。
そいつ達は間違いなく人間…だった者。
そう。俺様の予想が外れていなければ、奴らは黄風魔王の領地にて、あのクソムカつく錬体魔王の人体実験にて人間から妖怪にされた鬼人に間違いない。
だが、一つ違うのは鬼人には額に角があったのだが、目の前に現れた奴等は額に石が埋め込まれていたのだ。まぁ、角も石も似たり寄ったりか?微妙だな?
だが、そいつ達の顔には心当たりがあった。
黄風魔王と鵬魔王の一騎打ちの最中に割り込み、黄風魔王を実質殺した連中に間違いない…はずだと思う。六耳から聞いた話だと黄風魔王を襲ったのは額に赤、青、黄色の石のある三人だったと聞いていた。そして、目の前にいる連中も確かに赤、青、黄色の連中がいた。
そしてもう一人別の額には黒い石が埋め込まれていた。
だが、ここにいる魔王クラスの俺様達を相手に半人半妖の連中が四人だけで来るとは甘くみられたもんだぜ!
すると、四人の半妖の一人[額に黒い石の奴]が俺様達に話しかけて来たのだ。
「安心しろ。お前達の相手するのは私以外の三人だ」
何ぃ?まさか!?こいつは俺様の心を読んだのか?
しかも俺様達を三人で相手するだと?
あの黒い奴!ナメやがっ…
が、その時、俺様は嫌な匂いを嗅いだ。
この匂いは間違いなく以前嗅いだ事のある…
思い出したくない嫌な匂いだった。
だが、まさか?そんなはずはない?
何故なら、そいつはもう死んでいるからだ。
しかし間違いなく同じ匂いだった。
あの黒い石の奴から、あの…宿敵である錬体魔王の匂いがするのだ!?
な…何故?
だが、その俺様の心を読んだソイツは俺様に言った。
「生前は世話になったね?美猴王!おかげで私は自らの肉体を失い、人間の身体に寄生するはめになったよ」
「それ…って?」
「私の名前は黒妖石。以前は錬体魔王だった者」
なぁ…なぁんだと??
………。
キレた!
俺様は黒妖石…いや?錬体魔王に向かって飛び出したのだ!!
「待てぇ!」
牛角の制止は耳に入らなかった。
俺様は怒りと喜びが同時に感情を埋めた。
俺様の手で蓮華の仇を取れなかった事を後悔していたのだ。
出来る事なら俺様が八つ裂きにしてやりたかったんだぁ!
怒りに冷静さを失った俺様の前に、錬体魔王を守るように他の三人の敵が俺様に向かって飛び出して来た。
「邪魔をするなぁー!」
敵の三人は背中に背負っていた大剣を抜くと、俺様に斬りかかる。
だが、俺様は三人の剣を紙一重で躱して、錬体魔王に直行した。
俺様の伸ばした手が錬体魔王の顔面を掴みかけた時、錬体魔王はニヤリと俺様を見て笑んだ。
何がおかしい?
だが、俺様の伸ばした手が錬体魔王の眼前で止まった。
いや?身体も動かねぇ?
何が起きたのだ?
すると、俺様の身体が足元から硬直し始めたのだ。
石化?
いや?俺様に石化は効かないはずだ?これは?
「これは!?」
俺様の足元には僅かに切れた傷があった。
これはさっき躱した三人の剣がかすっていたのか?
まさか、あの剣に触れたら身体が硬直するのか?
「惜しかったな?美猴王。だが、これで目的は果たしたぞ」
「何だと!?」
だが、抵抗出来ずに俺様は全身硬直し動けなくなったのだ。
完全に…
黒妖石は動かなくなった俺様を浮かせる。
俺様の危機を感じた牛角が仲間達に合図する。
「皆!美猴王を救うぞ!」
が、黒妖石は連れて来た三人に命じる。
「三妖石達よ、そこにいる連中を始末しておけ」
黒妖石[錬体魔王]は俺様にマントをかけると、手品のようにその場から消えたのだ。
残された牛角達は?
「美猴王が消えただと?」
驚く怪力魔王に剛力魔王が叫ぶ。
「おぃ怪力!」
「えっ?」
直後、怪力魔王が俺様と同じく硬直したのだ。
気付くと、残った三妖石が牛角魔王達の背後に移動していた。
「いつの間に?」
乱れる陣形。
額に黄色い石のある奴の額が閃光した。
その瞬間、全員の視界から消えたのだ。
同時に全員の身体に斬り傷が現れ、血が噴き出していた。
だが、
「黄色い奴は動きは速いようだが、硬直させる能力はないようだぞ!」
牛角が叫ぶと同時に目の前に赤い石の奴が斬りかかる。
「こなくそ!」
牛角魔王は赤妖石の剣を受け止める。
だが、追い討ちをかけるように青い石の奴が剣を構えて牛角魔王に放ったのだ。
それは強烈な突きだった。
だが、その場にいた刀剣魔王はその技に心当たりがあった。
「あれは虎先鋒の虎穴じゃないか?」
虎穴とは黄風魔王の配下であった虎先鋒の奥義で、刀剣魔王だけでなく美猴王さえも苦しめた大技だった。
「かわせ…」
…ないと思った直後、目の前に大斧が牛角を守るように飛んで来て「虎穴」の突きを弾いた。
それは剛力魔王が投げた大斧だった。
「助かったぞ!」
が、牛角魔王の目の前に立つ剛力魔王は大斧を投げた状態で硬直していたのだ。
「剛力ぃ!」
牛角魔王は直ぐに残った仲間達に陣形を取るように叫ぶ。
残ったのは、刀剣魔王と玉面魔王、蚩尤だけだった。
「何がどうなってやがる?」
「油断するな蚩尤!あの赤い奴の剣に触れたら終わりだ!先に青いのと黄色のを倒すぞ!」
どうやら青妖石は相手の技を奪い、黄妖石は超速で、赤妖石が相手の動きを止める能力のようだった。しかも連携が取れた攻撃で、完全に翻弄されていた。
「速」
再び黄妖石の額が光ると手にした剣も同じく光輝く。
瞬間、また視界から完全に消えたのだ。
「!!」
気付いた時には全員の身体から血が噴き出し、崩れた所に赤妖石が剣を降り下ろしていた。
牛角もまた何も出来ずに身体が硬直していく。
だが、最後に牛角は安堵していた。
完全に牛角が硬直した後、三人の刺客は立ち去ろうとする。
全滅??
だが、生き残っていた奴がいたのだ。
「はぁ…はぁ…我、危なかった…」
刀剣魔王は見えない速さの黄妖石の攻撃は受けたが、相手の剣筋から赤妖石の剣は己の刀剣で寸前で弾いたのだ。だが、一人で何が?
いや?もう一人残った奴がいた。
「玉面さん!」
蚩尤は目の前で硬直していく玉面魔王に叫んでいた。
「あぁ…牛角兄者だけでなく玉面さんまで…」
戦意喪失している蚩尤に玉面魔王は言った。
「本当に情けない男だな?お前は?あの牛角様の実弟でありながら実に情けない男じゃ!」
「!!」
「安心しろ?あやつ達の額にあった石を壊せば妾達は元に戻るはずじゃ!」
「本当か?だが、どうやって?」
「お前は本当にウツケだな?お前がやるのじゃ?」
「俺が?牛角兄者や玉面さんまで敵わなかった奴らにか?」
「もし奴らを始末すれば、少しはお前を…見直して…や…」
「えっ?」
だが、言い終える前に玉面魔王も動かなくなった。
「俺が…奴等を?」
蚩尤の目の前には刀剣魔王が立っていた。
「やれるか?」
「………」
「我も情けない事に助けるべき大切な存在[剛力魔王]を目の前で奴らに奪われた。だが、取り返すすべがあるなら我は戦うぞ?主はどうする?」
「あっ…当たり前だ!それに俺は牛角兄者の分も戦わなきゃいけないんだ!」
刀剣魔王と蚩尤が剣を構え、立ち去ろうとする刺客達を呼び止めた。
「待つのだ!まだ我達は残っているぞ!」
「俺達がお前達を倒してやる!」
が、勝ち目はなかった。
完全に策は無く、気合いだけだった。
「生き残りは全て排除!」
再び三妖石達が残った刀剣魔王と蚩尤に攻撃を仕掛けようとした時だった。
「お前達?あの時の邪魔者じゃないか?」
三妖石と刀剣魔王、蚩尤に向かって上空から声がしたかと思えば、
「マジか?」
「アイツは!」
上空から火炎玉が三妖石の間を割って落ちて来たのである。
そして、声の主はゆっくりと降りて来たのだ。
炎の翼に包まれたその者は?
「あははははは!僕が殺し・た・げ・る!」
六耳と本陣に戻ったはずの鵬魔王であった。
次回予告
蚩尤、刀剣魔王、鵬魔王が三妖石に挑む!!
三人は三妖石を倒して仲間達を救い出す事が出来るのだろうか?




