金剛魔王からの挨拶?
砂塵魔王を倒した美猴王。
そして水廉洞闘賊団は次の魔王のいる城へと向かっていた。
俺様は美猴王!
俺様達は砂塵魔王の城から金剛魔王の城へと続く長い地下通路を進んでいた。
「何処まで続くんだ?これ?」
「それにしてもお前はもう平気なのか?」
「ん?何がだ?」
牛角の心配に意味を六耳が説明した。
「美猴王様!身体ですよ?あんな重体だったはずなのに?」
「俺様も驚くくらい元気だぜ?完全回復だ!」
「さすが美猴王様!」
「あははのは!」
俺様は属性の相性より砂塵魔王の妖気を得て回復したのだ。
すると、先に進んでいた連中の悲鳴が聞こえて来たのだ。
一体、何が?
俺様達が急ぎ向かうと、そこでは仲間達が地下通路の罠にかかっていた。
「どうやら罠だらけのようだぞ?どうする?回り道する訳にもいかんし、だが闇雲に進んだら全滅しかねんぞ?」
「六耳?出来るか?」
「お任せあれきゃ!」
六耳は砂塵魔王の城を落としている間に、俺様の許可を取って一人修行をしていたのだ。恐らく鵬魔王の強さに感化され焦り出したのだろう。そして…
「鵬魔王の奴は炎のスペシャリストなら、俺ッチは!」
六耳は雷の気を掌に集中させると、床に向けて放ったのだ。
すると雷が走るように通路の先へと向かっていく。
「感知オッケーッチ!」
六耳は雷の電気信号から地下通路の罠を見つけ出したのだ。
更に六つの耳を使って用心深く罠を発見していく。
何て便利な??
マジに頼りになって来たなぁ?六耳?
俺様は嬉しいぞ!
前方を先に進む六耳の後を俺様達は着いていく。
そして地下通路を抜けた先には、山々がそびえる地へ出たのだ。
「この先に金剛魔王の城があるのか?刀剣魔王」
刀剣魔王は俺様の隣で聞いた話を説明した。
「我も詳しくは知らないが金剛魔王は中央の地を追われ、砂塵魔王を率いてこの地を本拠地にしたらしいが…全く情報がないのが本音だ」
「しかし砂塵魔王を撃破した今、金剛魔王を守る者は他にいないんだろ?楽勝じゃねぇか?」
「なら、良いのだが…」
「何かあるのか?」
「お前も知っているよな?錬体魔王は?」
「あぁ?あのゲス野郎か?あいつが何だよ?」
「あいつは本来、金剛魔王の配下だったんだ」
「何だと?ちょっと意味が解らないぞ?」
「本家の黄風魔王様が不老不死を願っていたのは以前話したと思うが、金剛魔王はそれを知り錬体魔王を黄風魔王様に送り込んだのだ」
「条件付きで自分の配下にするためか?」
玉面魔王もその話に付け足した。
「仲間を募って現在中央の地を支配している第一魔王と戦争するためさ。妾にも何度かコンタクトがあった」
「一桁連中をそんなに揃えて戦争しないと中央は落とせんのか?」
「詳しくは知らないわ。金剛魔王を第一魔王の座から引きずり落としたのは第三魔王と噂されとるしな」
「第三魔王?」
「五行魔王の一角であり憤怒の熔岩魔王。金剛魔王との一騎討ちで金剛魔王に深手を与え、実質、最強の魔王と言われているのじゃ。それに大三魔王は妾よりも上じゃ。」
「第三魔王が最強なのか?第一魔王じゃなくてか?」
「実質、現在ナンバー1はお飾りとか、熔岩魔王を影で操っているとか謎が多いのは確かじゃ。妾も詳しくは知らん。」
「引きこもりだったからか…」
玉面魔王が顔を膨らませて俺様を睨んだが無視した。
「難しい事は考えても拉致があかねぇよ?今は金剛魔王をぶっ倒すのみ!」
「さすが美猴王だぁ!今日は一際輝いている!」
鵬魔王が俺様を讃えて強気になる。
「マジか?テカテカに輝いているか?」
「僕には眩しいです!」
「そうかそうか?あはははは!」
と、おだてられていると俺様達の前に墓場が広がっていた。
「墓場…お約束だぞ?」
「今度は死霊か?それとも…」
そこに物音が聞こえる。
「誰かいるようだぞ?」
音のした方に向かうと、そこには数人の人間達が墓を作っていたのだ。
「人間?こんな所にか?」
「妖怪は捕まえて来た人間に畑を耕させ、食料を献上させている。働きが良ければ土地や地位を与えて下の人間達の監視を任せたりするのだ」
怪力魔王が説明した後、鵬魔王はニヤリと笑んで続けて説明する。
「奴隷だよ!人間はカスな生き物だけど知能はあるからね?使い道はあるんだ」
「要は適材適所ってやつだな」
俺様は仲間達の話を聞いて複雑な感じになった。
人間を奴隷として使う妖怪と、天界から使われる妖怪。
何が違うんだ?
あたかも当たり前のように話す仲間達に違和感を感じる。
俺様達は縛られたこの世界から抜け出したくて戦争しているんだよな?
いずれ力をつけた人間達が妖怪に反逆するのではないか?
そんな不安が頭を過り、天界と妖怪と人間の世の中に何か考えさせられた。
まぁ、こんな事を考えてしまうのは蓮華との出会いがあったからなのだが、俺様が変なのか?
俺様は仲間達を待たせて一人で墓を作っている人間達に声をかけた。
人間達は俺様達に脅えていたが、
「あんまり脅えなくて良いぞ?お前達をどうこうするつもりはない」
人間達は顔を見合せた後、恐る恐る頷いた。
「お前達に聞きたい事がある。この地を支配している魔王の居場所だ!俺様達はそいつを倒しに来た!」
すると人間達のリーダー格の青年が答えた。
「あんたら妖怪が魔王を倒すって?」
「その通り!」
「それは無理だ…あの妖怪は化け物…いや?神に近い…神その者だ!勝てるはずがねぇ…」
「神だと?」
人間達の脅えようから金剛魔王の恐怖が伝わって来たが、人間達にとって妖怪は強大かつ恐怖の対象。当たり前の反応だ。
それに俺様達は後々、その本物の神をも倒すのだからな。
金剛魔王が神だってならもってこいだぜ!
で、俺様は人間達の知る限りの詳しい情報を聞いた。
「てな訳だ」
俺様は聞いた情報を仲間達に伝えた。
因みに仲間達が人間の前に現れたら驚きと恐怖で情報が聞き出せないと思って待たせていたのだ。六耳は情報収集を得意としていたが、大将自ら情報を収集する事に不満げだった。
「それにしても情報収集なんて美猴王様がするもんじゃないですっチヨ?」
「そうか?」
「でも、人間達もお前にはさほど恐怖を感じずに話をしていたな?」
「そりゃ~怪力よ?俺様の話術の賜物だ!俺様はコミュニケーションの美猴と昔は有名だったんだぜ?」
「さすが美猴王様!」
実際、黄風魔王の所で仲間達と離れ離れになった時に、蓮華を含めて人間達とは何度か話をしたからな。さほど苦手意識はなかった。むしろ妖怪も人間も変わらないと思えるくらいだ。
で、情報なんだが…
金剛魔王は自分達のいる場所からも見える一際デカイ山にいるらしい。
そこまで行くには金斗雲で突っ込む方法?それは無理だ。
山を囲むように城の周りには対空中からの侵入者に対して結界が張られている。
むやみに金斗雲で侵入しようと言うなら、雲が結界に耐えられずに消えて、皆落下するのが解っている。すると玉面魔王が、
「妾は歩くのは嫌じゃ!」
あっ…引きこもりの典型的な我が儘が始まった。
そこに蚩尤が手を挙げて、あっ…こいつもいたんだった。
「俺がおぶります!玉面さん?」
「穢らわしい!無礼な」
「そ…そんな…」
「なぁ?牛角よ?妾をオブっておくれ?」
玉面魔王が牛角に触れようとすると、その腕を剛力魔王が掴む。
「また主か?妾の邪魔をするなら一度痛い目を味あわせんと解らないようじゃな?」
「痛い目、お前、受けて、立つ!」
また喧嘩が始まった。
何か我の強い連中が揃い過ぎじゃねぇか?
もう嫌だ…
「!!」
その時、俺様達に向けられた殺気を感じた!!
それは、その場にいた全員が一同に感じた。
まるで押し潰されそうな重みのある殺気だった。
喧嘩していた連中も静まり、殺気の主の居場所を探る。
が、それは…
俺様達が見た方向に、とてつもなく巨大な影が山の向こうから覗いているように見えたのだ。
何だ?今の影は?
そして、その影が消えたと同時に殺気も消えた。
まさか?今のが金剛魔王なのか?
今の殺気は俺様達に向けての挨拶のつもりか?
身震いした…
これから始まる戦いに!
俺様を殺気だけで怯ませるなんて面白いじゃないか?
この個性豊かな仲間達で必ず金剛魔王の城を落としてやるぜ!
次回予告
生きていたのか?
因縁!
再び、美猴王に迫る!




